繁華街のネオンサインの看板をよく見ると、ガラス管同士のつなぎ目に、さらに小さなガラスの筒がかぶせてある。電線を保護するなら、普通はビニールやゴムのような柔らかい絶縁物を使いそうなものなのに、なぜここだけわざわざガラスを使っているのか。
見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、このガラスの筒が何を守っているのかを説明できるようになっている。
ネオン放電灯の工事は、管灯回路の使用電圧によって規定が分かれる(第186条)。1000V以下の管灯回路(第1項)は、看板枠内に施設し簡易接触防護措置を施す、変圧器は電気用品安全法適用のネオン変圧器等、電線はネオン電線又はけい光灯電線、支持点間隔1m以下、変圧器外箱と金属製看板枠にD種接地、という比較的シンプルな規定になる。
1000Vという境界線は、ネオン変圧器の昇圧比によって管灯回路側の電圧が大きく変わることに対応している。低い電圧の範囲では簡易な施設方法(第1項)でも足りるが、それを超えると人体への危険性が一段上がるため、工事方法そのものを限定し(がいし引きのみ)、離隔や絶縁の要求も厳しくする、という段差がここに設けられている。第一種で主に問われるのは、これを超える1000V超の管灯回路(第2項)だ。工事は展開した場所又は点検できる隠ぺい場所でのがいし引き工事に限られ、電線は必ずネオン電線を使う。支持点間隔は1m以下、電線相互の間隔は6cm以上。電線と造営材との離隔は、使用電圧の高さに応じて段階的に変わる。
もう1つの特徴的な規定が、冒頭のガラス管だ。管極間の接続部(ネオン管同士をつなぐ部分)は、厚さ1mm以上のガラス管に収めることが定められている。この接続部は電極に近く、高電圧が露出しやすい箇所になる。ガラス管の支持点間隔は0.5m以下、もっとも管端に近い支持点は管端から8cm以上12cm以下の位置に置く。ネオン管そのものがガラス製であることと合わせ、接続部も同じガラスという絶縁物で覆うことで、感電や短絡のリスクを抑えている。
小勢力回路(第181条、既出)と出退表示灯回路(第182条)は、どちらも弱い電流を扱う小規模な回路という共通点があるが、電流を制限する仕組みが違う。小勢力回路は、絶縁変圧器の2次側の短絡電流そのものを小さく作ることで、回路に流れうる電流の上限を制限する。一方、出退表示灯回路は、最大使用電圧60V以下・定格電流5A以下の過電流遮断器という別部品を挟むことで電流を制限し、絶縁変圧器(1次対地電圧300V以下、2次使用電圧60V以下)を使う。電線は直径0.8mm軟銅線と同等以上のコード・ケーブル等とし、ケーブル類以外は電線管等に収める。
出退表示灯回路の条文(第182条)は、造営材への取付方法などの細部で小勢力回路の条文(第181条)の号を準用している構造になっている。つまり、出退表示灯回路について調べているつもりが、実際に読んでいる数値は第181条側の規定だった、ということが起こりうる。数値を扱うときは、その数値が第181条由来なのか第182条固有のものなのかを条文の準用関係まで遡って確認する習慣を持っておくと、思い込みによる取り違えを防げる。
EV充電設備・V2H設備の施設基準 — 電流・電圧を限定するという同じ発想
ネオン工事・小勢力回路・出退表示灯回路に共通するのは、「用途に応じて電流や電圧を限定することで、簡易な工事方法でも安全を確保する」という発想だ。この発想の仲間が、近年増えているEV(電気自動車)充電設備・V2H(Vehicle to Home)設備にもある。電技解釈第199条の2(電気自動車等から電気を供給するための設備等の施設)に、まとめて規定されている。
V2H(第1項) は、電気自動車等から住宅(一般用電気工作物)へ電気を供給する設備だ。電気自動車等の出力は10kW未満、かつ低圧幹線の許容電流以下とする。電気自動車等と供給設備を接続する電路の対地電圧は、原則150V以下。地絡遮断装置・過電流遮断装置を施設し、専用の開閉器等を設ける。
一般用電気工作物等の需要場所での充電(第2項) は、住宅や店舗でEVを充電する一般的な設備だ。充電設備とEVを接続する電路の対地電圧は原則150V以下、充電部分が露出しないこと、地絡遮断装置を施設することが求められる。
自家用需要場所の高圧直流急速充電(第3項) は、商業施設等にある急速充電器のような、高圧直流1,500V以下を扱う設備を対象にする。接続確認後でないと充電を開始しない機能、地絡・過電流・過電圧時の自動遮断、電線切断時の自動遮断等の機能を持たせ、充電設備は配線と直接接続する(コンセントを介さない)。
ネオンサインのガラス管を見て、絶縁の考え方を言い当てられるようになる
この整理が頭に入ると、繁華街のネオンサインの配線が単なる装飾用の電気工事ではなく、使用電圧に応じた離隔とガラス管による絶縁という、細かく設計された安全対策の集合体だと分かるようになる。今日試せることとして、ネオンサインの看板を見かけたら、ガラス管のつなぎ目にもう1つ小さなガラスの筒がかぶせてあるかを探してみるといい。
ネオン工事の基準がここまで細かいのは、管灯回路の使用電圧が数千Vに達することもあり、しかも看板という人目に触れやすい場所に施設されるからだ。第一種電気工事士がこの工事に関わるとき、離隔の段階分けとガラス管による絶縁という2つの発想を正確に押さえているかどうかが、繁華街という人通りの多い場所での安全性を左右する。
冒頭のガラス管、何を守るために使われていたのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。