短絡(ショート)は、電位の異なる導体間が、通常の負荷を経由せず低いインピーダンスでつながる故障です。地絡は充電部が大地や接地された金属部とつながる故障で、電流が小さいとは限りません。 故障電流は電源、配線、故障点、接地方式によって変わり、事故の名称だけから何Aと決めることはできません。
本記事は用語と確認手順の説明です。実際の事故原因、保護装置の設定値、交換後の再使用可否は、設備を管理する技術者・電気工事業者が判断します。
短絡・地絡・漏電・過負荷の判断表
| 用語 | 電流の経路・状態 | 判断に必要な条件 |
|---|---|---|
| 短絡 | 異なる電位の導体同士が低いインピーダンスで接続 | 電源容量、変圧器のインピーダンス、配線長・太さ、故障位置 |
| 地絡 | 充電部から大地・接地された金属部へ電流が流れる | 接地方式、故障経路、接地抵抗、系統の対地静電容量 |
| 漏電 | 本来の通電経路以外へ電流が漏れる状態 | 絶縁状態、漏れ電流の経路・波形、機器の構成 |
| 過負荷 | 通常の通電経路で、機器や電線の許容条件を超える負荷が続く | 負荷電流、継続時間、布設条件、保護装置の動作特性 |
地絡と漏電は関係する用語ですが、完全な同義語として扱いません。電圧線に触れた工具が接地された盤の金属部へ接触する例は、まず地絡の経路に当たります。音や火花だけで短絡か地絡かを判定しないでください。
短絡電流はなぜ大きくなるのか
通常の負荷を迂回する経路ができると、電流を制限するインピーダンスが小さくなり、大きな電流が流れ得ます。ただし、電源と配線のインピーダンスまでゼロになるわけではありません。
抵抗だけで近似できる回路では I = V ÷ R(I:電流A、V:電圧V、R:抵抗Ω)で関係を説明できます。交流設備の故障電流を計算する場合はリアクタンスも含むインピーダンスと、単相・三相などの故障条件を考慮します。この簡単な抵抗式を、すべての短絡事故の設計計算にそのまま適用することはできません。
例えば同じ遮断器でも、変圧器の近くと長い配線の末端では予想短絡電流が異なります。遮断器の定格電流(AT)と、故障電流を遮断できる能力(定格遮断容量)は別の確認項目です。
地絡電流を小さいと決めつけない
日本電気技術者協会の「電圧・電流波形のいろいろ(5)(地絡事故)」は、中性点の接地方式によって地絡電流が大きく変わることを説明しています。非接地系統でも対地静電容量などを通じて電流が流れます。「地絡は数mA〜数Aだから小さい」という固定的な説明は適切ではありません。
また、漏電遮断器の定格感度電流と、事故時に実際に流れる地絡電流は別の値です。感度の表示だけから事故規模や感電リスクを判断できません。
遮断器は何を保護するのか
配線用遮断器は過電流に対して動作します。熱動・電磁式では過負荷領域の時延動作と、大電流に対する瞬時動作を持ちますが、引外し方式や整定値は製品ごとに異なります。地絡保護の有無も型式・機能を確認する必要があります。
故障時に遮断することと、事故回路だけを切り離して健全な回路へ給電を継続することは別の設計課題です。上位・下位の遮断器、電線、負荷機器の保護協調を確認します。
異常が起きたときの対応
- 発煙・発火・異音がある設備には近づかず、人を離して設備管理者へ連絡してください。火災が起きている場合は消防へ通報します。
- 電源の隔離は、安全に操作できる場所・手順を確認できる担当者が行います。故障した盤へ近づいて遮断器を操作することを勧めるものではありません。
- 落ちた遮断器を繰り返し投入しないでください。工具を外しただけでも、絶縁や接点に損傷が残っている可能性があります。
- 原因の除去、損傷範囲の確認、必要な検査を経て、設備の管理手順に従って復旧します。
交換品・後継品の見積で必要な情報
安全に確認できる範囲で、メーカー、正式型番、極数、定格電圧、AT・AF、遮断容量、漏電保護の有無、取付・端子方式をまとめてください。既設品の銘板写真と回路図があると、確認対象を絞れます。写真撮影のために通電中の盤を開ける必要はありません。
短絡電流の簡易計算(%Z法)は計算条件を理解するために使い、正式な遮断器選定は設備条件とメーカー資料で確認してください。ブレーカー・遮断器のメーカーと品種から製品情報へ進めます。
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