接地抵抗の数値、絶縁耐力試験の条件——法令科目や検査方法の科目で出てくるこうした具体的な数字の多くは、実は「電気設備の技術基準の解釈」という文書に書かれている。この文書は、国会が作った法律でも、経済産業大臣が定めた省令でもない。それなのに、現場も試験も、まるで絶対の基準であるかのようにこれに従っている。何がこの「解釈」を、法律のように機能させているのか。
見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、法律・省令・解釈という3つの文書がどう役割分担しているかを説明できるようになっている。
これまでのトピックで、電気事業法・電気工事士法・電気工事業法・電気用品安全法という4本の法律を見てきた。だがこれらの法律の条文だけでは、現場で必要な具体的な数値や方法までは決まらない。そこには、法律の下にさらに階層がある。
まず頂点にあるのが法律だ。電気事業法は国会が制定し、事業用電気工作物の設置者に、技術基準に適合するように維持する義務を課している(39条)。ただしこの条文自体は「技術基準に適合させなさい」という抽象的な義務を定めるにとどまり、その技術基準の中身までは書いていない。
その具体化を担うのが政令・省令だ。「電気設備に関する技術基準を定める省令」(平成9年通商産業省令第52号)は、大臣が定める省令として法規の効力を持つ(制定当時は通商産業大臣、現在は経済産業大臣)。ここは主体を取り違えやすい。政令を定めるのは内閣、省令を定めるのは各省大臣であって、省令を内閣が定めることはない。この省令は、条文によっては抽象的な性能要求にとどまるものもあれば、58条の低圧電路の絶縁抵抗値(0.1MΩ/0.2MΩ/0.4MΩ)のように、条文そのものに具体的な数値を書いているものもある。
なお、電気工事士法・電気工事業法・電気用品安全法にも、それぞれ施行令(政令)・施行規則(省令)という下位の階層がある。この三層構造は電気事業法・技術基準省令・解釈の組み合わせに限った話ではなく、この科目で扱う4本の法律すべてに共通する骨格になる。
条文の「格」を見分けられるようになる
この三層構造が分かると、これから読むどんな条文についても「これは法律なのか、省令なのか、それとも解釈なのか」を意識しながら読めるようになる。数字が出てきたときに、それが省令本体の数値なのか、解釈が示す具体的な方法なのかを区別できるようになれば、暗記の精度も上がる。
今日試せることとして、この法令科目や検査方法の科目で登場した条文のうち、条番号の直前に書かれている法令名を見直してみるといい。「電気事業法」「施行規則」「解釈」のどれなのかを意識するだけで、覚え方が変わってくる。
この三層に分かれている背景には、技術基準は電気設備の進歩に合わせて頻繁に見直す必要があるが、法律を改正するには国会の議決という重い手続きが必要になる、という事情がある。だから抽象的な原則は法律に残し、具体的な数値や方法は省令・解釈という機動的に見直せる階層に委ねている。
独立して電気工事の仕事をする立場になったとき、この階層構造を理解していることは、新しい工法や新しい機器を扱うときに「これは省令の要求を満たしているか」を自分の頭で考える土台になる。
現場が「解釈」を絶対の基準のように扱っている本当の理由は何だったか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。