あなたは元請の現場担当者だ。空調設備の下請会社から「工事が完了しました」と連絡が来た。検査は何日以内に終えなければならないのか。検査が済んで下請が「引き渡します」と申し出たら、受け取るのはいつか。そして、注文者から代金が入ったとき、下請への支払はいつまでにすべきか。
この3つは、数える起点がそれぞれ違う。そのうえ、起点がわかっても「20日以内」を何日目まで数えるのかで、答えは1日ずれる。このトピックを読み終えるころには、下請から連絡が来た瞬間に、条文の起点から、期限の最終日をカレンダーに書き込めるようになっている。
まず一言で
元請負人が下請負人に負う時間のルールは、次の4つだ。
- 注文者から出来形部分に対する支払か完成後の支払を受けたら、1か月以内に下請代金を支払う(24条の3)
- 下請から完成の通知を受けたら、20日以内に検査を終える(24条の4第1項)
- 検査のあと下請が申し出たら、直ちに引渡しを受ける(24条の4第2項)
- 特定建設業者は、下請代金の支払期日を、引渡しの申出の日から50日を経過する日以前の日に定める(24条の6。下請が特定建設業者や資本金4,000万円以上の法人のときを除く)
どれも「できる限り短い期間内に」が重ねて書かれている。数字を覚えるだけでは足りない。どの日から数えるのか(起点)と、その日を何日目と数えるのか(民法の期間の計算)まで押さえると、初見の問題にも崩れなくなる。
建設業法は、元請負人を「下請契約における注文者で建設業者であるもの」(許可を受けて建設業を営む者。2条3項・5項)と定義している。下請契約の注文者である建設業者のことで、請け負った工事の全部又は一部を他の建設業を営む者に請け負わせたときの、請け負わせた側にあたる。定義上は、一次下請が二次下請に出すときの一次下請も元請負人にあたる。建設業法は、この元請負人に、下請負人との関係でいくつかの義務を課している。ここでは、現場の時間の流れに沿って、第24条の2から第24条の7までを整理する。
工事を進める前に — 工程や作業方法を決めるときは、先に下請の意見をきく
元請負人は、請け負った工事を施工するために必要な工程の細目、作業方法その他元請負人において定めるべき事項を定めようとするときは、あらかじめ、下請負人の意見をきかなければならない(24条の2)。
決めてから「こうなりました」と通知するのでは足りない。決める前に意見をきく、というのがこの規定の要点だ。下請負人の意見に従わなければならないとまでは書かれていない点もあわせて押さえておく。
4つの時計 — 何が起きた日から数えるのか
第24条の3から第24条の6が定める期限は4つあり、数える起点は3種類に分かれる。
| 起点 | 期限 | 条文 |
|---|---|---|
| 注文者から支払を受けた日 | 下請代金の支払:1か月以内 | 24条の3第1項 |
| 完成の通知を受けた日 | 検査の完了:20日以内 | 24条の4第1項 |
| 引渡しの申出の日 | 引渡しを受ける:直ちに | 24条の4第2項 |
| 引渡しの申出の日(特定建設業者のみ) | 下請代金の支払期日:50日以内 | 24条の6第1項 |
引渡しを除く期限には「できる限り短い期間内に」が重ねて書かれている(引渡しは「直ちに」)。数字はあくまで上限だ。引渡しに特約(下の「引渡し」の例外)があるときは、50日も、その特約で定めた一定の日から数える。
時計は、1本の流れの上でつながっている
4つの時計のうち3つは、「完成」から「支払」までの1本の流れの上に並んでいる。
独立しているのは、注文者から支払を受けた日から数える「1か月」だけだ。ほかの3つは、①完成の通知から②検査、③申出へと進み、④の引渡しと⑤の支払期日は、どちらも③の申出から出る。
この並びには意味がある。検査には20日という上限があり、検査のあとの引渡しは「直ちに」だ。引渡しの特約が例外として認められるのも、その日が「工事完成の時期から20日を経過した日以前」の場合に限られる。検査と引渡しに上限があるので、元請の都合で、50日の時計の起点(申出の日)を先送りできる余地は、条文の上では限られている。ただし、申出は検査のあとに下請がする行為なので、20日以内の範囲なら、検査にかけた日数の分だけ起点は後ろにずれる。引渡しを引き延ばしても、起点(申出の日)は動かない。これは条文の並びから読み取った当サイトの読みで、条文が趣旨を書いているわけではない。
検査 — 完成の通知から20日以内
下請負人から完成の通知を受けた元請負人は、通知を受けた日から20日以内で、かつ、できる限り短い期間内に、完成を確認するための検査を完了しなければならない(24条の4第1項)。「20日以内」は上限であって、20日かけてよいという意味ではない。
引渡し — 申出があれば「直ちに」
検査で完成を確認したあと、下請負人が申し出たときは、元請負人は直ちに目的物の引渡しを受けなければならない(24条の4第2項)。ここには日数の定めがない。
例外が1つある。下請契約で、工事完成の時期から20日を経過した日以前の一定の日に引渡しを受ける旨の特約がされている場合は、この限りでない。特約があるときは、直ちに受ける義務は及ばず、引渡しは特約の定めによる。
支払 — 注文者から受け取ったら、1か月以内
元請負人は、請負代金の出来形部分に対する支払又は工事完成後における支払を受けたときは、その工事を施工した下請負人に対して、支払を受けた金額の出来形に対する割合及び下請負人が施工した出来形部分に相応する下請代金を、支払を受けた日から1か月以内で、かつ、できる限り短い期間内に支払わなければならない(24条の3第1項)。出来形部分とは、工事のうち、できあがった部分のことだ。
この規定の起点は、注文者から支払を受けた日だ。下請負人の完成の通知や引渡しの申出とは無関係に、元請負人にお金が入った時点から時計が動く。
数えてみよう — 「20日以内」は、何日目までなのか
起点がわかっても、まだ落とし穴がある。「通知を受けた日から20日以内」は、通知を受けた日を1日目と数えるのか。「1か月以内」は何月何日までか。
建設業法には、期間の数え方の特別な定めがない。この場合は、民法の期間の計算の規定に従う(民法138条は、法令に特別の定めがあるときなどを除き、期間の計算は民法の規定によると定める)。使うのは次の4つだ。
- 初日は数えない(民法140条)。日、週、月又は年で定めた期間は、期間の初日を算入しない。ただし、期間が午前零時から始まるときは数える。通知を受けた日の途中から始まる期間は、午前零時からではないので、その日は数えない
- 末日の終了で満了する(141条)。最終日の終わりまでが期限だ
- 月は暦で数える(143条)。月で定めた期間は、起算日に応当する日の前日に満了する。応当する日がない月は、その月の末日に満了する
- 休日の扱い(142条)。末日が日曜日・祝日などの休日に当たるとき、期間が翌日に延びるのは、その日に取引をしない慣習がある場合に限る
やってみよう ①:3つの期限の最終日を、カレンダーに書き込む
休日は考えず、民法の原則どおりに、通知や申出を受けた日を算入しないで数える。
(1) 元請負人が5月10日に、下請負人から完成の通知を受けた。検査を完了しなければならない最終日は?
初日(5月10日)は数えない。5月11日が1日目で、20日目は5月30日。5月30日の終わりまでが期限だ。
(2) 元請負人が5月10日に、注文者から出来形部分に対する支払を受けた。下請代金を支払わなければならない最終日は?
初日は数えないので、起算日は5月11日。月で数えるので、最後の月で起算日に応当する日は6月11日で、その前日の6月10日に満了する。
(3) 特定建設業者である元請負人が6月1日に、下請負人から引渡しの申出を受けた(特約はない)。下請代金の支払期日は、何月何日以前の日に定めなければならないか?
6月2日が1日目。6月は30日までなので、6月30日が29日目、7月1日が30日目になり、50日目は7月21日。支払期日は7月21日以前に定める。
「経過する日」と「経過した日」
24条の6の中には、よく似た2つの言い方がある。
- 第1項:申出の日から起算して50日を経過する日以前に、支払期日を定める
- 第4項:申出の日から起算して50日を経過した日から、支払をする日までの遅延利息を支払う
期間は末日の終了で満了するので(民法141条)、「50日を経過する日」は、50日目の7月21日だ。「経過した日」は、その翌日の7月22日と読むのが自然だ。上の例なら、支払期日は7月21日以前、遅延利息が生じるのは7月22日から、となる。第4項の前段は、支払期日までに払わなければならないと書き、後段で「経過した日」から利息を課す。「経過した日」が支払期日と同じ日だと、期日当日に払っても利息が生じて、前段と合わなくなる。翌日と読むのが整合する。条文が書き分けている点だけを押さえておけば、数字の取り違えを防げる。日付の読み方は当サイトの読みで、条文の説明ではない。
やってみよう ②:1か月に「応当する日」がないとき
うるう年でない年の1月30日に、元請負人が注文者から支払を受けた。下請代金を支払わなければならない最終日は?
初日は数えないので、起算日は1月31日。月で数えると、応当する日は2月31日だが、2月にはその日がない。この場合は、最後の月の末日に満了する(民法143条2項ただし書)。答えは2月28日。「1か月後の同じ日付」を探しても、見つからないことがある。
「適切な配慮」は、現金払い・前払金払いそのものの義務ではない
24条の3には、第1項のほかに2つの規定がある。
- 第2項 前項の場合(注文者から支払を受けたとき)の下請代金のうち、労務費に相当する部分については、現金で支払うよう適切な配慮をしなければならない
- 第3項 前払金の支払を受けたときは、資材の購入、労働者の募集その他建設工事の着手に必要な費用を前払金として支払うよう適切な配慮をしなければならない
どちらも文末は「適切な配慮をしなければならない」だ。配慮することは義務だが、現金で支払うこと、前払金を全額支払うことそのものを義務づけた書き方ではない。試験では「必ず現金で」「全額を直ちに」と言い切る選択肢が出ると、条文の文末と合わない。
やってみよう ③:○か×か
次の3つの記述は、建設業法上、正しいか。
(a) 元請負人は、下請代金のうち労務費に相当する部分を、必ず現金で支払わなければならない。 → ×。条文は「現金で支払うよう適切な配慮をしなければならない」で、現金払いそのものの義務ではない。
(b) 元請負人は、前払金の支払を受けたときは、着手に必要な費用を前払金として支払うよう、適切な配慮をしなければならない。 → ○。24条の3第3項そのままの内容。
(c) 元請負人は、前払金の支払を受けたら、その全額を下請負人に支払わなければならない。 → ×。「全額」という定めはなく、配慮の対象は「着手に必要な費用」。
特定建設業者にだけ加わる規定 — 50日・手形・遅延利息
特定建設業者が注文者となった下請契約には、第24条の6が加わる。特定建設業とは、発注者から直接請け負った工事で、下請に出す金額の総額が政令の金額(5,000万円、建築工事業は8,000万円。令和7年2月1日の改正後の値で、それ以前は4,500万円、建築工事業は7,000万円)以上になる場合に必要な許可だ。対象になるのは、下請契約のうち、下請負人が特定建設業者であるものや、資本金額が政令で定める金額(施行令7条の2で4,000万円)以上の法人であるものを除いたものだ。
- 下請代金の支払期日は、引渡しの申出の日から起算して50日を経過する日以前で、かつ、できる限り短い期間内に定めなければならない(第1項)
- 支払期日が定められなかったときは申出の日が、この規定に違反して定められたときは申出の日から50日を経過する日が、支払期日とみなされる(第2項)
- 支払期日までに一般の金融機関による割引を受けることが困難であると認められる手形を交付してはならない(第3項)
- 支払期日までに支払わなかったときは、申出の日から50日を経過した日から支払をする日までの期間について、未払金額に国土交通省令で定める率を乗じた金額を遅延利息として支払う(第4項)
ここでいう「申出の日」は、24条の4第2項ただし書の特約があるときは、その特約で定めた一定の日になる(24条の6第1項のかっこ書。第2項・第4項も同じ)。
手形の規定は、手形の交付を一律に禁じるものではない。禁止されるのは、割引が困難と認められる手形に限られる。
特定建設業者の下請代金の支払には、24条の3第1項(注文者から支払を受けた日から1か月以内)も、24条の6(引渡しの申出の日から50日以内の支払期日)も、条文の上では別の規定としてかかる。条文は両者の優先関係を書いていない。早く来るほうに合わせておくのが安全側の考え方だ(当サイトの考え方)。
下請との関係の周辺ルール
第24条の5は、下請負人の通報を守る規定だ。元請負人に違反行為(19条の3第1項・19条の4・24条の3第1項・24条の4・24条の6第3項又は第4項)があるとして、下請負人が国土交通大臣等、公正取引委員会又は中小企業庁長官にその事実を通報したときは、元請負人は、そのことを理由に、取引の停止その他の不利益な取扱いをしてはならない。
また、第24条の7は、発注者から直接工事を請け負った特定建設業者に、下請負人が、建設業法の規定や、建設工事の施工・労働者の使用に関する法令の規定で政令で定めるものに違反しないよう指導に努めること(努力規定)と、違反を認めたときに是正を求めるよう努めること(努力規定)を定めている。是正を求めたのに是正されないときは、許可をした国土交通大臣・都道府県知事、又は工事の行われる区域を管轄する都道府県知事などに、速やかに通報しなければならない(義務)。
現場の段取りに置き換えると
ここまでの条文を、元請の現場担当者の段取りに置き換えると、次のようになる。これは条文から導いた当サイトの考え方で、各社の実務や契約約款の定めを置き換えるものではない。
- 完成の通知を受けた日を、記録に残す。 検査の20日は、この日の翌日を1日目として数える。日付が客観的に残る形(書面やメールなど)で受けておくと、起点がぶれない
- 検査の日程を決めて、期限の最終日をカレンダーに書く。 20日は上限なので、「できる限り短い期間内」に収める
- 検査が済んで引渡しの申出があれば、受け取りを先延ばしにしない。 「直ちに」だ。特約があるときは、特約の日に合わせる
- 注文者から出来形部分に対する支払か完成後の支払があったら、その日を起点に1か月の最終日を書く。 労務費相当部分の現金払いと、前払金の着手費用への配慮も、この段階で確認する
- 特定建設業者が注文者で、下請が除外に当たらないなら、引渡しの申出の日から50日の最終日も書く。 支払期日を定める段階で、割引の難しい手形を使わないことも確認する
冒頭の問いの答え合わせ
下請から「工事が完了しました」と連絡が来た。
- 検査は、通知を受けた日から20日以内(かつ、できる限り短い期間内)。通知の日は数えず、翌日が1日目だ
- 検査が済んで下請が申し出たら、直ちに引渡しを受ける。特約があるときは特約の日
- 注文者から出来形部分に対する支払か完成後の支払があったら、あった日から1か月以内に、下請の施工分に相応する額を支払う。入金の日から数える、別の時計だ
- 特定建設業者が注文者で、下請が除外(特定建設業者、資本金4,000万円以上の法人)に当たらないなら、さらに、引渡しの申出の日から50日を経過する日以前の日に支払期日を定める
答え合わせは、理解度チェックの問1(検査)・問2(支払)・問5(引渡し)、そして問9〜11(日付を数える問題)でしてみよう。
次の問い
下請が何社も重なる大きな現場では、「誰が誰に、どの工事を請け負わせているのか」が見えなくなりやすい。建設業法は、発注者から直接請け負った特定建設業者(一定の金額以上の下請契約を結ぶとき)に、「施工体制台帳」と「施工体系図」という2つの書類を作らせている。この2つは、何のために、どの工事で、誰が作るのか。次のトピックで、令和8年度にも出題された施工体系図の表示事項とあわせて読む。