たとえば、あるビルの空調・衛生設備工事の現場。入口の掲示板には、会社名が枝分かれした樹形図が1枚貼ってある。現場事務所のキャビネットには、各社の契約書の写しや技術者の資格証の写しをとじた、分厚いファイルがある。
どちらも、元請が下請のことを書いた書類だ。同じ「下請のこと」を、なぜ2つに分けて作るのか。作る義務があるのは、どんな元請か。下請会社は、何を出さなければならないのか。発注者は、中身を見られるのか。そして試験は、そこに何が「載る」か、何が「載らない」かを突いてくる。
読み終えるころには、施工体系図に表示する事項の中に請負代金の額が入るのか入らないのかを、条文の構造から答えられるようになっている。
呼び名をそろえておく。建設業法は「法」、同施行令は「令」、同施行規則は「規則」、公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律は「入札契約適正化法」と書く。発注者から直接工事を請け負った建設業者は、ここでは「元請」と呼ぶ(法2条の「元請負人」は、二次下請に出す一次下請も含む広い言葉だ)。
まず一言で
施工体制台帳は、工事に関わる下請会社・契約・技術者を、元請が整理して備え置く記録だ(1冊にまとめるのが望ましく、分冊も差し支えない、と国土交通省の通知は書く)。工事現場ごとに備え置く。施工体系図は、その分担関係を樹形図にして、現場の見やすい場所に掲げる書類だ(法24条の8)。
作るのは、発注者から直接工事を請け負った元請。民間工事では、特定建設業者で、下請契約の総額が5,000万円(建築一式工事は8,000万円)以上のときに作る。公共工事では、金額に関係なく、下請契約を結んだ元請が作る。下請は、さらに下へ出したら、元請へ「再下請負通知」を出す。
仕組み — なぜ、下請の重なりに書類が要るのか
元請から先が、見えなくなるから
元請が契約を結ぶ相手は、一次下請だ。二次、三次と重なるほど、元請から見て「いま現場に誰が入っているのか」「その会社に許可はあるのか」「技術者は誰か」が分からなくなる。
法24条の8は、台帳を作る目的を「建設工事の適正な施工を確保するため」と書く。国土交通省中部地方整備局の資料は、台帳で元請に現場の施工体制を把握させ、次の3つを防ぐためだと説明している。
- 品質・工程・安全などの施工上のトラブル
- 不良不適格業者の参入や、一括下請負などの建設業法違反
- 安易な重層下請(生産効率の低下につながる)
台帳が義務になったのは平成7年6月29日で、特定建設業者が対象だった(平成6年の法改正)。平成27年4月1日からは、公共工事で、下請代金額にかかわらず作る形が加わった(平成26年の法改正。いずれも国土交通省の通知による)。
なぜ、書類は2つなのか
管工事の人には、なじみの組み合わせがある。系統図と機器表だ。系統図は、機器や配管のつながりを一目で見せる。機器表は、1台ごとの仕様を細かく書く。台帳と体系図は、請負の世界の機器表と系統図にあたる(たとえ話であり、法令の言い方ではない)。
| 項目 | 施工体制台帳 | 施工体系図 |
|---|---|---|
| 性格 | 詳しい記録(記載事項と添付書類) | 樹形図。台帳の要約版 |
| 置き方 | 現場ごとに備え置く | 現場の見やすい場所に掲げる |
| 公共工事で加わること | 写しを発注者に提出 | 公衆が見やすい場所にも掲げる |
| 下請の範囲 | 下請負人ごとに記載 | 現に施工している下請負人 |
| 備置き・掲示の期間 | 引渡しまで | 引渡しまで |
国土交通省の通知は、体系図を「台帳のいわば要約版」として、樹状図等で作るものと説明している。近畿地方整備局の資料は、体系図のねらいを3つ挙げる。工事に携わる全員が施工体制を把握すること、責任と役割分担を明確にすること、技術者の配置を確認すること、だ。
条文の動詞にも違いが出ている。台帳は「備え置く」、体系図は「掲げる」。
勘違いポイント。 体系図は、台帳の全部を写した図ではない。台帳にあって体系図にない事項(保険の加入状況、契約を結んだ年月日など)がある。この差が、あとで出題の核心になる。
これで、台帳と体系図の違いを、置き方・詳しさ・見せる相手の3点で説明できる。
なぜ、作る義務は元請にあるのか
法24条の8第1項の主語は「特定建設業者」で、場面は「発注者から直接建設工事を請け負つた場合」だ。下請契約の連なりの一番上に立ち、一次下請と直接契約するのは、この元請になる。再下請負通知(第2項)も、全てこの元請に集まる。条文は理由を書いていないが、情報が集まる場所に、まとめる義務を置いた形だと読める。
民間工事の金額にも注目したい。次の3つは、同じ下請代金の線(5,000万円。建築は8,000万円)で動く。
- 特定建設業の許可が必要になる下請代金額(令2条)
- 発注者から直接請け負った特定建設業者が、監理技術者を置かなければならなくなる下請契約の総額(法26条2項。金額は令2条と同じ)
- 台帳と体系図を作る下請契約の総額(令7条の4)
下請に大きく任せる元請には、許可、監理技術者、台帳・体系図がまとめて課される。数字は同じだが、8,000万円になる条件の書き方は条文ごとに違う(令2条は、許可を受けようとする建設業が建築工事業のとき。令7条の4は、元請が直接請け負った工事が建築一式工事のとき)。
情報は、どうやって元請に集まるのか — 通知の鎖
三次・四次の下請の様子まで、元請が自分で調べ上げるのは難しい。条文は理由を書いていないが、下請に「通知する」義務を課して、情報が元請に集まる形にしている。3つの動きで覚える。
- 元請から一次下請へ。 台帳を作る元請(規則は「作成建設業者」と呼ぶ)になったら、遅滞なく、下請負人に書面で通知する。通知するのは、作成建設業者の商号又は名称、再下請負通知を行わなければならない旨、再下請負通知に係る書類を提出する場所の3点だ。同じ内容を、現場の見やすい場所にも掲げる(規則14条の3第1項)。
- 下請から元請へ。 下請負人が、請け負った工事を他の建設業を営む者に請け負わせたとき、作成建設業者に対して通知する(法24条の8第2項)。これが「再下請負通知」だ。書面(再下請負通知書)で、請け負わせる都度、遅滞なく行う(規則14条の4第2項)。
- 下請から、さらに下の下請へ。 再下請負通知を行う下請は、請け負わせた相手にも、1の3点を書面で通知する(規則14条の4第2項)。
通知した事項や書類に変更があれば、遅滞なく、変更の年月日を付記して作成建設業者に通知する(規則14条の5第5項で準用する第4項)。書面に代えて、相手の承諾を得て電磁的方法で通知してもよい(規則14条の3第2項、14条の4第4項)。
勘違いポイント。 再下請負通知の宛先は、直接の注文者でも発注者でもなく、台帳を作る元請(作成建設業者)だ。国土交通省の通知は、やむを得ない場合に、直接の注文者に経由を頼んで元請あてに出すことも差し支えないとする。それでも、宛先が元請であることは変わらない。
これで、「誰が、誰に、何を通知するのか」を、図なしで言える。
数と条文で追う
作らなければならないのは、どんなときか(民間工事)
法24条の8第1項を、5つの部品に分けて読む。
- 誰が:特定建設業者
- どんな場面で:発注者から直接建設工事を請け負った場合
- どんな条件で:その工事を施工するために締結した下請契約の請負代金の額(二以上あるときは総額)が、政令で定める金額以上になるとき
- 何を:下請負人の商号又は名称、その工事の内容及び工期などを記載した施工体制台帳を作成し
- どこに:工事現場ごとに備え置く
「政令で定める金額」は、令7条の4が定める。5,000万円だ。ただし、特定建設業者が発注者から直接請け負った工事が建築一式工事のときは、8,000万円になる。令和7年2月1日の改正で、4,500万円(建築一式工事は7,000万円)から引き上げられた(国土交通省の発表)。改正前の数字を覚えていると、取り違える。
数え方には4つの決まりがある。
- 数えるのは、元請(特定建設業者)が、発注者から直接請け負った工事のために自ら結んだ下請契約だ。法24条の8第1項は「締結した下請契約」と書き、同じ総額の仕組みを使う許可の条文(法3条1項2号)は「その者が…下請契約を締結して」と、元請自身が結ぶ契約を数える書き方をしている。国土交通省の平成19年度の調査資料は、台帳について、特定建設業者と一次下請業者との間の契約の合計で判断すると書く(当時の金額は3,000万円)。二次以下の下請が結んだ契約を含めない扱いを、現行の金額で明記した資料は、確認できていない。以下の例題と問題は、この読み方に沿っている。
- 下請契約が複数あるときは、合計で見る(法24条の8第1項かっこ書)。1社ごとに比べるのではない。
- 数えるのは建設工事の請負契約だけだ。資材納入、調査業務、運搬業務、警備業務などは、建設工事に該当しないと考えられるので含まない(国土交通省の資料)。
- 金額は「以上」だ。ちょうど5,000万円でも作る。
例題① 管工事の元請(建築一式工事ではない)
民間工事。管工事の元請(特定建設業者)が、次の契約を結んだ。台帳は必要か。
- 空調配管工事の一次下請:2,300万円
- ダクト工事の一次下請:1,500万円
- 電気工事の一次下請:1,100万円
- 配管材料の売買契約:600万円(工事の請負ではない)
- ダクト工事の一次下請が、保温工事の二次下請と結んだ契約:700万円(元請が結んだ契約ではないので、上の読み方では数えない)
数えるのは、上の3つの一次下請契約だけだ。
2,300万円 + 1,500万円 + 1,100万円 = 4,900万円
5,000万円に100万円足りない。民間工事なら、作る義務はない。電気工事が1,200万円だったら、合計はちょうど5,000万円で、「以上」に当たるので必要になる。
例題② 建築一式工事の元請
民間工事。ゼネコン(特定建設業者)が建築一式工事を発注者から直接請け負い、管工事を含む一次下請3社と、3,000万円、2,700万円、2,200万円で契約した。
3,000万円 + 2,700万円 + 2,200万円 = 7,900万円
建築一式工事の線は8,000万円だ。7,900万円では届かず、民間工事なら作る義務はない。同じ7,900万円でも、元請が請け負った工事が管工事なら、線は5,000万円なので必要になる。8,000万円は、元請が直接請け負った工事が建築一式工事のときだけ使う数字だ。
やってみよう:この3つ、台帳は要るか
先に自分で答えてから開いてほしい。いずれも、元請は特定建設業者とする。
- 民間工事、管工事。一次下請2社と2,600万円・2,300万円で契約。二次下請の契約が900万円ある。
- 1と同じ契約を、公共工事で結んだ。
- 民間工事、建築一式工事。一次下請の契約の合計が、ちょうど8,000万円。
答え。
- 不要。数えるのは一次下請との契約だけで、2,600万円 + 2,300万円 = 4,900万円。5,000万円に届かない。二次下請の900万円は、元請が結んだ契約ではないので、上の読み方では含めない。
- 必要。公共工事は金額の線が消えるので、4,900万円でも、下請契約を結んだ時点で作る(次の節で読み替えを見る)。
- 必要。建築一式工事の線は8,000万円で、「以上」なので、ちょうど8,000万円でも当たる。
公共工事では、読み替えで金額の線が消える
公共工事とは、国、特殊法人等又は地方公共団体が発注する建設工事をいう(入札契約適正化法2条2項)。公共工事では、同法15条1項が、法24条の8の第1項・第2項・第4項を、次のとおり読み替えて適用する。
- 「特定建設業者」が「建設業者」になる。
- 第1項の「締結した下請契約の請負代金の額(…)が政令で定める金額以上になる」が、「下請契約を締結した」になる。金額の線が消え、下請契約を結んだ時点で作る。
- 第4項の「見やすい場所」が、「工事関係者が見やすい場所及び公衆が見やすい場所」になる。
入札契約適正化法1条は、目的に「公共工事に対する国民の信頼の確保」を掲げ、手段の1つに「施工体制の適正化の措置」を挙げる。金額の線が消え、写しの提出や公衆向けの掲示まで加わるのは、この目的に沿った上乗せだと読める(条文は、線を消した理由までは書いていない)。
発注者への対応も変わる。民間工事は、発注者から請求があったときに台帳を閲覧に供する(法24条の8第3項)。公共工事では、台帳の写しを発注者に提出する(入札契約適正化法15条2項)。写しを提出する場合は、閲覧の規定は適用されない(同項後段「この場合においては」)。ただし、受注者が、発注者に台帳の記載事項を情報通信技術で確認させる措置(建設キャリアアップシステムその他適切なシステムを利用して、発注者が確認できるようにする措置。同法施行規則3条)を講じているなら、写しの提出は要らない。発注者から施工体制が台帳の記載に合致しているかの点検を求められたら、拒めない(同法15条3項)。
| 項目 | 民間工事 | 公共工事 |
|---|---|---|
| 作る元請 | 特定建設業者 | 建設業者(特定でなくてよい) |
| 作る条件 | 下請の総額が5,000万円以上(建築一式は8,000万円) | 下請契約を締結したとき(金額不問) |
| 発注者に対して | 請求があれば閲覧に供する | 写しを提出(確認措置があるときを除く) |
| 体系図の掲示先 | 現場の見やすい場所 | 工事関係者・公衆が見やすい場所 |
やってみよう:公共工事の読み替えを、条文の言葉で言う
公共工事を発注者から直接請け負った一般建設業者が、一次下請と800万円の下請契約を1件だけ結んだ。台帳は要るか。理由を、条文の言葉で言ってみよう。
答え。要る。 入札契約適正化法15条1項の読み替えで、法24条の8の「特定建設業者」は「建設業者」になる。一般建設業者も対象だ。金額の要件は「下請契約を締結した」に置き換わるので、800万円でも、契約を結んだ時点で作る。作った台帳は、写しを発注者に提出する(確認措置があるときを除く)。
これで、民間か公共かを見て、作る義務の有無と、発注者への対応を言い分けられる。
台帳に載せるもの
台帳の記載事項は、規則14条の2第1項が、4つのかたまりで並べている。様式は法令で定められていない(近畿地方整備局の資料)。
- 元請自身(第1号):許可を受けて営む建設業の種類、健康保険等の加入状況
- 元請が請け負った工事(第2号):工事の名称・内容・工期。発注者との契約年月日、発注者の商号・住所、契約した営業所。監督員、現場代理人。主任技術者又は監理技術者の氏名・資格・専任かどうか。監理技術者補佐、専門技術者を置くときはその氏名。工事に従事する者の氏名・職種・社会保険の加入状況など
- 下請負人(第3号):商号又は名称・住所。建設業者なら許可番号と許可を受けた建設業の種類。健康保険等の加入状況
- 下請負人が請け負った工事(第4号):工事の名称・内容・工期。下請契約の年月日。現場代理人、主任技術者など。工事に従事する者に関する事項
台帳には、書類も添付する(同条2項)。発注者との請負契約書・下請契約書の写し(法19条の書面)。主任技術者・監理技術者の資格を示す書面と、雇用期間を特に限定せず雇用されていることを示す書面(専任でなければならない監理技術者は、監理技術者資格者証の写し)。監理技術者補佐や専門技術者を置くときも、同様の書面だ。
台帳の見やすいところには、商号又は名称、許可番号と、「施工体制台帳」であることを明示する(規則14条の5第3項)。工事に従事する者の情報は、いわゆる作業員名簿で、令和2年の省令改正で台帳の一部になった(国土交通省の通知)。
勘違いポイント。 請負代金の額は、台帳の記載事項(規則14条の2第1項)の列挙に出てこない。額が現れるのは、添付する契約書の写しのほうだ。契約書には請負代金の額を書く(法19条1項)。民間工事では、作成建設業者が注文者でない下請契約(二次以下)の写しは、額の部分を除いてよい(規則14条の2第2項第1号のかっこ書)。逆にいえば、元請と一次下請の契約書の写しは、民間工事でも額が残る。公共工事は、全ての下請契約で額が明記されていなければならない(国土交通省の通知)。
条文は、民間工事で額を除いてよい理由を書いていない。公共工事では額の明記が必須、民間工事では二次以下の額を除ける、という対の形になっている。
体系図に載せるもの — 規則14条の6
体系図に載せる事項は、台帳よりぐっと少ない。規則14条の6は、3層に分けて並べている。
- 作成建設業者(元請):商号又は名称
- 元請が請け負った工事:建設工事の名称と工期。発注者の商号、名称又は氏名。元請が置く主任技術者又は監理技術者の氏名。監理技術者補佐を置くときはその氏名。専門技術者を置くときは、その氏名と管理する工事の内容
- 下請負人ごと(現にその請け負った建設工事を施工しているもの):商号又は名称、代表者の氏名、一般建設業か特定建設業かの別、許可番号。その工事の内容及び工期、特定専門工事の該当の有無、下請負人が置く主任技術者の氏名。専門技術者を置くときはその氏名と管理する工事の内容
下請負人が建設業者でないときは、商号又は名称、代表者の氏名、工事の内容及び工期だけを表示する。条文は「下請負人ごとに、かつ、各下請負人の施工の分担関係が明らかとなるよう系統的に表示」と書く。国土交通省の通知は、体系図の形として樹状図などを挙げる。特定専門工事は、型枠の組立てと鉄筋工事(令31条)で、管工事には縁が薄い。
台帳にはあって体系図にない事項が、はっきり見える。健康保険等の加入状況、契約を結んだ年月日、技術者の資格の内容や専任かどうか、工事に従事する者の名簿。そして請負代金の額。体系図のどこにも出てこない。台帳でも、記載事項の列挙にはなく、添付する契約書の写しに現れる。体系図は、「誰が、どの順に、何の工事を、いつまで、どの技術者で」を見せる図で、お金の話は載せない。
やってみよう:載る・載らないを仕分ける
次の6項目のうち、規則14条の6が体系図の表示事項として定めているものはどれか。
- 下請負人の許可番号
- 下請負人の健康保険等の加入状況
- 下請負人が置く主任技術者の氏名
- 発注者の商号、名称又は氏名
- 下請契約を結んだ年月日
- 建設工事の請負代金の額
答え。載る:1・3・4。載らない:2・5・6。
1は14条の6第3号ニ、3は第4号ハ、4は第2号ロにある。2と5は台帳の記載事項(規則14条の2第1項)で、体系図には出てこない。6は、台帳の添付書類(契約書の写し)には現れるが、体系図の表示事項には挙がっていない。
いつまで備え、いつまで掲げるか
台帳の備置きと体系図の掲示は、工事の目的物を発注者に引き渡すまで続ける(規則14条の7)。引渡しの前に請負契約が解除されたなどで、請負契約に基づく債権債務が消滅したときは、その消滅までだ。
台帳は、事実が生じ、又は明らかになったときに、遅滞なく書く(規則14条の5第3項)。変更があれば、変更の年月日を付記して、変更後の内容を書き足す(同条4項)。体系図は、現に施工している下請負人を表示するので、工期の進行で顔ぶれが変わるたびに変更して表示する(国土交通省の通知。「現に施工している」かどうかは、請負契約で定められた工期を基準に判断する)。
引渡しのあとにも、保存の義務が残る。台帳の一部は、営業所の帳簿の添付書類として、引渡しから5年間(新築住宅の工事は10年間)。体系図は、営業に関する図書として、引渡しから10年間(法40条の3、規則26条・28条)。
法24条の8に違反すると、許可行政庁から必要な指示を受けることがある(法28条1項)。指示に従わなければ、1年以内の営業の停止を命じられうる(同条3項)。
現場とつなぐ — あなたが二次下請の管工事業者なら
たとえば、あなたの会社が、設備工事の一次下請から保温工事を請け負った二次下請だとする。台帳が作られる現場では、次の流れで動く。
- 一次下請から書面が届くか、現場に掲示があり、「この工事は台帳を作る工事」だと分かる。
- さらに保温の職人会社に出すなら、遅滞なく、再下請負通知書を元請(作成建設業者)あてに出す。同時に、その職人会社へ、元請の商号、再下請負通知が必要な旨、提出場所を書面で伝える。
- 再下請負通知書には、契約書の写しを添える。民間工事なら、請負代金の額の部分を除いてよい。公共工事なら、額は残す。
- 顔ぶれや技術者が変わったら、変更年月日を付記して、また通知する。
- 台帳と体系図には、あなたの会社の商号・許可番号・主任技術者の氏名、社会保険の加入状況、現場で働く人の名簿などが載る。資格証や保険の情報は、日ごろからそろえておく。
体系図の掲示は、一定の要件を満たせば、デジタルサイネージなどの機器で行ってよい(令和4年1月27日付の国土交通省通知。近畿地方整備局の資料による)。
電材との接点。 台帳と体系図に載るのは、建設工事の下請負人だ。法2条2項は「建設業」を建設工事の完成を請け負う営業と定め、下請契約も請負契約として定義されている(法2条4項)。資材の売買契約は請負契約ではなく、下請契約の総額にも数えない(中部地方整備局の資料)。工事に従事する者の欄についても、国土交通省の通知は、資材納入や運搬業務などに従事する者は必ずしも記載しなくてよい、としている。電材を売るだけの取引先は、この仕組みの対象になる下請負人ではないと読める。通知の「必ずしも記載する必要はない」は、記載を禁じる意味ではない。ただし、取付けなどの施工まで含めた契約なら、工事の請負にあたるかどうかを契約の中身で見る必要がある。個別の契約は、元請や許可行政庁に確認が要る。
体系図は、表示が複雑になり見にくくならない限り、労働安全などのための他の図面を兼ねてよい(国土交通省の通知)。近畿地方整備局の記載例には、規則に定めのない「安全衛生責任者名」「統括安全衛生責任者」などの欄がある。台帳についても、通知は、規則に定めのない安全衛生責任者名などを「できる限り記載することが望ましい」としている。
試験での出方とワナ
令和8年度の第一次検定、問題Bの No.15 は、施工体系図に表示する事項のうち、「作成建設業者が請け負った建設工事に関する事項」として、建設業法上定められていないものを選ばせた。正解は、請負代金の額だ。出題文は「建設業法上」と書くが、中身は法24条の8第4項の委任を受けた規則14条の6である。
解き方は、規則14条の6を順に言えるかで決まる。「元請の商号 → 工事の名称・工期 → 発注者の商号等 → 技術者の氏名 → 下請負人ごとの商号・代表者・一般特定・許可番号 → 工事の内容・工期 → 主任技術者」。この列に、額は入っていない。
同じ主題で問われうるのは、作る元請の条件と金額(民間か公共か)、備置き・掲示の場所と期間、再下請負通知の宛先、閲覧と写しの提出の取り違えだ(実績ではなく、主題からの想定)。
ワナは4つ。体系図に請負代金の額を入れる。公共工事に民間の金額要件と「特定建設業者」の限定を持ち込む。古い金額や建築一式の8,000万円を選ぶ。再下請負通知の宛先を元請以外にする。詳しくは、章末の「出題者のワナ」にまとめた。
覚え方(1つだけ)。 台帳は「備える」、体系図は「掲げる」。民間は閲覧、公共は写しの提出。動詞を対にすると、取り違えが減る。
冒頭の問いの答え合わせ
- なぜ2つに分けるのか。 台帳は、会社ごとに許可・技術者・保険・契約書の写しまで書く詳しい記録で、備え置く。体系図は、分担関係を見せる要約の樹形図で、掲げる。見せ方が違うから、詳しさも違う。
- 誰が作るのか。 発注者から直接請け負った元請。民間工事は、特定建設業者で、下請の総額が5,000万円(建築一式工事は8,000万円)以上のとき。公共工事は、金額にかかわらず。
- 下請は何を出すのか。 さらに下へ出したら、再下請負通知書を元請(作成建設業者)あてに出し、下にも書面で通知する。
- 発注者は見られるのか。 民間工事は、請求すれば閲覧できる。公共工事は、写しの提出を受ける。
- 何が載り、何が載らないのか。 体系図には、商号・代表者・一般特定・許可番号・工事の内容と工期・主任技術者などが載る。請負代金の額は載らない。
この章で、あなたは次のことができるようになった。
- 下請契約の金額と、民間か公共かから、台帳と体系図を作る義務の有無を言える
- 再下請負通知の宛先と、添える書類を言える
- 体系図の表示事項と、台帳にだけ載る事項を仕分けできる
体系図の記載例には、規則に定めのない「安全衛生責任者」の欄があった。元請の社員も、下請の職人も、同じ現場で働く。事故を防ぐ責任は、誰が束ねるのか。体系図のどこに座っている人が、現場全体の安全を取りまとめるのか。次は、労働安全衛生法の安全管理体制で、その答えを見に行こう。