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法規 ・ 5 / 13

労働安全衛生法① — 現場の安全は、誰が、どの人数規模から、何を担うのか

読み終えると、こうなる

「50人以上」と書かれた選任基準を見たとき、まず「誰の人数を、どの単位で数えるのか」を確かめ、よく似た名前の役職を取り違えずに選べるようになる

  • 仮定の現場(工事の種類と、同じ場所で常時作業する人数)から、統括安全衛生責任者・元方安全衛生管理者・店社安全衛生管理者のうち選任が必要な者を、施行令7条2項と規則18条の6の数字で判定できる
  • 総括安全衛生管理者(事業場の物差し、建設業は常時100人以上)と統括安全衛生責任者(同じ場所の全員の物差し)を、数える対象と条文の違いから見分けられる
  • 元方事業者・特定元方事業者・関係請負人の定義と、安全衛生責任者を選ぶのが誰かを、条文の言葉で説明できる
  • 作業主任者が、人数ではなく作業ごとに、免許を受けた者又は技能講習を修了した者から選ばれることを、条文の構造で説明できる
考えてみよう

たとえば、新築ビルの空調・衛生設備工事の現場。朝礼の列に並んだのは、元請の社員が14人、下請各社の作業員があわせて38人。全部で52人だ。

元請の担当者は言う。「うちの社員は14人。50人にはまだ遠い」。下請の担当者は言う。「この現場には52人いる。50人を超えた」。同じ現場の同じ朝なのに、数字が2つある。選ぶ義務が生じるかどうかは、どちらの数字で決まるのか。

しかも、字面のよく似た役職が2つある。「総括安全衛生管理者」と「統括安全衛生責任者」。試験でも現場でも、名前と数字を取り違えて足を取られやすいところだ。

読み終えるころには、数字を丸暗記しなくても、「誰の、何人を、どの単位で数えるのか」から、選ぶ人を導けるようになっている。

まず一言で

安全衛生管理体制は、数える物差しが3つある。

  • 事業場:事業者が、自分の事業場で使用する労働者を数える。総括安全衛生管理者、安全管理者、衛生管理者、産業医、安全委員会、衛生委員会
  • 現場:同じ場所で働く元請と下請の全員を数える。統括安全衛生責任者、元方安全衛生管理者、店社安全衛生管理者、安全衛生責任者
  • 作業:人数ではなく、危険な作業ごとに決まる。作業主任者

建設現場の中心は、2つ目の「現場」だ。特定元方事業者(元請にあたる事業者)は、同じ場所の作業従事者が常時50人以上(ずい道等・圧気工法・一定の橋梁の工事は30人以上)になると、統括安全衛生責任者を選任する。店社安全衛生管理者の基準は20人以上で、鉄骨造・鉄骨鉄筋コンクリート造の建築などにかかる。

呼び名は、労働安全衛生法を「法」、同施行令を「令」、労働安全衛生規則を「規則」と書く。

条文は、2026年11月2日に e-Gov で確認した版(施行日2026年10月1日)だ。ここで扱う人数・期限・資格の定めは、2026年4月1日施行の版から変わっていない。ただし、書きぶりはその日に変わった。それより前の版では「労働者の数」だった箇所が、4月1日施行の版から「作業従事者の数」(事業を行う者が行う仕事の作業に従事する者。労働者でない人も含む)になっている。30・50・20という数字は同じだ(100は事業場の物差しで、令2条のとおり「労働者」のままだ)。ただし現場の物差しの「作業従事者」は労働者でない人も含むので、数える対象は広がっている。令和8年度の試験問題は人数を「労働者」の語で書くことがあるが、判定の骨格は同じだ。

仕組み — なぜ?

なぜ、元請と下請の役割が分かれるのか

労働災害を防ぐための措置(法20条以下)の義務は、「事業者」に課される。自分の労働者を使用する会社が、自分の労働者を守る、というのが基本の形だ。

ところが建設現場では、何社もの作業が同じ場所で混ざる。たとえば、上の階の作業員が落とした物が、下の階の別会社の作業員に当たる。こうした混在の災害は、1社の措置だけでは防ぎきれないことがある。法15条1項と30条1項は、これを「作業が同一の場所において行われることによつて生ずる労働災害を防止するため」と書き、現場全体をまとめる役を、元請にあたる事業者に置く。元請に置く理由までは、条文に書かれていない。最先次の注文者が現場全体の工程と作業の組合せを決める立場にあるから、というのは当サイトの読みだ。

労働安全衛生法15条1項は、「元請」「下請」ではなく、次の3つの語を定義する。

  • 元方事業者:一の場所で行う事業の仕事の一部を請負人に請け負わせている事業者。請負契約が二以上あって該当者が二以上になるときは、最も先次の請負契約における注文者
  • 特定元方事業者:元方事業者のうち、建設業(令7条1項により造船業も)に属する事業を行う者
  • 関係請負人:請負人と、数次の請負契約の後次のすべての請負人

建設業法の「元請負人」とは範囲が違う。建設業法の側は、別のトピック「元請負人の義務」「施工体制台帳と施工体系図」で扱った。次の表で並べる。

見るところ建設業法労働安全衛生法
上の会社元請負人元方事業者
誰がなるか下請契約の注文者である建設業者(二次下請に出す一次下請も)最も先次の注文者の1社
下の会社下請負人関係請負人(後次すべて)
建設業法2条5項、労働安全衛生法15条1項。違いは、契約ごとの関係を見るか、同じ場所の混在を見るかの違い、と読める(当サイトの読み)

もう1つ大事なことがある。法30条1項は、特定元方事業者に、協議組織(元請と関係請負人が参加する会議体)の設置・運営、作業間の連絡・調整、作業場所の巡視、関係請負人の安全衛生教育への指導・援助、工程と機械設備の配置の計画づくりなどの措置を求める。この条文に、人数の定めはない。規則635条〜638条の3も同じで、協議組織は定期的に開き、巡視は毎作業日に少なくとも一回行う。人数で変わるのは、これらを統括する人(統括安全衛生責任者)を置く義務のほうだ。

なぜ、人数規模で体制が変わるのか

法15条1項のただし書は、作業従事者の数が政令で定める数未満のときは統括安全衛生責任者を置かなくてよいと書くが、理由は書いていない。段階が分かれた経緯を書くのは、平成5年(1993年)の通達だ。一定の規模及び種類の建設工事について、店社安全衛生管理者制度の創設と統括安全衛生責任者の選任基準の引下げが行われたと書き、あわせて示した指針の趣旨に、統括安全衛生責任者等の選任が義務付けられていない中規模の建設工事現場で、元方事業者の統括管理が不十分なことによる労働災害が多発していること、を挙げる。大きな現場の体制から漏れていた中規模の現場に、基準を下げ、店社の層を足した、という経緯と読める(当サイトの読み)。古い通達なので、数字の根拠には使わない。

ずい道等・橋梁・圧気が30人から、鉄骨造の建築の店社が20人から、という数字の理由は、条文にない。橋梁だけは、令7条2項1号が「作業場所が狭いこと等により安全な作業の遂行が損なわれるおそれのある場所」と書き、規則18条の2の2が、人口が集中している地域内の道路上・道路に隣接した場所、鉄道の軌道上・軌道に隣接した場所と定める。ほかの仕事の理由は、確認できていない。

小さな現場は何もしなくてよい、のではない。30条の措置は人数にかかわらず残る。建災防(建設業労働災害防止協会)のテキストも、統括安全衛生責任者が要らない規模の現場では、現場所長がその役割を果たす、と書く。

なぜ、事業場と現場で、数え方が違うのか

事業場の物差しは、令2条〜5条・8条・9条の「常時…以上の労働者を使用する事業場」だ。使用するのは事業者で、下請の作業員は下請会社が使用する労働者だから、元請の事業場の数には入らない(当サイトの読み)。現場の物差しは、法15条1項が、特定元方事業者自身の作業従事者と、関係請負人に係る作業従事者を、まとめて数える。

建災防テキストの体制図も、安全管理者・衛生管理者・産業医・安全衛生委員会・総括安全衛生管理者を「事業者主体」、店社・統括・元方・安全衛生責任者を「混在作業」の側に分けて描く。

覚え方(1つだけ):「総括」は事業場の中の長、「統括」は元請と下請が混ざった現場の長。総括は、その事業場で使用する労働者で数え(建設業は常時100人以上)、統括は同じ場所の全員で数える。

これで、「総括」と「統括」を、数える対象と条文から見分けられる。

数と条文で追う

事業場の物差し(建設業)

体制建設業の事業場の規模条文
総括安全衛生管理者常時100人以上法10条、令2条1号
安全管理者常時50人以上法11条、令3条
衛生管理者常時50人以上法12条、令4条
産業医常時50人以上法13条、令5条
安全委員会・衛生委員会どちらも常時50人以上法17条・18条、令8条1号・9条
安全衛生推進者常時10人以上50人未満法12条の2、規則12条の2
いずれも、事業者が常時使用する労働者の数。両方の委員会を設けるべきときは、安全衛生委員会1つに代えられる(法19条)

選任は、選任すべき事由が発生した日から14日以内(総括は規則2条1項、安全管理者は4条1項1号、衛生管理者は7条1項1号、産業医は13条1項1号。安全衛生推進者等も規則12条の3で14日以内)。総括安全衛生管理者は、事業の実施を統括管理する者をもって充て(法10条2項)、安全管理者・衛生管理者などを指揮して、危険・健康障害の防止の措置、安全衛生教育、健康診断、災害の原因調査などを統括管理する(法10条1項)。

現場の物差し

体制誰が・いつ選ぶか条文
統括安全衛生責任者特定元方事業者が、同じ場所の作業従事者が常時50人以上(30人以上の仕事あり)のとき法15条1項、令7条2項
元方安全衛生管理者統括を選任した建設業の事業者が、技術的事項を管理させる法15条の2
店社安全衛生管理者元方事業者が、統括が要らない場所で20人以上のとき(請負契約を結ぶ事業場ごと)法15条の3、規則18条の6
安全衛生責任者統括を選任すべき事業者以外の、自ら仕事を行う請負人が法16条
30人以上の仕事は令7条2項1号。店社の20人は、同号の仕事と、鉄骨造・鉄骨鉄筋コンクリート造の建築の建設の仕事(規則18条の6)

何をするのかを、役職ごとに見る。

  • 統括安全衛生責任者:元方安全衛生管理者の指揮をし、法30条1項各号の事項を統括管理する。当該場所で事業の実施を統括管理する者をもって充てる(法15条1項・2項)。建災防のテキストは、これを現場所長として説明している
  • 元方安全衛生管理者:30条1項各号の事項のうち技術的事項を管理する(法15条の2)。その事業場に専属の者で(規則18条の3)、資格は、理科系の大学・高専卒で建設工事の施工における安全衛生の実務3年以上、同じく高校卒で5年以上など(規則18条の4)
  • 店社安全衛生管理者:現場で30条1項各号の事項を担当する者への指導のほか、少なくとも毎月1回の巡視、作業の実施状況の把握、協議組織の会議への随時の参加、計画に関する措置の確認を行う(法15条の3、規則18条の8)
  • 安全衛生責任者:統括との連絡、連絡を受けた事項の関係者への連絡と実施の管理、元請の計画との調整、危険の有無の確認、後次の請負人の安全衛生責任者との連絡・調整を行う(規則19条)。選任したら、統括安全衛生責任者を選任すべき事業者に遅滞なく通報する(法16条2項)

この4者には、やむを得ない事由で職務を行えないときの代理者が要る(規則3条、20条)。

人数と工事の種類を、1枚で

店社の対象は、統括を選任しなければならない場所を除く(法15条の3第1項のかっこ書き)。この除外があるので、同じ人数でも、工事の種類によって体制が変わる。

同じ場所の人数と、選ぶ人(現場の物差し) ずい道等・圧気・一定の橋梁 なし 店社 統括・元方 鉄骨造・鉄骨鉄筋コンクリート造の建築 なし 店社 統括・元方 それ以外(鉄筋コンクリート造の建築など) なし 統括・元方 0 20 30 50 70人 同じ場所で常時作業する人数と、選任が必要な者(自作の概念図。令7条2項、規則18条の6、法15条の3第1項のかっこ書きの組合せ。「統括・元方」は統括安全衛生責任者と元方安全衛生管理者。「なし」は統括・元方・店社の選任義務がない範囲で、法30条の措置は残る)

一番下の「それ以外」の仕事にも、店社の基準はある(規則18条の6第1項2号の50人)。ただ、50人以上の場所は統括を選任する場所なので、店社の対象から除かれる。条文を組み合わせると、この仕事に店社の出番はない(当サイトの読み)。

例題 — 52人の現場で、誰を選ぶか

たとえば、鉄筋コンクリート造の事務所ビルの新築。同じ現場で常時作業するのは、元請(特定元方事業者)の社員14人、空調設備会社9人、衛生設備会社7人、電気設備会社12人、内装会社10人とする。

  1. 仕事の種類:鉄筋コンクリート造の建築。ずい道等・圧気・一定の橋梁でも、鉄骨造・鉄骨鉄筋コンクリート造でもない。令7条2項2号の「それ以外」なので、基準は常時50人
  2. 数える対象:同じ場所の全員。14+(9+7+12+10)=14+38=52人
  3. 判定:52人は50人以上。元請は統括安全衛生責任者を選任し(法15条1項)、元方安全衛生管理者を選任して技術的事項を管理させる(法15条の2)。各下請は、自ら仕事を行う請負人として安全衛生責任者を選び、通報する(法16条)
  4. 店社:統括を選任する場所は除かれるので、店社安全衛生管理者は要らない

もし内装会社が7人で、全体が49人だったら。統括・元方の選任義務は生じず、鉄筋コンクリート造の店社の基準は50人なので、店社も要らない。下請の安全衛生責任者の選任義務(法16条は、統括を選任すべき場合を前提にする)も生じない。それでも、特定元方事業者の法30条の措置は残る。

最初の問いの答えもここで出る。選ぶ義務が生じるのは、同じ場所の全員を数えた52人のほうだ。元請の社員だけを数えた14人は、事業場の物差しの数え方になる。ただし、一つの現場が一つの事業場にあたるかは、条文に書かれておらず、本稿では確認していない。

やってみよう ①:規模と工事の場面を、3つ判定する

特定元方事業者が、同じ場所で常時作業する人数(自社と関係請負人の合計)をもとに、統括安全衛生責任者と店社安全衛生管理者のどちらが要るか判定する。

(a) 主要構造部が鉄骨造の工場の新築、常時38人。 ずい道等・圧気工法・一定の橋梁を伴わない鉄骨造の建築は令7条2項2号なので、統括は50人から。38人では統括は要らない。一方、鉄骨造は規則18条の6第1項1号の20人以上に当たり、統括を選任する場所でもないので、店社安全衛生管理者を選任する。

(b) ずい道の建設、常時26人と、常時32人。 ずい道等は令7条2項1号なので、統括は30人から。26人は統括不要で、20人以上なので店社。32人は統括・元方。

(c) 橋梁の建設、常時35人。(c1)人口が集中している地域内の道路上、(c2)人口が集中していない地域で、道路にも鉄道の軌道にも隣接しない場所。 (c1)は令7条2項1号(規則18条の2の2の場所)なので30人から。35人で統括・元方。(c2)は同号の場所でなく2号なので、統括は50人から。店社の20人も、1号の仕事と鉄骨造の建築だけなので、(c2)はどちらも要らない。

これで、工事の種類と人数から、統括・元方・店社のどれが要るかを判定できる。

作業の物差し — 作業主任者は、人数ではなく作業で決まる

法14条には、人数の語がない。「労働災害を防止するための管理を必要とする作業で、政令で定めるもの」について、事業者が、免許を受けた者又は技能講習を修了した者のうちから、作業の区分に応じて作業主任者を選任し、作業に従事する労働者の指揮その他を行わせる。

どの作業か(令6条)、誰から選ぶか(規則16条・別表第一)は、作業ごとに決まる。管工事に近いものを並べる。

作業(令6条)選ぶ資格(別表第一)名称
アセチレン溶接装置・ガス集合溶接装置の溶接等(2号)免許を受けた者ガス溶接作業主任者
掘削面の高さ2m以上の地山の掘削(9号)技能講習修了者地山の掘削作業主任者
つり足場(ゴンドラのつり足場を除く)・張出し足場・高さ5m以上の足場の組立て等(15号)技能講習修了者足場の組立て等作業主任者
酸素欠乏危険場所での作業(21号)技能講習修了者酸素欠乏危険作業主任者
21号のうち、酸素欠乏・硫化水素危険作業主任者の対象になる場所(令別表第六の第3号の3・第9号・第12号。第12号は、酸素欠乏症と硫化水素中毒の両方のおそれがある場所として厚生労働大臣が定めるものに限る)は、その技能講習修了者から選ぶ。令6条9号の地山の掘削は、ずい道及びたて坑以外の坑の掘削と、11号の作業を除く

職務も作業ごとに規則が定める。足場の組立て等作業主任者なら、材料の欠点の点検と不良品の除去(解体の作業では適用しない)、器具・工具・要求性能墜落制止用器具(墜落を止める器具)・保護帽の機能の点検、作業の方法と労働者の配置の決定と進行の監視、要求性能墜落制止用器具・保護帽の使用状況の監視、の4つだ(規則566条)。選任したら、氏名と行わせる事項を作業場の見やすい箇所に掲示するなどして周知する(規則18条)。

やってみよう ②:○か×か

(a) 元請の社員が12人でも、下請を含め同じ場所に常時60人いる鉄筋コンクリート造の建築の現場では、元請は統括安全衛生責任者を選任する。 → ○。法15条1項は、特定元方事業者自身と関係請負人の作業従事者を合計して数える。

(b) 鉄筋コンクリート造の現場の人数が45人のとき、特定元方事業者には、協議組織の設置・運営や作業場所の巡視の義務はない。 → ×。法30条1項にも、規則635条〜638条の3にも人数の定めはない。人数で決まるのは、統括安全衛生責任者などを置く義務だ。

(c) 統括安全衛生責任者は、選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任しなければならない。 → ×。14日以内は、総括・安全管理者・衛生管理者・産業医(規則2条・4条・7条・13条)など、事業場の役職にある。法15条と規則18条の2の2〜20条には、見当たらない。

(d) 作業主任者は、現場の人数が基準に達したときに、特定元方事業者が選ぶ。 → ×。作業主任者は、令6条の作業ごとに、事業者が選ぶ(法14条)。

現場とつなぐ

  • 着工前に数える。数えるのは、元請と、数次の関係請負人の作業従事者だ。「常時」の意味は条文に定義がなく、本稿では確認できていない。基準の近くで人数が増減する現場は、所轄の労働基準監督署に確認する(当サイトの考え方)
  • 出す書類。特定元方事業者(法30条2項・3項で指名された事業者を除く)は、関係請負人の作業が同じ場所で行われるとき、作業の開始後、遅滞なく、事業の種類・名称・所在地、関係請負人の事業の種類・名称・所在地、統括・元方・店社を選任すべきときはその旨と氏名を、労働基準監督署長に報告する(規則664条)
  • 下請の管工事会社の立場。自社の作業の計画が、元請の工程と機械設備の配置の計画(法30条1項5号、建設業は規則638条の2・638条の3)と食い違わないよう、安全衛生責任者が統括と調整する(規則19条4号)
  • 電気との接点。建設業の元方事業者は、架空電線の充電電路に近接し感電の危険が生ずるおそれのある場所で、関係請負人の作業従事者が工作物の建設・解体・点検・修理・塗装などを行うときは、関係請負人の危険防止措置が適正に講じられるよう、技術上の指導その他の必要な措置を講じる(法29条の2、規則634条の2第3号)。

試験での出方とワナ

出題の型

令和8年度の問題Bは、No.10で「建設工事における安全管理体制」の4つの記述から、誤っているものを選ばせた。4つが取り上げたのは、統括安全衛生責任者の統括管理事項、元方安全衛生管理者の職務、選任の人数基準、選任の期限。誤りは、人数基準の記述(役職名と人数の組合せ)だった。公表された正答は、その記述を選ぶものだ。残る3つは、このトピックの条文で確かめられる。

解く手順

  1. 役職名に線を引く。総括・統括・店社・元方・安全衛生責任者・作業主任者
  2. 数える対象を決める。事業場の自社の労働者か、同じ場所の全員か、作業か
  3. 工事の種類を決める(令7条2項1号か2号か、鉄骨造の建築か)
  4. 数字を引く。100・50・30・20のどれか
  5. 期限なら、14日以内が出る役職か確かめる
ここで引っかかる:「50人以上」が出てきたとき、頭に浮かぶ役職が1つに決まらない。安全管理者・衛生管理者・産業医・委員会は事業場の50人、統括は現場の50人(ずい道等は30人)、店社の基準は鉄骨造などで20人。役職名を先に読み、数える対象を確かめてから数字を引く。

冒頭の問いの答え合わせ

元請の社員14人、下請38人、合計52人の現場。

  • 選ぶ義務が生じるのは、同じ場所の全員を数えた52人のほう(法15条1項)。ずい道等・圧気工法・一定の橋梁を伴わない鉄筋コンクリート造の建築は令7条2項2号で常時50人なので、元請は統括安全衛生責任者と元方安全衛生管理者を選び、各下請は安全衛生責任者を選ぶ
  • 元請の社員だけを数えた14人は、事業場の物差しの数え方になる(現場を元請の事業場と見た場合)。総括安全衛生管理者(建設業は100人以上)や安全管理者(50人以上)の基準には届かない
  • 総括と統括は、字面が似ているだけで、数える対象も条文も別。総括は法10条と令2条、統括は法15条と令7条

答え合わせは、理解度チェックの問1・問2・問4(名前と数字)、問5〜7・問12(規模の判定)でしてみよう。

次の問い

体制が整った現場で、統括安全衛生責任者は、実際に何を確かめるのか。高い所の作業では、何メートルから、どんな設備を設けなければならないのか。足場や通路には、どんな決まりがあるのか。次のトピック(労働安全衛生法②)で読む。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 総括安全衛生管理者と統括安全衛生責任者を、名前と数字ごと取り違える

    なぜ引っかかる字面が似ていて、どちらも「〇〇人以上で選任する者」と覚えてしまう。総括は事業場で数え、統括は同じ場所の全員で数える、という物差しの違いを落としやすい

    見破り方役職名に線を引き、数える対象を先に確かめる。「同じ場所の元請と下請の全員」なら統括(法15条)、「事業者が事業場で使用する労働者」なら総括(法10条、令2条)。建設業の総括は常時100人以上

  2. 下請の人数を含めて、事業場の物差し(安全管理者・衛生管理者・産業医・委員会)を数える

    なぜ引っかかる現場の朝礼では全員が並ぶので、全員の人数で数えたくなる。事業場の物差しは、事業者が使用する労働者の数で決まる

    見破り方令2条〜5条・8条・9条は「常時…の労働者を使用する事業場」と書く。下請の作業員は下請会社が使用する労働者なので、元請の事業場の数には入らない(当サイトの読み)。下請を含めて数えるのは、法15条1項の現場の物差し

  3. 統括の30人と50人、店社の20人を、工事の種類を見ずに混ぜる

    なぜ引っかかるずい道等・圧気・一定の橋梁は統括が30人から、鉄骨造・鉄骨鉄筋コンクリート造の建築は店社が20人から、それ以外は50人、と3つの数字が並ぶ

    見破り方まず工事の種類(令7条2項1号か2号か、規則18条の6の鉄骨造か)を決め、次に数字を引く。ずい道等・圧気工法・一定の橋梁を伴わない鉄骨造の建築なら、統括が必要になるのは50人から。20人は店社の数字

  4. 「14日以内」を現場の役職にも当てはめる。「人数に届かなければ元請に義務はない」と考える

    なぜ引っかかる14日以内は事業場の役職の選任にあり、現場の役職には見当たらない。また、人数で決まるのは統括安全衛生責任者などを置く義務で、協議組織・巡視などの措置義務ではない

    見破り方14日以内が出てきたら、総括・安全管理者・衛生管理者・産業医(規則2条・4条・7条・13条)など、事業場の役職か確かめる。現場の措置(法30条1項)に人数の定めはなく、巡視は毎作業日に少なくとも一回(規則637条)

参考文献・出典

理解度チェック(12問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、12問で確認しよう。 内訳は基本3問・応用6問・ひっかけ3問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 12 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 元方事業者は、一の場所で行う事業の仕事の一部を請負人に請け負わせている事業者で、請負契約が二以上あるときは最も先次の請負契約における注文者。そのうち建設業(令7条1項で造船業も)の事業を行う者が特定元方事業者。数次の請負の後次の請負人は、すべて関係請負人(法15条1項)。建設業法の元請負人とは範囲が違う
  2. 特定元方事業者は、自社と関係請負人の作業従事者が同一の場所で常時50人以上(ずい道等の建設、規則18条の2の2の場所での橋梁の建設、圧気工法による作業を行う仕事は30人以上)作業するとき、統括安全衛生責任者を選任し、元方安全衛生管理者の指揮と法30条1項各号の事項の統括管理をさせる。統括を選任した建設業の事業者は、元方安全衛生管理者に技術的事項を管理させる(法15条・15条の2、令7条2項)
  3. 店社安全衛生管理者は、統括安全衛生責任者の選任場所を除き、作業従事者が常時20人以上(令7条2項1号の仕事と、主要構造部が鉄骨造又は鉄骨鉄筋コンクリート造の建築物の建設の仕事。それ以外の仕事は50人)のとき、請負契約を締結している事業場ごとに選任する(法15条の3、規則18条の6)。安全衛生責任者は、統括を選任すべき事業者以外の請負人で仕事を自ら行うものが選任し、遅滞なく通報する(法16条)
  4. 事業場の物差しは、事業者が常時使用する労働者の数。建設業は、総括安全衛生管理者が100人以上、安全管理者・衛生管理者・産業医・安全委員会・衛生委員会が50人以上(令2条〜5条・8条・9条)。総括・安全管理者・衛生管理者・産業医の選任は、事由が発生した日から14日以内(規則2条・4条・7条・13条)
  5. 作業主任者は、人数ではなく、令6条の作業ごとに、事業者が、免許を受けた者又は技能講習を修了した者のうちから、作業の区分に応じて選任する(法14条、規則16条・別表第一)。ガス溶接は免許、足場の組立て等は技能講習
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