高圧ケーブルの断面を輪切りにすると、絶縁体の内側と外側に「半導電層」という黒い層が1つずつ、合計2つ入っている。電気を通しにくくするための絶縁体のすぐそばに、わざわざ半分電気を通す層を入れるのはなぜか。
見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、この2つの黒い層が何を守っているかを説明できるようになっている。
高圧受電設備で使われるCVケーブル(6600V架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル)は、内側から外側に向かって、いくつもの層が同心円状に重なっている。
導体は円形圧縮より線の銅導体。その外側の内部半導電層は、導体表面の凹凸をならし、導体と絶縁体を隙間なく密着させて電界を均一化し、部分放電を防ぐ層だ。さらに外側の絶縁体(架橋ポリエチレン、導体最高許容温度90℃)を挟んで、外部半導電層が絶縁体と遮へい層を密着させ、絶縁体外周の電界を均一化する。
そのさらに外側のしゃへい層(遮へい銅テープ)は接地され、表面を零電位に保つことで電界をケーブル内部に閉じ込める。地絡電流の帰路にもなり、ZCT(零相変流器)による地絡検出を可能にしている。一番外側のシース(ビニル、標準色は黒)は、外傷・湿気・薬品からケーブルを保護する層で、絶縁そのものを担う層ではない。
3心をまとめる3心一括形では、この構造に加えて介在・押さえテープが3心を丸く成形している。これに対してCVTは、単心のCVを3本より合わせたトリプレックス形だ。各心が独立しているため放熱に有利とされ、カタログの数値でもそれが裏づけられる。同一断面積100mm2・周囲温度40℃の条件で、3心一括形の許容電流265Aに対しCVTは310Aと大きく、概算質量も3心一括4330kg/kmに対しCVT4180kg/kmと軽い。関連規格はJIS C 3606。
断面写真でCVTと3心一括形を見分ける — 決め手は「共通シースの有無」
配線図の写真鑑別問題では、この2つの断面図が並んで出題され、選択肢を間違えることがある。決め手は1点だけ、共通のシース(外被)があるかないかだ。
CVTは、完成した単心のCVケーブルを3本より合わせただけのもので、3本をまとめて包む共通のシースを持たない。介在物もない。だから断面は3つの円が三つ葉(クローバー)状に接した形になり、外周そのものが円ではない。これに対してCV3心は、3本の絶縁線心を介在物とともに1本にまとめ、共通のビニルシースで覆っているため、断面の外周は1つのきれいな円になる。「まとまっているほうが頑丈そう」という見た目の印象ではなく、共通シースがあるかないか――この1点だけで見分ける。
CVTの各心が「完成した単心のCVケーブル」だという点も、断面の見分けを裏づけている。CVTを構成する1本1本は、導体・絶縁体・遮へい・シースまでを備えた単心CVケーブルそのもので、それぞれが独立して仕上がった状態で3本より合わされている。CV3心のように3心をまとめて包む共通シースが存在しないのは、そもそも各心がすでに個別に完成しているからだ。
遮へい銅テープは「1心ごと」— そして600VのCVTには、そもそも無い
断面図の問題でもう1つ確定させておきたいのが、遮へい銅テープの巻かれ方だ。3心一括形の断面を見ると、3心をまとめて銅テープで巻いてありそうに思えるが、そうではない。メーカーカタログの構造図が示すとおり、導体→内部半導電層→絶縁体→外部半導電層→しゃへい層(遮へい銅テープ)という積み重ねは1心ごとに完結していて、その外側に介在物・押えテープ・共通シースが重なる。3心をまとめて一括で巻く遮へい層は無い。CVTの各心が「完成した単心CV」である以上、銅テープまで各心が自前で持っているのは当然で、3心一括形もこの点では同じ作りになっている。
そしてもう1つ、実戦で取り違えやすいのが600Vの低圧CVTだ。CVTという略称は、6600Vの高圧ケーブルだけでなく、低圧幹線に使う600Vケーブルにも使われる。600V CVTは、導体(円形圧縮より線)→架橋ポリエチレン絶縁体→ビニルシースという3層だけの単心ケーブルを3本より合わせたトリプレックス形で、半導電層も遮へい銅テープも持たない。
なぜ低圧には無いのか。半導電層と遮へいは「高圧だから付く飾り」ではなく、絶縁体にかかる電界が強いから要る構造だ。6600Vでは、絶縁体の内外面のわずかな凹凸に電界が集中して部分放電の起点になるため、密着の下地(半導電層)と、電界をケーブル内部に閉じ込める接地層(遮へい銅テープ)が欠かせない。600Vでは絶縁体にかかる電界がそこまで強くないので、この2種類の層はそもそも必要がない。「電界が強いから層が要る」という順序で覚えておけば、低圧に半導電層を探すことも、高圧の断面を低圧の設問に持ち込むこともなくなる。
断面図で高圧CVTと低圧CVTを見分ける決め手は、三つ葉かどうかではない——どちらも単心3本のより合わせで三つ葉になる。見るのは各心の層の数だ。絶縁体の内外に黒い層(半導電層)があり、銅の層(遮へい銅テープ)が見えれば高圧用。導体・絶縁体・シースの3層だけなら600Vの低圧用。黒い層と銅の層があるかどうか、この1点で決まる。
シールドの接地線は、ZCTの「どちら側」を通すか
高圧ケーブルの遮へい層(シールド)は接地するが、その接地線をZCTのどちら側から取るかで、 地絡が検出できるかどうかが変わる。図の4択で問われるのはここだ。
考え方は1つだけ。ZCTは、窓を貫通する電流のベクトル和を見ている。 正常時は3線の和がゼロで、地絡が起きるとその分だけ和が崩れる——これがZCTの原理だった。
問題は、シールドに流れる電流の扱いだ。地絡電流はシールドを通って接地へ抜けるので、 接地線をZCTの窓の外に出したままにすると、地絡電流の一部がZCTを通らず、検出できない (またはシールドの静電容量電流で誤動作する)。
こうすると、シールドを流れて戻ってきた電流がZCTの中で往復し、打ち消し合って和がゼロになる。 結果、ZCTが見るのは本当の地絡電流だけになる。
図を4つ並べられたら、見るのは1点。シールドの接地線が、ZCTの窓を通っているかだ。 通っていない図、あるいは通す向きが逆の図は、地絡を正しく検出できない。
CT3個を複線図に開くと、二次側は1点で接地する
単線結線図では1本の線に3個のCTがまとめて描かれるが、複線図に開くと各CTの二次巻線(k-l)が それぞれ計器・継電器につながる。ここで必ず問われるのが、接地をどこに施すかだ。
答えは、二次回路の1点だけをD種接地する。CT1個ごとに接地するのではない。
理由は2つある。1つは、複数点で接地すると接地線を通る循環電流の経路ができてしまい、 測定値が狂うため。もう1つは、二次回路を大地から浮かせたままだと、一次側との間の 静電容量を通じて二次側の電位が上がり、危険だからだ。1点だけ落とすのが、 測定の正確さと安全の両方を満たす形になる。
なお接地種別は、計器用変成器のトピック で扱ったとおり、二次側電路はD種、機器の金属製外箱はA種(電技解釈第28条・第29条)。 複線図の問題では、k側とl側のどちらに接地記号が付いているかまで描き分けられることがあるが、 問われている本質は「1点接地になっているか」だ。接地記号が2つ以上ある図は、その時点で誤り。
ケーブルの断面図が、事故を防ぐ設計図に見えてくる
この層構造が頭に入ると、キュービクルの中で処理されたケーブルの端末を見たときに、「なぜここまで丁寧に段むきにしているのか」が理由つきで分かるようになる。半導電層を削り残せば電界集中の原因になり、遮へい銅テープの接地を忘れれば地絡検出そのものが働かなくなる。
この構造が標準化されているのは、電界集中による絶縁破壊事故が、目に見えない場所で静かに進行する劣化だからだ。層を1つ増やすたびに、過去のケーブル事故の記録に対する答えが積み重なっている。
高圧ケーブルは、太陽光発電所や大型施設への高圧引込、EV充電設備の高圧連系など、これから増えていく高圧設備をつなぐ基本部材でもある。この断面構造を理解していることが、そうした工事の土台になる。
冒頭の「なぜ半導電層が2つも入っているのか」。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。