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電気工事の施工方法 ・ 2 / 11

高圧引込工事 — 電線の高さが場所によって変わる理由

読み終えると、こうなる

電柱の上の高圧線が道路をまたぐ場所では高い位置にあるのに、建物の壁際に近づくとぐっと低くなっている場所がある理由を、条文の『ただし書』として説明できるようになる

  • 高圧架空引込線に使える電線を、絶縁電線・引下げ用高圧絶縁電線・ケーブルの3択で仕分けられる
  • 引込線の高さを3.5mまで下げられる条件(道路横断等に当たらないこと。ケーブル以外なら加えて危険表示)を、条文の構造どおりに切り分けられる
  • 需要場所の高圧地中電線路について、長さが15m以下なら物件表示を省略できることを説明できる
  • 架空ケーブルを支えるちょう架用線について、ハンガー間隔50cm以下・D種接地・安全率(亜鉛めっき鉄より線なら2.5)の3点を挙げられる
考えてみよう

電柱の上を走る高圧線は、道路をまたぐ区間では見上げるほど高い位置を保っている。ところが同じ電線をたどっていくと、建物の壁際に近い引込口の付近では、驚くほど低い位置まで下がっている箇所がある。同じ高圧の電線なのに、なぜ場所によってここまで高さが違ってよいのか。

見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、この高さの違いを条文の「ただし書」として説明できるようになっている。

高圧の電気を電柱から建物まで引き込む工事を高圧引込工事という。まず、引込線に使える電線には3つの選択肢がある(第117条第1項第一号)。

  • 引張強さ8.01kN以上又は直径5mm以上の硬銅線を使った高圧絶縁電線・特別高圧絶縁電線
  • 引下げ用高圧絶縁電線
  • ケーブル

絶縁電線を使う場合はがいし引き工事、ケーブルを使う場合はちょう架用線に支持する施設とする。

高さについては、原則として第68条の基準に従う。道路横断は地表上6m以上、鉄道横断は5.5m以上、それ以外の場所は5m以上だ。電柱の上の高圧線がどこでも見上げるほど高い位置にあるのは、この原則があるからだ。

表68-1は6行ある — 覚えるべきは3つではない

「6m・5.5m・5m」の3つだけを覚えていると、残りの3行で落ちる。68-1表は全部で6区分あり、 試験ではむしろ覚えられていない側が問われる。

区分高さ
道路を横断(車両の往来がまれなもの・歩行専用部分を除く)路面上 6m
鉄道・軌道を横断レール面上 5.5m
低圧架空電線を横断歩道橋の上に施設横断歩道橋の路面上 3m
高圧架空電線を横断歩道橋の上に施設横断歩道橋の路面上 3.5m
屋外照明用で、絶縁電線またはケーブルを使用した対地電圧150V以下のものを、交通に支障のないように施設地表上 4m
上記以外:低圧を道路以外の場所に施設地表上 4m
上記以外:その他地表上 5m
横断歩道橋の**3m・3.5m**は、6区分の中で**飛び抜けて低い**。なぜ低くてよいかというと、 横断歩道橋の上を通るのは**人だけ**で、トラックの荷台が来ないからだ。 第1条の用語定義でも「**道路**」は「公道又は私道(**横断歩道橋を除く**)」とされていて、 横断歩道橋はそもそも道路ではない。だから「道路横断だから6m」を当てはめると外す。

低圧3m/高圧3.5mと、高圧のほうが0.5m高い。危険度が高いほど遠ざける、という素直な並びだ。

屋外照明用の4mにも条件が3つ付いている。①屋外照明用であること ②絶縁電線またはケーブルを 使用していること ③対地電圧150V以下であること——そして交通に支障のないように施設すること。 「屋外照明だから4mでよい」と条件を1つに縮めると、裸電線や対地電圧200Vの選択肢に引っかかる。

同じ高圧線でも、道路の上と引込口付近で高さの基準が違う 道路 電柱 建物(引込口) 6m以上 3.5m以上 危険表示 道路をまたぐ区間は第68条の原則(6m以上)を保つ。道路横断等に当たらない引込口付近は、3.5m以上まで下げられる(ケーブル以外の電線なら、加えて下方に危険表示。第117条ただし書)
ところが第117条には、この原則を緩和するただし書がある。条件は**道路横断・鉄道横断・横断歩道橋の上のいずれでもないこと**(イ)——これだけだ。これを満たせば、地表上3.5m以上まで下げてよい。**電線がケーブル以外のもの**であるときにだけ、加えて電線の下方に危険である旨の表示が要る(ロ)。裏を返せば、**ケーブルなら表示なしで下げられる**。「高圧だから常に高い位置」ではなく、「道路や鉄道と交差しない区間なら下げてよい」という場所で決まる緩和だ。引込口付近で電線が低くなっている箇所は、たいていこの条件を満たしている。

この緩和を軽く見ると、施工でつまずく。道路横断の区間と引込口付近の区間は、同じ1本の電線でも守るべき高さの基準が違う。引込口側の緩和後の値(3.5m以上)だけを覚えて、道路をまたぐ区間にまでその低い基準を当てはめてしまうと、道路上の車両や通行人との接触事故につながりかねない高さで電線を張ってしまう。逆に、引込口付近まで律儀に道路横断と同じ高さ(6m以上)を維持しようとすると、電柱から建物までの引込線の勾配が急になりすぎ、施工上無理な張り方になることもある。区間ごとに適用される基準が違うことを前提に、電線の経路全体を見て高さを設計する必要がある。

ケーブルを吊るす、もう1本の線 — ちょう架用線

冒頭で「ケーブルを使う場合はちょう架用線に支持する施設とする」と書いた。この「ちょう架用線」の正体にも触れておきたい。ケーブルは絶縁電線と違って外装まで含めた自重が大きく、ケーブル自身に張力を受け持たせて空中に張ることを想定していない。そこで、張力を受け持つ専用の金属線を電柱間に張り、ケーブルはそこにぶら下げる。この「ケーブルをちょう架する金属線」がちょう架用線だ(第1条第十九号)。

支持の方法として代表的なのがハンガー方式で、高圧架空電線をハンガーによりちょう架用線に支持して施設する場合、ハンガーの間隔は50cm以下と定められている(第67条)。吊り金具の間隔を狭くとることで、ケーブルの重さが一点に集中してたわみや被覆の損傷を招くことを防ぐ。この50cmという数値は高圧の場合の規定である点も、あわせて押さえておきたい。

ちょう架用線そのものにも条件がある。引張強さ5.93kN以上のもの、又は断面積22mm2以上の亜鉛めっき鉄より線であること。ケーブルの重さを一手に引き受ける線だから、強度で規定されている。さらに、ちょう架用線及びケーブル被覆の金属体にはD種接地工事を施す(低圧で絶縁電線等を使う場合は省略できる)。空中を長く走る金属線である以上、万一ケーブルの絶縁に損傷があったとき、その金属線が充電されたまま放置されないようにするためだ。

高圧のちょう架用線には安全率の規定もある。硬銅線・耐熱銅合金線は2.2、その他の金属線は2.5(第67条)。試験でよく問われる亜鉛めっき鉄より線は「その他」側なので2.5だ。ハンガー間隔50cm以下・D種接地・安全率2.5(亜鉛めっき鉄より線)——この3点セットが、高圧引込ケーブルの空中区間を支える決まりごとになる。

地中で引き込む場合は、第120条の地中電線路の規定がそのまま適用される。ケーブル使用が前提で、管路式・暗きょ式・直接埋設式のいずれかを選ぶ。高圧地中電線路には、物件名称・管理者名・電圧をおおむね2m間隔で表示することが求められる。ただし需要場所に施設する場合は、条文が名称と管理者名を明示的に除いているので表示は電圧だけになり、さらに長さ15m以下のものはこの表示自体を省略できる。短い引込区間まで律儀に2m間隔の表示を求めると現実的でないための緩和だ。

電線の高さから、その区間がどんな条件を満たしているかを読み取れるようになる

この緩和の仕組みが頭に入ると、街で見かける高圧線の高さの違いが、単なる施工のばらつきではなく、条文が定めた条件の反映に見えてくる。今日試せることとして、自宅や職場の近くで高圧引込線を見かけたら、電線の下に「高圧危険」などの表示板がぶら下がっていないかを探してみるといい。表示があれば、そこが道路横断等に当たらず高さを下げている区間だと推測できる。

高さの原則と緩和が両方用意されているのは、安全の確保と実際の施工のしやすさを両立させるためだ。道路や鉄道の上では絶対的な高さを確保する一方、そこと交差しない区間であることを条件に、現実的な高さまで下げられる(電線がケーブル以外なら、その下方に危険である旨の表示を添える)。第一種電気工事士が高圧引込工事に関わるとき、この「原則と条件付き緩和」の構造を理解しているかどうかが、施工計画の柔軟さを左右する。

冒頭の低い位置の高圧線、どんな条件を満たしていたから許されていたのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 高さの緩和(3.5m)を、条件を確認せずどこにでも使えると思い込ませる

    なぜ引っかかる『高圧引込線は危険表示をすれば3.5mまで下げられる』という結論だけを覚えると、道路横断や鉄道横断のような場所でも同じように下げてよいと錯覚しやすい。実際には『道路横断等に当たらない』という条件を満たしたときだけの緩和で、危険表示はケーブル以外の電線を使う場合に追加で課される条件にすぎない

    見破り方3.5mを使う前に、その場所が道路横断・鉄道横断・横断歩道橋の上に当たっていないかを確かめる。電線の種類は緩和の可否そのものを左右しない。ケーブル以外のときだけ危険表示が追加で要る、という付随条件だと読む

  2. 地中電線路の『15m』を、埋設深さなど別の数値と混同させる

    なぜ引っかかる地中電線路には埋設深さ(1.2m・0.6m)や離隔距離(0.15m)など複数の数値が登場するため、『15m』が何を基準にした数値かを取り違えやすい。15mは需要場所の高圧地中電線路の長さの基準で、この長さ以下なら物件表示自体を省略できるという話

    見破り方数値が出てきたら『何の長さ・深さ・距離の話か』を単位と一緒に確認する。15mは『表示の省略』、1.2m・0.6mは『埋設深さ』、0.15mは『離隔距離』と、用途ごとに紐付けて覚える

  3. ちょう架用線の安全率を、素材を確認させずに1つの数値で答えさせる

    なぜ引っかかる高圧のちょう架用線の安全率は素材で分かれる(硬銅線・耐熱銅合金線は2.2、その他の金属線は2.5)。片方の数値だけ覚えていると、素材を入れ替えた選択肢に反応できない

    見破り方問題文の素材を先に確認する。試験頻出の亜鉛めっき鉄より線は『その他』側なので2.5。硬銅線・耐熱銅合金線と書かれていたときだけ2.2を使う

参考文献・出典

  • 電気設備の技術基準の解釈(経済産業省) (第117条(架空引込線等の施設)・第68条(低高圧架空電線の高さ)・第120条(地中電線路の施設)・第67条(低高圧架空電線路の架空ケーブルによる施設)・第1条第十九号(ちょう架用線の定義))

理解度チェック(7問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、7問で確認しよう。 内訳は基本4問・応用2問・ひっかけ1問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 7 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 高圧架空引込線の電線は、①引張強さ8.01kN以上又は直径5mm以上の硬銅線を使った高圧絶縁電線・特別高圧絶縁電線、②引下げ用高圧絶縁電線、③ケーブル、の3択(第117条第1項第一号)
  2. 絶縁電線を使う場合はがいし引き工事、ケーブルを使う場合はちょう架用線に支持する施設とする
  3. 引込線の高さは原則、第68条の基準(道路横断6m・鉄道横断5.5m・その他5m)に従う
  4. 3.5m以上への緩和の条件は「道路横断・鉄道横断・横断歩道橋の上のいずれでもないこと」の1つだけ。電線がケーブル以外のときに限り、加えて電線の下方に危険である旨の表示が要る(ケーブルなら表示なしで下げられる)(第117条第1項第四号ただし書)
  5. 高圧地中電線路には物件の名称・管理者名・電圧をおおむね2mの間隔で表示する。需要場所に施設する場合は名称と管理者名が外れて電圧だけになり、さらに長さ15m以下ならこの表示自体を省略できる(第120条第2項第二号)
  6. ケーブルをちょう架する金属線を『ちょう架用線』という(第1条第十九号)。高圧架空電線をハンガーでちょう架する場合、ハンガーの間隔は50cm以下(第67条)
  7. ちょう架用線は引張強さ5.93kN以上のもの又は断面積22mm2以上の亜鉛めっき鉄より線とし、ちょう架用線及びケーブル被覆の金属体にはD種接地工事を施す(低圧で絶縁電線等を使う場合は省略可)。高圧のちょう架用線の安全率は硬銅線・耐熱銅合金線2.2、その他2.5
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