高圧受電設備の単線結線図を初めて見ると、誰もが同じところで戸惑う。受電点から変圧器まで、電気の通り道がたった1本の線で描かれているのだ。
高圧回路は三相3線式、つまり本来は3本の電線が並んで走っているはずだ。それなのに図には1本の線しかない。省略しすぎて、情報が欠けた手抜きの図なのだろうか。それとも、この1本の線には何か仕掛けがあるのか。
見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、なぜ1本の線で三相3線式だと言い切れるのか、その根拠を説明できるようになっている。
第二種電気工事士の配線図問題は、住宅や小規模店舗の平面図が中心だった。部屋のどこに照明があり、どこにコンセントがあり、それらを何本のケーブルでつなぐかを、複線図に描き起こして読み解く問題だ。
第一種電気工事士の配線図問題では、これに加えてまったく別の種類の図が主役になる。単線結線図——高圧で受電した電気が、変圧器や遮断器、保護継電器といった機器をどの順に通って低圧側まで届くかを、1本の線と図記号だけで表した系統図だ。
平面図と単線結線図は、そもそも目的が違う図
平面図・複線図は「施工のための図」だ。どの部屋の、どの壁の、どの高さにスイッチを付け、そこから照明まで何本の電線をどう配線するかという位置の情報が主役になる。
単線結線図は「機能と順序のための図」だ。位置の情報をあえて捨てる代わりに、電気が上流からどの機器をどの順に通るか、どの継電器がどの遮断器を動かすかというつながりの意味を読み取れるように描かれている。同じ「配線図」という科目名でも、読み方の視点がまるで違う。
なぜ1本の線で三相3線式だと言えるのか
ここで冒頭の疑問に戻る。高圧回路は三相3線式なので、本来なら3本の電線が並んでいる。単線結線図はその3本を、省略しているのではなくまとめて描いている。
JIS C 0617-3には、1本にまとめた線が実は複数の導体であることを示す、はっきりした約束がある。線を横切る短い斜線を本数分(3本なら3本)付けるか、斜線1本に数字(3)を添えて示す、という2通りの表記だ。相数・中性線・周波数・電圧をまとめて「3N〜50Hz 400V」のように傍記する例も規格票に載っている。
上流から下流へ、が読み方の基本
単線結線図は、受電点から変圧器・低圧側まで電気が流れていく順序をそのまま図の並びにしている。だから読むときは、原則として上流(電力会社側)から下流(負荷側)へ辿るのが基本になる。区分開閉器・断路器・計器用変成器・主遮断装置・変圧器・進相コンデンサ回路といった個々の機器が、単線結線図の中でどの順に並び、どんな図記号で描かれるかは、この先の各トピックで1つずつ見ていく。単線結線図を上流から下流へ辿る手順そのものは、この科目の最後のトピックでまとめて練習する。
単線結線図が読めると、キュービクルの銘板が地図に変わる
この「まとめる」約束を知ってから単線結線図を見ると、1本の線がただの記号ではなく、圧縮された情報の塊に見えてくる。今日試せることとして、電気工事の専門書や設備の竣工図に単線結線図が載っていたら、線に注記された斜線や数字を探してみてほしい。注記が付いていれば、何本の導体がまとめられているかがその場で読める。付いていない図も多いが、その場合も高圧受電設備の主回路は三相3線式が前提だと分かっていれば、線の本数に迷うことはない。
この約束が規格として定められているのは、複雑な高圧設備を1枚の図に収めながら、読み手が本数を誤解しないようにするためだ。図を簡略化することと、情報を失うことは違う——この単線結線図の設計思想は、この先のあらゆる図記号を読むときの土台になる。
第一種電気工事士がこの単線結線図を読めるようになるということは、キュービクルの扉の内側に貼られた結線図を見て、その建物の受電設備がどんな構成になっているかをその場で説明できるようになる、ということでもある。
冒頭の疑問、1本の線がなぜ三相3線式だと言い切れるのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。