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電気機器、蓄電池、配線器具、電気工事用の材料及び工具並びに受電設備 ・ 11 / 21

充電方式(浮動・均等・トリクル)と非常電源 — 蓄電池はどう待機するか

読み終えると、こうなる

停電の瞬間に非常灯が消えないのは、何かが切り替わったからではなく、最初からつながっていたからだと見抜けるようになる。

  • 非常灯が停電の瞬間も消えない理由を、切替動作ではなく浮動充電による常時並列接続として言い当てられる
  • 蓄電池が浮動充電・均等充電・トリクル充電のどれで待機しているかを、負荷とつながっているかどうかで仕分けられる
  • 直流電源装置の用途を非常用照明だけに限定せず、遮断器の投入・引外し操作の電源としても働いていると挙げられる
考えてみよう

ビルの停電の瞬間、廊下の非常灯だけは一瞬も消えることなく点いている。目を凝らしても、どこかのスイッチがカチッと切り替わった様子はない。切替スイッチも無いのに、電源が落ちた瞬間から非常灯はどうやって電気を受け取っているのか。

見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、この「切替なしの瞬時対応」の仕組みを説明できるようになっている。

据置蓄電池は、ただ電気を貯めておくだけの箱ではない。どんな充電方式で待機させているかによって、いざというときの動き方が変わる。まず、代表的な3つの充電方式を見ていく。

浮動充電の接続(常時並列) 整流器 蓄電池 負荷 3つとも常に並列につながっている 停電=整流器からの電力供給だけが止まる 蓄電池はつながったまま、そのまま負荷を受け持つ →切替という動作そのものが発生しない 浮動充電の接続関係(自作の概念図。実際の回路構成は設備ごとに異なる)

浮動充電(フローティング) は、整流器(充電装置)・蓄電池・負荷を並列に接続し、蓄電池を常に満充電状態に保ちながら、停電時には無瞬断で蓄電池から負荷へ電力を供給する常用方式だ。定電圧充電で自己放電分を補う微小電流を流し続けており、据置蓄電池による直流電源装置の標準的な運転方式になっている。

均等充電 は、並列・直列で多数のセルを使うことで生じる電圧・比重のばらつきを、通常より高めの電圧で一定時間充電して解消するための方式だ。ベント形では定期的に実施されるが、制御弁式(VRLA)は原則不要とされている。

トリクル充電 は、負荷から切り離して待機させている蓄電池の自己放電を補い、いつでも使える満充電状態を維持するための充電だ。自己放電電流に見合った微小電流を常時流し続ける点は浮動充電と似ているが、対象になる電池の状態が違う。

この3つに加えて、もう1つ知っておきたいのが 回復充電 だ。停電で蓄電池が実際に放電した後、そのまま浮動充電の微小電流に戻すだけでは、失った容量を取り戻すのに時間がかかりすぎる。そこで充電装置の出力電圧を一時的に上げ、充電電流を大きくして満充電まで戻す——これが回復充電で、容量が回復したら通常の浮動充電に戻る。均等充電と同じく「普段より高い電圧で充電する」動作だが、均等充電が放電の有無と関係なく定期的にばらつきをそろえるための充電であるのに対し、回復充電は放電という出来事の後始末だ、という違いがある。

非常灯が停電の瞬間も消えないのは、停電をきっかけに何かが起動するからではない。**蓄電池は停電が起きるずっと前から、負荷とつながったまま満充電で待機している。** 浮動充電が用意しているのは「切り替える仕組み」ではなく、「最初からつながっている状態」そのものだ。停電はただ、整流器からの電力供給が止まっただけの出来事にすぎない。

こうした直流電源装置は、自家用電気工作物のさまざまな場面で使われている。受変電設備では、遮断器の投入・引外し操作や、保護継電器・表示灯の電源として使われ、停電時でも遮断器を操作できるようにしている。ほかにも、非常用照明・誘導灯などの防災用電源、UPS(無停電電源装置)の蓄電池、エンジン(非常用発電機)の始動用、通信システム機器用など、用途は幅広い。

「待機のさせ方」を知ると、停電時の設備の動きが読めるようになる

この3つの充電方式の違いが分かると、キュービクルの奥にある蓄電池が、今どういう状態で待機しているのかを想像できるようになる。負荷と常につながっている浮動充電の蓄電池と、切り離されて自己放電だけを補われているトリクル充電の蓄電池では、いざというときの役割が違う。

この方式が標準化されているのは、停電の瞬間に何かを「切り替える」動作を挟むこと自体がリスクだからだ。切替に失敗すれば、非常灯も遮断器の操作電源も動かない。だからこそ、あらかじめつながっている状態を作っておくという発想が定着している。

これから太陽光発電や蓄電池、非常用電源の設備が増えるほど、こうした「待機のさせ方」を理解している人材が必要になる。停電しても止まらない設備をどう設計するかは、この充電方式の理解が出発点になる。

冒頭の、非常灯が切替なしで点き続ける理由。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 浮動充電とトリクル充電を同じものとして混同させる

    なぜ引っかかるどちらも『微小電流を流し続けて満充電を保つ』という説明が似ているため区別しにくい

    見破り方浮動充電は蓄電池が負荷と常に並列につながった常用方式、トリクル充電は負荷から切り離して待機させている電池に対して行う方式、と『負荷とつながっているかどうか』で区別する

  2. 均等充電の要否をベント形と制御弁式で逆に覚えさせる

    なぜ引っかかる『均等充電=蓄電池全般に必要な作業』という括りで覚えると、形式による違いを見落としやすい

    見破り方ベント形は定期的に均等充電を行うが、制御弁式(VRLA)は原則不要、と形式ごとに対応づけて覚える

  3. 回復充電と均等充電を、どちらも『高めの電圧で充電する』という共通点で混同させる

    なぜ引っかかるどちらも通常の浮動充電より充電装置の出力電圧を上げて行う充電のため、名前を入れ替えた選択肢を並べられると区別がつきにくい

    見破り方きっかけで区別する。回復充電は『停電で放電した後』に容量を満充電まで戻すための充電、均等充電は『放電していなくても定期的に』セル間の電圧・比重のばらつきをそろえるための充電。放電の後始末か、定期的なそろえ直しか、で見分ける

  4. 非常用照明は停電の瞬間から蓄電池が充電を開始して点灯すると誤答させる

    なぜ引っかかる『非常用』という言葉から、停電をきっかけに何かが起動するイメージを持ちやすい

    見破り方浮動充電では蓄電池は停電前からすでに満充電の状態で負荷と並列につながっている。停電時に新しく充電や起動が始まるわけではなく、そのまま電力供給を引き継ぐだけだと確認する

  5. 直流電源装置の用途を非常用照明だけに限定して覚えさせる

    なぜ引っかかる『非常電源』という言葉のイメージから防災用途だけを思い浮かべやすい

    見破り方直流電源装置は、遮断器の投入・引外し操作や保護継電器・表示灯の電源としても使われる。停電時でも遮断器を操作できるようにするための電源だという役割も合わせて確認する

参考文献・出典

理解度チェック(6問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、6問で確認しよう。 内訳は基本3問・応用2問・ひっかけ1問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 6 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 浮動充電(フローティング)は、整流器(充電装置)・蓄電池・負荷を並列に接続し、蓄電池を常に満充電状態に保ちながら、停電時には無瞬断で蓄電池から負荷へ電力を供給する常用方式
  2. 均等充電は、多数のセルを直列・並列で使うことで生じる電圧・比重のばらつきを、通常より高めの電圧で一定時間充電して解消する方式。ベント形は定期的に実施するが、制御弁式は原則不要
  3. トリクル充電は、負荷から切り離して待機させている蓄電池の自己放電を補う充電で、負荷と常に並列につながる浮動充電とは対象が異なる
  4. 回復充電は、停電などで放電した後の蓄電池を、充電装置の出力電圧を上げ充電電流を大きくして満充電まで戻す充電。容量が回復したら浮動充電に戻る
  5. 自家用電気工作物における直流電源装置は、受変電設備の遮断器の投入・引外し操作や保護継電器・表示灯の電源、非常用照明・誘導灯の防災電源、UPSの蓄電池、非常用発電機の始動用など幅広い用途を持つ
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