工場の構内に引いた配電線の末端で、機器の電圧が定格を割り込んでいる。線路の途中には負荷が3か所ぶら下がっていて、電線の太さも距離もわかっている。どの区間が降下の原因なのか、電線を太くするならどの区間を替えるのが効くのか。
負荷が1点だけなら、これまでの式()に代入すれば終わる。ところが負荷が途中に何点もあると、区間ごとに電流が違い、力率までバラバラになる。線路が輪になっていれば、電流がどちらから流れ込むのかさえすぐにはわからない。
読み終えるころには、負荷が何点あっても、区間電流を末端から数えて末端電圧と線路損失を自分の手で出せるようになっている。
結論:電流を数えてから、降下を重ねる
多点負荷の計算は、次の3段で片づく。(1)末端から区間電流を足し上げる。(2)区間ごとに電圧降下を求める。(3)電源から目的の点まで降下を足す。損失は区間ごとに で求めて足す。力率が違えば、足し上げる前に有効分と無効分に分ける。環状線路だけは、最初の1本の電流を とおき、1周の降下の和を0とおく手順が加わる。
単一の負荷の降下の式と力率改善は、「配電系統の電圧降下・力率改善」のトピックにある。ここではその式を前提に、負荷が複数ある線路と環状の線路へ広げる。バランサやループ方式そのものの特徴は「配電方式(単相2線式〜三相4線式)」に譲る。
基本の約束:区間電流の足し上げ
電源から末端へ向かって、負荷のある点(A、B、C…)で線路を区間に分ける。ある区間を流れる電流は、その区間より先(末端側)にぶら下がっているすべての負荷の電流の合計になる。電源に近い区間ほど多くの電流が流れ、末端の区間が最も小さい。
力率がすべて1.0なら、負荷電流をそのまま足してよい。力率が違うときは、電流の大きさを足してはならず、各負荷を有効分と無効分に分ける。
その区間(電線1条あたりの抵抗 、リアクタンス )の電圧降下は、有効分に抵抗、無効分にリアクタンスが対応する形になる。
係数の と2は、既存のトピックにある単一負荷の式と同じ成り立ちだ(往復2本分が2、線間電圧基準が )。損失は、三相3線式なら 、単相2線式なら往復2本分で になる(日本電気技術者協会の解説にも、三相3線式の線路損失 が示されている)。
この計算には近似が2つ入っている。1つ目は、日本電気技術者協会の解説にあるとおり、配電線では降下の式の小さい項 を無視していること。2つ目は、各負荷の力率を「その負荷点の電圧に対する力率」として使い、区間ごとの電圧の位相のずれを無視していることだ。どちらも、手計算で配電線の降下を求めるときの近似である。
例題1 多点負荷(2点)の電圧降下と損失
電源側S点の線間電圧が6 900Vの三相3線式配電線で、S点から1.5km先にA点、そこからさらに0.8km先にB点がある。電線1条あたりの抵抗は0.3Ω/km、リアクタンスは0.25Ω/km。A点に75A(力率0.6・遅れ)、B点に40A(力率1.0)の負荷がある。B点の線間電圧と、線路の電力損失を求めよ。
区間電流(末端から足し上げる)。
- B点の負荷:有効分 A、無効分 0A。
- A点の負荷:有効分 A、無効分 A。
- A-B間は B点の負荷だけなので 。S-A間は両方を足して 。
区間の降下。S-A間は 、。A-B間は 、。
合計の降下は約121.8V。B点の電圧は V(降下率は約1.8%)。
検算(重ね合わせ)。A点の負荷だけなら降下は V、B点の負荷だけ(2.3km、)なら V。足すと約121.8Vで、足し上げ法と一致する。
損失。区間ごとに を計算する。
合計は約15.8kW。区間ごとに計算するのが決め手で、S-A間の電流が全長()に流れるとして で求めると約22.4kWと大きすぎる値になる。
この例では、電源に近いS-A間に全負荷の電流が流れるので、損失15.8kWのうち14.6kWがこの区間で生じる。電線を替える区間は、区間ごとに降下と損失を計算して決める。
分岐線路:足してよい降下、足してはいけない降下
幹線の途中から枝が出ている線路(放射状)では、電源から枝の末端までの経路は1本しかない。したがって電源から末端までの降下は、その経路上の区間の降下の合計であり、別の枝の降下は足さない。一方、分岐点より電源側の幹線には、すべての枝の電流が流れている。この2点を両方満たすのが計算のコツだ。
例題2 分岐つき線路
三相3線式(S点の線間電圧6 600V)で、S点から幹線1.0kmのP点まで送り、P点の負荷は30A。P点からB点へ1.0km(負荷40A)、C点へ1.5km(負荷60A)の2本の枝が出ている。力率はすべて1.0、電線1条あたりの抵抗は0.2Ω/km、リアクタンスは無視する。B点とC点の電圧を求め、線路全体の損失を求めよ。
幹線S-P間には、P点・B点・C点の負荷の合計 A が流れる。
枝は、B枝が ・電流40A、C枝が ・電流60A。
B点は V、C点は V。C点が最低電圧点になる。B枝の降下にC枝の31.2Vを足してはいけない。
損失は、S-P間 W、B枝 W、C枝 W で、合計14.3kW。
環状(ループ)線路:1周の降下の和を0とおく
線路が輪になって電源に戻る環状線路では、負荷が両側から電流を受け取れる。電流の向きと大きさがすぐにはわからないので、次の手順で決める。
- 電源点で輪を切って開き、両端から給電される線路(両端給電)とみなす。
- 一方の端(S-A間)の電流を とおき、負荷点を通るたびにその点の負荷電流を引いて、全区間の電流を で表す(負になれば、向きが逆)。
- 両端の電圧が等しければ、1周の電圧降下の和は0になる。両端の電圧が違うなら、1周の降下の和がその電圧差に等しい。この式で を決める。
この手順はキルヒホッフの電圧則からの導出で、出典の文言ではない。
全区間が同じ電線で、抵抗が距離 に比例し、力率がすべて1.0(リアクタンスなし)なら、 は次の形にまとまる。 は輪の全長、 はk番目の負荷点までの、S-A側から測った距離、 はその負荷電流である。
導出:各区間の電流は から負荷電流を順に引いたもの。1周の降下の和を0とおくと となり、これを解いたのが上の式。「各負荷電流に、反対側の端までの距離の割合を掛けて足す」という意味になる。
力率が違っても、全区間が同じ電線(1kmあたりの 、 が同じ)なら、同じ式を有効分と無効分にそれぞれ別々に当てはめられる(導出:インピーダンスが長さに比例するので、複素数の電流のまま同じ形の式になる)。
例題3 環状線路の区間電流と最低電圧点
電源S点から出た三相3線式の環状線路が、S点→A点(1.0km)→B点(2.0km)→C点(1.0km)→S点(1.0km)と一周する。負荷はA点が20A、B点が50A、C点が30Aで、力率はすべて1.0。電線1条あたりの抵抗は0.2Ω/km、S点の線間電圧は6 600V。環状線路を閉じて運転するときの区間電流、最低電圧点、その点の電圧、線路の損失を求めよ。
輪の全長は km。S-A側から測った各負荷までの距離は、A点が1km、B点が3km、C点が4km。
区間電流は、S-A間が42A、A-B間が A、B-C間が A(C→Bの向きに28A)、C-S間は A(S→Cの向きに58A)。B点で、A側から22A、C側から28Aが流れ込み、合計50AがB点の負荷に使われる。B点が電流の合流点であり、最低電圧点になる。
B点までの降下は、A側から計算すると、
C側から計算しても V で一致する。B点の電圧は V。
損失は、全区間を足して、
環状線路の検算は、合流点までの降下を両側から計算して一致するかを見る。一致しなければ、 の計算か電流の向きが間違っている。力率がそろっていないと有効分と無効分で合流点がずれることもあるので、各点の降下 を比べて最低電圧点を決める。
両端の電圧が違うとき
2つの変電所から両端給電する線路のように、両端の電圧に差 があると、負荷の有無にかかわらず電圧の高い端から低い端へ循環電流が流れる。両端の電圧は同相(大きさだけが違う)で、力率1.0・抵抗だけの線路とし、両端間の線路1線分の全抵抗を として、
(導出:線間電圧の差が、線路の降下 に等しいとおいたもの。)負荷が接続されている場合は、この循環電流を、上で求めた負荷電流の分担に重ね合わせる。たとえば V、 なら A。
単相3線式の不平衡:電圧線と中性線の降下
単相3線式は、電圧線の降下が往復2倍にならない。各電圧線の降下は (電流×電圧線の抵抗)で、不平衡電流 が流れる中性線の降下 が、電流の大きい側の電圧をさらに下げ、小さい側の電圧を持ち上げる。負荷1側(電流 が大きい)と負荷2側の端子電圧は、電源側の各線と中性線の間の電圧を として、
(導出:中性線に流れる差電流による降下を、電圧線の降下に重ねたもの。力率1.0、リアクタンスなしで、負荷が線路の末端に接続している場合。)V、、A、A なら V、V となる。
この不平衡を負荷側で均等化するのがバランサで、理想的なもの(内部のインピーダンスを無視)なら両電圧線の電流が平均の30Aにそろい、両側の電圧は V になる。詳細は「配電方式(単相2線式〜三相4線式)」を参照。
過去問の型で整理する
令和5年度上期・令和6年度上期・令和7年度下期の問17は、いずれも次の型にあたる(数値と文言は転載していない)。
- 型A(多点負荷):区間電流を有効分・無効分に分けて足し上げ、区間の降下または降下率を求める。例題1のとおり(令和5年度上期、令和7年度下期の型)。
- 型B(環状):開閉器を開いた放射状の降下を求めたあと、開閉器を閉じて環状にしたときに開閉器を流れる電流を求める(令和6年度上期の型)。電源点で輪を切って をおき、開閉器の位置の区間電流を求める(例題3)。開いたときの開閉器両端の電圧差 から、閉じたときの電流を と求める見方もある(力率1.0・抵抗のみの近似。「両端の電圧が違うとき」の節)。
- 型C(有効成分・無効成分を問う):区間電流の有効成分や、末端の線間電圧が問われる。有効分と無効分の分解がそのまま答えになる。
どの型も、解く前に「①図に区間ごとの電流を書き込む ②力率がそろっているか確認する ③放射状か環状か」の3点を確認する。式は、三相3線式の降下の式と損失の だけで足りる。
注意点:間違えやすいところ
- 区間ごとに「この区間より先に負荷がいくつあるか」を数える。区間の電流を、その区間の末端の負荷電流だけで済ませない。
- 力率が違う負荷は、電流の大きさどうしを足さず、有効分と無効分に分けてから足す。大きさのまま足してよいのは、力率がすべて1.0のときだけ。
- 分岐線路は、電源から末端までの経路上の降下だけを足す。ただし幹線には、すべての枝の電流が流れている。
- 環状線路は、電流の向きを決めてから降下を足す。合流点までの降下を両側から計算して、一致するかを検算する。
実務との接点:電線サイズの選定と、降下率・損失率
配電線の降下を抑えるには、電線を太くして抵抗 を下げるのが基本だ。日本電気技術者協会の解説では、力率がほぼ1のとき、電圧降下率と損失率(送る皮相電力に対する線路損失の割合)がほぼ等しくなることが示されている。降下率3%の線路は、送る電力の約3%を線路で失っていることになり、電線を太くすれば電圧の確保と損失の低減が同時に進む。
多点負荷の線路では、電流が最も多く流れる電源側の区間で損失が大きくなりやすい(例題1)。ただし区間の抵抗によって変わるので、電線を替える区間は、全長を一律に太くするのではなく、区間ごとの電流と抵抗から降下と損失を計算して決めると、効果の大きい区間が見える。冒頭の問いにも、例題1のように区間ごとに降下と損失を並べると答えが出る。