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一般用電気工作物等の検査方法 ・ 6 / 9

クランプ形電流計 — 電線を切らずに電流を測る

読み終えると、こうなる

止められない設備の幹線に器具を挟むだけで、電流を止めずに読み取れる理由を言い当てられるようになる

  • 負荷電流を測るときは1本だけ、漏れ電流を測るときは全線一括、という挟み方を仕分けられる
  • 太陽光の直流側を測るとき、CT方式では測れないと判断し、ホール素子方式を選び直せる
  • 1200Wのドライヤーなら12Aのように、消費電力(W)から流れる電流(A)を暗算し、クランプの実測値と突き合わせられる
考えてみよう

電流計は、回路に直列に入れて測る。電流そのものを計器の中に通すからだ。ということは、生きている幹線の電流を知りたければ、いったん電線を切り、そこに電流計を割り込ませ、測り終わったらまたつなぎ直す——理屈のうえでは、そういう作業になるはずだ。

ところが現場で見た電気工事士は、ブレーカーも落とさず、電線を1本もいじらず、器具を電線に挟んだだけで「28A流れていますね」と言った。作業時間は3秒ほど。電線はどこも切れていない。

なぜ切らずに測れたのか。見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、その仕組みを自分の言葉で説明できるようになっている。

種明かしは、何を測っているかにある。クランプ形電流計は、電流そのものを測っていない。

日本電気計測器工業会(JEMIMA)の解説によれば、クランプ電流計は「被測定電流によって電流路の周囲に誘起される磁界を検出することによって、電流を測定している」。電線に電流が流れれば、そのまわりには必ず磁界ができる。その磁界の強さは電流の大きさに応じて変わる。だから磁界さえ測れば、電流の通り道に触れなくても電流値が分かる。

3つの検出方式

方式仕組み測定できる電流
変流器(CT)方式磁気コアにコイルを巻いた構造。クランプした導体に流れる一次電流が電磁誘導によって二次側コイルに比例した電流を誘起する交流のみ
ホール素子方式磁気コア内の空隙にホール素子を配置し、磁束密度を検出する交流・直流
ロゴスキーコイル方式磁気コアを持たず、空芯コイルによって検出する交流

もっとも一般的でコストも安いのがCT方式だ。共立電気計器の解説では、二次側に誘起された電流がシャント抵抗や電流電圧変換回路で適正な電圧に変換され、整流回路・AD変換回路を経て測定電流値として表示される、と説明されている。電磁誘導は電流が変化することで生じるため、この方式は交流専用になる。直流も測りたければホール素子方式のものが必要だ。

測り方の要点

  • 1本だけをクランプする。 測定したい配線1本を電流センサ内に入れる
  • 中心に入れる。 測定導体ができるだけ電流センサの中心になるようにする。中心に近いほど精度が良い
  • 二芯コードはそのままでは測れない。 2本の線が並んで被覆されているため1本にできない。1本だけを取り出すか、ラインセパレータを使う
2本まとめて挟んだらどうなるか。負荷へ行く電流と、戻ってくる電流は、大きさが同じで向きが逆だ。それぞれが作る磁界も向きが逆で大きさが同じになり、互いに打ち消し合う。結果、表示はほぼ0になる。これは測定の失敗パターンであると同時に、そのまま漏れ電流測定の原理でもある。

つまり「1本だけ挟めば負荷電流」「全部まとめて挟めば、打ち消し合いから漏れた分だけが残る」。同じ器具の同じ性質が、挟み方を変えるだけで2種類の測定になる。後者については次のトピックで扱う。

止められない設備の中身を、3秒で覗く

クランプ形電流計の価値は「止めなくていい」の一点にある。工場のライン、サーバ室、店舗の冷蔵ショーケース。止めれば損害が出る設備ほど、電流を知りたい理由がある。ブレーカーがなぜか落ちるという相談を受けたとき、どの回路に何アンペア流れているかを順に挟んで確かめていけば、短時間で見当がつく。分電盤の増設を検討するときも、実際どこまで使っているかは、計算ではなく実測でしか分からない。

今日できるのは、答え合わせの準備だ。家電の銘板や説明書にある消費電力を見て、100Vで割った値をメモしておく。1200Wのドライヤーなら12A、1450Wの電子レンジなら約14.5A。将来クランプ形電流計を手にしたとき、その予測とメーターの実測値を突き合わせてみると、力率や起動時の突入電流といった話が一気に実感になる。

面白いのは、この器具が「電流に触れない」という発想の転換だけで成り立っていることだ。電流計は直列に入れるものという原則をひっくり返さないまま、原則の外側から同じ答えを取りにいく。しかも2本挟むと0になるという、一見して欠点にしか見えない性質が、そのまま次のトピックの漏れ電流測定の原理になる。同じ道具を、挟み方を変えるだけで別の検査に使う。測定器の世界では、こういう裏返しがよく起きる。

冒頭の工事士が電線を切らずに28Aを読めた理由——答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 負荷電流の測定と漏れ電流の測定で、挟む本数をすり替える

    なぜ引っかかるこの出題は選択肢が図で示され、単相2線式なら「2本まとめて」「上の1本だけ」「下の1本だけ」「接地線」、単相3線式なら「3本まとめて」「中性線を含む2本だけ」「中性線だけ」「中性線以外の2本だけ」といった具合に、挟み方の総当たりが並ぶ。負荷電流は1本、漏れ電流はその回路の全線一括——この対応を反対に覚えていると、もっともらしい図にそのまま吸い寄せられる。

    見破り方何を残したいのかから決める。負荷電流を知りたいなら、行きの電流だけを見たいので1本。漏れ電流を知りたいなら、行きと帰りを打ち消し合わせて漏れた分だけを残したいので全線一括。単相2線式は2線、単相3線式は3線(中性線を必ず含む)、三相4線式は4線と、その回路の電線を1本残らず入れる。

  2. CT(変流器)方式で直流も測れるとする

    なぜ引っかかるクランプ形電流計は活線のまま何でも測れる万能の道具、という印象が先に立つ。しかしCT方式は電磁誘導を使うので、電流が変化しない直流では二次側に何も誘起されない。交流・直流の両方を測るには、磁束密度を直接検出するホール素子方式が要る。

    見破り方原理から逆算する。電磁誘導は「変化」で生じる、だからCT方式は交流専用。太陽光の直流側や蓄電池を測るなら方式から選び直す、と現物の場面に結びつけて覚える。

  3. 測定前に電源を遮断する、という停電手順を混ぜ込む

    なぜ引っかかる絶縁抵抗測定・導通試験で「必ず停電で」と繰り返し覚えるため、測定器の使い方を問われると反射的に停電を選びたくなる。しかしクランプ形電流計は、流れている電流を止めずに測るための器具だ。電源を切れば電流は流れず、測定そのものが成立しない。

    見破り方計器が自前の電源で電気を送り込む試験(絶縁抵抗・導通)は停電、いま流れている電気を見る試験(電流・漏れ電流・検電・電圧)は通電、と1本の軸で仕分ける。

参考文献・出典

理解度チェック(6問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、6問で確認しよう。 内訳は基本4問・応用1問・ひっかけ1問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 6 問正解

覚えておきたいポイント

  1. クランプ形電流計は電流そのものではなく、電流が電線のまわりに作る磁界を検出して電流値を求めている。だから回路を切り離さずに測定できる
  2. もっとも一般的なCT(変流器)方式は、クランプした導体に流れる一次電流が電磁誘導によって磁気コアの二次側コイルに比例した電流を誘起する仕組みで、交流専用
  3. ホール素子方式なら交流・直流の両方を測定でき、ロゴスキーコイル方式は磁気コアを持たない空芯コイルで検出する
  4. 負荷電流を測るときは、測りたい配線を1本だけクランプする。2本まとめて挟むと行きと帰りの電流が作る磁界が打ち消し合い、ほぼ0を示してしまう
  5. 測定導体はできるだけ電流センサの中心に入れる。中心に近いほど精度が良くなる。二芯コードはそのままでは1本にできないため、ラインセパレータを使う
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