電柱の上を走る高圧線は、道路をまたぐ区間では見上げるほど高い位置を保っている。ところが同じ電線をたどっていくと、建物の壁際に近い引込口の付近では、驚くほど低い位置まで下がっている箇所がある。同じ高圧の電線なのに、なぜ場所によってここまで高さが違ってよいのか。
見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、この高さの違いを条文の「ただし書」として説明できるようになっている。
高圧の電気を電柱から建物まで引き込む工事を高圧引込工事という。まず、引込線に使える電線には3つの選択肢がある(第117条第1項第一号)。
- 引張強さ8.01kN以上又は直径5mm以上の硬銅線を使った高圧絶縁電線・特別高圧絶縁電線
- 引下げ用高圧絶縁電線
- ケーブル
絶縁電線を使う場合はがいし引き工事、ケーブルを使う場合はちょう架用線に支持する施設とする。
高さについては、原則として第68条の基準に従う。道路横断は地表上6m以上、鉄道横断は5.5m以上、それ以外の場所は5m以上だ。電柱の上の高圧線がどこでも見上げるほど高い位置にあるのは、この原則があるからだ。
表68-1は6行ある — 覚えるべきは3つではない
「6m・5.5m・5m」の3つだけを覚えていると、残りの3行で落ちる。68-1表は全部で6区分あり、 試験ではむしろ覚えられていない側が問われる。
| 区分 | 高さ |
|---|---|
| 道路を横断(車両の往来がまれなもの・歩行専用部分を除く) | 路面上 6m |
| 鉄道・軌道を横断 | レール面上 5.5m |
| 低圧架空電線を横断歩道橋の上に施設 | 横断歩道橋の路面上 3m |
| 高圧架空電線を横断歩道橋の上に施設 | 横断歩道橋の路面上 3.5m |
| 屋外照明用で、絶縁電線またはケーブルを使用した対地電圧150V以下のものを、交通に支障のないように施設 | 地表上 4m |
| 上記以外:低圧を道路以外の場所に施設 | 地表上 4m |
| 上記以外:その他 | 地表上 5m |
低圧3m/高圧3.5mと、高圧のほうが0.5m高い。危険度が高いほど遠ざける、という素直な並びだ。
屋外照明用の4mにも条件が3つ付いている。①屋外照明用であること ②絶縁電線またはケーブルを 使用していること ③対地電圧150V以下であること——そして交通に支障のないように施設すること。 「屋外照明だから4mでよい」と条件を1つに縮めると、裸電線や対地電圧200Vの選択肢に引っかかる。
この緩和を軽く見ると、施工でつまずく。道路横断の区間と引込口付近の区間は、同じ1本の電線でも守るべき高さの基準が違う。引込口側の緩和後の値(3.5m以上)だけを覚えて、道路をまたぐ区間にまでその低い基準を当てはめてしまうと、道路上の車両や通行人との接触事故につながりかねない高さで電線を張ってしまう。逆に、引込口付近まで律儀に道路横断と同じ高さ(6m以上)を維持しようとすると、電柱から建物までの引込線の勾配が急になりすぎ、施工上無理な張り方になることもある。区間ごとに適用される基準が違うことを前提に、電線の経路全体を見て高さを設計する必要がある。
ケーブルを吊るす、もう1本の線 — ちょう架用線
冒頭で「ケーブルを使う場合はちょう架用線に支持する施設とする」と書いた。この「ちょう架用線」の正体にも触れておきたい。ケーブルは絶縁電線と違って外装まで含めた自重が大きく、ケーブル自身に張力を受け持たせて空中に張ることを想定していない。そこで、張力を受け持つ専用の金属線を電柱間に張り、ケーブルはそこにぶら下げる。この「ケーブルをちょう架する金属線」がちょう架用線だ(第1条第十九号)。
支持の方法として代表的なのがハンガー方式で、高圧架空電線をハンガーによりちょう架用線に支持して施設する場合、ハンガーの間隔は50cm以下と定められている(第67条)。吊り金具の間隔を狭くとることで、ケーブルの重さが一点に集中してたわみや被覆の損傷を招くことを防ぐ。この50cmという数値は高圧の場合の規定である点も、あわせて押さえておきたい。
ちょう架用線そのものにも条件がある。引張強さ5.93kN以上のもの、又は断面積22mm2以上の亜鉛めっき鉄より線であること。ケーブルの重さを一手に引き受ける線だから、強度で規定されている。さらに、ちょう架用線及びケーブル被覆の金属体にはD種接地工事を施す(低圧で絶縁電線等を使う場合は省略できる)。空中を長く走る金属線である以上、万一ケーブルの絶縁に損傷があったとき、その金属線が充電されたまま放置されないようにするためだ。
高圧のちょう架用線には安全率の規定もある。硬銅線・耐熱銅合金線は2.2、その他の金属線は2.5(第67条)。試験でよく問われる亜鉛めっき鉄より線は「その他」側なので2.5だ。ハンガー間隔50cm以下・D種接地・安全率2.5(亜鉛めっき鉄より線)——この3点セットが、高圧引込ケーブルの空中区間を支える決まりごとになる。
地中で引き込む場合は、第120条の地中電線路の規定がそのまま適用される。ケーブル使用が前提で、管路式・暗きょ式・直接埋設式のいずれかを選ぶ。高圧地中電線路には、物件名称・管理者名・電圧をおおむね2m間隔で表示することが求められる。ただし需要場所に施設する場合は、条文が名称と管理者名を明示的に除いているので表示は電圧だけになり、さらに長さ15m以下のものはこの表示自体を省略できる。短い引込区間まで律儀に2m間隔の表示を求めると現実的でないための緩和だ。
電線の高さから、その区間がどんな条件を満たしているかを読み取れるようになる
この緩和の仕組みが頭に入ると、街で見かける高圧線の高さの違いが、単なる施工のばらつきではなく、条文が定めた条件の反映に見えてくる。今日試せることとして、自宅や職場の近くで高圧引込線を見かけたら、電線の下に「高圧危険」などの表示板がぶら下がっていないかを探してみるといい。表示があれば、そこが道路横断等に当たらず高さを下げている区間だと推測できる。
高さの原則と緩和が両方用意されているのは、安全の確保と実際の施工のしやすさを両立させるためだ。道路や鉄道の上では絶対的な高さを確保する一方、そこと交差しない区間であることを条件に、現実的な高さまで下げられる(電線がケーブル以外なら、その下方に危険である旨の表示を添える)。第一種電気工事士が高圧引込工事に関わるとき、この「原則と条件付き緩和」の構造を理解しているかどうかが、施工計画の柔軟さを左右する。
冒頭の低い位置の高圧線、どんな条件を満たしていたから許されていたのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。