小さな店舗で、コンセントの位置が足りず、延長コードを壁に沿わせて釘で固定し、そのまま何年も屋内配線代わりに使っていた。見た目には配線がきれいに壁に沿っているだけで、特に問題があるようには見えなかった。
ある日、壁際から焦げたような臭いがした。確認すると、固定していた釘の周辺でコードの被覆が擦り切れ、発熱した跡があった。火災には至らなかったが、一歩間違えば危なかった。
この延長コードの使い方、どこに問題があったのか。このトピックを読み終えるころには、現場でこの光景を見ただけで指摘できるようになっている。
コードやキャブタイヤケーブルは、電気機器・器具への電源供給に使う「移動用」の電線だ。
つまり冒頭の店舗のように、延長コードを壁に釘で固定して何年も使い続けること自体が、そもそも原則から外れた使い方になる。
それでもやむを得ず造営材の下面・側面に沿わせて取り付ける場合は、被覆を損傷しないように取り付けたうえで、断面積に応じた支持点間隔を守る必要がある。
| 電線の断面積 | 支持点間隔 |
|---|---|
| 8mm² 未満 | 60cm 以下 |
| 8mm² 以上 | 1m 以下 |
コード・キャブタイヤケーブルを他の電線と接続する場合も、電線管工事等と同様に接続部分を保護する処置(差込接続器やジョイントボックスの利用等)が必要で、被覆を損傷したまま使用してはならない。固定間隔が空きすぎたり、恒久固定されたコードが日々のわずかな振動や擦れにさらされ続けたりすれば、被覆はやがて傷み、内部の芯線が露出する危険が高まる。
電球をコードで吊るとき、使えるコードは限られている
天井からコード吊りで白熱電球やペンダントを下げる。この「電球につながるコード」を、電技解釈は電球線と呼んで専用の規定を置いている(第170条)。配線図の問題で「⑨の部分(コード吊り)に使用できるものはどれか」という形で出る。
- 使用電圧は300V以下であること
- 断面積は0.75mm²以上であること
- 電線の種類は、屋内なら防湿コード/防湿コード以外のゴムコード/ゴムキャブタイヤコード、およびキャブタイヤケーブル類(1〜4種、クロロプレン・クロロスルホン化ポリエチレン)であること
決め手は3つ目だ。表に並んでいるのはゴム系ばかりで、ビニルコードもビニルキャブタイヤコードも載っていない。つまり電球線にビニルコードは使えない。
なぜゴムなのか。相手が白熱電球だからだ。白熱電球は電力の大半を熱にして光る器具で、口金のすぐそばはかなり熱くなる。ビニル(塩化ビニル)は熱に弱く、軟らかくなって垂れ、やがて絶縁が損なわれる。 ゴムは熱に対してビニルより粘り、形を保つ。「熱を出す器具にぶら下がる線」だからゴム——用途と材質が、条文の表の中で1対1に対応している。
0.75mm²という下限も、この用途ならではだ。器具の重さがそのままコードに掛かるうえ、電球の交換で引っ張られたり回されたりする。細すぎれば、電気的にではなく機械的に切れる。
- 電球線(第170条)— 断面積0.75mm²以上
- 移動して使用する機器の接地線(第17条)— 多心コードの1心で0.75mm²以上
- ショウウィンドー内の配線(第172条)— 断面積0.75mm²以上のコード等
いずれも「細くて柔らかい線を使わざるを得ない場面の下限」として同じ数字が置かれている、と捉えると整理しやすい。
「とりあえず」の延長コードを、根拠を持って指摘できる
事務所や店舗でいちばん多い危うい配線は、資格の要る工事ではなく、誰でもできてしまう延長コードの固定だ。60cm・1mという支持点間隔と、そもそも恒久固定が原則できないという前提を知っていると、机の下や棚の裏を覗いた瞬間に、それが配線なのか仮設の使い方なのかを言葉にできる。今日試せるのは、職場で幅木や壁に沿って留められたコードを1本探し、留め具がコードに食い込んでいないか、折れ曲がったまま固定されていないかを見ることだ。
コードは「動かして使う」前提で作られた電線で、屋内配線に求められる保護を最初から持っていない。動かない場所に固定した瞬間、その前提がずれる。このズレが冒頭のような発熱や、プラグ側のトラッキング現象につながっていく。家電やOA機器が増えるほど「コンセントが足りない」場面は増えるが、そこで延長コードを足すのか、専用回路を1つ増やす工事として提案するのか。その線引きを説明できる人が、現場で頼りにされる。
冒頭の延長コードで何が起きていたのか、答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。