10問の中で、電灯も動力もまったく登場しない問題が1つだけある。候補問題No.10だ。
ランプレセプタクルも、コンセントも、電動機もない。あるのは計器用変圧器、継電器、電圧計、そしてランプ2つによる表示回路だけ。
見当がつかなくて当然だ。読み終えるころには、この問題が何のためにこう作られているかが分かるようになっている。
まず前提を確認しておく。ここでは配線図そのものは載せない。試験センターが公表している候補問題のPDFを手元に開き、No.10の図を見ながら読み進めてほしい。
図から読み取るもの
No.10の配線図に描かれているのは、次の要素だ。
- 電源:3φ3W 6 600V(施工省略)
- VCB(真空遮断器・施工省略)
- VT×2(PF付=限流ヒューズ付計器用変圧器)のV-V結線
- 不足電圧継電器「U<」(施工省略)
- 電圧計「V」(施工省略)
- VCB補助接点(箱内にa接点・b接点の図)
- 赤ランプ・緑ランプ
- アウトレットボックス
VTのED接地(施工省略)を含む。
なぜ電灯も動力もないのか
VTのV-V結線とは
VT(計器用変圧器)は、高圧の電圧をそのまま計器や継電器に加えると危険なため、計測・保護に使いやすい低い電圧に変換する機器だ。V-V結線にすることで、2台のVTで三相の電圧を計測できるようにしている。候補No.3・No.5で扱った電力用変圧器のV結線と、考え方の骨格は同じだが、目的が「電気を使うため」ではなく「電圧を測るため」という点が異なる。
VCB補助接点——投入・開放を伝える回路
VCB補助接点は、VCB本体が「入っている(投入)」か「切れている(開放)」かに連動して開閉する接点だ。a接点はVCBが投入されると閉じる、b接点はVCBが投入されると開く、という逆の動きをする。この補助接点を使って、赤・緑ランプのどちらかを点灯させることで、VCBの状態を離れた場所からでも把握できるようにする。赤・緑どちらをa接点・b接点のどちらにつなぐかは、当日の施工条件で確定する。
補助接点という考え方自体は、候補No.5・No.6の運転表示灯・電源表示灯とも根っこが同じだ。「機器の状態を、直接見なくてもランプの色で分かるようにする」という設計思想が、VCBという大きな機器にもそのまま適用されている。
複線図を起こす順序
- 施工省略の範囲を確認する — 電源〜VCB、VT、不足電圧継電器、電圧計の多くが施工省略の対象になる
- VTのV-V結線を確認する — 計測用の低電圧をどう作るかを把握する
- VCB補助接点から赤・緑ランプへの表示回路を追う — a接点・b接点の動作原理を踏まえて結線先を決める
- VTのED接地を確認する — 電力用変圧器のEB接地とは別の系統として扱う
踏みやすい欠陥項目
- 3.誤接続,誤結線のもの — a接点・b接点を取り違えると該当
- 12-1.支給品以外の材料を使用したもの — 図にない電灯・動力用の器具を追加してしまうと該当
一歩先の使い道
計測・保護・表示という3つの役割を切り分けて理解する力は、実際の受変電設備における監視盤・保護継電器盤の点検・更新工事に直結する。
今日試せる行動
ビルの受電室や電気室の外に掲示された系統図(見られる範囲でよい)を眺めて、電灯・動力の系統とは別に、計器・保護のための表示灯や計器がどこにあるかを探してみるといい。
覚える意味
電気を使うための回路だけでなく、それを安全に監視する回路が別に存在するという理解は、大規模な電気設備の安全がどう支えられているかを知る入り口になる。
面白さ
「照明も動力もない配線図」という一見物足りない図の中に、設備全体を守るための仕組みが凝縮されていると分かると、高圧受電設備の見え方が変わる。
ワクワクする未来
計測・保護・表示の技術は、これから更新期を迎える受変電設備の監視システムにおいて、引き続き求められ続ける基礎知識になる。
冒頭の「なぜこの問題だけ電灯も動力もないのか」——答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。