ビルの機械室の天井裏を覗くと、高圧の配線と、その脇を通る低圧配線や弱電流電線(インターホンや監視カメラの配線など)が、少し間隔をあけて並んでいる。どちらも同じ天井裏の限られたスペースに収めているのに、なぜぴったり寄せて配線せず、わざわざすき間を確保しているのか。
見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、このすき間がどんな根拠に基づく数字なのかを説明できるようになっている。
高圧屋内配線に認められる工事は、低圧配線のように選択肢が多くない。がいし引き工事(乾燥した場所であって展開した場所に限る、かつ接触防護措置を施すこと)と、ケーブル工事の2種類だけに絞られている(第168条)。金属管工事や合成樹脂管工事のような低圧でおなじみの選択肢は、高圧屋内配線には含まれない。
がいし引き工事を選ぶ場合、電線は直径2.6mmの軟銅線と同等以上の強さ・太さを持つ高圧絶縁電線等を使い、支持点間隔は6m以下(電線を造営材の面に沿って取り付ける場合は2m以下)とする。電線相互の間隔は8cm以上、電線と造営材との離隔は5cm以上必要だ。がいしで電線を宙に張るこの工法は、電線同士・電線と壁の間に空気の絶縁距離を確保することで安全性を保っている。
ケーブル工事を選ぶ場合は、低圧のケーブル工事(第164条第1項第二号・第三号)の規定をそのまま準用し、支持点間隔は2m以下(垂直に取り付ける場合は6m以下)とする。防護装置の金属部分・接続箱・ケーブルの被覆金属体にはA種接地工事を施す(接触防護措置を施せばD種でよい)。
もう1つ、第一種で新しく出てくる看板数字が、他の屋内電線等との離隔だ。高圧屋内配線は、同一の屋内にある低圧屋内電線・弱電流電線・水管・ガス管等と、0.15m以上の離隔を確保する。ただし相手が裸電線を使うがいし引きの低圧屋内電線であれば、0.3m以上まで広げる必要がある。裸電線は絶縁被覆がない分、より広い空間距離で絶縁を補う必要があるためだ。逆に、双方がケーブル工事で隔壁や耐火性のある管で仕切られていれば、この離隔そのものを免除できる場合がある。
高圧屋側配線(建物の外壁に施設する配線)は、第111条によってこの屋内配線の規定を準用する。展開した場所に限り、工事はケーブル工事のみ、接触防護措置を施し、支持点間隔は2m以下(垂直6m以下)、防護金属部はA種接地。他の工作物との離隔も、同一造営物の低圧屋側電線・弱電流電線等とは0.15m以上、それ以外の工作物とは0.3m以上と定められている。屋内と屋側で数字の考え方が共通しているのは、どちらも「建物に沿わせて高圧を通す」という点で本質的に同じ工事だからだ。
離隔の数字を軽く見て施工すると、あとで是正工事が必要になる。改修工事で天井裏の配線ルートを見直す際、既存の高圧配線と新設する弱電流電線(LANケーブルや監視カメラの配線など)の離隔を測らずに詰めて配線してしまうと、竣工検査で0.15m未満の箇所が見つかり、ケーブルルートをやり直す手戻りが発生する。天井裏は施工後に隠れてしまうため、離隔は配線時にその場で確保しておかないと、あとから確認しづらい箇所になる。
OWが使えないのは、1つの工事だけの話ではない
屋外用ビニル絶縁電線(OW)は、名前のとおり屋外の架空配線専用の電線だ。 被覆が薄く、屋内配線に求められる絶縁性能を満たさないため、低圧屋内配線では 工事の種類を問わず使えない。
条文は工事ごとに書かれているので、バラバラの規定に見える。だが中身は同じだ。
| 工事 | 条文 | 電線の規定 |
|---|---|---|
| がいし引き工事 | 第157条 | 絶縁電線(OWを除く) |
| 合成樹脂管工事 | 第158条第1項第一号 | 絶縁電線(OWを除く) |
| 金属管工事 | 第159条 | 絶縁電線(OWを除く) |
| 金属線ぴ工事 | 第161条 | 絶縁電線(OWを除く) |
| 金属ダクト工事 | 第162条 | 絶縁電線(OWを除く) |
なお、より線か直径3.2mm以下の単線であること、管内に接続点を設けないこと(第158条第1項第二号・ 第三号)も、合成樹脂管工事に共通して問われる。OWの除外・太さ・接続点の3点セットで押さえる。
天井裏の配線間隔から、電圧の違いを読み取れるようになる
この整理が頭に入ると、ビルの機械室や天井裏で配線同士に確保されているすき間が、単なる作業スペースではなく、電圧の違いに応じた絶縁距離の表れだと分かるようになる。今日試せることとして、職場や施設の電気室・機械室を見学する機会があれば、高圧らしき太いケーブルと他の配線との間隔を目測してみるといい。極端に近接していれば、それは基準を満たしていない可能性がある。
工事の種類を絞り込み、離隔の数字を細かく定めているのは、高圧配線が万一損傷したときの被害を、周囲の低圧配線・弱電流配線にまで波及させないためだ。第一種電気工事士がビルの高圧屋内配線に関わるとき、この「工事の選択肢を絞る」「離隔を確保する」という2つの発想が、施工計画全体の骨格になる。
冒頭の天井裏のすき間、どんな根拠に基づいていたのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。