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機械工学等 ・ 6 / 19

湿り空気と空気線図 — 空気の「湿り具合」を、どう測り、どう読むのか

読み終えると、こうなる

空気線図の1点を見たとき、「この空気はあと何℃冷やすと水が出るのか」「冷たい面に触れたらどこへ動くのか」を、数字と向きで言えるようになる

  • 乾球温度と相対湿度から、飽和水蒸気圧の表を引いて水蒸気圧と絶対湿度(x=0.622×Pv÷(F−Pv))を計算し、水蒸気の量を変えずに温度を変えたときの相対湿度を求められる
  • 水蒸気圧から飽和水蒸気圧の表を逆に引いて露点温度を求め、冷たい面に触れた空気が結露するかどうかを、面の温度との比べ合いで判定できる
  • 空気線図の上で、加熱・冷却は水平、加湿・除湿は垂直、露点以下までの冷却は「水平に左へ、飽和曲線に出会ったら曲線に沿って下る」と、動きの向きを言い分けられる
  • 乾球温度・湿球温度・露点温度の大小関係を、蒸発の気化熱とスプルングの式から説明できる
考えてみよう

夏の昼、冷水を流した空調機の熱交換器(コイル)に、乾球温度26℃(ふつうの温度計が示す空気の温度)・相対湿度50%の空気が入ってくる。コイルの表面温度は10℃だ。表面に十分に触れた空気は、表面とほぼ同じ10℃まで冷やされるものとする。

このとき、コイルの表面に接している空気の薄い層は、相対湿度が何%になっているだろう。空気に含まれる水蒸気の量(絶対湿度)は、もとの空気より増えるのか、同じか、減るのか。

先に直感で決めておいてほしい。読み終えるころには、数字で答え、空気線図の上でその点を指せるようになっている。

まず一言で

湿り空気は、乾き空気に水蒸気が混ざった空気だ。水蒸気が入れる量には、温度ごとに上限がある(飽和)。水蒸気の量を変えずに冷やしていくと、上限に当たる温度が露点温度で、それより冷やすと、余った水蒸気が水になる(結露)。空気線図は、全圧が一定のとき、温度と水蒸気の量で決まる空気の状態を、1枚に描いた図だ。加熱・冷却では温度だけが、加湿・除湿では水蒸気の量だけが動く。

湿り空気を数える — 絶対湿度と相対湿度

湿り空気は、乾き空気(DA、dry air)と水蒸気の混合気体だ。気象庁の『気象観測の手引き』は、空気中の水蒸気の分圧を水蒸気圧と呼ぶ。水蒸気の量の表し方は2つある。

  • 絶対湿度 xx:乾き空気1kgに対する、水蒸気の質量。単位は kg/kg(DA)
  • 相対湿度 φ\varphi:水蒸気圧 PvP_v を、同じ温度の飽和水蒸気圧 PvsP_{vs} で割り、100倍したもの。単位は%

なぜ「乾き空気1kgあたり」で数えるのか。加熱・冷却・加湿・除湿のどれをしても、乾き空気の質量は変わらない。変わるのは水蒸気だけだ。動かないものを物差しにすれば、水蒸気の増減が、そのまま数字に出る(当サイトの説明。熊本県立大学の講義資料も、湿った空気のうちの乾燥空気1kgに対する水蒸気の質量、と言い直している)。

2つは、水蒸気圧を通してつながる。大気圧を FF(101325 Pa)、水蒸気圧を PvP_v として、建築研究所の資料は次の式を示している。

x=0.622×PvF−Pvx = 0.622 \times \frac{P_v}{F - P_v}

0.622 は、水蒸気の分子と乾き空気の分子の重さの比だ(Vaisala社の資料は 0.62199)。水蒸気は軽いので、同じ温度・同じ分圧なら、同じ体積に入る質量は、乾き空気の約6割になる。

「絶対湿度」は、資料によって指す量が違う。空調の線図の縦軸は、乾き空気1kgに対する質量 x(kg/kg(DA))だ。気象庁の手引きは、単位体積の空気中に含まれる水蒸気の質量を絶対湿度と呼ぶ。単位を見て区別する。

なぜ、水蒸気には「上限」があるのか

気象庁の手引きは、空気中に含まれる水蒸気の量には、温度によって存在しうる最大量が決まっていると書く。その状態が飽和で、そのときの蒸気圧が飽和蒸気圧だ。飽和のとき、水面では蒸発する水と、空気中の水蒸気からの凝結が等しく(平衡)、見かけ上は蒸発も凝結もしない。

なぜ、そこが「最大」なのか。水面からは、水の分子が空気中へ飛び出し続ける。飛び出す勢いは、水の温度で決まる。一方、空気中の水蒸気の分子も、水面へ戻る。戻る数は、水蒸気の濃さ(分圧)で決まる。濃くなれば戻る数が増え、飛び出す数に追いついたところで、見かけ上の増減が止まる。これが飽和だ(当サイトの説明。気象庁の「蒸発と凝結が等しい」を言い換えた)。

温度が高いほど、飛び出す勢いが強い。追いつくまでの濃さも大きくなる。飽和水蒸気圧は、温度とともに急に大きくなる。

乾球温度飽和水蒸気圧0℃を1とすると
0℃6.11 hPa1.0
10℃12.27 hPa2.0
20℃23.37 hPa3.8
30℃42.43 hPa6.9
気象庁『気象観測の手引き』表5-1(水に対する値)。10℃上がるごとに、およそ2倍(2.0倍、1.9倍、1.8倍)になる。

これで、「空気には温度ごとの上限がある」と、理由つきで言える。

なぜ、相対湿度は変わるのに、絶対湿度は変わらないのか

空気を加熱するだけなら、水蒸気の質量も、乾き空気の質量も変わらない。だから絶対湿度 xx は変わらず、上の式から、水蒸気圧 PvP_v も変わらない。変わるのは、飽和水蒸気圧 PvsP_{vs} だけだ。φ=Pv/Pvs×100\varphi = P_v / P_{vs}\times 100(%)の分母だけが、温度で動く。

例題1 乾球温度26℃・相対湿度50%の空気(状態A)の絶対湿度を求める。

  • 飽和水蒸気圧(表5-1):26℃で 33.61 hPa = 3361 Pa
  • 水蒸気圧:Pv=0.50×3361=1680.5P_v = 0.50 \times 3361 = 1680.5 Pa
  • 絶対湿度:x=0.622×1680.5/(101325−1680.5)=0.01049x = 0.622 \times 1680.5 / (101325 - 1680.5) = 0.01049 kg/kg(DA)

約0.0105 kg/kg(DA)、つまり約10.5 g/kg(DA)だ。飽和水蒸気圧を建築研究所の式(5)で計算しても、小数第4位まで同じになる。

例題2 Aの水蒸気の量を変えずに、温度だけを変える。Pv=1680.5P_v = 1680.5 Pa のままだ。

乾球温度飽和水蒸気圧相対湿度
35℃5623 Pa約30%
26℃(A)3361 Pa50%
20℃2337 Pa約72%
15℃1704 Pa約99%
14.8℃1682 Paほぼ100%
相対湿度=1680.5 Pa ÷ 飽和水蒸気圧。飽和水蒸気圧は表5-1の値。

暖めると相対湿度が下がる。冷やすと上がり、14.8℃あたりで100%に届く。水蒸気は1gも増減していない。

「暖めると空気が乾く」は、水蒸気が減ったのではない。空気が入れられる量が増えて、割合が下がっただけだ。
やってみよう ①:30℃・相対湿度60%の空気の絶対湿度と露点

飽和水蒸気圧は、30℃で 42.43 hPa = 4243 Pa。水蒸気圧は 0.60×4243=2545.80.60 \times 4243 = 2545.8 Pa。絶対湿度は 0.622×2545.8/(101325−2545.8)=0.01600.622 \times 2545.8 / (101325 - 2545.8) = 0.0160 kg/kg(DA)。

露点は、表5-1で 25.46 hPa に当たる温度を探す。21.3℃が 25.32 hPa、21.4℃が 25.48 hPa なので、約21.4℃だ。

これで、乾球温度と相対湿度から、水蒸気圧・絶対湿度を計算し、温度が変わったあとの相対湿度を出せる。

なぜ、冷やすと露点で結露するのか

気象庁の手引きは、空気を圧力を変えずに冷却していくと、ある温度で水蒸気が飽和に達し、それ以上は水蒸気の状態で存在できず、凝結を始めて露を結ぶ、と書く。この温度が露点温度だ。

理由は、前の節で見たとおりだ。冷やしても水蒸気圧 PvP_v は変わらない。ところが飽和水蒸気圧 PvsP_{vs} は、温度が下がるほど急に小さくなる。両者が等しくなる温度が、露点だ。それ以上冷やすと、PvP_v が PvsP_{vs} を超えることはできない。超えた分は、水になる。

例題3 状態A(26℃・50%)の露点と、10℃まで冷やしたときの結露水の量を求める。

  • Aの水蒸気圧は 0.50×33.61=16.8050.50 \times 33.61 = 16.805 hPa。表5-1で 14.7℃が 16.72 hPa、14.8℃が 16.82 hPa なので、露点は約14.8℃
  • 10℃の飽和空気:Pvs=12.27P_{vs} = 12.27 hPa = 1227 Pa。xS=0.622×1227/(101325−1227)=0.00762x_S = 0.622 \times 1227 / (101325 - 1227) = 0.00762 kg/kg(DA)
  • 出た水:0.01049−0.00762=0.002870.01049 - 0.00762 = 0.00287 kg/kg(DA)。乾き空気1kgあたり、約2.9 g

Vaisala社の資料にある簡易式でも、露点は14.77℃と出る。ここでは表を引いた。

010203000.0050.0100.0150.020乾球温度 t [℃]絶対湿度 x [kg/kg(DA)] ADS 相対湿度50% A 26℃・相対湿度50%(x は約0.0105) D 露点14.8℃:水平に冷やして飽和曲線に出会う点 S 10℃・飽和(x は約0.0076) D→S(太線):飽和曲線に沿って下る。 水が出た分だけ、絶対湿度 x が減る 図1 冷たい面に触れた空気の動き(自作の概念図。26℃・相対湿度50%の空気が表面10℃に触れる例。飽和曲線は建築研究所の式から計算)

図1の上では、Aから水平に左へ動き(冷却)、飽和曲線(相対湿度100%の線)にぶつかる点Dが露点だ。さらに冷やすと、点は水平には動けない。出た水を取り除けば、点は飽和曲線の上にとどまり、曲線に沿って左下へ下る。下った分が、出た水の量だ。

なぜ、冷たい面に触れた空気の薄い層は、その面の温度で飽和しているといえるのか。面の上には、結露した水がある。水面の上では、蒸発と凝結が釣り合う状態が飽和だ。層の水蒸気が、その温度の飽和水蒸気圧より濃い間は、凝結が勝って水蒸気が減り続ける。釣り合ったところで止まる(当サイトの説明)。

やってみよう ②:冬の窓は、何℃以下で結露するか

室内の空気が20℃・相対湿度40%のとき、窓の表面温度が5℃のときと8℃のときで、結露するか。

水蒸気圧は 0.40 × 23.37 = 9.35 hPa。表5-1で 9.35 hPa に当たるのは6.0℃、つまり露点は6.0℃だ。窓の表面が5℃なら露点より低いので結露する。8℃なら高いので結露しない。窓の表面温度が何で決まるかは、次のトピックで扱う。

これで、水蒸気圧から露点を出し、「結露するか」を、面の温度との比べ合いで決められる。

湿球温度 — なぜ、空気の乾き具合を表すのか

湿球温度は、乾湿計(乾球と湿球の2本の温度計)で測る。気象庁の手引きは、湿球の表面では水分が蒸発して気化熱が奪われ、湿球温度が下がると書く。空気が乾燥しているほど蒸発は激しく、降下が大きい。湿っているときは、降下が小さい。

なぜ、どこかで下げ止まるのか。湿球が冷えるほど、周りの空気から入る熱は増える。一方、湿球の水の飽和水蒸気圧は下がり、蒸発は弱まる。入る熱と、蒸発で奪われる熱が釣り合ったところで、温度計の読みは止まる。空気が乾いているほど、釣り合うのは低い温度だ(当サイトの説明)。空気が飽和していれば蒸発しないので、降下はゼロになる。

気象庁は、乾球温度 tt、湿球温度 t′t'、気圧 PP(hPa)から蒸気圧 ee(hPa)を出す式(スプルングの式)を示す。E′E' は湿球温度の飽和蒸気圧、AA は湿球が凍らないとき0.50だ(気象庁の表5-3は通風乾湿計用で、この式で作られている。通風しない乾湿計用の表5-4は、別の式で a=0.0008)。

e=E′−A755 P (t−t′)e = E' - \frac{A}{755}\,P\,(t - t')

例題4 状態A(26℃・50%、e=16.805e = 16.805 hPa)の湿球温度を、気圧1013.25 hPaで求める。

t′t' を決めて、右辺が 16.805 hPa になるところを探す。t′=18.7t' = 18.7℃では E′=21.55E' = 21.55 hPa(表5-1)で、右辺は 21.55−4.90=16.6521.55 - 4.90 = 16.65 hPa。t′=18.8t' = 18.8℃では E′=21.69E' = 21.69 hPa で、(0.50/755)×1013.25×(26−18.8)=4.83(0.50/755) \times 1013.25 \times (26 - 18.8) = 4.83 なので、21.69−4.83=16.8621.69 - 4.83 = 16.86 hPa。16.805 hPa に近いのは後者だ。湿球温度は約18.8℃になる。

乾球26.0℃ > 湿球18.8℃ > 露点14.8℃。飽和していない空気では、この順に並ぶ。理由は、スプルングの式から読める。t>t′t > t' なら e<E′e < E'、つまり空気の水蒸気圧は、湿球温度の飽和水蒸気圧より小さい。飽和水蒸気圧は温度が高いほど大きいので、水蒸気圧と飽和水蒸気圧が等しくなる温度(露点)は、湿球温度より低い。t=t′t = t' なら e=E′e = E' で、空気は飽和し、3つの温度が等しい(当サイトの読み)。

これで、湿球温度が乾球温度より低い理由と、乾湿の指標になる理由を、蒸発の気化熱から説明できる。

空気線図の読み方

乾球温度・相対湿度・絶対湿度は、2つが分かれば、残りが決まる(熊本県立大学の講義資料)。全圧が一定のときの話だ(二次資料)。空気線図は、その関係を1枚に描いた図だ。

010203000.0050.0100.0150.020乾球温度 t [℃]絶対湿度 x [kg/kg(DA)] 飽和曲線(相対湿度100%) P加熱冷却加湿除湿 水平に動く=水蒸気の量は同じ(顕熱だけが出入り)垂直に動く=温度は同じ(潜熱だけが出入り)冷却を続けて飽和曲線に出会うと、その先は曲線に沿って下る(冷却除湿。図1の動き) 図2 空気線図の上での動き(自作の概念図。Pは仮の状態点。顕熱は温度を変える熱、潜熱は水蒸気の量を変える熱。飽和曲線は建築研究所の式から計算)

線図の上の線は、次のような形をしている。

線形読むもの
乾球温度ほぼ垂直温度計の示す温度
絶対湿度水平水蒸気の量 x
相対湿度右上がりの曲線100%が飽和曲線
湿球温度右下がりの斜め湿球温度計の示す温度
比エンタルピー右下がりの斜め空気の持つ熱量
比容積斜め乾き空気1kgを含む体積
形は二次資料(サードペディア百科事典)の説明で確認。軸のとり方で傾きは変わる。
線図には、軸のとり方が違う型がある。図1・図2は乾球温度を横、絶対湿度を縦にとった型だ。比エンタルピーと絶対湿度を斜めに交わる軸にとる型(h-x線図)では、乾球温度の線が少し傾く(二次資料)。令和8年度の問題の図は、比エンタルピーを斜めの軸、絶対湿度を縦軸にとり、飽和曲線を「飽和空気線」と書いていた。どの型でも、絶対湿度が縦軸なら、水蒸気の量が同じ点は水平線の上に並ぶ。軸の名前を、先に読む。

空気に行う操作と、線図の上の動き

熊本県立大学の2003年の講義資料は、空調で空気に行う操作を、加熱・冷却・加湿・除湿・混合に分けて、線図の上の動きを示している(古い資料だが、仕組みの説明に使う)。

  • 加熱・冷却:乾球温度だけが変わる。水蒸気の量は同じなので、水平に動く
  • 加湿・除湿:水蒸気の量だけが変わる。乾球温度は同じなので、垂直に動く
  • 混合:2つの状態を結ぶ直線の上に、混ぜた割合に応じた点ができる。絶対湿度と比エンタルピーは、乾き空気の質量で重みをつけた平均で、質量の多い方に寄る(乾球温度は近似。同じ資料)
  • 組み合わせ(冷却除湿):露点以下まで冷やす。水平に左へ動き、飽和曲線に出会ったら、曲線に沿って下る(当サイトの読み。図1)

同じ資料は、乾球温度を変えずに除湿するのは実際には難しく、空気を露点まで冷やして水蒸気を結露水として除き、あとで加熱し直す(再熱)のが一般的だと書いている。

やってみよう ③:次の操作は、線図のどちらへ動くか

(a) 冬の暖房(水分の出入りなし) (b) 加湿器で水蒸気を足す(乾球温度は同じ) (c) 冷たいコイルで、露点以下まで冷やす

(a) は水平に右へ。絶対湿度は同じで、相対湿度は下がる。(b) は垂直に上へ。(c) は水平に左へ動き、飽和曲線に出会ったら、曲線に沿って左下へ下る。

覚え方は1つだけ。横に動けば温度が変わり、縦に動けば水分が変わる。

これで、加熱・冷却・加湿・除湿・混合が線図のどちらへ動くかを、理由つきで言える。

比エンタルピー — 顕熱と潜熱に分ける

空気の持つ熱量は、比エンタルピー h(kJ/kg(DA))で表す。0℃の乾き空気と0℃の水を基準にして測った、湿り空気の熱量だ(熊本県立大学の講義資料)。乾き空気を温める熱と、水蒸気の分(0℃の水を蒸発させる熱と、その水蒸気を温める熱)の和になる。

h=1.006 t+x (2501+1.805 t)h = 1.006\,t + x\,(2501 + 1.805\,t)

係数は資料によって少し違う。2024年の講義資料は 1.005、2501.1、1.846 を使い、2003年の講義資料の式は 1.006、2501、1.805 を使う。状態Aで比べると、h の差は0.02 kJ/kg(DA)に満たない。本文では、式の形は2024年のものに、係数は2003年のものに合わせ、1.006、2501、1.805 で統一する。

温度が変わる分(顕熱)と、水蒸気の量が変わる分(潜熱)は、次の式で分けられる(2003年の講義資料の式)。

Δh顕=Δt (1.006+1.805 x),Δh潜=Δx (2501+1.805 t)\Delta h_{\text{顕}} = \Delta t\,(1.006 + 1.805\,x), \qquad \Delta h_{\text{潜}} = \Delta x\,(2501 + 1.805\,t)

例題5 状態A(26℃、x=0.01049x = 0.01049)を、状態S(10℃の飽和、x=0.00762x = 0.00762)にするときの熱量の内訳を求める。

  • hA=52.9h_A = 52.9、hS=29.3h_S = 29.3 kJ/kg(DA)。差は 23.6 kJ/kg(DA)
  • 水平に 26℃→10℃(顕熱):16×(1.006+1.805×0.01049)=16.416 \times (1.006 + 1.805 \times 0.01049) = 16.4
  • 垂直に xx を 0.01049→0.00762(潜熱、10℃):0.00287×(2501+1.805×10)=7.20.00287 \times (2501 + 1.805 \times 10) = 7.2
  • 合計 16.4+7.2=23.616.4 + 7.2 = 23.6。必ず合う(式の恒等変形。凝結水の持ち去る熱は含めない)

全熱に占める顕熱の割合を顕熱比(SHF)という。16.4/23.6=0.6916.4 / 23.6 = 0.69。顕熱比の定義は標準的なもので、出典資料にはなく、筆者が書いた。この比が主役になる冷却コイルの計算は、次のトピックで扱う。

なお、比容積は、乾き空気1kgを含む湿り空気の体積だ。理想気体の式 RaT/(P−Pv)R_a T/(P - P_v)(RaR_a は乾き空気の気体定数、TT は絶対温度)から、温度が高いほど、水蒸気が多いほど大きい。状態Aで約0.86 m³/kg(DA)になる(標準的な式。出典資料にはなく、筆者が導出)。

現場とつなぐ

冷却コイルは、除湿もしている。 熊本県立大学の2003年の講義資料は、空気冷却器(冷却コイル)を暖かい空気が通ると、急冷却されて結露し、水分が水滴として分離されて落ちていくので、冷却器は減湿も兼ねる、と書く。コイル表面の温度が、通る空気の露点より低ければ、コイルに触れた空気の層は、図1のSのように、コイル表面の温度で飽和した状態になる(全部の空気がコイルに触れるわけではない。当サイトの読み)。水が出る以上、受けて流す先が要る。排水の処理は、ここでは立ち入らない。

盤の結露と、線図。 キュービクルや制御盤の内側の結露も、同じ仕組みで説明できる。盤の中の水蒸気の量が同じなら、温度を上げると線図の右へ動き、相対湿度が下がる。たとえば、15℃・相対湿度80%の空気を、水蒸気の量を変えずに25℃にすると、相対湿度は約43%になる(飽和水蒸気圧の表から計算)。

試験での出方とワナ

出題の型

令和8年度 問題A No.7(必須):比エンタルピーを斜めの軸、絶対湿度を縦軸、乾球温度を横軸にとった線図に、状態点Aと、4つの候補の点がある。露点より低い表面で冷やされた空気層の状態点を選ぶ形だった(問題文・図・選択肢は転載していない)。

決め手は2つだ。

  1. 飽和曲線(飽和空気線)の上にあること。表面の温度で飽和している
  2. 絶対湿度が、Aより小さいこと。結露で水が出た分だけ減る

飽和曲線に届いていない点は、表面の温度で飽和していない。Aより絶対湿度が大きい点は、冷却では作れない。公式の正答肢は、この2つを満たす点だった。決め手の2つは、公式の解説ではなく、飽和の定義と物理からの当サイトの読みだ。

ひっかけの型は、本文のあとの「出題者のワナ」に4つまとめた。どれも、ここまでの節に出てきたことの裏返しだ。

冒頭の問いの答え合わせ

26℃・相対湿度50%の空気が、表面10℃のコイルに十分に触れた。

  • 薄い層の温度は、約10℃(表面と同じ)
  • 相対湿度は100%。表面に結露水があり、その温度で飽和している
  • 絶対湿度は約0.0076 kg/kg(DA)。もとの約0.0105より、約0.0029(乾き空気1kgあたり約2.9 g)減る
  • 図1のSの位置だ。Aから水平に左へ動いた点ではなく、飽和曲線の上で、Aより下

「増えるのか、同じか、減るのか」は、減る。10℃の空気が持てる水蒸気は、もとの空気が持つ量より少ないからだ。

理解度チェックの問1〜3(定義)、問6・7(湿球)、問8(冷たい面の空気)、問9〜11(計算)で、確かめてみよう。

(例題の数値は、気象庁の表と建築研究所の式の両方を使い、プログラムで検算している。)

次の問い

冬の朝、窓ガラスに水滴がつく。室内の空気は20℃・相対湿度40%でも、露点は6.0℃だ(やってみよう②)。では、窓ガラスの室内側の表面温度は、室温と外気温のあいだの何℃になるのか。それは何で決まり、結露を防ぐには、何を変えればよいのか。次のトピック「結露と防露」で、この問いを追う。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 温度を上げると空気中の水蒸気が減るので、相対湿度が下がる、と考える

    なぜ引っかかる「暖めると乾く」という経験が、水蒸気が減ったという理解に化ける。実際は水蒸気の量(絶対湿度)は変わらず、飽和水蒸気圧が大きくなって、割合だけが下がる

    見破り方加熱・冷却の問題は、まず「絶対湿度は変わらない」と置く。線図では水平に動く。相対湿度は水蒸気圧÷飽和水蒸気圧で、分母だけが温度で変わる。本文の例題2では、26℃・50%の空気が、35℃で約30%、15℃で約99%になる

  2. 冷たい面で冷やされた空気層の状態点を、もとの空気から水平に左へ動いた点(絶対湿度が同じ点)に取る

    なぜ引っかかる冷却は水平に動くと覚えているので、結露が始まったあとも水平に動き続けると考えてしまう。水平に動けるのは、飽和曲線に出会うまで(露点まで)だ

    見破り方冷たい面に触れた空気層は、その面の温度で飽和している。飽和曲線の上の点で、絶対湿度はもとの空気より小さい。この2つを満たす点を選ぶ。本文の図1の、DからSへの動き

  3. 「絶対湿度」を、どの資料でも乾き空気1kgあたりの質量だと決めつける。または、水蒸気圧の割合と混同する

    なぜ引っかかる気象庁の手引きは、単位体積の空気中に含まれる水蒸気の質量を絶対湿度と呼ぶ。空調の線図の縦軸 x(乾き空気1kgに対する質量)とは別の量で、名前だけが同じだ

    見破り方単位を見る。線図の縦軸は x(kg/kg(DA))。水蒸気圧を飽和水蒸気圧で割った割合は相対湿度。1m³あたりの質量は、別の量として扱う

  4. 線図の軸のとり方を確かめずに、水平・垂直の動きを当てはめる

    なぜ引っかかる乾球温度を横、絶対湿度を縦にとる型では、加熱・冷却は水平だ。比エンタルピーを斜めの軸にとる型では、乾球温度の線が傾く(二次資料)。令和8年度の問題の図は、比エンタルピーを斜めの軸にとっていた

    見破り方軸のラベルを先に読む。絶対湿度が縦軸なら、水蒸気の量が同じ点は水平線の上に並ぶ。そのうえで、飽和曲線の位置と、状態点がその上か手前かを見る

参考文献・出典

理解度チェック(12問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、12問で確認しよう。 内訳は基本3問・応用7問・ひっかけ2問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 12 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 絶対湿度 x は乾き空気1kgに対する水蒸気の質量(kg/kg(DA))、相対湿度は水蒸気圧を同じ温度の飽和水蒸気圧で割って100倍したもの。x=0.622×Pv÷(F−Pv)、大気圧 F は101325 Pa(建築研究所「湿り空気」Ver.03)。気象庁の手引きは、単位体積あたりの水蒸気の質量を絶対湿度と呼んでおり、空調の x とは別の量
  2. 空気中の水蒸気量には温度ごとに最大値があり(飽和)、飽和水蒸気圧は温度が高くなるにつれて急激に大きくなる(気象庁)。空気を圧力を変えずに冷却して飽和に達する温度が露点温度で、それ以下では水蒸気が凝結する。水蒸気の量を変えない加熱・冷却では絶対湿度は変わらず、相対湿度だけが変わる
  3. 加熱・冷却は乾球温度だけが変わる顕熱の変化で、線図の上では水平に動く。加湿・除湿は水蒸気の量だけが変わる潜熱の変化で、垂直に動く。混合は2つの状態を結ぶ直線の上で、量の多い方に寄る(熊本県立大学 2003年の講義資料)。線図には軸のとり方が違う型があり、図の軸を先に読む
  4. 湿球の表面では水分が蒸発して気化熱が奪われ、湿球温度が下がる。空気が乾燥しているほど降下は大きい(気象庁)。気象庁のスプルングの式 e=E′−(A/755)P(t−t′) から、飽和していない空気では乾球温度>湿球温度>露点温度、飽和した空気では3つが等しい(当サイトの読み)
  5. 冷たい面に十分に触れて露点以下まで冷やされた空気の層は、その面の温度で飽和している(相対湿度100%)。線図では飽和曲線の上の点で、絶対湿度はもとの空気より小さい。出た水の分だけ減る(当サイトの読み。令和8年度問題A No.7の型)
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