たとえば、冷却塔のファンが回っていない場面を考える。盤を開けると、配線用遮断器は入ったままだ。止めていたのは、その下にある小さな継電器(熱動継電器)だった。
電気を切る専用の遮断器があるのに、なぜ別の機器が電動機の番をするのか。しかも、三相の電線が1本外れても、遮断器が落ちるとは限らない。電動機は、多くの場合、二相だけで回り続ける。保護がなければ、過熱して焼けるおそれがある。二相で回るとは、どういう状態なのか。
令和8年度の試験には「2Eリレー」が出た。2とは何の数なのか。このトピックを読み終えるころには、電動機の異常を5つに分け、それぞれを誰が見張るのかを、仕組みから説明できる。
まず一言で
このトピックでは、電動機の異常を5つの区分に分ける(拘束は過負荷の区分に含める)。見張り役もそれぞれ違う。
- 短絡(大電流が一気に流れる)は、配線用遮断器
- 地絡(電気が大地へ漏れる)は、地絡を検出して遮断する装置(漏電遮断器など)
- 過負荷(熱がたまる)と拘束(回転子が回らないまま通電される)は、熱動継電器
- 欠相(三相の線が1本切れる)は、2Eリレー
- 反相(相順が入れ替わる)は、3Eリレー
2Eは「過負荷及び欠相保護」、3Eは「過負荷、欠相及び逆相保護」。国土交通省の標準図がそう定めている。定義の中身を数えると、数字は、見張る異常の種類の数に合う。ヒータとバイメタルの組(素子)の数ではない。なお、日本電気技術者協会の解説の表は、欠相と逆相の両方を「不平衡継電器3Eリレー」に当てていて、2Eは出てこない。「欠相は2E」という対応は、標準図の定義による。
電気設備技術基準の解釈(経済産業省の基準)の第153条は、屋内に施設する電動機に、過電流を自動的に阻止するか、警報する装置を設けるよう求めている。
管工事の電動機は、どこにあるか
空調用ポンプ、揚水用ポンプ、冷却塔やユニット形空気調和機の送風機、冷凍機の圧縮機。管工事の機械は、電動機で動く。公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編、令和4年版)の第2編は、各編で指定された機器の誘導電動機について、200Vの三相はJIS C 4210「一般用低圧三相かご形誘導電動機」と定めている(注により、出力0.75kW以上はJIS C 4213「低圧トップランナーモータ」による)。
同じ第2編の1.2.2.1は、機器に付く制御盤について、こう書く。「過負荷及び欠相保護装置は、過負荷及び欠相による過電流が生じた場合に自動的にこれを阻止し、電動機の焼損を防止できるものとし、電動機ごとに設ける」。言葉が、2Eの定義(過負荷及び欠相保護)とそろっている。
仕組み① — 電動機は「熱」で壊れる
巻線に電流が流れると、 の熱が出る。熱は電流の2乗に比例する。電流が1.2倍になれば、熱は 倍だ。熱で巻線の絶縁がいたむと、電動機は焼ける。
だから保護は、電流そのものより「電流が作る熱」を見張る形になる。熱動継電器(サーマルリレー)は、電動機に流れる線電流をヒータに通し、その熱をバイメタルに伝える。バイメタルは、膨張率の違う2枚の金属(黄銅とアンバーが使われる)を貼り合わせたもので、温度が上がると曲がる。曲がった力で接点が反転し、その出力接点が電磁開閉器を開路させて、電動機が止まる。
やってみよう①:電流が1.05倍、1.2倍、2倍になると、熱は何倍か
熱は電流の2乗に比例する。
- 1.05倍: 倍(約1.1倍)
- 1.2倍: 倍
- 2倍: 倍
電流の増え方より、熱の増え方のほうが大きい。1.2倍の過負荷でも、熱は4割以上増える。
ここで1つ、なぜ?を掘る。電動機は、始動のとき定格の数倍の電流が流れる。瞬時に切る機器では、始動のたびに止まってしまう。熱動継電器は、熱がたまるのを待つ。始動のような短い大電流は通し、長く続く過負荷だけを切る。ただし、通すのは短い間だけだ。始動(拘束)電流が流れ続ければ、2〜30秒の間で動作する特性とされる(日本電気技術者協会の解説)。電流が大きいほど、早く動作する特性になっている。
これで、熱動継電器が「電流が作る熱」を見張る理由と、始動を通す理由を言える。
役割分担 — 誰が何を見張るのか
熱動継電器は、主回路の電流を自分では切らない。異常を見つけて、電磁接触器に切らせる。電磁接触器に熱動継電器を組み合わせたものが、電磁開閉器だ(メーカーのカタログでの構成)。
なぜ、過負荷まで配線用遮断器に任せないのか。理由は、遮断器の定格の選び方にある。メーカーの選定表を例にとる。三相200V・3.7kWの電動機は、定格電流が15.5A、始動電流が139Aで、配線用遮断器には40Aが挙げられている。同じ表の注は、遮断器を、最大始動電流を始動電流の1.3倍、始動時間を6秒以下として選んだ、と書く。始動の電流が短い間流れても落ちない特性が要るので、定格は定格電流の約2.6倍になる。定格の40Aに、定格電流の1.2倍程度の電流(約18.6A)は届かないので、この程度の過負荷では動かない。
そこで、過負荷は電磁開閉器の熱動継電器、短絡は直列につないだ配線用遮断器、と分かれる。同じ選定表の注にも、電磁開閉器が過負荷保護を行い、遮断器は回路の短絡保護を行う、と書かれている。大きな短絡電流が流れたときは、電磁開閉器が切れる範囲を超える領域を遮断器が引き受ける。
基準にも、この分担の形がある。解釈第33条第4項は、過負荷保護装置と、短絡保護専用の遮断器(またはヒューズ)を組み合わせた装置を、電動機のみに至る低圧電路で使うときの条件を定めている。過負荷保護装置として、電気用品安全法の適用を受ける電磁開閉器が挙げられている。
地絡は別の話だ。解釈第36条は、金属製外箱を有する使用電圧60Vを超える低圧の機械器具に接続する電路に、地絡を生じたとき自動的に電路を遮断する装置を求める(例外あり)。漏電遮断器は、この装置の1つだ。
これで、電動機の回路にある機器を、守る異常ごとに言い分けられる。
仕組み② — 欠相は、なぜ見つけにくいのか
欠相とは、三相の線が1本切れることだ。原因は、断線、接続不良、接触不良などがある。
怖いのは、電動機が止まらないことだ。米国の電力会社PG&Eの資料は、多くの三相電動機は二相だけで回り続け、保護がなければ過熱して壊れると書く。そして、よく使われる保護機器の多く、たとえば一般的な遮断器や電動機用の熱動継電器は、欠相を見つけるように設計されていない、と続ける。ここでいう欠相は、運転中に1本が切れた場合だ。始動のときの欠相は、この節では扱わない。
なぜ、残る線の電流が増えるのか
三相では、3本の線で電力を運ぶ。欠相すると、2本になる。電動機が同じ仕事を続けようとすれば、2本で運ぶ分、1本あたりの電流が増える。簡単な模型で数えてみる。
三相の電力は 。欠相後は、2本の線に線間電圧 を受ける単相のかたちで、。電力 と力率 が同じなら、次のようになる。
これは考え方を見るための模型で、式は標準的な三相電力の式から筆者が導いたものだ(出典資料にこの式はない)。実際の電動機では、すべり、効率、力率が変わるので、数字はぴったりは合わない。ただ、PG&Eの資料にも、運転電流が定格の70%のとき、欠相で電流は√3倍になり、定格より約20%多くなる(0.7×1.73≒1.21)という記述がある。
例題② 欠相したときの電流の見通し
定格電流15.5A(三相200V・3.7kW)の電動機に、熱動継電器の整定(動作の基準にする電流を、つまみで合わせること)を定格どおり15.5Aに合わせてある。運転電流がいくつのときに欠相すると、残る線の電流が整定のどのあたりに入るか。√3倍の模型で数える。
整定の1.05倍は A、1.2倍は A。
| 欠相前の運転電流 | 欠相後(約1.73倍) | 整定15.5Aに対して |
|---|---|---|
| 9.30A(定格の60%) | 約16.1A | 約104%。1.05倍にわずかに届かない境目 |
| 10.85A(定格の70%) | 約18.8A | 約121%。1.2倍をわずかに超える |
| 15.5A(定格どおり) | 約26.8A | 約173% |
読み取れることが2つある。
1つめ。運転電流が定格の60%のとき、欠相後の電流は整定の約104%だ。整定は超えるが、動作してはならない上限(整定の1.05倍)に届かない境目にある。運転電流が定格のおよそ58%以下なら、整定にも届かない(やってみよう②の50%は約87%)。熱動継電器は、整定の1.05倍では動作しない特性が求められる。つまり、継電器が動作を求められない電流のまま、電動機は二相で回り続けうる。70%の行は約121%で、1.2倍をわずかに超えるだけだ。1.2倍で動作する特性なら動作する側にある(目安。JIS では125%を超えない範囲で指定した製品もある)が、日立評論の表3(1977年の1製品。周囲温度40℃、定格電流の120%)は「2時間以内に動作」と書く。すぐ切れるとは限らない。電力会社の資料は、整定を定格の125%にしていても、欠相で電動機が傷むことがあると述べている。
2つめ。定格どおり運転していて欠相しても、約26.8Aだ。配線用遮断器の40Aには届かない(約67%)。配線用遮断器は、定格電流の1倍の電流では自動的に動作しないことが、性能の基本とされている(解釈第33条第3項第一号。電気用品安全法の適用を受ける製品は、この項の対象外で、別の基準による。その基準は、ここでは確認していない)。日本電気技術者協会の解説も、定格負荷運転時の定常電流や始動電流で、保護機器が動作しないことを、遮断器と電磁開閉器を組み合わせる条件に挙げる。定格に届かない電流は、遮断器が落ちる電流域ではない。
もう1点。PG&Eの資料は、整定を銘板の電流ではなく、実際の運転電流に基づけるよう勧めている。メーカー資料の、全負荷電流に合わせて設定するという考え方とは違う。ここでは、メーカー資料の考え方(全負荷電流に合わせる)を整定の基本とし、PG&Eの助言は、欠相に弱い理由を考える材料として読む。
やってみよう②:運転電流が定格の50%(7.75A)のときに欠相したら、残る線の電流は?
A。整定15.5Aの約87%で、1.05倍(16.3A)にも届かない。過負荷保護用の熱動継電器は動作しない領域だ。電流の数字だけを見ていると、二相運転に気づけない。
なぜ、標準の熱動継電器は欠相に弱いのか
ここでいう「標準の熱動継電器」は、過負荷を見る形(メーカーの区分で「標準」。2素子形・3素子形)のことだ。日立評論(1977年3月号)は、日立製作所の2Eサーマルリレーを紹介した1977年の1社の論文で、現行製品の数値の根拠にはならない。ここでは、構造・考え方と、1製品の特性の例(表3・図6)に使う。欠相を見落とす理由は、日立評論と先の例題から、次の3つに整理できる。
- 負荷が軽いと、欠相後の電流が整定を超えない、または整定の1.05倍(これ以下では動作しない特性)に届かないことがある(例題②)。
- 2素子形は、3本の線のうち2本にしか検出素子(ヒータとバイメタルの組)がない。同論文は、変圧器の一次側の欠相などでは、一相だけ過電流になることが理論的・実験的に指摘され、3本すべてに検出素子を入れることが推奨された、と書く。IEC(国際電気標準会議)が昭和44年に「3線中2線だけ通電した場合の動作」の項目を追加し、これに準拠するには3素子が必要になった、とも書く。
- 3素子でも足りない場合がある。同論文は、中容量以上のかご形誘導電動機は、使用負荷条件によっては、3素子としても欠相時の保護ができないとの指摘があり、差動タイプの2Eリレーが示唆された、と書く。この「足りない理由」は、論文に詳しくは書かれていない。確認できていない。
日本のメーカーには、欠相に備えた形(三菱電機の3素子の過負荷/欠相保護形、富士電機機器制御の2Eなど)が別に用意されている。
なぜ、サーマル式の2Eは欠相を見張れるのか
サーマル式で欠相を検出する方法は、昭和32年ごろから種々発表された。同論文によれば、いずれも、通電している相のバイメタルと、通電していない相のバイメタルの曲がり量の差を拡大して、接点を動かす差動機構によるものだ。2Eには半導体式もあり、同論文は、大形で高価だが市販されていると書く。ここでは、サーマル式を扱う。
仕組みは、同論文の図2(日立が製品に採った「方式1」)から、こう読める。バイメタルは、2枚の連動板(A・B)に力を伝える。三相がそろって過負荷になれば、3本が同じだけ曲がり、連動板A・Bと差動レバーは、あたかも1枚の板のように一体で動いて、接点が動作する。1本が欠相すると、その相のバイメタルは曲がらず、連動板Bの動きを阻止する。連動板Aだけが動くので、差動レバーが回り、接点が動作する。
同論文の図3(L状の差動レバーを使う「方式2」)は、動き方が違う。三相過負荷のときにも連動板Bがストッパで止まって差動レバーが回り、欠相のときは、三相過負荷より早い時点で差動レバーが回る、と書く。日立は、小形・安価を優先して、図2の方式1を採った。図2だけでは、欠相のほうが早いかどうかは分からない。
早さを示すのは、製品の動作特性の図(図6、TR20-2ECの例)だ。欠相時は三相過負荷時より速く動作する(1977年の1製品の例)。曲線では、欠相のほうが小さい電流側にある。2Eは、電流の大きさだけでなく、相ごとの熱の「差」も見ている。同じ電流なら、欠相のときのほうが短い時間で動作する。どこまで小さな電流で動作するかは、製品の特性による。
JIS C 8201-4-1は、過負荷のときと欠相のときの両方で動作する多極形の熱動形過負荷リレーを、「欠相検出熱動形過負荷リレー」と定義している(有料規格のため、用語の確認にとどめる)。JIS側の用語で言えば、熱動形の2Eはこれにあたる機能をもつ、と読める。
「E」が何の頭文字なのかを書いた一次資料は、今回確かめた範囲では見つからなかった。確かなのは、標準図の定義で、数字が見張る異常の種類の数に合っていることだ。
これで、過負荷を見る標準の熱動継電器が欠相に弱い理由と、サーマル式の2Eが欠相を見張れる理由を、仕組みから言える。
仕組み③ — 反相は、なぜ別に見張るのか
反相(逆相)とは、三相の相順が入れ替わることだ。電動機は逆回転する。日立評論(1977年)は、3Eリレーが必要になるのは、過負荷や欠相による焼損の保護のほかに、電動機の逆回転による機械の故障や事故の防止をも目的とする場合だ、と書く。
仕組みから考えると、こうなる。熱動継電器は、各相の電流が作る熱を見ている。相順が入れ替わっても、各相の電流の大きさは変わらない。熱の出方で反相は見分けられない(仕組みからの推論)。そこで3Eは、2Eに相順を見る要素を加える。日立評論は、2Eサーマルリレーに逆相動作ユニットを追加した3Eリレーに切り換わっていくと予想している(当時の3Eは半導体式)。富士電機機器制御の電磁開閉器の一覧にも、2Eに別ユニットを加えた「3Eリレー付」の型式がある。電子式では、三菱電機のET-N形が、始動および運転中の過負荷・欠相・反相を検出する。反相の検出は、そのリレーの一次側の反相で、二次側の反相は検出できない。
| 種類 | 見張る異常 | 見る手がかり |
|---|---|---|
| 標準の熱動継電器 | 過負荷・拘束 | 電流が作る熱 |
| 2E | 過負荷・欠相 | 熱と、相ごとの差(熱動形の場合) |
| 3E | 過負荷・欠相・反相 | 熱・差・相順(熱動形の2E+相順の要素) |
これで、2Eと3Eの違いを、増えた1つが何かまで言える。
数と条文で追う
条文 — 解釈第153条と省令第65条
電気設備技術基準の解釈第153条の原則は、こうだ。屋内に施設する電動機には、電動機が焼損するおそれがある過電流を生じた場合に自動的にこれを阻止し、又はこれを警報する装置を設けること。
ただし、次のいずれかに該当する場合は、設けなくてよい。
- 電動機を運転中、常時、取扱者が監視できる位置に施設する場合
- 電動機の構造上又は負荷の性質上、巻線に焼損する過電流を生じるおそれがない場合
- 電動機が単相のものであって、電源側電路に施設する過電流遮断器の定格電流が15A(配線用遮断器にあっては20A)以下の場合
- 電動機の出力が0.2kW以下の場合
この条文の根は、電気設備に関する技術基準を定める省令第65条にある。省令は、屋内に施設する電動機(出力0.2kW以下を除く)に、過電流による焼損で火災が発生するおそれがないよう、過電流遮断器の施設その他の適切な措置を講じなければならない、と書く。
もう1つ、読み分けたい。解釈は、阻止「又は」警報と書く。警報だけでもよい。一方、公共建築工事標準仕様書は、過負荷及び欠相による過電流が生じた場合に「自動的にこれを阻止し」と書き、さらに標準図では、2E・3Eが動作したときは電動機を停止させ、ブザーと橙表示灯で発報する、と定める。解釈が求める最低線と、公共工事の仕様が求める線は、別だ。
確認した解釈の版は、令和7年11月20日施行の改正(20251104保局第2号)までを収めたPDFだ。令和6年10月22日改正版の第153条も、同じ文章だった。それ以降の改正の有無は、確認できていない。
例題① 定格電流から整定値、始動まで
三相200V・出力3.7kWの電動機で考える。
定格電流は、銘板で見るのが基本だ。kWから見積もるなら、効率 と力率 が要る(三相電力の標準的な式で、出典資料の記述ではない)。
選定表の定格電流15.5Aから逆算すると、。たとえば効率86%、力率80%と置けば、Aになる(15.5Aに合うよう置いた仮の値で、実機の銘板の値ではない)。効率と力率を1と置いた A より、約45%大きい。メーカーの選定表(富士電機機器制御、同社製4極・200V)も、3.7kWの定格電流を15.5Aとしている。
熱動継電器の整定は、電動機の全負荷電流に合わせる(三菱電機FA。周囲温度が20℃と大幅に異なる場合や、接続電線が標準電線サイズと異なる場合は、設定値の補正が必要)。熱動継電器には、電動機の定格電流の105%では動作せず、120%では動作する特性が求められる、と日本電気技術者協会の解説にある(整定を定格電流に合わせた場合の目安)。JIS C 8201-4-1の表3の注b)は、製造業者が指定した場合、トリップ電流は120%でなくてもよいが125%を超えない、とする(閲覧のみ。数値表は確認できていない)。15.5Aに合わせると、次の電流値になる。
- 1.05倍:A。ここまでは動作しない
- 1.2倍:A。ここでは動作する側にある(目安。JIS には125%を超えない範囲の指定もある)
始動電流は139Aで、定格の約9倍()。熱動継電器が始動を通すのは、始動が短いからだ。同じ選定表の注は、このクラスのサーマルリレー(TR-8以下)をトリップクラス10A(動作時間の区分)とし、定格の7.2倍(約112A)の電流で2〜10秒で動作する、と書く。送風機のように慣性の大きな負荷は始動時間が長く、標準の特性では始動中に動作してしまうことがある(日本電気技術者協会の解説)。同注も、始動時間が長い負荷には遅動形が必要、と書いている。
やってみよう③:トリップが嫌で、整定を18.6A(定格の1.2倍)に上げたらどうなるか
整定18.6Aなら、その1.05倍(約19.5A)までは動作しない。電動機が定格の1.2倍の18.6Aで運転し続けても、継電器は動作を求められない。一方、巻線のジュール熱()は定格の 倍。過負荷を見逃すことになる。整定は、止まる原因を調べたうえで、全負荷電流に合わせる。
整定を上げて逃げた先でどうなるかは、サイトのガイド「サーマルリレーの整定電流を高めに設定していたら、モーターが焼き付いた」(仮定の事例)が扱っている。合わせ方は「サーマルリレーの整定電流(つまみ)の合わせ方」にある。どちらも、このトピックの根拠ではなく、読み物としての補足だ。
これで、銘板の電流から整定値と、その前後の電流の意味を、数字で追える。
現場とつなぐ
- 盤で見分ける:富士電機機器制御の一覧では、電磁開閉器の型式に「/2E」が付くものが2Eサーマルリレー付、「/2E+QE-20N」が3Eリレー付だ(メーカー表記の一例)。型式の末尾に、見張る異常が表れている。
- 省略できる場合:公共建築工事標準仕様書は、0.2kW以下の電動機回路、および過電流遮断器が15A(配線用遮断器は20A)以下の単相電動機回路には、過負荷及び欠相保護装置を設けなくてもよいとする(機械設備工事編の表2.1.6の注)。解釈第153条の例外のうち、この2つが重なる。仕様書には、解釈にない省略条件もある。1ユニットの装置で、電動機自体に有効な保護サーモ等の焼損防止装置がある場合は、欠相保護装置を設けなくてもよい。
- インバーター運転のとき:同じ仕様書の「インバーター用制御及び操作盤」(適用は特記による)は、過負荷及び欠相保護装置を不要とする。インバーター回路の保護機能として、過負荷(過電流)、単相(欠相)、過電圧等の異常が発生した場合は電動機を停止する、と定める(令和4年版)。
- モータ用の遮断器:短絡・過電流・過負荷・欠相の保護を1台にまとめた、三相モータ用のブレーカもある(メーカー資料の例:富士電機機器制御のBM3シリーズの定格電流可調整形。過負荷保護機能の無い瞬時引外し形も別にある)。標準図にも「電動機保護用配線用遮断器」の図記号がある。役割分担の考え方は同じで、まとめて1台にしたものだ。詳しくはガイド「モータブレーカ(MMS)とは」。
- 電磁開閉器・サーマルリレーを選ぶとき:定格電流(A)で選ぶ。ガイド「電磁開閉器・サーマルリレーの選び方」に、kWとAの関係がある。
試験での出方とワナ
令和8年度の第一次検定(問題A No.11)には、電動機の保護継電器(2Eリレー)の保護目的を選ぶ問題が出た。正答は、過負荷と欠相の保護を挙げた選択肢。同じ年のNo.12は、低圧屋内配線の工事の種類で、次のトピックの範囲だ。
同じ形で、3Eが見張る異常の組合せや、誰が何を守るかの仕分けも問われうる。見張る異常の種類を、数えて確かめる。
- 2E=過負荷・欠相(2種類)
- 3E=過負荷・欠相・反相(3種類)
- 短絡は遮断器、地絡は漏電遮断器など
覚え方は1つだけ。「2Eは過・欠、3Eは過・欠・反」。数字は、見張る異常の数に合う。
ワナは、本トピックの「出題者のワナ」にまとめた。2Eの「2」を素子の数と読むもの、2Eに短絡や地絡を入れるもの、3Eの追加分を欠相と答えるもの、遮断器や、過負荷だけを見る熱動継電器で欠相も守れると思わせるものがある。
冒頭の問いの答え合わせ
冷却塔のファンの電動機を、熱動継電器が止めていた場面に戻る。
- なぜ別の機器が番をするのか:遮断器は、短絡と始動を乗り切る大きさで選ばれる。3.7kWの例では、定格電流15.5Aに対して40Aだ。定格の1.2倍程度の過負荷では動かない。熱を見張る熱動継電器が、過負荷を受け持つ。
- 電線が1本外れても遮断器が落ちない理由:欠相しても、多くの場合は二相で回り続ける。残る線の電流は約1.73倍(模型)に増えるが、定格どおりの運転で約26.8A。40Aの遮断器には届かない。
- 2は何の数か:標準図の定義では、見張る異常の種類の数に合う。2Eは過負荷と欠相、3Eは過負荷・欠相・反相だ。素子の数ではない。
できるようになったこと。電動機の5つの異常を、見張り役に振り分けられる。欠相が見つかりにくい理由を、電流の増え方と整定の関係で言える。サーマル式の2Eの欠相検出が、バイメタルの曲がりの「差」を見ていることを説明できる。
次の問いが残る。電動機に電気を運ぶ電線は、天井裏や壁の中のような、工事のあとで点検できない場所に、どの工事の方法なら通してよいのか。次のトピックで、低圧屋内配線の施設場所と、工事の種類を追う。