進相コンデンサ(SC)の図記号は、間隔を空けた平行な横線2本でしかない。乾電池を並列に何個も積んだ回路や、音響機器の平滑コンデンサと、記号のうえではまったく同じ形だ。
「力率を改善する」という専門的な役割を持つ機器なのに、図記号にはその役割を示す特別な飾りが一切無い。それなら、単線結線図を見た人は、この平行な2本の線が普通のコンデンサではなく進相コンデンサだと、どこで見分けているのか。
見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、この記号の「素っ気なさ」の理由を説明できるようになっている。
これまでのトピックで、開閉する機器の記号は「基本形+機能の印」の足し算でできていることを見た。変圧器・コンデンサ・リアクトルの記号にも、同じ「節約」の発想がある。ただし節約の仕方が少し違う。
変圧器(T) は円2個を上下に少し重ねただるま形(様式1)で描かれる。これは計器用変圧器(VT)とまったく同じ様式だ。「電圧を変える」という機能が同じなら、容量の大小にかかわらず同じ記号を使い回す、という徹底した節約の発想がここにある。
進相コンデンサ(SC) は、間隔を空けた平行な横線2本というコンデンサの一般図記号がそのまま使われる。専用の飾りは無い。JIS C 0617-4にコンデンサの一般図記号は載っているが、「進相」であることを示す専用の様式は存在しない。
直列リアクトル(SR) だけは、円周の約4分の3(270度)だけを描く独特の様式を持つ。導体は円の中心から円周の左端まで入り、そこから弧を描いて円の真下へ抜ける。「?」を左右反転したような、この科目の中でも見分けやすい形だ。
直列リアクトルは、進相コンデンサより電源側に置かれる
進相コンデンサ回路を単線結線図で辿るときの並び順は、高圧母線側から見て直列リアクトル(SR)→進相コンデンサ(SC)の順が基本だ。SRは、コンデンサを投入した瞬間に流れる突入電流と、波形をひずませる高調波を抑える役目を持つため、電源側(コンデンサより上流)に直列に入れる。直列リアクトルの容量は、コンデンサ容量のおおむね6%(高調波が著しい場合は13%)が標準値とされている。
進相コンデンサそのものが何のために遅れ力率を改善するのか、直列リアクトルがどう突入電流を抑えるのかという原理は、受電設備の機器を扱う科目で詳しく学ぶ。ここでは、その2つの機器が単線結線図の上でどんな記号と並び順で描かれるかに絞って押さえておけば十分だ。
記号の少なさが、逆に読み解く力を要求してくる
変圧器・コンデンサ・リアクトルの記号を知ると、単線結線図に並ぶ「円」や「平行線」が、すべて同じ意味ではないことが分かるようになる。今日試せることとして、電気設備のカタログに載っている単線結線図を見つけたら、円形の記号を1つずつ見比べて、それがだるま形(変圧器・VT)なのか、4分の3周の弧(SR)なのか、円が導体をまたぐ形(CT)なのかを見分けてみるといい。
記号の種類がこれだけ少なく抑えられているのは、複雑な高圧設備の図面を、誰が描いても誰が読んでも同じように理解できるようにするためだ。専用の飾りを増やしすぎると、かえって読み間違いの元になる。傍記という文字の情報と組み合わせて初めて図面が機能する、という設計思想は、この先どんな新しい設備が単線結線図に加わっても変わらない。
冒頭の疑問、進相コンデンサの記号に専用の飾りが無いのに、なぜそれと分かるのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。