現場で見た太陽光発電+蓄電池システムの銘板に、「パワーコンディショナ 最大直流750V」と書かれていた。すぐ隣にある別の設備は交流600Vで、これは明らかに低圧だと分かる。
ところが直流750Vの方は、パッと見て判断がつかない。数字だけ見れば「700Vを超えているから高圧では」と思えてしまう。実際のところ、この直流750Vは低圧なのか、高圧なのか。
見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、その理由がはっきり説明できるようになっている。
「電気設備に関する技術基準を定める省令」(通称:電気設備技術基準、電技)は、電気設備が満たすべき安全上の基準を定めた省令(平成9年通商産業省令第52号)だ。第4条では「電気設備における感電、火災等の防止」として、電気設備は感電・火災その他人体に危害を及ぼし、又は物件に損傷を与えるおそれがないように施設しなければならない、という基本原則が定められている。この科目で登場する具体的な規定(絶縁・接地など)は、すべてこの基本原則を具体化したものと考えるとつながりが見えやすい。
「省令」の一言には、親がいる
法律は国会が作るが、省令は大臣が定める。そして省令は単独では生まれず、必ず「どの法律の委任を受けて定めたか」を背負っている。電技の冒頭に置かれた制定文には、電気事業法第39条第1項及び第56条第1項の規定に基づき定める、と明記されている(平成9年通商産業省令第52号)。
構造は2階建てだ。1階の電気事業法が「電気工作物は技術基準に適合するように維持しなければならない」と命じ、2階の電技がその技術基準の中身——第4条の基本原則も、次に見る電圧区分も——を引き受けている。学科試験ではこの親子関係そのものが問われ、「電技は電気工事士法に基づく省令である」といった、親を取り違えさせる選択肢が用意される。電気工事士法が受け持つのは「誰が工事をしてよいか」であって、設備が満たすべき基準ではない。
また、電技第2条では電圧を3つの区分に分類している。この区分は他の科目(配線設計など)とも共通する基礎知識になる。
| 区分 | 交流(AC) | 直流(DC) |
|---|---|---|
| 低圧 | 600V以下 | 750V以下 |
| 高圧 | 600V超 7,000V以下 | 750V超 7,000V以下 |
| 特別高圧 | 7,000V超 | 7,000V超 |
一般家庭の100V・200Vはもちろん「低圧」に分類される。第二種電気工事士が扱う一般用電気工作物は、この低圧の範囲に収まる設備がほとんどだ。太陽光発電システムのように直流を扱う設備が増えてきた今、交流の感覚のまま直流の電圧を判断してしまうと、区分を読み違えることがある。
「電線」と「配線」は、別の言葉として定義されている
省令第1条には用語の定義が並んでいて、試験ではこの定義文を1語だけ入れ替えた選択肢が出る。 とくに紛らわしいのが電線・配線・電気機械器具の3つだ。原文はこうなっている。
| 用語 | 定義(省令第1条) |
|---|---|
| 電路(第1号) | 通常の使用状態で電気が通じているところ |
| 電気機械器具(第2号) | 電路を構成する機械器具 |
| 電線(第7号) | 強電流電気の伝送に使用する電気導体、絶縁物で被覆した電気導体又は絶縁物で被覆した上を保護被覆で保護した電気導体 |
| 配線(第18号) | 電気使用場所において施設する電線(電気機械器具内の電線及び電線路の電線を除く) |
電線はもっと広い。導体そのものを指す言葉で、場所も用途も限定していない。 そこから「電気使用場所に施設したぶんだけ」を切り出したのが配線になる。
つまり電線 ⊃ 配線という包含関係だ。「電線とは、電気使用場所において施設する…」で 始まる選択肢を見たら、それは配線の定義を電線にすり替えた誤りだと判断できる。
電気機械器具も同様で、「電路を構成する機械器具」というごく短い定義しかない。 「電気を使用する器具」のような、それらしいが別の説明が付いていたら誤りになる。
条文が、そのまま穴あきで出てくる — 第14条と第15条
この省令からは、条文の一部を空欄にして語句を選ばせる形式が出る。条文そのものを一度読んでおかないと、意味は分かっているのに埋められない、ということが起きる。よく穴が開くのは、電路の保護を命じている次の2条だ。
第14条(過電流からの電線及び電気機械器具の保護対策) 電路の必要な箇所には、過電流による過熱焼損から電線及び電気機械器具を保護し、かつ、火災の発生を防止できるよう、過電流遮断器を施設しなければならない。
第15条(地絡に対する保護対策) 電路には、地絡が生じた場合に、電線若しくは電気機械器具の損傷、感電又は火災のおそれがないよう、地絡遮断器の施設その他の適切な措置を講じなければならない。ただし、電気機械器具を乾燥した場所に施設する等地絡による危険のおそれがない場合は、この限りでない。
この書き分けには理由がある。省令は「何を達成すべきか」だけを書き、「どうやるか」は解釈に委ねる、という二段構えになっている。第4条が「感電、火災その他人体に危害を及ぼし、又は物件に損傷を与えるおそれがないように施設しなければならない」と目的だけを述べているのと同じ構造だ。だから省令の条文に、太さ・距離・秒数といった具体的な数字はほとんど出てこない。省令の穴埋め問題で、数字が入る選択肢が並んでいたら、それは怪しいという読み方ができる。
第15条のただし書きも試験で効いてくる。「乾燥した場所に施設する等地絡による危険のおそれがない場合」——この一文が、D種接地工事の省略条件で「乾燥した場所」が繰り返し出てくることの、上流にある考え方だ。乾いていれば人体の抵抗が高く、感電しても電流が流れにくい。省令が例外を開いているのはそこだけで、水気のある場所には一切の緩和がない。
銘板の「AC」「DC」を読み分けられるかどうか
交流600V・直流750Vという2つの数字は、覚えた翌日から使える。機器の銘板や取扱説明書には必ずAC/DCの別と電圧が書かれていて、その2つを見た瞬間に区分を言えるかどうかで、現場での話の速さが変わる。パワーコンディショナの直流入力、蓄電池の直流側、EV充電設備。直流の数字を読む場面は、住宅まわりでも確実に増えている。
今日試せるのは、家の中の銘板読みだ。ノートPCのACアダプタ、モバイルバッテリー、電動工具の充電器。どれも「INPUT AC100V」「OUTPUT DC○V」といった形で、交流と直流が明確に書き分けられている。同じ「V」でも意味が違うものとして扱われていることに気づくと、電技の区分表が交流と直流の2列に分かれている理由が腹に落ちる。
面白いのは、電気の歴史がいま一周しかけていることだ。19世紀の送電方式をめぐる争いは交流に軍配が上がり、家庭に届く電気は交流になった。ところが太陽電池が生むのは直流、蓄電池に溜まるのも直流、LEDもモーター制御も内部では直流を使っている。交流に変換してまた直流に戻す手間を減らそうという発想が出てくるのは自然なことで、住宅の中で直流を扱う機器は着実に増えている。交流の感覚のまま直流の数字を読んで区分を外す。この注意は、これから効いてくる方向の注意だ。
冒頭の直流750Vは、低圧なのか高圧なのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。