地絡継電器GRという機器がある。地絡(漏電)を検出して電路を切る、保護の要となる機器だ。それなのに、多くの高圧受電設備では、これをわざわざ方向判定機能の付いたDGR(地絡方向継電器)に置き換えている。
GRだけでも地絡は検出できるはずだ。それなのに、なぜわざわざ「方向」という機能を1つ足す必要があるのか。図記号のうえでは、ほんの小さな違いにしか見えないのに。
見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、この「方向」という1つの機能が何を防いでいるのかを説明できるようになっている。
保護の記号は、開閉する機器の記号と違って、枠の中に書かれた文字が意味を持つ。まずは共通の土台となる保護継電器の記号を見る。
保護継電器は「枠+見張っている量」で読む
保護継電器の図記号は、横長の長方形の枠に、動作の特性量を示す記号を書く一般則でできている。過電流継電器(OCR)は枠内に「I>」、不足電圧継電器(UVR)は枠内に「U<」。地絡を扱う継電器では、イタリックの「I」の右に接地記号(縦線の下に長・中・短の横線3本)を添えた表記を枠内に使う。枠の形はどれも同じで、中の文字だけが「何を見張っているか」を教えてくれる。
避雷器(LA)は矢じりの向きで役割を示す
避雷器は縦長の長方形の内側上寄りに、下向きの黒塗り矢じりが線上に描かれ、下側は接地記号につながる。矢じりが下を向いているのは、雷サージを大地へ逃がすという役割を、そのまま図に写しているためだ。矢じりの向きを上下逆に覚えると、記号の意味そのものを取り違えることになる。
ZCT・ZPDはJISの記号ではなく実務・試験の慣用表現
ZCTが検出するのは、平常時はゼロになるはずの零相電流(三相の電流のベクトル和)だ。GR(地絡継電器)はこの電流の大きさだけを見て動作する。だが、これだけでは構外(隣接需要家側)の事故でも反応してしまう「もらい動作」が起こりうる。そこでZPD(零相電圧検出装置)を追加し、零相電流と零相電圧の位相差から地絡が構内か構外かを判別するのがDGR(地絡方向継電器)だ。継電器の枠自体はGRもDGRも同じ保護継電器の記号を使うため、図記号だけを見比べても違いは分かりにくい。違いは、その継電器がZCTだけにつながっているか、ZCT+ZPDの両方につながっているかという、接続される検出機器の組み合わせに表れる。
継電器が検出した信号は、遮断器の引外しコイル(TC)に伝わって初めて電路を切る動作になる。このコイル自体の記号(横長の長方形の作動装置一般記号)は、制御回路のトピックで電磁接触器のコイルと合わせて扱う。
零相電圧を「作る」仕掛け — EVT/ZPDの中身
ZCTが零相電流を拾うのに対し、零相電圧を拾う機器がある。 接地形計器用変圧器(EVT/GPT)と、簡易形のZPD(零相電圧検出装置)だ。
単線結線図では1個の記号で描かれるが、複線図に開くと3個の単相変圧器になる。 そして結線には決まった形がある。
一次はY結線・中性点を接地、二次はオープンデルタ
- 一次側 … 3個の変圧器をY(スター)結線し、中性点を接地する
- 二次側 … 3個の巻線をオープンデルタ(破れΔ)につなぐ。1か所を開いて端子を出す
平常時、三相の電圧はベクトル的に足すとゼロになる。だから二次を輪にすると、 開いた2端子の間には何も現れない。
ところが1線地絡が起きると三相のバランスが崩れ、足し合わせがゼロにならなくなる。 その残りが、開いた2端子に電圧として出てくる——これが零相電圧だ。
つまりオープンデルタは、「ゼロになるはずのものが、ゼロでなくなった分」だけを取り出す 引き算の回路になっている。ZCTが3線をまとめて貫通させ、 行きと帰りが打ち消し合った残りを見るのと、まったく同じ考え方だ。 電流版がZCT、電圧版がEVT/ZPDと対にして覚えると、両方いちどに整理できる。
図の上で確かめる2点
複線図の選択肢が並んだら、見るのは次の2点だけでいい。
| 見る場所 | 正しい形 |
|---|---|
| 一次側の中性点 | 接地されている(接地記号が付く) |
| 二次側 | オープンデルタ(1か所が開き、そこから2本の端子が出る) |
二次を閉じたΔに描いた図、一次の中性点を接地していない図は、その時点で誤りだ。 中性点を接地しなければ基準が定まらず、二次を閉じてしまえば取り出す端子が無くなる。
なお、地絡電圧を検出したあとに動作するのが地絡過電圧継電器(OVGR、64)で、 方向性を持たせたものが地絡方向継電器(DGR、67Gまたは67)になる。 番号の本体67が方向を見る継電器の仲間を表し、地絡用であることを明示するときに補助記号Gを付けて67Gと書く—— 高圧受電設備の図では地絡方向継電器以外の67がまず出てこないため、Gを省いて67とだけ書く資料も多い。 どちらの表記も同じ機器を指す(制御器具番号のトピックで番号体系ごと整理している)。 ZPDは電圧を作る側、継電器は受けて動く側という役割分担も、あわせて押さえておく。
記号の中の文字を読めると、保護の設計思想が見えてくる
継電器の枠の中の文字を読み分けられるようになると、単線結線図は「何を守るための保護がどこにあるか」を教えてくれる地図に変わる。今日試せることとして、キュービクルの銘板や設備の仕様書に「GR付」「DGR付」という表記を見つけたら、その設備が単純な地絡検出だけなのか、方向判定まで備えているのかを意識してみるといい。
DGRへの置き換えが進んでいるのは、方向を判別できない保護が原因で、関係のない周辺の需要家まで停電させてしまう波及事故が実際に起きてきたからだ。ZCTとZPDという、JISの正式な記号を持たない機器にまで名前と傍記のルールが定着しているのは、それだけ現場でこの区別が重要視されている証でもある。
冒頭の疑問、GRだけでは足りず、なぜDGRに置き換える設備が多いのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。