電流計は、回路に直列に入れて測る。電流そのものを計器の中に通すからだ。ということは、生きている幹線の電流を知りたければ、いったん電線を切り、そこに電流計を割り込ませ、測り終わったらまたつなぎ直す——理屈のうえでは、そういう作業になるはずだ。
ところが現場で見た電気工事士は、ブレーカーも落とさず、電線を1本もいじらず、器具を電線に挟んだだけで「28A流れていますね」と言った。作業時間は3秒ほど。電線はどこも切れていない。
なぜ切らずに測れたのか。見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、その仕組みを自分の言葉で説明できるようになっている。
種明かしは、何を測っているかにある。クランプ形電流計は、電流そのものを測っていない。
日本電気計測器工業会(JEMIMA)の解説によれば、クランプ電流計は「被測定電流によって電流路の周囲に誘起される磁界を検出することによって、電流を測定している」。電線に電流が流れれば、そのまわりには必ず磁界ができる。その磁界の強さは電流の大きさに応じて変わる。だから磁界さえ測れば、電流の通り道に触れなくても電流値が分かる。
3つの検出方式
| 方式 | 仕組み | 測定できる電流 |
|---|---|---|
| 変流器(CT)方式 | 磁気コアにコイルを巻いた構造。クランプした導体に流れる一次電流が電磁誘導によって二次側コイルに比例した電流を誘起する | 交流のみ |
| ホール素子方式 | 磁気コア内の空隙にホール素子を配置し、磁束密度を検出する | 交流・直流 |
| ロゴスキーコイル方式 | 磁気コアを持たず、空芯コイルによって検出する | 交流 |
もっとも一般的でコストも安いのがCT方式だ。共立電気計器の解説では、二次側に誘起された電流がシャント抵抗や電流電圧変換回路で適正な電圧に変換され、整流回路・AD変換回路を経て測定電流値として表示される、と説明されている。電磁誘導は電流が変化することで生じるため、この方式は交流専用になる。直流も測りたければホール素子方式のものが必要だ。
測り方の要点
- 1本だけをクランプする。 測定したい配線1本を電流センサ内に入れる
- 中心に入れる。 測定導体ができるだけ電流センサの中心になるようにする。中心に近いほど精度が良い
- 二芯コードはそのままでは測れない。 2本の線が並んで被覆されているため1本にできない。1本だけを取り出すか、ラインセパレータを使う
つまり「1本だけ挟めば負荷電流」「全部まとめて挟めば、打ち消し合いから漏れた分だけが残る」。同じ器具の同じ性質が、挟み方を変えるだけで2種類の測定になる。後者については次のトピックで扱う。
止められない設備の中身を、3秒で覗く
クランプ形電流計の価値は「止めなくていい」の一点にある。工場のライン、サーバ室、店舗の冷蔵ショーケース。止めれば損害が出る設備ほど、電流を知りたい理由がある。ブレーカーがなぜか落ちるという相談を受けたとき、どの回路に何アンペア流れているかを順に挟んで確かめていけば、短時間で見当がつく。分電盤の増設を検討するときも、実際どこまで使っているかは、計算ではなく実測でしか分からない。
今日できるのは、答え合わせの準備だ。家電の銘板や説明書にある消費電力を見て、100Vで割った値をメモしておく。1200Wのドライヤーなら12A、1450Wの電子レンジなら約14.5A。将来クランプ形電流計を手にしたとき、その予測とメーターの実測値を突き合わせてみると、力率や起動時の突入電流といった話が一気に実感になる。
面白いのは、この器具が「電流に触れない」という発想の転換だけで成り立っていることだ。電流計は直列に入れるものという原則をひっくり返さないまま、原則の外側から同じ答えを取りにいく。しかも2本挟むと0になるという、一見して欠点にしか見えない性質が、そのまま次のトピックの漏れ電流測定の原理になる。同じ道具を、挟み方を変えるだけで別の検査に使う。測定器の世界では、こういう裏返しがよく起きる。
冒頭の工事士が電線を切らずに28Aを読めた理由——答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。