新築マンションの内装工事で、配線図には廊下とリビングの天井に埋め込む「ダウンライト」が12台指定されていた。ところが発注担当者は図記号を見誤り、天井に直付けする「シーリングライト」を12台発注してしまった。
現物が現場に届いて初めて、担当者は「そもそも取り付け方が違う」ことに気づく。同じ「照明器具」という括りなのに、なぜここまで話が変わってしまうのか。
このトピックを読み終えるころには、配線図のどこを見れば発注前にこのミスに気づけたか分かるようになっている。
照明器具の図記号は、JIS C 0303:2000 の 4.1「照明器具」に一枚の表としてまとまっている。名称欄に並ぶのは5つのグループだ——一般用照明(白熱灯/HID灯)、蛍光灯、非常用照明(建築基準法によるもの)、誘導灯(消防法によるもの)、保安用・発電回路用(建築基準法,消防法によらないもの)。後ろの3つはそれぞれ「白熱灯」と「蛍光灯」の2段に分かれるので、記号の数だけなら8種類ある。
8種類と聞くと身構えるが、これを描くのに使う部品は2つしかない。丸と、横長の長方形だ。まずは、いちばん数の多い一般用照明から見ていく。
| 図記号 | JIS C 0303:2000 の名称 |
|---|---|
| 白丸(○) | 一般用照明(白熱灯/HID灯) |
| 円の中央に水平線1本 | ペンダント |
| 円の中に「CL」 | シーリング(天井直付) |
| 円の中に「CH」 | シャンデリヤ |
| 円の中に「DL」 | 埋込器具 |
| 円の中央に向かい合う弧2本 | 引掛シーリングだけ(丸) |
| 横長の長方形の中央に向かい合う弧2本 | 引掛シーリングだけ(角) |
| 円の壁側の半分を黒く塗る | 壁付(またはWを傍記) |
円の中の文字は、器具名ではなくJISが挙げた例
丸の中に文字を書いて器具の種別を示す、というのが 4.1 一般用照明の摘要 a) b) の決まりだ。そこに例として挙げられているのは6つだけ——ペンダント、シーリング(天井直付)、シャンデリヤ、埋込器具、引掛シーリングだけ(角)、引掛シーリングだけ(丸)。
注意したいのは名前のほうだ。CL・DLは実務では「シーリングライト」「ダウンライト」と呼ばれるが、JISが名称欄に書いているのは「シーリング(天井直付)」と「埋込器具」である。名称を問う設問は、この規格上の言い方で選択肢を作る。実務名だけで覚えていると、目の前にある正解を読み飛ばすことになる。
6つのうちペンダントだけは、文字を使わない。円の中央に水平線を1本引いて上下に二分した形——それがペンダントの図記号だ。CLやCHが実在するせいで「ペンダントにも2文字の記号がありそうだ」と思わせる選択肢(CP)が混ぜられるが、JISにその記号はない。
引掛シーリングは、角と丸の2種類が規定されている。どちらも中央に、向かい合う小さな弧を2本——括弧を寄せたような形——描く。角は横長の長方形の中に、丸は円の中に。この弧2本が見えたら、それは照明器具の種類ではなく、器具を後から回して着脱する取付金具の記号だ。配線図に引掛シーリングの記号があっても、そこに実際どんな器具が付くかは、仕様書や図面の注記で確認するしかない。
丸には、文字以外の情報も乗る。壁付は円の壁側の半分を黒く塗る(またはWを傍記)、床付はFを傍記する。容量はワット数×ランプ数で傍記し(○100、○200×3)、HID灯なら容量の前に種類の文字を置く——水銀灯H、メタルハライド灯M、ナトリウム灯N。○H100と書かれていれば、100Wの水銀灯という意味になる。
そして、CLとDLの1文字差は器具名の差では終わらない。シーリングライトは天井面にそのまま取り付ける器具で、多くは引掛シーリングという着脱式の金具を介して設置される。一方ダウンライトは天井裏に埋め込むタイプで、あらかじめ天井材に開口(掘り込み)を設けておく必要がある。傍記を読み違えると、照明器具そのものの発注ミスにとどまらず、天井の下地工事が必要かどうかという前提から食い違ってしまう。
蛍光灯の記号は、長方形と丸の合成でできている
ここから先が、この分野の本題だ。
蛍光灯を「横長の長方形」とだけ覚えていると、本番で手が止まる。JIS C 0303:2000 の蛍光灯の図記号は、横長の長方形の中央に白丸(輪郭線だけの円)を重ねた形である。しかも円は長方形より背が高く、上下に少しはみ出す。中央の丸を落としてしまうと、蛍光灯だと読み取れなくなる。
摘要 a) には、もう1つの書き方が示されている。長方形の外枠を描かず、平行な水平線2本の中央に白丸を重ねる形だ。図面によってはこちらで描かれていることがあるので、枠が無くても蛍光灯だと読めるようにしておきたい。
なぜ、長方形の真ん中に丸がいるのか。理由は、次の表を見た瞬間に分かる。
同じ丸が、塗り方だけで別の器具になる
白熱灯の段は、輪郭が全部同じ丸だ。一般用照明は白丸○、非常用照明は全面を黒く塗った●、誘導灯は円を斜めの×で4分割して上下の2区画だけを黒く塗った記号(左右の2区画は白のまま残るので、白い三角が向かい合って見える)、保安用・発電回路用は円の内部を斜線で塗った記号。形は一切変わらず、塗り方だけが変わる。
蛍光灯の段は、もっと単純だ。白熱灯の段の丸を、そのまま横長の長方形の中央に重ねればいい。長方形+白丸で蛍光灯、長方形+黒丸で非常用照明(蛍光灯)、長方形+×4分割の丸で誘導灯(蛍光灯)、斜線で塗った長方形+白丸で保安用・発電回路用(蛍光灯)。
そして、この塗り分けにはもう一段の落とし穴がある。黒丸●は 4.1 の非常用照明(白熱灯)であると同時に、4.3 点滅器の一般形——ごく普通のスイッチ——でもある。白丸○も同じで、一般用照明であると同時に、4.3 f) が定める「別置された確認表示灯」でもある(スイッチの黒丸の隣に置かれる)。丸は形だけでは決まらない。塗り方で灯種の系統を読み、そのうえで図面上のどこにいるか——天井の器具の位置か、壁のスイッチの並びか——と傍記で確定させる。この2段構えを持っていない人が、照明器具の設問で黒丸を見た瞬間に「これはスイッチだ」と外してしまう。
非常用照明には、もう1つの書き方も用意されている。摘要 b) は、白熱灯を一般の蛍光灯に組み込む場合、長い蛍光灯のバーの中に白丸と黒丸を並べて重ねた図記号でもよい、としている。1台の器具の中に、ふだん点いている一般照明と、停電時だけ点く非常用照明が同居していることを、そのまま記号にしたものだ。壁付ならWを傍記する(摘要 d))。誘導灯と違い、非常用照明の摘要には床付Fの規定がない。
誘導灯は1種類しかない——方向も場所も傍記が語る
避難口誘導灯と通路誘導灯。実物は形も置き場所も違うので、図記号も別々にあるはずだと考えたくなる。ところが JIS C 0303:2000 は、この2つを別の図記号としては規定していない。どちらも同じ誘導灯の記号で描かれ、摘要 a)「器具の種類を示す場合は,文字記号などを記入する」と、d)「通路誘導灯の避難方向表示は,必要に応じ,矢印を記入する」によって区別される。
摘要で決まっているものを並べると、こうなる。b) 客席誘導灯(白熱灯形)はSを傍記してもよい。d) 通路誘導灯の避難方向は、記号の下に矢印(←、→)を記入する。e) 壁付はW、f) 床付はF。g) には、四角い枠の中に「SD」と書いた連動式誘導灯用信号装置の記号が置かれている。そして c) は、階段に設ける誘導灯で非常用照明(蛍光灯形)と兼用のものを、黒く塗りつぶした横長の長方形の中央に×4分割の丸を重ねた記号で表してよい、としている。
覚え方は逆算がいい。「誘導灯の記号は1つしかない」と決めてしまえば、残りはすべて傍記の問題になる。逆に、避難口用と通路用で別の形を探しはじめると、存在しない記号を探して時間を溶かすことになる。
屋外灯は、名称欄に独立した行を持たない
門灯や庭園灯を表す「屋外灯」も、独立した項目としてはJISに存在しない。4.1 一般用照明の摘要 e) に「屋外灯は[図記号]としてもよい」と、任意の代替表記として1行あるだけだ。8.「屋外設備」の表を見ても屋外灯は入っておらず、そこに並ぶのは電柱・支線・支柱・架空配線・地中配線・マンホール・ハンドホール・埋設標の8つだけになっている。
形は、丸の上下に外側へ張り出す弧を1本ずつ添えたもの。上の弧は上向きに凸、下の弧は下向きに凸で、どちらも円の直径より横に広く、円の左右は開いたままだ。弧の端がどこで切れるかまでは規格票のスキャンから読み取れなかったので、ここでは全体の形だけを示している。
「保安灯」という名前の記号を探しても見つからない、というのも同じ話だ。4.1 の最終行にあるのは「保安用/発電回路用(建築基準法,消防法によらないもの)」で、摘要は「一般用照明の摘要を準用する。」の一文だけ。傍記のルールは一般用照明と同じで、独自の情報は「斜線で塗る」という塗り分けだけになっている。
廊下の照明を一斉に落とす回路は、図面の上で三角に化ける
集合住宅の共用廊下では、何十台もの照明が1つの操作で一斉に点き、一斉に消える。この一括点滅を担うのがリモコン方式で、記号は 4.3 点滅器の後半と 3.「機器」に分かれて置かれている。
図面の上での見え方は、少し意地が悪い。廊下の天井には、蛍光灯や一般用照明の記号がただ並んでいるだけで、「ここは一括で切れます」と書いてある記号は1つもない。実際に回路を入り切りしているのは、盤の側に描かれた黒塗りの三角——リモコンリレー——のほうだからだ。管理人室の壁には●R(リモコンスイッチ)か、円を縦線1本と斜め線2本で6分割したホイール状のリモコンセレクタスイッチが点滅回路数の傍記付きで描かれ、盤の中には枠の中に三角を3つ並べた集合形の記号がリレー数の傍記とともに置かれる。そして操作用の電源を作る小形変圧器(円の中にT)にRが傍記されていれば、それがリモコン変圧器だ。
つまり「操作する記号」「動く記号」「電源を作る記号」が、図面の3か所に分かれて描かれる。照明の記号だけを追っていても、その回路が一括点滅であることは絶対に分からない。三角と●Rと円のTを見つけて初めて、廊下の照明が1つの操作でまとめて動く回路だと読める。リモコン関係の記号そのものは動力・制御機器の図記号で詳しく扱っている。
記号を、実物の姿に戻す
図記号から器具名は分かる。だが写真問題では逆を問われる。「この写真の器具はどれか」—— このとき必要なのは記号の知識ではなく、その器具が天井でどう見えるかだ。
| 器具 | 記号 | 天井での見え方 |
|---|---|---|
| シーリングライト(CL) | 丸にCL | 天井に平たく張り付いた円盤。出っ張りが少なく、面で光る |
| ダウンライト(DL) | 丸にDL | 天井に埋まっていて、円い開口だけが見える。器具本体は天井裏にある |
| シャンデリア(CH) | 丸にCH | 多灯。腕が枝分かれし、装飾的に吊り下がる |
| ペンダント | 円の中央に水平線1本(文字記号は使わない) | 1灯をコードやチェーンで吊り下げる。ダイニングの上が定番 |
- 埋まっていて開口だけ → DL
- 平たく張り付いている → CL
- 吊り下がっていて1灯 → ペンダント
- 吊り下がっていて多灯・装飾的 → CH
CLとDLの差は、天井に穴を開けるかどうかでもある。DLは天井裏に器具本体を納める スペースが要るので、下地の状況に左右される。記号1文字の裏に、工事の中身の違いがある。
CLとDLの1文字が、天井に手を入れるかどうかを分ける
照明の図記号が読めるようになると、器具の入れ替えを頼まれたときに「天井を開ける工事なのか、そのまま付け替えられるのか」を図面の段階で判断できるようになる。これは工期にも見積にも直結する差だ。引掛シーリングの記号があれば器具の交換は住人でもできる範囲だが、埋込器具(DL)なら開口の径と天井裏の納まりを先に確認しなければならない。
今日試せることとして、部屋の天井を見上げてみるといい。器具が天井面に載っているならシーリング(CL)の側、天井に埋まって面がフラットなら埋込器具(DL)の側だ。前者の多くは、天井に付いた円盤状の金具(引掛シーリング)に器具を回してはめ込んでいる。自分の家の照明が、どちらの取り付け方で載っているのかが分かるようになる。
そのうえで、次に外を歩くときは天井の「黒い丸」と「四角い箱の中の丸」を探してみてほしい。駅の通路、商業ビルの階段、ホテルの廊下——どの建物にも、ふだん点いていない照明が必ず混ざっている。停電した瞬間だけ点く非常用照明と、煙の中でも出口の方向を示し続ける誘導灯だ。この2つが建築基準法と消防法によって別々に義務づけられていることは、JISが名称欄にわざわざ「(建築基準法によるもの)」「(消防法によるもの)」と書き添えていることからも読み取れる。図記号を丸の塗り分けとして覚えた人は、図面を見た瞬間に「この建物は、暗くなったときにどう人を逃がす設計になっているか」まで読めるようになる。
傍記1文字の読み違いがここまで大きな影響を持つのは、照明が「電気の器具」であると同時に「建築の一部」でもあり、ときには「人命を守る設備」でもあるからだ。器具のLED化・調光調色化が進み、既存建物の照明を丸ごと入れ替える改修は増え続けているが、そのすべてがこの読み分けから始まる。改修では一般照明だけを新しくして非常用照明や誘導灯を積み残す、という事故が起きやすく、それを図面の段階で防ぐのが丸の塗り分けだ。改修の考え方はLED照明のリニューアルにもまとめてある。
冒頭の12台の発注ミスで何が起きていたのか、答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。 照明とスイッチの対応が読めるようになったら、複線図への変換へ進む。 単線図の1本の線が実際には何本の電線なのかは、複線図に描き起こして初めて確定する。