高圧の回路にいきなり電圧計や電流計をつなぐことはできない。だから間に、電圧や電流を計器が扱える大きさまで落とす機器が入る。VT(計器用変圧器)とCT(変流器)だ。
この2つには、正反対の注意書きが付いている。CTの二次側は「開放してはいけない」。VTの二次側は「短絡してはいけない」。同じように高圧を下げて計器につなぐための機器なのに、なぜ禁止事項がまったく逆になるのか。
見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、この2つの記号を見ただけで、なぜ禁止事項が逆なのかを説明できるようになっている。
VT(計器用変圧器)とCT(変流器)は、どちらも高圧の電気を、計器や継電器が安全に扱える大きさに変成する機器だ。図記号を見ると、この2つがまったく違う原理で動いていることが分かる。
VT(計器用変圧器) は、変圧器の一般図記号とまったく同じ様式(円2個を上下に少し重ねただるま形)で描かれる。名前のとおり「小さな変圧器」であり、電圧を落として電圧計・継電器へ送る。二次側には電圧計や不足電圧継電器(UVR)が並列にぶら下がる。
CT(変流器) は、一次導体の縦線を小さい円がまたぎ、円から横に二次側の線が出る記号で描かれる。二次側には電流計や過電流継電器(OCR)が直列につながる。規格票の図では、二次側の線に斜めの短線2本(2本の導体という注記)が付されている。
計器の記号は「円の中に量記号」が原則
指示計器はJISでは円の中に測る量の文字を書くのが一般則だ。電圧計は円の中に「V」、力率計は円の中に「cosφ」。電力量計だけは積算計であるため円ではなく縦長の長方形に「Wh」と書き、長方形の上部に区切り線が1本入る。
1台の計器で三相を測る切換開閉器
三相の電圧・電流を測るのに、相ごとに専用の計器を3台も置くのは無駄が多い。そこで1台の計器を、切換開閉器で相を切り換えながら使う。
VS(電圧計切換開閉器) は1台の電圧計で三相の各線間電圧を切り換えて測る。AS(電流計切換開閉器) は1台の電流計で各相電流を切り換えて測るが、CTの二次側は開放禁止という制約があるため、切り換えの途中でどこかを短絡させながら測る相を切り換える、少し特殊な構造を持つ。見た目は似た記号でも、内部の要求はVTとCTの性質の違いをそのまま引き継いでいる。
VCT(MOF)はJISの記号ではなく慣用のまとめ方
VCT(電力需給用計器用変成器、通称MOF)は、VTとCTを1台にまとめた機器だが、JIS C 0617にはVCT単独の図記号は無い。 単線結線図では、VTとCTを一体の枠で描いて「VCT」と文字を添え、二次側に取引用の電力量計(Wh)をつなぐ、という慣用の描き方で表される。図の点線枠は、規格の正式な記号ではなく理解のための概念図であることを示すために、あえて実線と描き分けている。
記号のつながり先を追えるようになると、禁止事項が暗記でなくなる
VT・CTの記号とその二次側のつながりが読めるようになると、「CT二次開放禁止」「VT二次短絡禁止」という注意書きが、丸暗記のルールから、回路図を見れば導ける結論に変わる。今日試せることとして、電気設備のカタログや教材にある単線結線図を見つけたら、VTとCTのそれぞれの二次側に何がつながっているか(電圧計か、電流計か、継電器か)を指でたどってみるといい。
この禁止事項が厳格に決められているのは、二次側の誤操作が過去に高圧感電や機器焼損の事故につながってきたからだ。特にCTの二次開放は、瞬間的に人体に危険な高電圧を発生させることがあり、変成器の中でも特に注意を要する。
第一種電気工事士としてキュービクルの保守に関わる仕事では、この2つの記号を見分け、二次側の配線を安全に扱えることが、点検作業の入口になる。
冒頭の疑問、CTとVTの禁止事項がなぜ逆なのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。