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施工管理法 ・ 4 / 12

品質管理 — 「ばらつき」を数と図で見張り、不良が出る前に気づく

読み終えると、こうなる

「全部規格内だから大丈夫」と言い切らず、平均とばらつきの2つを見て、工程が安定しているか、規格に対して余裕があるかを、数で答えられるようになる

  • 手直しの件数から累積の割合を計算して、パレート図で最初に手を付ける項目を選び、特性要因図との役割の違いを言い分けられる
  • 組ごとの平均と範囲から、平均値の管理図の中心線と管理限界を計算し、点が限界を越えたときに何を疑うかを説明できる
  • 規格の上限・下限と平均・標準偏差から Cp と Cpk を計算し、Cp が1.0以上でも Cpk が低い理由(中心のずれ)を説明できる
  • 不良が1個流出したときの損失と検査の費用を比べて、全数検査と抜取検査のどちらが向くかを理由つきで選べる
考えてみよう

たとえば、現場で吊りボルトを300mmに切断している。社内の許容範囲は297〜303mm(300±3mm)だ。毎日5本ずつ測ると、10日続けて全部が許容範囲に入っていた。ところが11日目、5本の平均だけが急に上へずれた。5本とも303mm未満で、不良はまだ1本も出ていない。これは「問題なし」と言えるだろうか。

もう1つ。防火区画を貫通する配管のすき間の穴埋めを、「10か所のうち1か所だけ抜き取って確認する」と言われたら、納得できるだろうか。

どちらも、規格に入っているかを後から見るだけでは答えが出ない。読み終えるころには、2つとも、数と理由をつけて答えられる。

まず一言で

品質管理は、結果が規格に入ったかを後で確かめるだけでなく、平均とばらつきを見て、規格から外れる前に工程の変化に気づく仕事だ。押さえるのは4点。

  • 道具は目的で選ぶ。7つの道具は、それぞれ「何がわかるか」が決まっている
  • 管理図は、点が限界線を越えたとき「偶然とは考えにくい変化」を知らせる。限界線は規格値ではない
  • 規格に対する余裕は、工程能力指数(Cp・Cpk)の数で言える
  • 検査は、不良が流出したときの損失の大きさで、全数か抜取かを選ぶ。管工事では、搬入機材の検査、水圧試験、風量調整などで行う

なぜ「ばらつき」を見るのか

同じ人が同じ道具で切っても、長さは毎回少しずつ違う。これがばらつきだ。ここでは、このばらつきを含んだ結果が要求された範囲(規格)に収まっていることを、品質を満たした状態とみなす(当サイトの整理)。平均が規格の真ん中でも、ばらつきが大きければ両端がはみ出す。ばらつきが小さくても、平均が大きくずれていれば片側がはみ出す。だから平均とばらつきの2つを見る。

管理は PDCA で回す。計画(Plan)、実施(Do)、確認(Check)、処置(Action)だ(東京大学の公開講義資料〈2006年〉の表記。以下「講義資料」)。公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)の令和7年版(修補版。官庁施設の営繕を実施するための基準)は、第1編(1.1.2)で品質について次のように定める。

  • 品質計画:設計図書で要求された品質を満たすために、工法等の精度等の目標、品質管理及び体制を具体的に示すこと
  • 品質管理:品質計画における目標を施工段階で実現するために行う管理の項目、方法等

そこで、工程を見る道具が要る。

7つの道具 — 知りたいことで選ぶ

道具知りたいこと読み取れるもの
パレート図どこから手を付けるか項目の順位と、累積の割合
特性要因図なぜ起きるか要因の整理。順位・割合は読めない
ヒストグラム分布はどうなっているか中心、ばらつき、規格との位置
管理図工程は安定しているか時間順の点と限界線で見る変化
散布図2つの量に関係があるか点の並びから見る相関
チェックシートデータをどう集めるか項目別に数を記入して集める
層別違いはどこから来るか材料・作業者・時期などで分けた比較
7つの数え方は、講義資料に従った。

パレート図の考え方を数で見る。たとえば、ある現場の自主検査で見つかった手直し40件を、原因別に数えたら次の表になった(仮の数字)。

原因件数累積の割合
保温の継ぎ目の隙間1845%
ダクトのフランジ部の漏れ1070%
配管の勾配不良685%
振れ止め不足495%
その他2100%
累積の割合=上からの件数の合計÷40。

件数の多い順に並べ、累積の割合を足していく。上位2項目で70%を占めるので、最初に手を付けるのはこの2つだ。これを棒グラフと累積の折れ線で描いたものがパレート図になる。そのうえで「なぜ継ぎ目に隙間が出るのか」を掘るときに、特性要因図を使う。講義資料の例は、作業条件・機械・材料などの枝に分けて、考えられる原因を骨の形に書き出している。

勘違いポイント。パレート図も特性要因図も「不良の原因を考える図」とひとまとめに覚えると、順位や割合を特性要因図から読めると思い込む。令和8年度の問題B No.3 では、特性要因図に不良項目の順位や割合を読み取れるとする記述が「適当でない」とされた。
やってみよう ①:どの道具を使うか

次の3つの場面で、7つの道具のどれを使うか。

(a) 毎日5本ずつ測った切断長さを時間順に見て、工程の変化に早く気づきたい。 → 管理図。時間順の点と限界線で変化を見る。

(b) 100本の切断長さを、許容範囲との位置関係で見たい。 → ヒストグラム。分布の中心・ばらつき・規格との位置を見る。

(c) 水圧試験で漏れが見つかった継手を、施工した班ごとに分けて比べたい。 → 層別。条件で分けて、違いの出どころを探す。

これで、知りたいことから、道具を選べる。

管理図 — 点が限界を越えたら、何を疑うのか

管理図は、時間順に点を打ち、中心線と上下の限界線を引いた図だ。1924年にベル研究所のシューハートが考案した(講義資料)。

仕組みはこうだ。工程には、いつも起きる小さなばらつき(偶然の原因)と、特定の原因による変化(異常の原因)がある。偶然だけなら、点はまず限界の内側に収まる。限界を越えたら、偶然とは考えにくいので、原因を調べる。

限界は、中心線から±3σ(標準偏差の3倍)に引く。平均値の管理図の点は組の平均なので、使う標準偏差も組の平均のもの(次の段落の σ/√n)だ。正規分布なら、偶然だけで3σの外に出る確率は、両側で約0.27%だ(片側0.00135の2倍。NIST)。3σは慣習で、理論から決まる唯一の値ではない。NIST も、限界の確率をどこに置くかは、管理する側が引き受けるリスクで決まると書く。

平均値の管理図(Xˉ\bar{X}管理図)と、範囲の管理図(R管理図)は組で使う。同じ条件で n 個ずつ測った組を k 組集め、組ごとに平均 Xˉ\bar{X} と範囲 R(最大−最小)を出す。そして、組の平均の平均 Xˉˉ\bar{\bar{X}} と、範囲の平均 Rˉ\bar{R} を求める。σ の推定は σ^=Rˉ/d2\hat\sigma=\bar{R}/d_2(n=5 で d2d_2=2.326)で、これは1本ずつの値の σ だ。組の平均の揺れは σ/√n と小さいので、限界は1本ずつの値の範囲より狭くなる。

UCL=Xˉˉ+A2Rˉ,LCL=Xˉˉ−A2Rˉ,A2=3d2n\text{UCL}=\bar{\bar{X}}+A_2\bar{R},\qquad \text{LCL}=\bar{\bar{X}}-A_2\bar{R},\qquad A_2=\frac{3}{d_2\sqrt{n}}

n=5 では A2A_2=0.577。R管理図は、上限が D4RˉD_4\bar{R}、下限が D3RˉD_3\bar{R} で、n=5 では D3D_3=0、D4D_4 は約2.11(資料により2.114と2.115)。式と A2・D3・D4 は NIST の技術ハンドブック、d2 の値は東京大学の資料の例による。

例題 — 吊りボルトの10日分

規格は300±3mm。毎日5本ずつ測った平均と範囲が、次の表だった(仮の数字)。

日5本の平均(mm)範囲 R(mm)
1300.42.1
2301.32.6
3300.21.9
4301.02.4
5301.52.8
6300.52.0
7300.32.3
8301.42.5
9300.92.2
10300.52.2
平均の合計3008.0、範囲の合計23.0。
  • Xˉˉ\bar{\bar{X}}=3008.0÷10=300.80、Rˉ\bar{R}=23.0÷10=2.30
  • A2RˉA_2\bar{R}=0.577×2.30=1.327 より、UCL=302.13、LCL=299.47
  • R管理図の上限=約2.11×2.30=約4.9(下限は0)
  • σ の推定=2.30÷2.326=0.989mm

10日分の点は、全部限界の内側に収まり、範囲も4.9より小さい。工程は安定していたと見てよい。

11日目に測った5本は、301.7、302.0、302.3、302.6、302.9mm。平均は302.3mmで、UCL の302.13を越えた。範囲は1.2で、4.9よりずっと小さい。つまり、ばらつきが増えたのではなく、全体が上へ動いた。

UCL CL LCL 11日目 302.3 は UCL の外 限界の計算に使った10日分 11日目 mm 日(5本の平均値を毎日1点) 例題の平均値の管理図(自作の図)。中心線CL=300.80、UCL=302.13、LCL=299.47(mm)。規格の303mmと297mmは、この図の範囲の外にある。
勘違いポイント。管理限界(302.13と299.47)と、規格(303と297)は別物だ。管理限界は、工程のばらつきから決めた「この工程の組の平均が普段どこまで揺れるか」で、1本ずつの値の範囲ではない。規格は要求から決まる。管理限界を規格に合わせて広げると、変化を知らせる役目が弱まる。
やってみよう ②:管理限界を計算する

n=5、組の平均の平均が80.0、範囲の平均が3.0。A2=0.577 として、平均値の管理図の UCL と LCL は? ある日の平均が81.9だったら、どう見るか。

A2RˉA_2\bar{R}=0.577×3.0=1.731。UCL=81.73、LCL=78.27。81.9 は UCL を越えているので、偶然とは考えにくい変化を疑う。

これで、組の平均と範囲から限界を計算し、点の位置から工程の変化を言える。

ヒストグラムと工程能力 — 規格に対する余裕を、数にする

ヒストグラムは、測定値を区間(階級)に分け、区間ごとの度数を棒で表した図だ。見るのは3つ。中心の位置、ばらつきの幅、規格との位置関係。同じ規格でも、次の3つでは意味が違う。

A 余裕あり Cp 1.33 / Cpk 1.33 297 300 303 mm B 中心がずれた Cp 1.01 / Cpk 0.74 297 300 303 mm C ばらつきが大きい Cp 0.67 / Cpk 0.67 297 300 303 mm ヒストグラムと規格の位置関係(自作の模式図)。A は平均300.0・σ0.75、B は平均300.8・σ0.99(例題の工程)、C は平均300.0・σ1.5。棒は、その正規分布から100本分の度数を計算して描いた。点線は規格の297mmと303mm、濃い棒は規格の外。

この「余裕」を1つの数にしたのが工程能力指数だ。NIST は、安定した工程の出力を規格と比べる指数で、規格の幅を、工程の幅(6σ)で割った比だと説明する。

Cp=USL−LSL6σ,Cpk=min⁡[USL−μ3σ, μ−LSL3σ]C_p=\frac{\text{USL}-\text{LSL}}{6\sigma},\qquad C_{pk}=\min\left[\frac{\text{USL}-\mu}{3\sigma},\ \frac{\mu-\text{LSL}}{3\sigma}\right]

USL は規格の上限、LSL は下限、μ は平均。Cp は平均の位置を見ない。Cpk は、平均から近いほうの規格までの余裕を、3σ で割る。平均が規格の中心にあれば Cpk=Cp で、ずれるほど Cpk は小さくなる。

正規分布では、±3σ(幅6σ)の内側に約99.73%が入るので、ほとんどの値が入る幅と言える。

Cp規格幅規格外れ(中心のとき)
1.006σ0.27%
1.338σ64ppm
1.6610σ0.6ppm
NIST の表。平均が規格の中心で正規分布のときの値。ppm は100万分の1。

NIST の表は、Cp と規格外れの割合の対応を示すだけで、何以上なら合格とは書かない。ただし NIST の例は、Cpk が1.0以上であることを望ましいとする。前提は、工程が安定していること(管理図で確かめる)、正規分布に近いこと、データが十分あること(NIST は約50個以上を目安とし、能力の調査には100個以上が要るとも書く)。

例題 — 管理図の続き

σ の推定0.989mm、平均300.80mm、規格297〜303mm。

  • Cp=(303−297)÷(6×0.989)=1.01
  • 上側の余裕=(303−300.80)÷(3×0.989)=0.74、下側の余裕=(300.80−297)÷(3×0.989)=1.28。小さいほうが Cpk なので、Cpk=0.74
  • 規格外れの見込みは約1.3%(この σ で見たとき。ほぼ全部が上側)

Cp は1.01で、規格幅と工程の幅はほぼ同じ。それなのに Cpk は0.74で、中心が上へ寄っているという意味だ。平均を300.0に寄せれば Cpk も1.01になり、規格外れは約0.24%に下がる。そのうえで σ を0.75まで小さくできれば、Cp=1.33(NIST の表で64ppm)。前者は中心の調整、後者は工程そのものの改善にあたる(当サイトの整理)。なお、50本が全部規格内だったことは、規格外れが起きないことを意味しない。

この σ は Rˉ/d2\bar{R}/d_2 による、1日5本の中のばらつきの推定で、NIST の標本推定式が使う全データの標準偏差 s とは違う。日ごとの平均の違いも含めると、σ はおよそ1.0、Cp は1.0前後、Cpk は約0.73〜0.74になる(当サイトの概算)。

これで、Cp と Cpk を計算し、「中心のずれ」と「ばらつきの大きさ」を言い分けられる。

検査 — 全数か、抜取か

検査とは、品物を試験した結果を判定の基準と比べて、良品か不良品か、またはロットが合格か不合格かを判定することだ(講義資料)。全部を調べるのが全数検査、ロットから抜き取って調べ、その結果でロット全体の合否を決めるのが抜取検査になる。

方法合否の決め方向く場面
全数検査1つずつ合否を判定流出した不良の損失が大きい
計数抜取検査抜き取った中の不良の個数良・不良を数えられる
計量抜取検査測定値の分布と規格から不良率を見る連続量で、正規分布に近い
計数は、不良数が合格判定基準 c を超えたら不合格(講義資料)。計量の見方も講義資料の分類で、条件は ISO 3951-1 の適用範囲の一部。

講義資料のモデルで、検査1個の費用を I、不良が1個流出したときの損失を F、不良率を p、全部の個数を N、抜き取る数を n(管理図の n とは別)、ロットが合格する確率を g とする。全数検査の費用は N·I。抜取検査には、n 個の検査費用に加えて、合格ロットから出る不良の損失と、不合格ロットの全数検査の費用がかかる。2つの差は g(N−n)(pF−I)g(N-n)(pF-I) になる(当サイトで式を整理して確かめた)。つまり、不良率 pp が I/FI/F を超えれば、全数検査のほうが安い。仮に I=500円、F=250,000円なら、I/F=0.2%だ。このモデルは、検査の見落としがない前提だ。全数検査でも見落としは起こりうる(当サイトの注意)。

冒頭の2問目に戻る。国土交通省は2013年、東京都内のビルなど4件で、防火区画の貫通部が国土交通大臣認定の仕様と異なる施工で、建築基準法違反と確認されたと発表した。違反の内容は、貫通部の一部の隙間で耐熱シール材の充填が不足するなど、とされる。是正のための改修などが指示された。是正が要る点で、不良1個の流出による損失 F が大きくなりうる例といえる(損失の額は資料にない。当サイトの読み)。

令和8年度の問題B No.24 では、防火区画貫通部の穴埋めを抜取検査で確認するとした記述が、「適当でない」とされた。「全数で確認する」とは、出題も正答も言っていない。標準仕様書(機械設備工事編)の貫通部の規定(2.8.1)は充塡材と工法を定め、検査の頻度の記載はない。貫通部について全数検査と書いた条文は、この編の本文では確認できていない(標準図、建築工事編、建築基準法令は確認していない)。そこで学習上は、損失が大きく法令への適合に直結する箇所は全数側、と整理しておく(当サイトの整理)。

勘違いポイント。抜取検査に合格したロットにも、不良は残りうる。

管工事での品質管理 — 標準仕様書の流れ

標準仕様書(機械設備工事編、令和7年版〈修補版〉)に出てくる品質管理の方法を、工事の流れに沿って並べる。条番号の1.x.xは第1編、2.x.xは第2編 第2章(配管工事)のもの。

  1. 品質計画を施工計画書に書き、その部分は監督職員の承諾を受ける。施工は、この計画に基づき、適切な時期に品質管理を行う(1.2.2、1.3.4)
  2. 機材の受入。搬入のたびに報告し、種別ごとに検査を受ける(どちらも、承諾を受けた場合は別)。合格した機材と同じ種別は、以後、抽出検査にできる(監督職員の指示を受けた場合を除く)。不合格の機材は直ちに現場の外へ搬出する(1.4.3、1.4.4)。この編の本文に「抽出検査」の個数や合否の基準はなく、統計の抜取検査と同じかは分からない。品質・性能の証明資料(試験成績書など)を提出する。設計図書が JIS などと指定した機材で、JIS マークなどがあれば、資料を省ける(承諾を受けた場合も省ける)(1.4.2)
  3. 一工程の施工の確認と報告。合格した工程と同じ機材・工法の部分は、以後、抽出検査にできる(同じ但し書き)(1.5.3、1.5.4)
  4. 試験。配管の水圧試験などは、隠ぺい又は埋戻し、配管完了後の塗装(ねじ部のさび止めペイントは除く)、保温施工のいずれかの前に行う(2.9.1)。冷温水・冷却水などの水配管は、最高使用圧力の1.5倍の圧力(その値が0.75MPa 未満の場合は0.75MPa)で水圧試験を行い、保持時間は最小30分(2.9.2)
  5. 総合試運転調整。設計図書の目標値等と照合して、風量調整などを行う(適用は特記)。測定報告書には、測定器名、測定日時、測定者名を書き、測定点を示した図面を添える(1.5.6.3、1.5.6.4)

令和8年度の問題B No.3 では、管工事の品質管理方法として、搬入材料の検査、配管の水圧試験、風量調整の確認があるという記述が出た。上の2・4・5にあたる。

「品質管理記録」は、品質管理として実施した項目、方法等を確認できる資料で、監督職員の検査は、この記録に基づいて設計図書との適否を判断する(1.1.2)。材料を納める側にとっては、試験成績書や JIS マークの有無が、この記録の入口になる(当サイトの読み)。

令和8年度の問題Bで適当とされた記述では、QC工程図は、品質管理を具体化する図とされ、工程の流れの中で、何を管理し(管理項目)、どの値の範囲に収め(管理水準。当サイトの言い換え)、どう管理するか(管理方法)などを決め、管理値を外れたときの処置なども定めておくもの、と説明される。QC工程図そのものの定義は、公的な資料では確認できていない。

バスタブ曲線と ISO 9000 — 試験で一緒に出る2つ

バスタブ曲線は、時間の経過に対する故障率の変化を表す。厚生労働省の職場のあんぜんサイトの説明は、次のとおりだ。

期間故障の起こり方理由
初期故障期時間とともに減衰する製造上の欠陥。一般に約1年間
偶発故障期偶発的に起こる軽微な欠陥が残る
摩耗故障期時間とともに増加する構成要素の劣化が始まる
同サイトは、この形が当てはまるのは電子機器などに多く、多くの機械類や電動機は、初期・偶発が少なく摩耗期に増えるとも書く。

ISO 9000 ファミリーは試験の言い方で、ここでは ISO 9000・9001・9004 をさす(群の定義は、取得した資料にない)。欧州の規格販売サイト(Genorma)が載せる適用範囲によると、ISO 9000 は基本概念・原則と用語、ISO 9001 は品質マネジメントシステムの要求事項、ISO 9004 は持続的成功のための指針だ。製品の寸法や性能の基準値を決める規格ではなく、製品・サービスを生み出す仕組みの規格だ。令和8年度の問題Bでも、この趣旨の記述が適当とされた。版は改訂が進み、同サイトによると ISO 9001 は2026年9月16日に新版が発行され、2015年版は同日に廃止された。令和8年度の正答肢の発表は9月7日で、新版の発行より前だ。新版の適用範囲も趣旨は同じと読める。JIS 側の版は確認できていない。

このトピックでは、安全管理、ネットワーク工程表、配管・ダクト・機器の施工の要領は扱わない。それぞれ別のトピックで扱う。総合試運転調整の具体も、ここでは扱わない。

試験での出方とワナ

令和8年度の問題Bでは、No.3(必須、適当でないもの1つ)に、QC工程図・バスタブ曲線・管工事の品質管理方法・特性要因図の記述が並んだ。応用能力の No.24(全問解答、適当でないもの2つ)には、管工事の品質に影響する要因・防火区画貫通部の穴埋めの確認方法・ISO 9000 ファミリー・計数抜取検査の適用条件が並んだ。品質に影響する要因として、現場加工した材料の良否や機器の据付け状況をあげる記述は、適当とされた。

  • 特性要因図とパレート図の取り違え:順位・割合・累積はパレート図。特性要因図は原因の整理
  • 「抜取検査で確認する」を万能と見る:損失が大きく法令適合に直結する箇所は全数側(当サイトの整理)
  • 計数と計量の取り違え:連続量・正規分布は計量の側
  • 管理限界と規格の取り違え:管理限界は工程のばらつき、規格は要求。管理限界を規格に合わせて広げない

冒頭の問いの答え合わせ

  • 11日目の平均が上へずれた:5本とも303mm未満でも、平均302.3mmは UCL 302.13を越え、範囲は増えていない(1.2)ので、中心が動いたと読める。「問題なし」ではなく、原因を調べる。10日分で計算した Cpk は0.74で、規格の余裕も小さい
  • 穴埋めを10か所に1か所だけ抜き取る:是正が要る例なので F は大きく、p が I/F を超えやすい(当サイトの読み)。学習上は全数側と整理する(当サイトの整理)。条文で全数と書いた箇所は確認できていない

これで、工程の変化を管理図で見つけ、規格との余裕を Cp・Cpk で言い、検査の方法を損失から選べる。

次の問い

品質管理は、出来上がる物が要求を満たすかを見張る。では、作業する人が事故に遭わないためには、何を見張ればよいのか。事故にならなかった「たまたま無事だった」場面を、どう見つけて減らすのか。次のトピックの安全管理で扱う。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 特性要因図で、不良項目の順位や全体に占める割合を読み取れると考える

    なぜ引っかかるパレート図も特性要因図も「不良の原因を考える図」とひとまとめに覚えると、棒と累積線で順位や割合を読むパレート図の特徴を、特性要因図に移してしまう

    見破り方順位・割合・累積ならパレート図、原因を骨の形に整理するなら特性要因図。図の名前と、読み取る内容を1対1で結び直す(令和8年度の問題B No.3 で出た型)

  2. 抜取検査を、どの箇所にも使える合理的な方法とみなす

    なぜ引っかかる抜取検査は費用が安い便利な方法と覚え、合格したロットにも不良が残りうる点と、不良が1個流出したときの損失の大きさを見落とす

    見破り方対象を見る。損失が大きく、法令への適合に直結する箇所(防火区画の貫通部の穴埋めなど)は、全数側と整理しておく(当サイトの整理)。令和8年度の問題B No.24 では、穴埋めを抜取検査で確認する記述が適当でないとされた

  3. 計数抜取検査にも「正規分布を前提にする」と考える

    なぜ引っかかる抜取検査という名前が同じで、計数と計量の違い(個数を数えるか、値を測るか)を入れ替えて覚えやすい

    見破り方計数は適合・不適合の個数で、計量は測定値で合否を決める。連続量・正規分布の言葉が出たら計量(令和8年度の問題B No.24 で出た型)

  4. 管理限界を規格の上限・下限と同じものとして扱う

    なぜ引っかかるどちらも「許容される範囲」に見えるが、管理限界は組の平均が普段どこまで揺れるかを表し、規格は製品に求められる範囲で、決まり方が違う

    見破り方平均値の管理図の管理限界は、組の平均と範囲の平均から計算する。規格は設計図書や契約などの要求から決まる。点が管理限界を越えたら、規格内でも工程の変化を疑う。管理限界を規格に合わせて広げない

参考文献・出典

理解度チェック(12問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、12問で確認しよう。 内訳は基本3問・応用7問・ひっかけ2問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 12 問正解

覚えておきたいポイント

  1. 品質管理は、結果の平均だけでなくばらつきを見る。標準仕様書(機械設備工事編)は、品質計画を、要求された品質を満たすため、目標・品質管理・体制を具体的に示すこと、品質管理を、その目標を施工段階で実現するための管理の項目、方法等と定める(1.1.2)
  2. 道具は目的で選ぶ。件数順の順位と累積の割合はパレート図、原因を骨の形に整理するのは特性要因図(順位や割合は読み取れない)、分布の中心・ばらつき・規格との位置はヒストグラム、時間順の工程の安定は管理図、2つの量の関係は散布図
  3. 平均値の管理図の限界は、中心線±A2×(Rの平均)(n=5 で A2=0.577)で、組の平均の3σにあたる。偶然だけなら、限界の外に出る確率は両側で約0.27%(正規分布)。管理限界は工程のばらつきから決めるもので、規格の上限・下限とは別物
  4. Cp=(上限−下限)/6σ、Cpk=min[(上限−平均)/3σ、(平均−下限)/3σ]。Cp 1.00 は規格幅が6σで、平均が中心なら規格外れは約0.27%、Cp 1.33 は8σで64ppm(NIST の表)。平均がずれると Cpk が Cp より小さくなる
  5. 抜取検査は、計数(適合・不適合の個数で合否)と計量(測定値の分布と規格から不良率を見て判定。連続量で、正規分布に近いことなどが条件)に分かれる。不良率 p が I/F(検査1個の費用÷不良1個の損失)を超えれば全数検査が安い(見落としがない前提の単純化したモデル)
  6. 官庁施設の営繕の基準である標準仕様書(機械設備工事編)は、搬入機材の検査(合格した種別は、監督職員の指示がなければ以後抽出検査にできる)、一工程の施工の確認、配管の水圧試験、総合試運転調整の風量調整(適用は特記)などを定める。バスタブ曲線は初期・偶発・摩耗の3期。ISO 9000・9001・9004(試験では ISO 9000 ファミリー)は、製品の基準値ではなく品質マネジメントの仕組みに関する規格
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