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電気に関する基礎理論 ・ 1 / 10

静電気とコンデンサ ― クーロンの法則から合成静電容量まで

読み終えると、こうなる

電源を切った直後の高圧盤やコンデンサに、電圧計がゼロを示していてもすぐには手を触れるべきではない理由が言えるようになる

  • 直列につながれた2つのコンデンサのうち、どちらが高い電圧を受け持つかを容量の値だけで言い当てられる
  • 合成静電容量を求めるとき、抵抗の直列・並列の公式をそのまま流用しない検算ができる
  • コンデンサに残る電荷とエネルギーをW=½CV²から見積もり、電源を切った後も危険が残る量として説明できる
考えてみよう

工場の電気室で、停電作業のために主幹遮断器を切った。テスターを当てると、電圧はきれいにゼロを示している。もう安全なはずだ。

ところが壁際に並ぶ高圧進相コンデンサ盤のケーブルに、軍手をした新人がうっかり触れた瞬間、パチッという放電を感じて飛び上がった。電圧計はゼロだったのに、なぜ電気が残っていたのか。

見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、電源を切ったはずの機器に電気が残る理由を、式で説明できるようになっている。

これまでの基礎理論では、電流・電圧・抵抗という「流れる電気」を扱ってきた。ここからは、流れずに「溜まる電気」——静電気とコンデンサを見ていく。二種電気工事士の基礎理論には、この章がまるごと存在しない。

すべての出発点は、2つの電荷の間に働く力だ。クーロンの法則は、電荷Q1・Q2の間に距離rだけ離れて働く力を、次の式で表す。

F = Q1・Q2 / (4πε0・r²)

電荷の積に比例し、距離の2乗に反比例する。距離を2倍にすると力は4分の1、3倍にすると9分の1——万有引力の法則とまったく同じ形をしている。

クーロンの法則(電荷どうしの力) Q1 Q2 距離 r F = Q1・Q2 ÷ (4πε0・r²) rを2倍にすると、Fは4分の1になる 力は電荷の積に比例し、距離の2乗に反比例する

この力を利用して電荷を蓄える部品がコンデンサだ。2枚の金属板(極板)を向かい合わせただけの単純な構造で、静電容量Cは次の式で決まる。

C = ε・A / d(ε: 誘電率、A: 極板の面積、d: 極板の間隔)

面積が広いほど、間隔が狭いほど、たくさんの電荷を蓄えられる。

「静電容量」と「電界の強さ」は別の量

ここで、混同しやすい2つの量を切り分けておく。静電容量Cは「どれだけ電荷を蓄えられるか」という器の性質で、極板の面積と間隔という形だけで決まる。一方、電圧のかかった極板の間の空間には電界ができており、その強さEは次の式で表される。

E = V / d(V: 極板間の電圧、d: 極板の間隔)

どちらも「dが分母にある式」だが、意味はまったく違う。Cは器の大きさ、Eは器の中の空間にかかっている電気的な圧力の強さだ。

この違いが正面から試されるのが、「充電したコンデンサの極板を引き離したら、電界はどうなるか」という問題だ。答えは、引き離すときの条件によって変わる。

  • 電源から切り離して、電荷Qを保ったまま間隔を広げる場合。Cは小さくなるが、極板上の電荷はどこにも逃げられない。電界はE=Q/(εA)という電荷と面積だけで決まる値のままなので、Eは変わらない。そのかわり電圧V=Edが間隔に比例して上がっていく。
  • 電源につないだまま、電圧Vを保って間隔を広げる場合。E=V/dの分母だけが大きくなるのでEは弱くなる。電荷もQ=CVでCとともに減っていき、減った分は電源側へ戻っていく。

同じ「引き離す」という操作なのに、電界が変わらない場合と弱くなる場合がある。だから、間隔を変える問題では「何が一定に保たれているか(電荷か、電圧か)」を最初に確認する——これがこの型の問題を解く唯一の分岐点になる。

コンデンサの直列・並列 ― 抵抗とちょうど逆になる

複数のコンデンサをつないだときの合成静電容量は、抵抗の公式とちょうど逆の形になる。

  • 並列接続: C = C1 + C2(そのまま足し算)
  • 直列接続: C = C1・C2 / (C1 + C2)(和分の積)

抵抗は並列で和分の積、直列で足し算だったのに、コンデンサは並列で足し算、直列で和分の積。覚え方に迷ったら、直列につなぐことは物理的に極板の間隔dを広げることと同じだと考えるといい。C=εA/dのdが大きくなれば、Cは小さくなる方向に動く。

コンデンサを直列につなぐと、各コンデンサに蓄えられる電荷Qは共通の値になる(電荷保存則)。そして電圧はV=Q/Cという式で決まる。分母にCがあるということは、**静電容量が小さいコンデンサほど、高い電圧を受け持つ**ということだ。抵抗の直列では抵抗値が大きいほうが電圧を多く受け持つのに、コンデンサでは逆——大きい方が高電圧、という抵抗の感覚をそのまま持ち込むと、答えを反対に選んでしまう。

たとえば2μFと4μFのコンデンサを直列にして100Vの電源につなぐと、合成静電容量は1.33μF、蓄えられる電荷は約133μC。この電荷はどちらのコンデンサにも共通なので、2μF側の電圧は133μC÷2μF≒66.7V、4μF側は133μC÷4μF≒33.3V。容量が小さい2μF側のほうが、高い電圧を受け持っている。

ここでもし、直列なのに並列の公式を誤って使ってしまったらどうなるか。C=C1+C2=6μFという間違った合成容量で計算すると、蓄えられる電荷はQ=6μF×100V=600μCという実際(133μC)の4倍以上の値になってしまう。その結果、各コンデンサにかかる電圧の見積もりも大きく狂う——2μF側は「600μC÷2μF=300V」という、実際の66.7Vを大幅に超えた誤った数値が出てくる。設計の現場でこの取り違えが起きると、実際にはもっと低い電圧しかかからないところに耐圧の高い(そして高価な)コンデンサを選んでしまったり、逆に直列だと思い込んで並列回路に低耐圧品を使い、実際の電圧配分を見誤って絶縁破壊を招いたりする。式の向きを間違えることは、計算問題を落とすだけでなく、実際の部品選定を誤らせる方向に直結している。

電源を切っても消えないエネルギー

コンデンサに蓄えられるエネルギーは、次の式で表される。

W = ½CV² = ½QV

対になる式が、コイル側にもある

試験では、コンデンサとコイルの両方にどれだけエネルギーが蓄わるかを、1問の中で 同時に問われることがある。だから片方だけ覚えていると、その問題は解けない。

素子蓄えるエネルギー何で決まるか
コンデンサ(静電容量 C〔F〕)W = ½CV² 〔J〕かかっている電圧 V
コイル(インダクタンス L〔H〕)W = ½LI² 〔J〕流れている電流 I

形はそっくりで、C↔L、V↔I が入れ替わっているだけだ。覚え方も1つで済む。

なぜこう対応するかは、それぞれが何を蓄えているかを見れば分かる。 コンデンサは電極間の電界にエネルギーを蓄える。電界を作るのは電圧なので、式に V が入る。 コイルは周囲の磁界に蓄える。磁界を作るのは電流なので、式に I が入る。

直流回路が定常状態になったとき、**コンデンサには電流が流れず(開放と同じ)、コイルには 電圧がかからない(短絡と同じ)**。だから直流回路でこの2つのエネルギーを問われたら、 まず「コンデンサは開放、コイルは短絡」として回路を解き直し、 **コンデンサの両端電圧 V** と **コイルを流れる電流 I** を求めてから、 それぞれ ½CV²・½LI² に入れる。この順序を固定しておけば迷わない。

なぜ「½」が付くのか。コンデンサに電荷を蓄えていく過程を考えると分かる。電荷がゼロの状態からVボルトまで充電する間、コンデンサの電圧は0からVへ徐々に上がっていく。電荷を運び込む仕事は、そのときどきの電圧×運んだ電荷の微小量の積み重ねになるが、電圧が0からVまで一様に増えていくため、平均するとちょうどV/2の電圧のもとでQの電荷を運んだのと同じ仕事量になる。W=(V/2)×Q=½QVという形は、この「平均電圧」の考え方から出てくる。抵抗に電力を流し込むときのように最初から一定の電圧がかかり続けるのとは違い、コンデンサは充電が進むにつれて「効きにくく」なっていく——この違いが½という係数の正体だ。

この式には「時間」がどこにも入っていないということも大事な点だ。抵抗に電流が流れるときは、電圧をかけ続けている間だけ仕事(電力)が発生し、電源を切った瞬間に止まる。ところがコンデンサは、蓄えた電荷とエネルギーを、回路が切り離された後も保持し続ける。たとえば静電容量10μF、充電電圧200Vのコンデンサなら、W=½×10×10⁻⁶×200²=0.2J、電荷はQ=CV=10×10⁻⁶×200=2×10⁻³C(2mC)がそのまま蓄えられたままになる。電源を切っても、この電荷とエネルギーを消し去る要素は回路のどこにもない。

冒頭の高圧進相コンデンサも、まさにこの性質を持つ部品だ。主幹遮断器を切って電源からは切り離されても、コンデンサ自身の中に残っていた電荷は、放電経路が用意されない限りそこにとどまる。電圧計がゼロを示すのは「回路の外側の電圧」であって、コンデンサの内部に電荷が残っていないことを保証するものではない。

街の充電池も、同じ式で動いている

コンデンサは高圧設備の中だけの部品ではない。スマートフォンのタッチパネルも、フラッシュのコンデンサも、原理はすべてC=εA/dとW=½CV²だ。今日試せることとして、身近な電子機器の分解記事や仕様書に「コンデンサ」という部品名が出てきたら、それが何かを一時的に「貯める」ための部品だと意識してみてほしい。抵抗が電気を消費するのに対し、コンデンサは電気を貯めて後で返す——この違いが分かると、電子回路の見え方が変わってくる。

高圧受電設備の現場では、進相コンデンサに触れる前に必ず放電を確認する手順が徹底されている。それは「感電しました」で済む話ではなく、蓄えられたエネルギーが人体を通り抜けるかどうかの問題だからだ。この科目で静電気とコンデンサの計算を学ぶ意味は、単に試験に受かるためではなく、目に見えない「溜まった電気」の存在を数式として扱えるようになる、というところにある。

冒頭の新人が感じた放電、その電荷とエネルギーがどこから来たのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 合成静電容量の並列・直列の公式を、抵抗の公式とそのまま同じ形だと思い込む

    なぜ引っかかる抵抗は並列で和分の積、直列で足し算になるのに対し、コンデンサはちょうど逆(並列で足し算、直列で和分の積)になる。似た形の公式を2種類覚えていると、試験の緊張下で取り違えやすい

    見破り方『抵抗と逆』という1点だけを覚える。もしくは、コンデンサを直列につなぐことは実質的に極板間隔dを広げることと同じだと考える。dが大きくなればC=εA/dは小さくなるので、直列にするほど合成容量は小さくなる方向だと物理的に判断できる

  2. 直列コンデンサの電圧配分で、抵抗と同じ『容量が大きいほうが電圧を多く受け持つ』と錯覚させる

    なぜ引っかかる抵抗の直列では抵抗値が大きいほうが電圧を多く受け持つ。この直感をそのままコンデンサに当てはめると、容量が大きいほうが高電圧だと考えてしまうが、実際はV=Q/Cで電荷Qが共通なので、容量が小さいほうが高い電圧を受け持つ

    見破り方電荷Qが共通という前提を最初に確認する。V=Q/Cの形を見れば、Cが分母にあるので容量が小さいほどVが大きくなるのは式の形からも明らか。抵抗の直列(V=IR、Rが分子)と式の形が逆であることを意識する

  3. クーロンの力を、距離に反比例する(電圧降下と同じ感覚)と勘違いさせる

    なぜ引っかかる電線の抵抗や電圧降下は距離に比例して増える感覚に慣れているため、クーロンの力も距離に比例・反比例するだけだと早合点しやすい。実際は距離の2乗に反比例するので、距離を2倍にすると力は4分の1になる

    見破り方分母がr²であることを式の形で確認する。距離を2倍・3倍にしたときに力が4分の1・9分の1になるという『2乗』の感覚を、万有引力の法則と同じ形として覚えておくと混同しにくい

  4. 極板間隔を広げると、電界の強さEも静電容量Cと同じように必ず小さくなると思わせる

    なぜ引っかかるC=εA/dの『間隔に反比例』という印象が強いため、電界の強さも同じ動きをすると早合点しやすい。実際は、電源につないだまま(電圧V一定)ならE=V/dで弱くなるが、電源から切り離して電荷Qを保ったまま広げるとE=Q/(εA)となりdに無関係で、Eは変わらない

    見破り方間隔を変える前に『何が一定に保たれているか』を確認する。電源につながったままなら電圧が一定(E=V/dでdに反比例して減る)、切り離されていれば電荷が一定(Eは変わらず、V=Edがdに比例して増える)と、一定に保たれている量から式を選ぶ

参考文献・出典

理解度チェック(7問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、7問で確認しよう。 内訳は基本4問・応用2問・ひっかけ1問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 7 問正解

覚えておきたいポイント

  1. クーロンの法則: 2つの電荷の間に働く力F=Q1Q2/(4πε0r²)。電荷の積に比例し、距離の2乗に反比例する
  2. 平行板コンデンサの静電容量C=εA/d。極板の面積に比例し、間隔に反比例する。極板間の電界の強さはE=V/dで、静電容量とは別の量
  3. 合成静電容量は抵抗と逆になる: 並列はC1+C2の足し算、直列はC1C2/(C1+C2)の和分の積
  4. 直列接続では各コンデンサの電荷Qが等しく、電圧はV=Q/Cで静電容量に反比例して配分される
  5. 静電エネルギーW=½CV²=½QV。コンデンサは電源を切っても電荷を保持し続ける
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