24時間止まらないサーバ室の分電盤の点検を頼まれた。絶縁抵抗を確認したい。ところが施主から釘を刺された。「電源を落とすことは絶対にできません。1秒たりとも」。
困った。絶縁抵抗計(メガー)は、電圧が加わっていない電路に自ら直流の高電圧をかけて測る器具だ。活線のまま当てれば測定器が壊れ、下手をすれば人が危ない。かといって「停電できないので確認できません」で済ませるわけにもいかない。
停電できない電路の絶縁性能は、いったいどう確かめればよいのか。見当がつかなくて当然だ。このトピックを読み終えるころには、法令が用意しているもう1本の道を、条文まで挙げて説明できるようになっている。
低圧電路の絶縁性能について、電気設備の技術基準の解釈 第14条第1項は、次のいずれかに適合すればよいという書き方をしている。
一 省令第58条によること。 二 絶縁抵抗測定が困難な場合においては、当該電路の使用電圧が加わった状態における漏えい電流が、1mA以下であること。
第1号は、すでに学んだ絶縁抵抗値の基準(対地電圧150V以下で0.1MΩ以上、150V超300V以下で0.2MΩ以上、使用電圧300V超で0.4MΩ以上)だ。そして第2号が、停電できない電路のためのもう1つの合格ラインになる。停電せず、使用電圧を加えたまま、漏れている電流が1mA以下であることを確かめればよい。
漏れ電流の測り方(零相・一括クランプ)
測定にはリーククランプメータを使い、その回路の電線をすべて一括してクランプする。
| 配電方式 | クランプする本数 |
|---|---|
| 単相2線式 | 2線一括 |
| 単相3線式 | 3線一括 |
| 三相3線式 | 3線一括 |
| 三相4線式 | 4線一括 |
原理は、前のトピックで「測定の失敗パターン」として出てきた性質そのものだ。漏れ電流がなければ、電気機器へ向かっていった電流は1本の線を通って100%戻ってくる。電源側から流れる電流が作る磁界と、負荷側から戻る電流が作る磁界は、向きが反対で大きさも同じなので互いに打ち消し合い、測定値は0になる。
漏れがあるとどうなるか。漏れた分だけ、戻ってくる電流が少なくなる。打ち消しきれなかった差がそのまま磁界として残り、それが表示値になる。漏れた分だけが表示されるという、目的にきれいに合った測定になっているわけだ。
もう1つ、接地されている機器なら接地線を直接クランプする方法もある。漏れ電流は接地線を通って大地に流れるので、その線を挟めばそのまま読める。ただしこの方法で分かるのは接地線を経由した漏れ電流だけで、接地されていない経路からの漏れは捉えられない。
「停電できません」と言われてから始まる仕事
この第2号を知っているかどうかは、そのまま仕事を受けられるかどうかの差になる。24時間稼働の設備、病院、営業中の店舗、サーバ室。「電源は落とせません」と言われる現場は珍しくない。そこで「では絶縁抵抗は測れません」と引き下がる人と、リーククランプメータを持ち出して一括クランプし、1mA以下であることを記録して帰る人がいる。持っている条文が1本違うだけで、できる仕事の範囲が変わる。
今日できるのは、自宅の分電盤で漏電遮断器の表示を読むことだ。主幹のブレーカーに「定格感度電流 30mA」といった印字がある。絶縁性能の合格ラインが1mA、遮断器が実際に動き出すのが30mA。この2つの数字の開きが何を意味するのか、考えてみるといい。1mAは「まだ異常が始まっていない」ことを確かめる線で、遮断器が動く電流は「もう危ない」線だ。検査は、後者を待たずに前者で止めるためにある。
一括クランプの原理を初めて知ったときの気持ちよさは、なかなか他にない。行きと帰りが打ち消し合って0になる。漏れた分だけが残る。測りたいものだけが、勝手に浮かび上がってくる仕組みだ。太陽光のパワーコンディショナ、蓄電池、EV充電設備。「止めにくい」設備が住宅にまで入り込んできた今、電圧を加えたまま測れる道を持っていることの意味は、大きくなる一方だ。
冒頭のサーバ室で、絶縁性能をどう確認すればよかったのか。答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。