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機械工学等 ・ 11 / 19

地球環境 — 温室効果ガスの数字とフロン類を、基準年と版から読む

読み終えると、こうなる

ガス別の折れ線図を見たら、大きさと形で二酸化炭素・メタン・一酸化二窒素・HFCsを見分けられ、冷媒のGWPの数字を見たら「どの資料の、どの版の値か」を確かめる習慣がつく

  • 二酸化炭素・メタン・一酸化二窒素・HFCsの排出量の推移(1990〜2023年度)を、大きさと曲線の形から見分けて、どの系列が二酸化炭素かを選べる
  • 冷媒の漏えい量にGWPを掛けて二酸化炭素換算(t-CO2)を計算し、冷媒を替えたときのGWPの減り方を割合で出せる
  • CFC・HCFC・HFCを、オゾン層破壊係数(ODP)とGWPの組合せで言い分け、モントリオール議定書とキガリ改正が何を規制するかを説明できる
  • 同じ冷媒のGWPが2つの値で書かれた資料に出会ったとき、告示や評価報告書の版の違いかどうかを確かめられる
考えてみよう

たとえば、日本の温室効果ガスの排出量を、4つのガス(二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、HFCs)の折れ線で描いた図が出る。「二酸化炭素の曲線はどれか」と問われたら、何を手がかりに選ぶか。

もう一つ。空調機の冷媒R-410AのGWP(地球温暖化係数)を調べたら、2,090と書いた資料と、1,920と書いた資料があった。どちらかが間違いなのか。

読み終えるころには、1つ目は大きさと形で選べ、2つ目は「どちらも、その版では正しい。版を書かない数字は使えない」と言えるようになる。

まず一言で

温暖化への効き方はGWP(地球温暖化係数)、オゾン層への効き方はODP(オゾン層破壊係数)で表す。物差しは2本あり、別物だ。

  • ODPはCFC-11を1とした比。CFC・HCFCは0より大きく、HFCは0
  • GWPは二酸化炭素を1とした比。HFCはODPが0でも、GWPが大きい
  • 冷媒は、CFC・HCFCからHFCへ、さらに低GWP冷媒へと替わりつつある。生産量・消費量の規制は、CFC(1990年代から)、HCFC(2000年代から)、HFC(2019年のキガリ改正の発効以降)の順に始まった
  • 日本の2023年度の温室効果ガスは、2025年4月公表版で、二酸化炭素が92.3%。HFCsは3.0%で、2005年から2021年まで増え、2022年から減っている
  • GWPも排出量も、版(評価報告書、告示、公表年)が変わると値が変わる。数字は版とセットで読む

冷凍サイクルの仕組みとCOPの計算は、別のトピック「冷凍サイクルとCOP」で扱う。フロン排出抑制法の管理者・充塡回収業者の義務や、省エネ計画と蓄熱は、このトピックでは扱わない。ここでは、地球環境の数字と、冷媒の環境影響に絞る。

仕組み① — 二本の物差し、ODPとGWP

フロンは、炭素とフッ素などの化合物の総称だ。CFC(クロロフルオロカーボン)、HCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)、HFC(ハイドロフルオロカーボン)などに分けられ、冷媒のほか、断熱材の発泡剤や洗浄剤にも使われてきた(産業構造審議会と中央環境審議会の合同会議の中間とりまとめ、令和8年8月。以下「中間とりまとめ」)。

  • ODP:CFC-11を1としたときの、オゾン層への破壊効果の強さ
  • GWP:二酸化炭素を1としたときの、温暖化影響の強さ。環境省の資料は「100年値」(100年間の影響を積分、つまり足し合わせた値)を使い、積分する年数(20年、500年など)で値が変わることがあると注記する
物質(化学式)ODPGWP
CFC-12(CF2Cl2)110,200
HCFC-22(CHF2Cl)0.0551,760
HFC-134a(CH2FCF3)01,300
HFC-32(CH2F2)0677
R-410A(HFC-32とHFC-125の混合)01,920
ODPのうち、CFC-12とHCFC-22はモントリオール議定書附属書の値。HFCは環境省の巻末資料の、代替フロン等4ガスの表の値(R-410Aは、経済産業省・環境省の2015年度の資料の図に、HFC-410aとして0と載る)。GWPはフロン類GWP告示(令和5年告示)の表で、令和6年度以降の算定に用いる。版が変わると値も変わる。

なぜ、CFCとHCFCはオゾン層を壊し、HFCは壊さないのか

気象庁の解説は、地上で放出されたクロロフルオロカーボン類(フロン類)等について、次の道筋を書く。上部成層圏(高度40km付近)で太陽紫外線により分解され、塩素原子が生じる。この塩素原子が触媒(自分は残り、反応を何度も進める物質)となって、オゾンを連鎖的に壊す。

表の化学式を見ると、CFC-12とHCFC-22には塩素(Cl)があり、HFC-134aとHFC-32にはない。HFCには、塩素原子が生じる出発点がない。ODPが0の背景は、このように読める。これは当サイトの読みで、経済産業省・環境省の資料はHFCのODPを0と示すだけで、理由は書いていない。

ODPが0でも、環境への負荷が小さいとは限らない。経済産業省・環境省の2015年度の資料は、HFCを「オゾン層破壊効果はないものの、高い温室効果を有する」と書く。中間とりまとめは、HFCの温暖化効果を「CO2の数百〜一万倍以上」と記す。1kgのHFC-134a(GWP 1,300)は、100年で見て、二酸化炭素約1,300kg分の影響にあたる。

なぜ、物質ごとにGWPはこれほど違うのか

GWPは、100年間の影響を積分した値だ。環境省の巻末資料の表には、大気中寿命(2018年の科学評価パネル)とGWP(第4次IPCC報告書の100年値)が並ぶ。HFC-152aは寿命1.6年で124、HFC-134aは14年で1,430、HFC-23は228年で14,800。寿命が長いほどGWPが大きい傾向が読める。ただし、寿命だけでは決まらない。同じ表に逆転する組もあり、HFC-125は寿命30年で3,500、HFC-227eaは36年で3,220だ。PFC-14は寿命が5万年を超えるが、GWPは7,390で、HFC-23より小さい。寿命以外の要因は、手元の資料では確かめていない。

これで、ODPとGWPを別々の問いとして扱えるようになった。

仕組み② — 冷媒の世代と、規制が重なった順序

経済産業省・環境省の2015年度の資料は、フロン類を世代で分ける。

  • 特定フロン(CFC、HCFC):オゾン層破壊効果があり、温室効果も大きい
  • 代替フロン(HFC):オゾン層破壊効果はないが、温室効果が大きい
  • 低GWP化:二酸化炭素・アンモニア・プロパンなどの自然冷媒や、HFOなど。環境省の2026年6月の資料は、HFCに代わる冷媒を用途ごとに整理し、一部は導入を支援している

規制の経緯は、次の表のとおりだ。

年出来事対象
1985・1987ウィーン条約、モントリオール議定書を採択オゾン層破壊物質
1988日本でオゾン層保護法特定フロンの製造・輸入
2001フロン回収・破壊法機器の廃棄時の回収・破壊
2013(2015年4月施行)フロン排出抑制法に改正製造から廃棄までの全体
2016(2019年発効)キガリ改正を採択HFCの生産・消費量
2019(2020年4月施行)フロン排出抑制法を再改正廃棄時の回収率の向上
環境省資料より。2001年の旧法の業務用機器分の施行は2002年4月。日本は2018年に、キガリ改正に対応してオゾン層保護法を改正した。

CFC・HCFC。 議定書に基づく生産規制は、CFCは1990年代から、HCFCは2000年代から、段階的に導入され、新規の生産は全廃された。冷媒などへの新規の利用も、いまはない(中間とりまとめ)。経済産業省・環境省の2015年度の資料は、日本でHCFCが2020年に全廃となる予定だと書く。環境省の巻末資料の図4-1は、先進国のHCFCの2020年の全廃について、2030年までは冷凍空調機器の補充用に限り、基準量の0.5%を上限に生産・消費できると注記する。

HFC。 先進国(ベラルーシ・ロシアなど5か国を除く)は、2011〜2013年のHFCの平均量にHCFC基準値の15%を加えた量(CO2換算)を基準値として、2019年から段階的に減らす。

年基準値からの削減上限(基準値比)
201910%90%
202440%60%
202970%30%
203480%20%
203685%15%
先進国の段階(環境省掲載のMOP28結果)。「上限」は、筆者が100%から削減率を引いた値。ベラルーシ・ロシア・カザフスタン・タジキスタン・ウズベキスタンは、規制措置に差異がある。基準値に加えるHCFC分はHCFC基準値の25%で、削減は第1段階が2020年に5%、第2段階が2025年に35%。この表は、日本を含むそれ以外の先進国の段階。

なぜ、オゾン層を壊さないHFCが対象になったのか。環境省掲載の資料は、HFCはオゾン層破壊物質ではないが、その代替として開発・使用され、温室効果が高いから、と書く。日本は、2018年のオゾン層保護法の改正で、HFCの生産量・消費量の段階的な削減を進めている(中間とりまとめ)。

フロン排出抑制法は、フロンのライフサイクルに関わる全ての主体に、法令の遵守を求める(経済産業省・環境省の2015年度の資料)。製品側には指定製品制度がある。家庭用エアコンなどの製造・輸入業者に、温室効果を下げる目標値を定め、製品区分ごとの加重平均で達成を求める(環境省のポータル)。管理者や充塡回収業者の義務は、このトピックでは扱わない。

これで、冷媒の名前を見て、どの条約・どの法律の対象かを言えるようになった。

数と条文で追う

GWPを掛けて、二酸化炭素換算にする

CO2換算量=物質の量×GWP\text{CO}_2\text{換算量} = \text{物質の量} \times \text{GWP}

環境省の資料は、各温室効果ガスの排出量にGWPを乗じたものをCO2換算とする。地球温暖化対策推進法施行令の第4条は、二酸化炭素が1、メタンが28、一酸化二窒素が265、HFC-134aが1,300、HFC-32が677などと定める(2026年4月1日施行の版)。

例題1 R-410Aが50kg漏れた。令和5年告示の表(令和6年度以降の算定漏えい量に用いる)のGWP 1,920で換算すると。

  • 50 kg × 1,920 = 96,000 kg = 96.0 t-CO2
  • 同じ50 kgの二酸化炭素は0.05 tなので、1,920倍の影響にあたる

例題2 その機器を、R-32(GWP 677)の機器に替えた。同じ50 kgが漏れたら。

  • 50 kg × 677 = 33,850 kg = 33.85 t-CO2
  • 比は677 ÷ 1,920 ≒ 0.353。換算量は約35%になり、約65%減る
  • GWPだけの比較だ。機器の効率や充塡量、安全性は別に見る(効率は「冷凍サイクルとCOP」で扱う)
やってみよう ①:混合冷媒のGWPを自分で出す

環境省掲載の資料によると、混合冷媒のGWPは、成分ごとのGWPに質量の割合を掛けて合計する。R-32とR-125を、質量で1:1に混ぜたとする(R-410Aの配合比は、一次資料では確かめていない。仮定)。

  • 令和5年告示の表の成分:R-32は677、R-125は3,170。0.5 × 677 + 0.5 × 3,170 = 1,923.5。表のR-410Aは1,920で、近い
  • 旧告示(平成28年告示)の表の成分:R-32は675、R-125は3,500。0.5 × 675 + 0.5 × 3,500 = 2,087.5。表のR-410Aは2,090で、近い

冒頭の2つの数字は、成分のGWPが改訂された結果として説明がつく(1:1の仮定のもと)。

日本の排出量を読む

出典は、環境省と国立環境研究所の2025年4月25日公表(1990〜2023年度)。HFCs・PFCs・SF6・NF3の4種類は暦年値で、GWPは第5次評価報告書(2013年)の100年値を使う。

ガスGWP2023年度の排出量(百万t)
二酸化炭素1989(92.3%)
メタン2829.4(2.7%)
一酸化二窒素26515.8(1.5%)
HFCs物質ごと31.7(3.0%)
CO2換算。合計は1,071。残りはPFCs・SF6・NF3で、あわせて約5(0.5%)。
ガス別の推移の形(1990〜2023年度、縦軸は別々) 二酸化炭素 最大は2013年度 目盛り 989〜1,314 メタン 前年度を上回る年がない 目盛り 29.4〜49.9 一酸化二窒素 1999年度に急落 目盛り 15.8〜31.4 HFCs(暦年値) 谷2004〜05年→山2021年 目盛り 10.8〜33.8 ガス別の推移の形(自作の図。環境省・国立環境研究所の2025年4月公表版の表2から作成。縦軸は各ガスの最小〜最大に合わせた別々の目盛りで、0から始まらない。単位は百万t-CO2換算)

図の形を、数字で確かめておく。

  • 二酸化炭素:1990年度は1,160、2013年度は1,314、2023年度は989。他の3ガスのどれと比べても、どの年も23倍以上
  • メタン:49.9から29.4へ。前年度を上回る年がない(同値の年が3回ある)。1990〜2024年度の2024年度版(公表日は未確認)では、1994年度がわずかに前年度を上回る
  • 一酸化二窒素:1997年度に31.4で最大。1998年度の30.1から、1999年度の24.5へ落ちた(18.6%減)
  • HFCs:13.4(1990年)、21.5(1995年)、10.8(2004年と2005年。同値)、33.8(2021年)、31.7(2023年)

環境省は、2013年からの増加の要因に、冷蔵庫やエアコンの冷媒がHCFCからHFCに替わったことなどを挙げる。2022年からの減少の要因には、業務用冷凍空調機器の低GWP冷媒への転換等による使用時の排出の減少と、廃棄時のHFC回収量の増加などを挙げる(HFCsは暦年値。2025年4月公表版)。中間とりまとめは、HFCsの増加の背景に、1990年代からの、冷媒を中心とするCFC・HCFCからHFCへの転換の進展を挙げ、排出量は2005年以降増加傾向が続いたと書く。

目標も数字で見ておく。基準年は2013年度(排出量1,395百万t)で、削減目標は、2030年度が46%(2021年10月の国連への提出)、2035年度が60%、2040年度が73%(2025年2月の国連への提出)。2050年はネット・ゼロだ。2025年4月公表版の2023年度の排出・吸収量は約10億1,700万tで、2013年度比27.1%減。吸収量を引く前の排出量10億7,100万tなら23.3%減になる。2030年度の46%減を、排出・吸収量の値にすると、1,395 × 0.54 ≒ 753百万tになる(筆者の計算)。

排出量の数字は、公表の版で変わる。2024年度版は、2023年度の値を改訂した(総排出量は1,071が1,067、HFCsは31.7が28.5。HFCsの改訂は、冷媒の使用時の漏えい率と初期充塡量の見直しによる)。HFCsとメタンの大小も、2023年の値で、2025年4月公表版はHFCsが大きく(31.7と29.4)、2024年度版はメタンが大きい(28.5と29.5)。グラフや数字の問題は、年の範囲と公表版を確かめる。
やってみよう ②:次の特徴は、どのガスか

2025年4月公表版(1990〜2023)で、4つの特徴がどのガスか、読む前に決めてから開く。

  • (ア) 前年度を上回る年が、一度もない
  • (イ) 1999年度に、前年度から約19%落ちた
  • (ウ) 2004〜2005年(同値)に最小、2021年に最大となる谷と山がある
  • (エ) どの年も、同じ年の他の3ガスの最大のものの23倍以上

答え:(ア) メタン (イ) 一酸化二窒素 (ウ) HFCs (エ) 二酸化炭素

これで、グラフの系列を、大きさと形で当てられるようになった。

部門別の数字 — 配分前と配分後

二酸化炭素を、出す場所(部門)で分ける統計には、2通りある。環境省の資料は、配分前を、発電や熱発生に伴う排出を生産者側の部門に計上した値、配分後を、電力・熱の消費量に応じて消費者側の部門に配分した値とする。

部門(2023年度)配分前配分後
産業245(24.7%)340(34.3%)
運輸183(18.5%)190(19.2%)
業務その他50.3(5.1%)165(16.7%)
家庭46.4(4.7%)147(14.9%)
発電所・製油所等397(40.1%)81.0(8.2%)
百万t。2025年4月公表版の2023年度の値(2024年度版では、業務その他が配分前52.7・配分後162などに改訂)。割合は二酸化炭素の全体(989)に対する。エネルギー起源の合計(922)は、配分前も後も同じ。配分後の「発電所・製油所等」は、機器の予熱・試運転等に伴うエネルギー消費や、エネルギーの製造過程・送配電での損失を表す(環境省の注)。

業務その他部門(商業・サービス・事業所等)は、配分前の50.3が、配分後は165になる(3.28倍)。差の114.7は、電力・熱の消費に伴って配分された分にあたる(筆者の引き算)。

やってみよう ③:配分された分は、部門の何割か

業務その他部門の配分後(165)のうち、配分前(50.3)との差は何割か。

差は165 − 50.3 = 114.7。114.7 ÷ 165 ≒ 0.695で、約7割。配分後の業務その他部門の数字の約7割が、電力・熱の消費に伴って配分された分だ。

現場とつなぐ

冷媒は「使う間に漏れ」「捨てるときに出る」。 環境省の2026年6月の資料(2024年の推計)では、HFCsの排出のうち、機器の使用時が約42%、廃棄時が約46%を占める。機器の種類別では、業務用エアコンが約33%、業務用冷蔵冷凍機器が約24%、家庭用エアコンが約23%だ。中間とりまとめは、この排出量の推計方法を、今後見直す予定と書く。冷媒を使う機器を据え付け、保守し、撤去する管工事の現場は、この数字の当事者になる(当サイトの読み)。

経済産業省・環境省の2015年度の資料は、使用時の漏えいが想定以上に生じている原因を「設備不良や経年劣化等」と書く。廃棄時については、中間とりまとめが次の点を挙げる。令和元年の改正で、冷媒未回収での機器廃棄に対する直接罰が導入され、建物解体工事の規制が厳格化された。業務用エアコンの廃棄時の回収は、令和元年の約41%(台数)・約31%(冷媒量)から、令和6年の約53%・約40%に増えたが、なお大きな排出源だと整理する。

中間とりまとめは、HFCsの2030年の目標値(約893万t-CO2)との間に、約1,900万t-CO2規模の乖離があるとする。機器の更新までに長い時間がかかる場合には、安全性を大前提に、機器は替えず冷媒だけをGWPの低いものに入れ替える「レトロフィット」も、選択肢として挙げる。決定済みの制度ではなく、検討中の方向性だ。

低GWP冷媒の安全性。 環境省掲載の2016年のMOP28結果は、可燃性冷媒を含む代替物質の国際的な安全性基準をめぐる連携・調整のため、タスク・フォースの設置などが決まったと記す。冷媒を替える話は、GWPの数字だけでは終わらない。

電気設備との接点。 配分前後の数字から、電気と建物の関係が読める。業務その他部門では、配分後の約7割が電力・熱の消費に伴う分だ。空調・照明・動力で電気を減らす工夫は、配分後の統計では、使う側の部門(業務その他、家庭)の削減として数字に現れる(配分の定義からの当サイトの読み)。

試験での出方とワナ

令和8年度 問題A No.8(必須):1つのグラフに4系列があり、縦軸の途中が省略されていた。二酸化炭素の系列を選ぶ形で、公式の正答は、グラフの最上段に描かれた系列だった。図の期間は1990〜2023年度で、2025年4月公表版と同じ範囲だ。

決め手は、大きさ(他のガスの23倍以上)と、形(2013年度が最大で、その後は全体として減る)。ほかの3ガスの形は、やってみよう②のとおり。

同じ令和8年度の問題Bの No.20は、フロン排出抑制法の、充塡回収業者の義務からの出題だった(このトピックでは扱わない)。この科目では、次の点が試される。

  • GWPとODPを取り違えない。ODPはCFC-11が基準、GWPは二酸化炭素が基準
  • HFCは、ODPが0でも、GWPが大きい
  • 版の違う数字(1,430と1,300、2,090と1,920)に、慌てない。与えられた数字で計算する
  • 配分前と配分後の数字を、混ぜて比べない

冒頭の問いの答え合わせ

二酸化炭素の曲線は、どれか。 大きさで、他のガスの23倍以上の系列。形で、2013年度の山があり、その後は全体として減っている系列。メタンは前年度を上回る年がなく、一酸化二窒素は1999年度に急落、HFCsは2004〜2005年の谷と2021年の山だ。

R-410Aの2,090と1,920。 どちらも、その表では正しい。旧告示の表(令和5年度に行う令和4年度実績までの算定に用いる)は2,090、令和5年告示の表(令和6年度以降に行う算定に用いる)は1,920。成分のGWPが改訂され、1:1の仮定で計算しても同じ向きに変わる(やってみよう①)。環境省の2026年6月の資料の表には2,090が載るが、どの版の値かは書かれていない。版を書かない数字は、そのままでは使えない。

次の問い

冷媒のGWPを下げれば、地球温暖化は止まるのか。冷媒が漏れなくても、機器が多くの電気を使えば、発電所から出る二酸化炭素が増える。電気をどれだけ使って、どれだけの熱を動かせるのか。その成績を表すCOPは、別のトピック「冷凍サイクルとCOP」で扱っている。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 同じ冷媒のGWPを、版を確かめずに1つの数字として覚える

    なぜ引っかかるR-134aは1,430(旧告示)と1,300(令和5年告示)、R-410Aは2,090と1,920というように、告示や評価報告書の改訂で値が変わる。版が書かれていない資料の値を、唯一の正しい値だと思い込みやすい

    見破り方問題文に値が与えられていれば、その値で計算すれば足りる。自分で思い出す必要があるときは、「令和6年度以降の算定漏えい量は令和5年告示の表」のように、版の手がかりを探す。基準年・公表年が書かれていない統計も、版を疑う

  2. オゾン層を壊さない(ODPが0)から環境に優しい、と読む

    なぜ引っかかるHFCはODPが0だが、GWPが大きい。フロン類の規制が、オゾン層の保護と地球温暖化の防止という2つの目的に分かれていることを見落とす

    見破り方選択肢の物質が、ODPとGWPのどちらの話をしているかを先に決める。CFC・HCFCは塩素を含み、ODPが0より大きい。HFCはODPが0で、キガリ改正はHFCの温室効果の大きさを理由に削減対象とした

  3. グラフの系列を目盛りの数字だけで探し、HFCsを「増え続けている」と決めつける

    なぜ引っかかる二酸化炭素は他のガスより桁が大きく、軸の途中が省略されることがある。HFCsは2005年から2021年まで増え、2022年から減っているので、「増加」の記憶だけでは選べない

    見破り方大きさの順(二酸化炭素は他のガスの23倍以上)と形の特徴(メタンはほぼ減り続ける、一酸化二窒素は1999年度に急落、HFCsは2004〜2005年の谷と2021年の山)で絞る。HFCsは暦年値であることも見る

  4. 部門別のCO2排出量を、電気・熱配分前か後かを見ずに比べる

    なぜ引っかかる業務その他部門は、配分前が5.1%、配分後が16.7%。生産者側に計上するか、消費者側に配分するかで、同じ年度の同じ部門でも数字が大きく変わる

    見破り方「配分前」「配分後」の語を探す。当サイトの整理では、電気を使う側(建物・工場)の対策を考えるときは配分後の数字、発電所の対策は配分前の数字を見る

参考文献・出典

理解度チェック(12問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、12問で確認しよう。 内訳は基本4問・応用5問・ひっかけ3問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 12 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 地球温暖化係数(GWP)は、各温室効果ガスの温室効果の程度を二酸化炭素に対する比で示した係数。環境省の資料は100年値を使い、積分する年数で値が変わりうると注記する。二酸化炭素換算量は排出量にGWPを掛けて出す。日本の排出量の統計は、パリ協定の規定に基づき、IPCC第5次評価報告書(2013年)の100年値を用いる(2025年4月公表版)
  2. オゾン層破壊係数(ODP)は、CFC-11を1としたときの比。CFC-12は1、HCFC-22は0.055(ともにモントリオール議定書附属書の値)。HFCは0(環境省の巻末資料の、代替フロン等4ガスの表の値)。経済産業省・環境省の2015年度の資料では、CFC・HCFC(特定フロン)はオゾン層破壊効果と高い温室効果をもち、HFC(代替フロン)はオゾン層破壊効果がなく、高い温室効果をもつ
  3. モントリオール議定書(1987年採択)はオゾン層破壊物質を、2016年のキガリ改正はHFCを、生産量・消費量の削減対象にした。先進国(ベラルーシ・ロシアなど5か国を除く)のHFCは、2011〜2013年の平均量等(CO2換算)を基準値として、2019年から段階的に削減し、2029年に70%、2034年に80%、2036年に85%を削減する
  4. 日本の2023年度の温室効果ガス排出量は10億7,100万t(CO2換算、吸収量を引く前)で、二酸化炭素が92.3%、メタン2.7%、一酸化二窒素1.5%、代替フロン等4ガス3.5%。排出・吸収量は2013年度比27.1%減(2025年4月公表版)
  5. HFCsの排出量は、2005年から2021年まで増え、2022年から減っている(暦年値。2025年4月公表版・2024年度版とも)。環境省は、2013年からの増加の要因に冷媒のHCFCからHFCへの切替えなどを、2022年からの減少の要因に低GWP冷媒への転換や廃棄時の回収量の増加などを挙げる(2025年4月公表版)
  6. 二酸化炭素排出量の部門別の数字は、電気・熱配分前(生産者側に計上)と配分後(消費者側に配分)で大きく違う。2025年4月公表版の2023年度の業務その他部門は、配分前が50.3百万t(5.1%)、配分後が165百万t(16.7%)
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