夏の昼、冷水を流した空調機の熱交換器(コイル)に、乾球温度26℃(ふつうの温度計が示す空気の温度)・相対湿度50%の空気が入ってくる。コイルの表面温度は10℃だ。表面に十分に触れた空気は、表面とほぼ同じ10℃まで冷やされるものとする。
このとき、コイルの表面に接している空気の薄い層は、相対湿度が何%になっているだろう。空気に含まれる水蒸気の量(絶対湿度)は、もとの空気より増えるのか、同じか、減るのか。
先に直感で決めておいてほしい。読み終えるころには、数字で答え、空気線図の上でその点を指せるようになっている。
まず一言で
湿り空気は、乾き空気に水蒸気が混ざった空気だ。水蒸気が入れる量には、温度ごとに上限がある(飽和)。水蒸気の量を変えずに冷やしていくと、上限に当たる温度が露点温度で、それより冷やすと、余った水蒸気が水になる(結露)。空気線図は、全圧が一定のとき、温度と水蒸気の量で決まる空気の状態を、1枚に描いた図だ。加熱・冷却では温度だけが、加湿・除湿では水蒸気の量だけが動く。
湿り空気を数える — 絶対湿度と相対湿度
湿り空気は、乾き空気(DA、dry air)と水蒸気の混合気体だ。気象庁の『気象観測の手引き』は、空気中の水蒸気の分圧を水蒸気圧と呼ぶ。水蒸気の量の表し方は2つある。
- 絶対湿度 :乾き空気1kgに対する、水蒸気の質量。単位は kg/kg(DA)
- 相対湿度 :水蒸気圧 を、同じ温度の飽和水蒸気圧 で割り、100倍したもの。単位は%
なぜ「乾き空気1kgあたり」で数えるのか。加熱・冷却・加湿・除湿のどれをしても、乾き空気の質量は変わらない。変わるのは水蒸気だけだ。動かないものを物差しにすれば、水蒸気の増減が、そのまま数字に出る(当サイトの説明。熊本県立大学の講義資料も、湿った空気のうちの乾燥空気1kgに対する水蒸気の質量、と言い直している)。
2つは、水蒸気圧を通してつながる。大気圧を (101325 Pa)、水蒸気圧を として、建築研究所の資料は次の式を示している。
0.622 は、水蒸気の分子と乾き空気の分子の重さの比だ(Vaisala社の資料は 0.62199)。水蒸気は軽いので、同じ温度・同じ分圧なら、同じ体積に入る質量は、乾き空気の約6割になる。
なぜ、水蒸気には「上限」があるのか
気象庁の手引きは、空気中に含まれる水蒸気の量には、温度によって存在しうる最大量が決まっていると書く。その状態が飽和で、そのときの蒸気圧が飽和蒸気圧だ。飽和のとき、水面では蒸発する水と、空気中の水蒸気からの凝結が等しく(平衡)、見かけ上は蒸発も凝結もしない。
なぜ、そこが「最大」なのか。水面からは、水の分子が空気中へ飛び出し続ける。飛び出す勢いは、水の温度で決まる。一方、空気中の水蒸気の分子も、水面へ戻る。戻る数は、水蒸気の濃さ(分圧)で決まる。濃くなれば戻る数が増え、飛び出す数に追いついたところで、見かけ上の増減が止まる。これが飽和だ(当サイトの説明。気象庁の「蒸発と凝結が等しい」を言い換えた)。
温度が高いほど、飛び出す勢いが強い。追いつくまでの濃さも大きくなる。飽和水蒸気圧は、温度とともに急に大きくなる。
| 乾球温度 | 飽和水蒸気圧 | 0℃を1とすると |
|---|---|---|
| 0℃ | 6.11 hPa | 1.0 |
| 10℃ | 12.27 hPa | 2.0 |
| 20℃ | 23.37 hPa | 3.8 |
| 30℃ | 42.43 hPa | 6.9 |
これで、「空気には温度ごとの上限がある」と、理由つきで言える。
なぜ、相対湿度は変わるのに、絶対湿度は変わらないのか
空気を加熱するだけなら、水蒸気の質量も、乾き空気の質量も変わらない。だから絶対湿度 は変わらず、上の式から、水蒸気圧 も変わらない。変わるのは、飽和水蒸気圧 だけだ。(%)の分母だけが、温度で動く。
例題1 乾球温度26℃・相対湿度50%の空気(状態A)の絶対湿度を求める。
- 飽和水蒸気圧(表5-1):26℃で 33.61 hPa = 3361 Pa
- 水蒸気圧: Pa
- 絶対湿度: kg/kg(DA)
約0.0105 kg/kg(DA)、つまり約10.5 g/kg(DA)だ。飽和水蒸気圧を建築研究所の式(5)で計算しても、小数第4位まで同じになる。
例題2 Aの水蒸気の量を変えずに、温度だけを変える。 Pa のままだ。
| 乾球温度 | 飽和水蒸気圧 | 相対湿度 |
|---|---|---|
| 35℃ | 5623 Pa | 約30% |
| 26℃(A) | 3361 Pa | 50% |
| 20℃ | 2337 Pa | 約72% |
| 15℃ | 1704 Pa | 約99% |
| 14.8℃ | 1682 Pa | ほぼ100% |
暖めると相対湿度が下がる。冷やすと上がり、14.8℃あたりで100%に届く。水蒸気は1gも増減していない。
やってみよう ①:30℃・相対湿度60%の空気の絶対湿度と露点
飽和水蒸気圧は、30℃で 42.43 hPa = 4243 Pa。水蒸気圧は Pa。絶対湿度は kg/kg(DA)。
露点は、表5-1で 25.46 hPa に当たる温度を探す。21.3℃が 25.32 hPa、21.4℃が 25.48 hPa なので、約21.4℃だ。
これで、乾球温度と相対湿度から、水蒸気圧・絶対湿度を計算し、温度が変わったあとの相対湿度を出せる。
なぜ、冷やすと露点で結露するのか
気象庁の手引きは、空気を圧力を変えずに冷却していくと、ある温度で水蒸気が飽和に達し、それ以上は水蒸気の状態で存在できず、凝結を始めて露を結ぶ、と書く。この温度が露点温度だ。
理由は、前の節で見たとおりだ。冷やしても水蒸気圧 は変わらない。ところが飽和水蒸気圧 は、温度が下がるほど急に小さくなる。両者が等しくなる温度が、露点だ。それ以上冷やすと、 が を超えることはできない。超えた分は、水になる。
例題3 状態A(26℃・50%)の露点と、10℃まで冷やしたときの結露水の量を求める。
- Aの水蒸気圧は hPa。表5-1で 14.7℃が 16.72 hPa、14.8℃が 16.82 hPa なので、露点は約14.8℃
- 10℃の飽和空気: hPa = 1227 Pa。 kg/kg(DA)
- 出た水: kg/kg(DA)。乾き空気1kgあたり、約2.9 g
Vaisala社の資料にある簡易式でも、露点は14.77℃と出る。ここでは表を引いた。
図1の上では、Aから水平に左へ動き(冷却)、飽和曲線(相対湿度100%の線)にぶつかる点Dが露点だ。さらに冷やすと、点は水平には動けない。出た水を取り除けば、点は飽和曲線の上にとどまり、曲線に沿って左下へ下る。下った分が、出た水の量だ。
なぜ、冷たい面に触れた空気の薄い層は、その面の温度で飽和しているといえるのか。面の上には、結露した水がある。水面の上では、蒸発と凝結が釣り合う状態が飽和だ。層の水蒸気が、その温度の飽和水蒸気圧より濃い間は、凝結が勝って水蒸気が減り続ける。釣り合ったところで止まる(当サイトの説明)。
やってみよう ②:冬の窓は、何℃以下で結露するか
室内の空気が20℃・相対湿度40%のとき、窓の表面温度が5℃のときと8℃のときで、結露するか。
水蒸気圧は 0.40 × 23.37 = 9.35 hPa。表5-1で 9.35 hPa に当たるのは6.0℃、つまり露点は6.0℃だ。窓の表面が5℃なら露点より低いので結露する。8℃なら高いので結露しない。窓の表面温度が何で決まるかは、次のトピックで扱う。
これで、水蒸気圧から露点を出し、「結露するか」を、面の温度との比べ合いで決められる。
湿球温度 — なぜ、空気の乾き具合を表すのか
湿球温度は、乾湿計(乾球と湿球の2本の温度計)で測る。気象庁の手引きは、湿球の表面では水分が蒸発して気化熱が奪われ、湿球温度が下がると書く。空気が乾燥しているほど蒸発は激しく、降下が大きい。湿っているときは、降下が小さい。
なぜ、どこかで下げ止まるのか。湿球が冷えるほど、周りの空気から入る熱は増える。一方、湿球の水の飽和水蒸気圧は下がり、蒸発は弱まる。入る熱と、蒸発で奪われる熱が釣り合ったところで、温度計の読みは止まる。空気が乾いているほど、釣り合うのは低い温度だ(当サイトの説明)。空気が飽和していれば蒸発しないので、降下はゼロになる。
気象庁は、乾球温度 、湿球温度 、気圧 (hPa)から蒸気圧 (hPa)を出す式(スプルングの式)を示す。 は湿球温度の飽和蒸気圧、 は湿球が凍らないとき0.50だ(気象庁の表5-3は通風乾湿計用で、この式で作られている。通風しない乾湿計用の表5-4は、別の式で a=0.0008)。
例題4 状態A(26℃・50%、 hPa)の湿球温度を、気圧1013.25 hPaで求める。
を決めて、右辺が 16.805 hPa になるところを探す。℃では hPa(表5-1)で、右辺は hPa。℃では hPa で、 なので、 hPa。16.805 hPa に近いのは後者だ。湿球温度は約18.8℃になる。
乾球26.0℃ > 湿球18.8℃ > 露点14.8℃。飽和していない空気では、この順に並ぶ。理由は、スプルングの式から読める。 なら 、つまり空気の水蒸気圧は、湿球温度の飽和水蒸気圧より小さい。飽和水蒸気圧は温度が高いほど大きいので、水蒸気圧と飽和水蒸気圧が等しくなる温度(露点)は、湿球温度より低い。 なら で、空気は飽和し、3つの温度が等しい(当サイトの読み)。
これで、湿球温度が乾球温度より低い理由と、乾湿の指標になる理由を、蒸発の気化熱から説明できる。
空気線図の読み方
乾球温度・相対湿度・絶対湿度は、2つが分かれば、残りが決まる(熊本県立大学の講義資料)。全圧が一定のときの話だ(二次資料)。空気線図は、その関係を1枚に描いた図だ。
線図の上の線は、次のような形をしている。
| 線 | 形 | 読むもの |
|---|---|---|
| 乾球温度 | ほぼ垂直 | 温度計の示す温度 |
| 絶対湿度 | 水平 | 水蒸気の量 x |
| 相対湿度 | 右上がりの曲線 | 100%が飽和曲線 |
| 湿球温度 | 右下がりの斜め | 湿球温度計の示す温度 |
| 比エンタルピー | 右下がりの斜め | 空気の持つ熱量 |
| 比容積 | 斜め | 乾き空気1kgを含む体積 |
空気に行う操作と、線図の上の動き
熊本県立大学の2003年の講義資料は、空調で空気に行う操作を、加熱・冷却・加湿・除湿・混合に分けて、線図の上の動きを示している(古い資料だが、仕組みの説明に使う)。
- 加熱・冷却:乾球温度だけが変わる。水蒸気の量は同じなので、水平に動く
- 加湿・除湿:水蒸気の量だけが変わる。乾球温度は同じなので、垂直に動く
- 混合:2つの状態を結ぶ直線の上に、混ぜた割合に応じた点ができる。絶対湿度と比エンタルピーは、乾き空気の質量で重みをつけた平均で、質量の多い方に寄る(乾球温度は近似。同じ資料)
- 組み合わせ(冷却除湿):露点以下まで冷やす。水平に左へ動き、飽和曲線に出会ったら、曲線に沿って下る(当サイトの読み。図1)
同じ資料は、乾球温度を変えずに除湿するのは実際には難しく、空気を露点まで冷やして水蒸気を結露水として除き、あとで加熱し直す(再熱)のが一般的だと書いている。
やってみよう ③:次の操作は、線図のどちらへ動くか
(a) 冬の暖房(水分の出入りなし) (b) 加湿器で水蒸気を足す(乾球温度は同じ) (c) 冷たいコイルで、露点以下まで冷やす
(a) は水平に右へ。絶対湿度は同じで、相対湿度は下がる。(b) は垂直に上へ。(c) は水平に左へ動き、飽和曲線に出会ったら、曲線に沿って左下へ下る。
覚え方は1つだけ。横に動けば温度が変わり、縦に動けば水分が変わる。
これで、加熱・冷却・加湿・除湿・混合が線図のどちらへ動くかを、理由つきで言える。
比エンタルピー — 顕熱と潜熱に分ける
空気の持つ熱量は、比エンタルピー h(kJ/kg(DA))で表す。0℃の乾き空気と0℃の水を基準にして測った、湿り空気の熱量だ(熊本県立大学の講義資料)。乾き空気を温める熱と、水蒸気の分(0℃の水を蒸発させる熱と、その水蒸気を温める熱)の和になる。
係数は資料によって少し違う。2024年の講義資料は 1.005、2501.1、1.846 を使い、2003年の講義資料の式は 1.006、2501、1.805 を使う。状態Aで比べると、h の差は0.02 kJ/kg(DA)に満たない。本文では、式の形は2024年のものに、係数は2003年のものに合わせ、1.006、2501、1.805 で統一する。
温度が変わる分(顕熱)と、水蒸気の量が変わる分(潜熱)は、次の式で分けられる(2003年の講義資料の式)。
例題5 状態A(26℃、)を、状態S(10℃の飽和、)にするときの熱量の内訳を求める。
- 、 kJ/kg(DA)。差は 23.6 kJ/kg(DA)
- 水平に 26℃→10℃(顕熱):
- 垂直に を 0.01049→0.00762(潜熱、10℃):
- 合計 。必ず合う(式の恒等変形。凝結水の持ち去る熱は含めない)
全熱に占める顕熱の割合を顕熱比(SHF)という。。顕熱比の定義は標準的なもので、出典資料にはなく、筆者が書いた。この比が主役になる冷却コイルの計算は、次のトピックで扱う。
なお、比容積は、乾き空気1kgを含む湿り空気の体積だ。理想気体の式 ( は乾き空気の気体定数、 は絶対温度)から、温度が高いほど、水蒸気が多いほど大きい。状態Aで約0.86 m³/kg(DA)になる(標準的な式。出典資料にはなく、筆者が導出)。
現場とつなぐ
冷却コイルは、除湿もしている。 熊本県立大学の2003年の講義資料は、空気冷却器(冷却コイル)を暖かい空気が通ると、急冷却されて結露し、水分が水滴として分離されて落ちていくので、冷却器は減湿も兼ねる、と書く。コイル表面の温度が、通る空気の露点より低ければ、コイルに触れた空気の層は、図1のSのように、コイル表面の温度で飽和した状態になる(全部の空気がコイルに触れるわけではない。当サイトの読み)。水が出る以上、受けて流す先が要る。排水の処理は、ここでは立ち入らない。
盤の結露と、線図。 キュービクルや制御盤の内側の結露も、同じ仕組みで説明できる。盤の中の水蒸気の量が同じなら、温度を上げると線図の右へ動き、相対湿度が下がる。たとえば、15℃・相対湿度80%の空気を、水蒸気の量を変えずに25℃にすると、相対湿度は約43%になる(飽和水蒸気圧の表から計算)。
試験での出方とワナ
出題の型
令和8年度 問題A No.7(必須):比エンタルピーを斜めの軸、絶対湿度を縦軸、乾球温度を横軸にとった線図に、状態点Aと、4つの候補の点がある。露点より低い表面で冷やされた空気層の状態点を選ぶ形だった(問題文・図・選択肢は転載していない)。
決め手は2つだ。
- 飽和曲線(飽和空気線)の上にあること。表面の温度で飽和している
- 絶対湿度が、Aより小さいこと。結露で水が出た分だけ減る
飽和曲線に届いていない点は、表面の温度で飽和していない。Aより絶対湿度が大きい点は、冷却では作れない。公式の正答肢は、この2つを満たす点だった。決め手の2つは、公式の解説ではなく、飽和の定義と物理からの当サイトの読みだ。
ひっかけの型は、本文のあとの「出題者のワナ」に4つまとめた。どれも、ここまでの節に出てきたことの裏返しだ。
冒頭の問いの答え合わせ
26℃・相対湿度50%の空気が、表面10℃のコイルに十分に触れた。
- 薄い層の温度は、約10℃(表面と同じ)
- 相対湿度は100%。表面に結露水があり、その温度で飽和している
- 絶対湿度は約0.0076 kg/kg(DA)。もとの約0.0105より、約0.0029(乾き空気1kgあたり約2.9 g)減る
- 図1のSの位置だ。Aから水平に左へ動いた点ではなく、飽和曲線の上で、Aより下
「増えるのか、同じか、減るのか」は、減る。10℃の空気が持てる水蒸気は、もとの空気が持つ量より少ないからだ。
理解度チェックの問1〜3(定義)、問6・7(湿球)、問8(冷たい面の空気)、問9〜11(計算)で、確かめてみよう。
(例題の数値は、気象庁の表と建築研究所の式の両方を使い、プログラムで検算している。)
次の問い
冬の朝、窓ガラスに水滴がつく。室内の空気は20℃・相対湿度40%でも、露点は6.0℃だ(やってみよう②)。では、窓ガラスの室内側の表面温度は、室温と外気温のあいだの何℃になるのか。それは何で決まり、結露を防ぐには、何を変えればよいのか。次のトピック「結露と防露」で、この問いを追う。