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配線図 ・ 4 / 13

保護の記号 — 継電器・避雷器・ZCT/ZPDまわりの慣用表現

読み終えると、こうなる

保護継電器の枠の中の文字を見て、その継電器が何を見張っているかを読み取れるようになる。

  • OCR・UVR・GRの枠内の表記を、見張っている電気量の違いから読み分けられる
  • GRとDGRの違いを、枠の大きさではなく接続される検出機器の組み合わせから見分けられる
  • 避雷器の記号の矢じりの向きから、その役割を言い当てられる
考えてみよう

地絡継電器GRという機器がある。地絡(漏電)を検出して電路を切る、保護の要となる機器だ。それなのに、多くの高圧受電設備では、これをわざわざ方向判定機能の付いたDGR(地絡方向継電器)に置き換えている。

GRだけでも地絡は検出できるはずだ。それなのに、なぜわざわざ「方向」という機能を1つ足す必要があるのか。図記号のうえでは、ほんの小さな違いにしか見えないのに。

見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、この「方向」という1つの機能が何を防いでいるのかを説明できるようになっている。

保護の記号は、開閉する機器の記号と違って、枠の中に書かれた文字が意味を持つ。まずは共通の土台となる保護継電器の記号を見る。

保護継電器は「枠+見張っている量」で読む

保護継電器の図記号(JIS C 0617-7) 保護継電器(一般) I> 過電流継電器(OCR) U< 不足電圧継電器(UVR) I 地絡電流の限定表記(GR等) 保護継電器の枠+動作量の表記(自作、JIS規格票の形状記述に基づく)

保護継電器の図記号は、横長の長方形の枠に、動作の特性量を示す記号を書く一般則でできている。過電流継電器(OCR)は枠内に「I>」、不足電圧継電器(UVR)は枠内に「U<」。地絡を扱う継電器では、イタリックの「I」の右に接地記号(縦線の下に長・中・短の横線3本)を添えた表記を枠内に使う。枠の形はどれも同じで、中の文字だけが「何を見張っているか」を教えてくれる。

避雷器(LA)は矢じりの向きで役割を示す

避雷器(LA)の図記号 避雷器(LA) 縦長の長方形+内側の下向き矢じり+接地記号(自作、JIS規格票の形状記述に基づく)

避雷器は縦長の長方形の内側上寄りに、下向きの黒塗り矢じりが線上に描かれ、下側は接地記号につながる。矢じりが下を向いているのは、雷サージを大地へ逃がすという役割を、そのまま図に写しているためだ。矢じりの向きを上下逆に覚えると、記号の意味そのものを取り違えることになる。

ZCT・ZPDはJISの記号ではなく実務・試験の慣用表現

ZCTの描き方(3導体一括貫通のCT系記号) 3 ZCT 零相変流器(ZCT)=慣用の呼び方(傍記) 3本の導体を一括貫通させたCT系の記号(06-13-10)+「ZCT」の傍記(自作、JIS規格票の形状記述に基づく)
ZCTの図記号そのものは実在する。ただし「零相変流器」という名称専用の独立記号ではなく、**3本の導体をまとめて1個の鉄心に通した変流器系の記号(06-13-10)**が実体だ。単線結線図に描かれる「ZCT」の3文字は、この記号が何のために使われているかを説明する傍記であって、記号の一部ではない。ZPD(零相電圧検出装置)に至っては、JIS C 0617に対応する図記号自体が確認できず、実務図では独自の描き方に「ZPD」と傍記するのが慣例になっている。**規格にある記号と、慣用の描き方を混同しないことが、この科目の見えない落とし穴を避ける鍵になる。**

ZCTが検出するのは、平常時はゼロになるはずの零相電流(三相の電流のベクトル和)だ。GR(地絡継電器)はこの電流の大きさだけを見て動作する。だが、これだけでは構外(隣接需要家側)の事故でも反応してしまう「もらい動作」が起こりうる。そこでZPD(零相電圧検出装置)を追加し、零相電流と零相電圧の位相差から地絡が構内か構外かを判別するのがDGR(地絡方向継電器)だ。継電器の枠自体はGRもDGRも同じ保護継電器の記号を使うため、図記号だけを見比べても違いは分かりにくい。違いは、その継電器がZCTだけにつながっているか、ZCT+ZPDの両方につながっているかという、接続される検出機器の組み合わせに表れる。

継電器が検出した信号は、遮断器の引外しコイル(TC)に伝わって初めて電路を切る動作になる。このコイル自体の記号(横長の長方形の作動装置一般記号)は、制御回路のトピックで電磁接触器のコイルと合わせて扱う。

零相電圧を「作る」仕掛け — EVT/ZPDの中身

ZCTが零相電流を拾うのに対し、零相電圧を拾う機器がある。 接地形計器用変圧器(EVT/GPT)と、簡易形のZPD(零相電圧検出装置)だ。

単線結線図では1個の記号で描かれるが、複線図に開くと3個の単相変圧器になる。 そして結線には決まった形がある。

一次はY結線・中性点を接地、二次はオープンデルタ

  • 一次側 … 3個の変圧器をY(スター)結線し、中性点を接地する
  • 二次側 … 3個の巻線をオープンデルタ(破れΔ)につなぐ。1か所を開いて端子を出す
**なぜオープンデルタなのか。**ここが理解の要になる。

平常時、三相の電圧はベクトル的に足すとゼロになる。だから二次を輪にすると、 開いた2端子の間には何も現れない

ところが1線地絡が起きると三相のバランスが崩れ、足し合わせがゼロにならなくなる。 その残りが、開いた2端子に電圧として出てくる——これが零相電圧だ。

つまりオープンデルタは、「ゼロになるはずのものが、ゼロでなくなった分」だけを取り出す 引き算の回路になっている。ZCTが3線をまとめて貫通させ、 行きと帰りが打ち消し合った残りを見るのと、まったく同じ考え方だ。 電流版がZCT、電圧版がEVT/ZPDと対にして覚えると、両方いちどに整理できる。

図の上で確かめる2点

複線図の選択肢が並んだら、見るのは次の2点だけでいい。

見る場所正しい形
一次側の中性点接地されている(接地記号が付く)
二次側オープンデルタ(1か所が開き、そこから2本の端子が出る)

二次を閉じたΔに描いた図一次の中性点を接地していない図は、その時点で誤りだ。 中性点を接地しなければ基準が定まらず、二次を閉じてしまえば取り出す端子が無くなる。

なお、地絡電圧を検出したあとに動作するのが地絡過電圧継電器(OVGR、64)で、 方向性を持たせたものが地絡方向継電器(DGR、67Gまたは67)になる。 番号の本体67が方向を見る継電器の仲間を表し、地絡用であることを明示するときに補助記号Gを付けて67Gと書く—— 高圧受電設備の図では地絡方向継電器以外の67がまず出てこないため、Gを省いて67とだけ書く資料も多い。 どちらの表記も同じ機器を指す(制御器具番号のトピックで番号体系ごと整理している)。 ZPDは電圧を作る側、継電器は受けて動く側という役割分担も、あわせて押さえておく。

記号の中の文字を読めると、保護の設計思想が見えてくる

継電器の枠の中の文字を読み分けられるようになると、単線結線図は「何を守るための保護がどこにあるか」を教えてくれる地図に変わる。今日試せることとして、キュービクルの銘板や設備の仕様書に「GR付」「DGR付」という表記を見つけたら、その設備が単純な地絡検出だけなのか、方向判定まで備えているのかを意識してみるといい。

DGRへの置き換えが進んでいるのは、方向を判別できない保護が原因で、関係のない周辺の需要家まで停電させてしまう波及事故が実際に起きてきたからだ。ZCTとZPDという、JISの正式な記号を持たない機器にまで名前と傍記のルールが定着しているのは、それだけ現場でこの区別が重要視されている証でもある。

冒頭の疑問、GRだけでは足りず、なぜDGRに置き換える設備が多いのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. ZCTがJISで定められた『零相変流器』専用の独立図記号だと思い込ませる

    なぜ引っかかるZCTは試験にも頻出する名称のため、専用の決まった記号が規格上あるように見えやすい

    見破り方JIS C 0617に『零相変流器』という名称の独立記号は無いと理解する。実際に描かれるのは3本の導体を一括貫通させた変流器系の記号(06-13-10)に『ZCT』と傍記した慣用表現だと確認する

  2. 避雷器(LA)の内部の矢じりの向きを、上向き(大地から機器へ逃がす向き)だと誤って覚えさせる

    なぜ引っかかる避雷器は『サージを大地へ逃がす』機器だと知っていても、矢印の向きまでは印象で逆に覚えやすい

    見破り方図記号そのものでは、長方形の内側上寄りに下向きの矢じりが描かれ、下側が接地記号につながる形を固定して覚える。矢じりの向きは『上から下=大地側へ』と一致している

  3. GRとDGRの図記号上の違いを、枠の大きさや線の太さの違いだと誤解させる

    なぜ引っかかる『DGRのほうが高性能』という漠然としたイメージから、記号も複雑・大きく描かれると連想しやすい

    見破り方図記号の枠自体はどちらも保護継電器の一般記号(長方形)で共通。違いは検出する電気量(GRは零相電流のみ、DGRはさらに零相電圧ZPDも)にあり、それは枠の大きさではなく、接続される検出機器(ZCTだけか、ZCT+ZPDか)で見分ける

参考文献・出典

理解度チェック(5問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、5問で確認しよう。 内訳は基本3問・応用1問・ひっかけ1問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 5 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 保護継電器はJISでは横長の長方形の枠の中に、動作の特性量(I>やU<など)を書く一般則で表される
  2. 過電流継電器(OCR)は枠内に『I>』、不足電圧継電器(UVR)は枠内に『U<』と書き、地絡電流を扱う継電器では『I』に接地記号を添えた表記を枠内に使う
  3. 避雷器(LA)は縦長の長方形の内側に下向きの矢じりを描き、下側を接地記号につなぐ
  4. ZCT(零相変流器)は3本の導体を一括して貫通させたCT系の図記号(06-13-10)で描かれ、『ZCT』という名称専用の独立記号ではない
  5. ZPD(零相電圧検出装置)はJIS C 0617に該当する図記号が確認できず、実務図の慣用表現として『ZPD』と傍記されるにとどまる
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