在庫確認・見積は今すぐ フォームで依頼する 写真の添付もOK / 24時間受付
施工管理法 ・ 5 / 12

安全管理 — 「たまたま無事だった」から、危険を先に見つけて減らす

読み終えると、こうなる

「ヒヤリとした」という一言を、流してしまうのではなく、危険を書き出し、重さと起きやすさで見積もり、対策を効き目の順に並べる材料として使えるようになる

  • ハインリッヒの法則の1:29:300を「同種の事故330件の内訳の推定」と読み、「ヒヤリを減らせば重大災害が比例して減る」は確かめられていない主張だと言い分けられる
  • 仮の作業場面で、KYT基礎4ラウンド法に沿って危険要因と事故の型を書き出し、危険のポイントと行動目標まで絞り込める
  • 危険を重篤度と可能性の度合で見積もり、対策を4段階に分類して、優先順位の高い順に並べられる
  • 度数率と強度率を式から計算し、高さ2mや手すり85cmなどの数字を条文に対応させられる
考えてみよう

たとえば、作業が終わった片付けの時間に、同僚がぽつりと言う。「さっき足を滑らせかけたけど、何ともなかったよ」。ケガをした人はいない。誰も報告しなければ、今日の記録には何も残らない。

ケガがなかったのだから、安全だったのだろうか。それとも「たまたま」だったのだろうか。もし「たまたま」なら、何を見れば分かるのか。危険がいくつも見つかり、全部には手が回らないとき、何から手を付けるのか。

読み終えるころには、「ヒヤリとした」という一言から、危険を書き出し、重さと起きやすさで見積もり、対策を効き目の順に並べるところまで、自分の手でできるようになっている。

まず一言で

安全管理は、ケガが出てから直す仕事ではない。ケガに至らなかった危険も含めて先に見つけ、優先順位を付けて減らす仕事だ。道具は3つある。

  • 見つける: ヒヤリ・ハットの報告と、KY(危険予知)活動
  • 見積もる: リスクアセスメント。危険を特定し、重さと起きやすさで見積もり、優先度を決める
  • 減らす順番を守る: 危険な作業をなくす・変える(設計や計画の段階)が先。次に工学的対策、管理的対策、最後に個人用保護具

ハインリッヒの法則(1:29:300)は「見つける」の根拠として語られる。ただし比は経験則で、ヒヤリ(ケガに至らない事故)を減らせば重い傷害も比例して減るという考えは、ハインリッヒ自身が書いたものだが、確かめられたものではない。どこまで言えるかを、資料で確かめる。安全管理者などの体制は、別のトピックで扱う。

仕組み① 「無傷だった事故」を、なぜ数えるのか

1:29:300 の出どころ

ハインリッヒは、アメリカの損害保険会社トラベラーズ社の技術者だった。この比は1929年に同社が出した資料に載っていた。Rebbitt(2014年、二次資料)は1931年の初版の著書に始まると書くが、初版は確認できていない。ここで確認できたのは1941年の第2版で、次のことが書いてある。

  • 同じ種類の事故330件のうち、300件はケガなし、29件は軽いケガ、1件は重いケガ(または休業)。入手できるデータからの推定だと書く
  • 重いケガは、最初の事故にも、その330件のどの事故にも起こりうる(27頁の図、34頁の注)。一方、同じ版は、平均的な場合は重い傷害の前に類似の無傷事故が数多くあったはずとも書く(31頁、付録Ⅲ390頁)
  • 攻める相手は、ケガになったかどうかを問わず、事故そのものだ

言い回しは資料でそろわない。1941年版の中でも、26頁の本文は「同じ種類」、27頁の図と30頁の本文は「似た」、巻末の年表と付録は「似た…すべて同じ直接原因」と書く。厚生労働省の解説は「同じ人間が起こした330件の災害」と書く。

経験則として読む — 言えること、言い過ぎ

厚生労働省の職場のあんぜんサイトは、こう整理する。ハインリッヒ自身が、比は鉄骨の組立と事務員では異なると言っていた。それでも、事故と災害の関係を示す法則としては今も使える。重要なのは比の数字ではなく、災害の背景に危険有害要因が数多くあることで、ヒヤリハット等の情報を把握して、迅速に対応策を講じることだという。

二次資料(Rebbitt, Professional Safety, 2014)は限界を指摘する。元データは入手できず、確かめることも否定することもできていない。比は一定とは限らず、組織によっても違いうる。小さな事故を管理すれば重大災害も同じように減るという考えを、批判する研究者もいる(Manuele。Rebbittの紹介による)。

だから、数える理由は比を守るためではない。ハインリッヒは、ケガに至らなかった事故の主な原因は、平均的な場合には重い傷害の主な原因と同じだと書く(1941年版)。結果が軽かったことは、危険が小さかった証拠にならない。

言い過ぎになりやすい点は3つある。①「重大災害の前に必ず、この順で29件と300件が起きている」=言い過ぎ。最初の事故で重い傷害が起きる例もあると、同じ版が断っている。②「比はどの業種でも同じ」=一定とは限らない(Rebbittは、研究ごとに比が違うデータを並べる)。③「ヒヤリを半分にすれば重大災害も半分」=ハインリッヒ自身も、事故を防げば傷害は自然に減ると書き(27頁の図6)、重い傷害の頻度は無傷事故の頻度と同じ向きに変わると述べる(31頁)。ただし観察にもとづく主張で、小さな事故を減らした効果が確かめられたわけではなく、批判もある(Rebbittが紹介するManueleらの指摘)。試験では、ハインリッヒの法則について、重大災害の背後に軽い事故やヒヤリ・ハットがあるといわれている、という趣旨の記述が、適当なものとして出た(令和8年度問題Bの正答肢から読める)。

ヒヤリ・ハットは、「責めない」が条件

ヒヤリハットは、もう少しでケガをするところだった出来事を取り上げ、災害防止に結びつける活動だ。厚生労働省は、報告する側にも受ける側にも名誉なことではないので、労働者を責めないという取決めを実行しないと、制度が長続きしないとする。手順書どおりにしなかったのが原因でも、手順書に無理があるのかもしれず、見直しの機会と考える。

指針の施行通達は、リスクアセスメントの対象に、ヒヤリハット事例のあった作業を含めるとする。明らかに軽微なケガしかもたらさないと予想されるものは外してよいが、過去にたまたま軽微なケガしか起きなかったものは含まれないとも書く。

ヒューマンエラーと不安全行動

言葉が似ていて、取り違えやすい。厚生労働省の説明を並べる。

用語意図説明の要点
ヒューマンエラー意図しない意図しない結果を生じる人間の行為。原因ではなく結果。故意の違反は別に考える
不安全行動意図的安全を阻害する可能性のある行動を意図的に行う行為。「これくらい大丈夫」「面倒」が背景
不安全状態—機械や物の側で、事故が発生しうる状態
出典は厚生労働省の職場のあんぜんサイト。不安全行動の類型は12項目、不安全状態は8項目。

厚生労働省は、不安全行動を、心構えや意識だけで防止することはできないとする。管理・監督の不徹底や、設備・環境面の欠陥がもたらすことも少なくないからだ。ヒューマンエラーの防ぎ方は4つ挙がる。人を訓練する。間違えにくい仕組みにする。間違えてもすぐ発見できるようにする。間違えても影響を少なくする。訓練は4つのうちの1つにすぎない。

仕組み② 現場で危険を見つける — KY・KYT・TBM

KY活動(KYK)は、作業を始める前に危険の情報を出し合い、危険のポイントと行動目標を決め、要所で指差し呼称をして確認し合う活動だ(岐阜労働局の資料)。KYT(危険予知訓練)は、その力を鍛える訓練で、危険感受性(何が危険かを直観的に捉え、危害の程度と起きやすさを感じ取る能力)を高める。

基礎4ラウンド法

厚生労働省によれば、KYTはもともと住友金属工業で開発され、中央労働災害防止協会が問題解決4ラウンド法と結びつけ、旧国鉄の指差し呼称を組み合わせた4ラウンド法が標準とされる。

ラウンド問いやること
1R 現状把握どんな危険がひそんでいるか危険要因と、それが起こす現象を出し合う
2R 本質追究これが危険のポイントだ重要な危険を、合意で1〜2項目に絞る
3R 対策樹立あなたならどうする危険のポイントごとに、具体的で実行可能な対策を出す
4R 目標設定私たちはこうする対策を絞って重点実施項目とし、チーム行動目標にする
チームは、一人ひとりが意見を出しやすいように5〜6人が標準。進め方は職場のあんぜんサイトによる。

1R・3Rは出し合う段階、2R・4Rは絞る段階で、「出す→絞る」を2回くり返す。1Rの発言は「〜なので〜して(危険要因)〜になる(事故の型)」の形で言う。「危ない」で終わらせず、何が起きるかまで言うのが型だ。2Rで絞る基準は「対策に緊急を要するもの、重大事故となる可能性のあるもの」。1〜2項目に絞る理由は資料に書かれておらず、全部には手を打てないので重いものに絞る、と読める(当サイトの読み)。

指差し呼称、TBM、安全施工サイクル

指差し呼称は、対象を見て、指で差し、指を耳元へ戻して確かめ、「ヨシ」と振り下ろす動作だ。厚生労働省は、鉄道総合技術研究所の1994年の実験を紹介する。操作ボタンの押し間違いは、どちらも行わないと2.38%、両方行うと0.38%で、約6分の1だった。ただし、これだけでヒューマンエラーの根絶はできないとも書く。

TBM(ツール・ボックス・ミーティング)は、職場で行う作業の打合せだ。岐阜労働局の資料によれば、基本は朝の作業開始前の5〜10分程度で、職長が中心となって、その日の作業の範囲、段取り、分担を明らかにし、全員で安全衛生のポイントを確認する。

建設現場では、こうした活動を毎日の流れに組み込む。厚生労働省の教材は、これを「安全施工サイクル」と呼び、安全朝礼、安全ミーティング(KYを含む)、作業開始前点検、安全パトロールなど8つの活動を示す。

KYは、リスクアセスメントとも組み合わせて使う。岐阜労働局の資料は、低減措置を講じてもなお残るリスク(残留リスク)や、作業者の行動に起因するリスクにKYが有効だとする。

仕組み③ リスクアセスメント — 全部は直せないときの考え方

法と手順

労働安全衛生法28条の2は、事業者は、設備や作業行動などによる危険性又は有害性等を調査し、その結果に基づいて必要な措置を講ずるように努めなければならないと定める。努力義務だ。化学物質以外の調査の対象業種は省令が定め、規則24条の11第2項が、施行令2条1号の業種(林業、鉱業、建設業、運送業、清掃業)と2号の業種(製造業を除く)を挙げる。建設業は対象に入る。調査の時期は、設備の新規採用・変更、作業方法や作業手順の新規採用・変更などだ(24条の11第1項)。

手順は、指針の3が4つに分ける。

  1. 危険性又は有害性の特定
  2. 負傷や疾病の重篤度(重さの程度)と発生する可能性の度合(リスク)の見積り
  3. 見積りに基づく優先度の設定と、リスク低減措置の内容の検討
  4. 優先度に対応した措置の実施

指針は、作業内容を詳しく把握している職長等に、特定・見積り・検討を行わせるよう努めることも求める(4)。

見積り — 重篤度は「最悪」を想定して数える

見積りは、リスク低減の優先度を決めるために行う(指針9(1))。方法は3つが例示される。重篤度と可能性の度合を縦軸と横軸にした表で見積もる方法、数値化して足すか掛ける方法、段階的に分岐させる方法だ。優先度を決めるのが目的なので、必ずしも数値化しなくてよい(施行通達)。守る点は3つある。

  • 最悪の状況を想定する。 重篤度は、過去に実際に起きた負傷ではなく、最悪の状況を想定した、最も重い負傷で見積もる(9(2)イ)。ヒヤリ・ハットの節の「たまたま」と同じ考え方と読める
  • 尺度を共通にする。 重篤度は、基本的に休業日数等を尺度とする(9(2)ウ)。「等」には後遺障害の等級や死亡が含まれる
  • 安全機能が外される可能性も見込む。 安全装置や立入禁止措置を無効にする・無視する可能性、手順の逸脱や操作ミスの可能性も考慮する(9(3))

可能性の度合は、危険への接近の頻度、危険事象の発生確率、回避できる可能性など、様々な要素を含む概念で、統一した尺度は示されない(解説)。

低減措置の優先順位 — なぜこの順番なのか

法令に定められた事項があれば、それを必ず実施する。そのうえで、次の優先順位で検討し、実施する(指針10(1))。

リスク低減措置の優先順位(上から検討) 1 設計・計画段階で、除く・減らす 作業の廃止・変更、より安全な施工方法への変更 2 工学的対策 ガード、インターロック、局所排気装置 3 管理的対策 手順書、立入禁止、二人組制 4 保護具 呼吸用保護具など リスク低減措置の優先順位(自作の概念図。指針10(1)と施行通達にもとづく。法令に定められた事項は、これとは別に必ず実施する)

なぜこの順なのか。解説は、リスク低減効果の高い措置を優先的に実施するためだと書く。施行通達の書き方にも手がかりがある。工学的対策は、設計・計画段階の措置で除去しきれなかった危険に対して行う。管理的対策は、それらで除去しきれなかった危険に、保護具は、それでも除去されなかった危険に対して行う。上の措置で残った危険を、下の措置で受け止める入れ子の形だ。保護具については、上位の措置の代替を図ってはならないと明記される。

上位ほど、人の注意に頼らず危険そのものを小さくする、と読める(当サイトの読み)。人は訓練しても間違える(ヒューマンエラーの節)。

例外もある。指針は、可能な限り高い優先順位の措置を実施するとしたうえで、負担が効果に比べて大幅に大きく、求めることが著しく合理性を欠くときは除く(10(2))。施行通達は、死亡や重篤な後遺障害をもたらす可能性が高い場合など、実施しないことが著しく合理性を欠かない場合は、費用が大きくても実施すべきだとする。死亡、後遺障害、重篤な疾病のおそれがあるリスクで、適切な措置に時間がかかるときは、暫定の措置をすぐに講じる(10(3))。

条文にも同じ向きの並びがある。労働安全衛生規則518条は、高さ2m以上で墜落の危険があるときは作業床を設けるとし(1項)、作業床を設けることが困難なときに、防網を張り、墜落制止用器具を使用させる等の措置を講ずるとする(2項)。保護具は、作業床が困難なときの次の手として置かれている、と読める(当サイトの読み)。

場面で追う — KYTと見積りを、自分の手で

やってみよう ①:機械室の床上の作業で、4ラウンドを回してみよう

仮の場面(このトピックのために作った想定)。たとえば、機械室の床上で、重さ約15kgの手動弁を、既設配管のフランジに取り付ける。床には、切った配管の端材と、電動工具の延長コードが出たままだ。通路側では、別の業者が台車で資材を運んでくる。

先に自分で1R〜4Rを書いてから、次の例と見比べよう。答えは1つに決まらない。絞った理由が言えればよい。

  • 1R: ①端材を踏んで転倒する。②延長コードに足を引っかけ、弁を持ったまま倒れ、足に落とす。③持ち上げる姿勢で腰を痛める。④通路で台車と接触してはさまれる
  • 2R: ②と④に絞る。重い物を持ったままの転倒は重いケガにつながりうる。台車は自分では避けにくい
  • 3R: ②に「作業前に端材とコードを片付ける」。④に「台車の通る時間を打合せで調整する」
  • 4R: 重点実施項目は「作業前に端材とコードを片付ける」。チーム行動目標は「弁を持つ前に、足元と通路を指差し呼称で確認しよう、ヨシ」

3Rに「気をつける」は書かない。具体的に書くのが約束だ。

やってみよう ②:ピット内の作業を見積もり、対策を4段階に分けよう

仮の場面(このトピックのために作った想定)。たとえば、雨水がたまったことのある地下の排水ピットに、点検口のはしごで降り、既設配管の弁を1人で交換する。

見積りの尺度は説明用の仮の値だ(施行通達の別添4の例とは別物)。重篤度は致命的40点、休業15点、軽傷3点。可能性は高い20点、ある10点、低い3点。合計が50点以上は「高」、25〜49点は「中」、25点未満は「低」とする。

危険重篤度可能性
A ピット内の酸素欠乏致命的ある
B 弁を持ち上げる姿勢での腰痛休業高い
C はしごでの足の滑りによる転落休業ある
D 配管の角での手のすり傷軽傷高い

問い: (1) 4つの危険に点を付け、優先度の高い順に並べよう。(2) 過去3年にこのピットで起きたのがDだけだったとき、Aの重篤度を「軽傷」にしてよいか。(3) Aへの次の対策を、設計・計画段階での除去、工学的対策、管理的対策、個人用保護具に分けよう。ア ピットに入らず弁を交換できる方法に変える。イ 送風機で換気し、酸素濃度を原則として18%以上に保つ。ウ 入る前に酸素濃度を測って入るかを決める手順を定め、外に見張りを置く。エ 空気呼吸器などを着けて入る。

答え。

(1) Aは40+10=50点で「高」、Bは15+20=35点で「中」、Cは15+10=25点で「中」、Dは3+20=23点で「低」。順はA、B、C、D。頻繁に起きるDより、起きにくくても致命的なAが先になる。

(2) してはならない。指針は、過去に実際に起きた負傷ではなく、最悪の状況を想定して重篤度を見積もるとする。Dだけで済んだのは、たまたまかもしれない。

(3) アは設計・計画段階での除去(入る作業そのものをなくす)、イは工学的対策、ウは管理的対策(手順と見張り)、エは個人用保護具。分類は当サイトの整理だ。なお、酸素濃度の測定(酸素欠乏症等防止規則3条)と換気(5条)は法令の定めで、ピットに入るなら、法令の定めは必ず実施する。そのうえで、入らずに済む方法(ア)を最優先で検討する。

措置のあとに残るリスクも見積もる(施行通達11(2)。残留リスク)。Aは、イ・ウ・エで可能性を「低い」に下げても、重篤度は「致命的」のままで、仮の尺度では40+3=43点と「中」に残る。重篤度そのものを下げられるのは、アのように危険な作業をなくす措置だ(当サイトの読み)。

数で追う — 度数率・強度率

指標表すもの式の骨格
度数率災害の頻度死傷者数÷延べ実労働時間数×100万
強度率災害の重さ延べ労働損失日数÷延べ実労働時間数×1,000
このほか、年千人率(1年間の労働者1,000人当たりの死傷者数の割合)がある。

労働損失日数の基準は、死亡が7,500日、永久全労働不能(身体障害等級1〜3級)が7,500日、永久一部労働不能(4〜14級)が50〜5,500日、一時労働不能は暦日の休業日数に300/365(うるう年は300/366)を掛けた日数だ。度数率の死傷者は、休業1日以上又は身体の一部若しくはその機能を失う労働災害に限る(令和7年の労働災害動向調査の概況)。

やってみよう ③:仮の現場の度数率と強度率を求めよう

仮の現場で、延べ実労働時間数が400,000時間、休業1日以上の労働災害が2件あった。休業は暦日で73日と146日。死亡や障害はない。度数率と強度率を求めよう。

損失日数は、73×300/365=60日と、146×300/365=120日で、合計180日。度数率は2÷400,000×1,000,000=5.00。強度率は180÷400,000×1,000=0.45。

令和7年(2025年)の総合工事業は、度数率1.89、強度率0.29(前年0.57)、死傷者1人平均の労働損失日数151.8日だった。次節の死傷者数は、この調査とは別の統計(労働者死傷病報告。休業4日以上)だ。

現場とつなぐ — 管工事で起きやすい災害

厚生労働省の「令和7年における労働災害発生状況(確定値)」で、建設業を見る(管工事に限った数字は確認できていない)。死亡者は214人、休業4日以上の死傷者は13,437人(出典の報告が別なので、足さない)。事故の型は、どちらも墜落・転落が最多で、死亡91人(約43%)、死傷4,343人(約32%)。死亡の次は、はさまれ・巻き込まれ23人、崩壊・倒壊22人で、激突され・交通事故(道路)が各14人。感電は死亡6人、死傷43人だ。

墜落・転落 — 数字を条文に対応させる

条求めること数字
518・519条作業床を設ける。作業床の端・開口部等に囲い・手すり・覆い等を設ける高さ2m以上
522・523条悪天候で危険が予想されるときは作業を行わせない。必要な照度を保つ高さ2m以上
552条架設通路の墜落の危険のある箇所に、手すり等と中桟等を設ける手すり等は85cm以上、中桟等は35〜50cm
556条はしご道の上端を床から突出させる60cm以上
518・519条などに、設置が困難なときの例外がある。足場の細部は別のトピックで扱う。

足場の作業床(わく組足場以外)では、手すり等と中桟等が「及び」で並び、手すりだけで中桟が不要になる書き方ではない(563条1項3号ロ。3項に例外がある)。

酸素欠乏、熱中症、重量物、電気

酸素欠乏は、空気中の酸素の濃度が18%未満の状態だ(酸素欠乏症等防止規則2条1号)。酸素欠乏危険場所は施行令の別表第六に列挙され、管工事に関係しそうなものに、地下に敷設される物を収容する暗きょ・マンホール・ピット、雨水や湧水が滞留したことのある槽・ピット、汚水を入れたことのあるタンク・槽・管・ピットなどがある。同規則は、作業の開始前にその日の酸素濃度を測ること(3条)、換気で原則として18%以上に保つこと(5条)、換気に純酸素を使わないこと(5条3項)を定める。

熱中症について、労働安全衛生規則612条の2は、2025年6月1日から、熱中症を生ずるおそれのある作業を行うとき、あらかじめ、報告させる体制の整備と、悪化を防ぐ措置の手順の定めを、周知することを事業者に求める。条文は「暑熱な場所において連続して行われる作業等」とあるのみで、数値の条件は書かれていない(細目は通達等にある可能性があるが、ここでは確認していない)。重量物の取扱いは、次のトピックで扱う。

電気の安全では、停電作業の規則339条が、電路を開路したあと、開閉器の施錠や通電禁止の表示、又は監視人の配置を求め、高圧・特別高圧では検電器具による停電の確認と短絡接地を求める。墜落制止用器具は フルハーネス型墜落制止用器具の義務化、熱中症は 現場の熱中症対策の義務化 が扱う(事実の根拠にはしていない)。

試験での出方とワナ

令和8年度の第一次検定で、施工管理法の安全管理(受検の手引の検定基準は、施工管理法に安全管理等を含める)としてこのトピックに当たるのは問題Bの No.4 と No.25だ。No.4は必須問題(No.1〜9は全問解答)で、4つの記述から適当でないものを1つ選ぶ。ハインリッヒの法則、安全管理活動の進め方、強度率、ヒューマンエラーの4つが並んだ。No.25は応用能力問題(No.22〜29は全問解答)で、「適当でないものは二つ」を選ぶ。高所作業の規定の数字(高さ・長さ)が主題だった。No.25は公表後に正答肢が訂正され、(1)を選んだ回答が正解として採点されることになった(全国建設研修センターの「正答肢の訂正について」。(3)を「適当でないもの」から外す旨だけが書かれ、理由は書かれていない)。

ワナは、ヒューマンエラーと不安全行動の取り違え、度数率と強度率の取り違え、措置の優先順位の入れ替えと保護具での代替、高所作業の数字の取り違えの4つだ。下の「出題者のワナ」に、見破り方をまとめた。

冒頭の問いの答え合わせ

「足を滑らせかけたけど、何ともなかった」は、ケガがなかったから安全だった、とは言えない。ハインリッヒは、ケガに至らなかった事故の主な原因は、平均的な場合には重い傷害の主な原因と同じだと書く。たまたま軽く済んだことは、危険が小さい証拠にならず、見積りでは最悪の状況を想定する。

危険がいくつも見つかったら、KYTのように出して絞り、重篤度と可能性の度合で見積もって、優先度を付ける。対策は、危険な作業をなくす・変えることから考え、工学的対策、管理的対策、保護具の順に検討する。保護具は最後の手で、上位の代わりではない。理解度チェックの問3・5・8で確かめよう。

次の問い

重い機器を吊り上げて据え付けるとき、安全管理は、何をどの順で見るのだろう。吊る前に確かめることは何か。やめられる作業はないか。残る危険に、どの順で対策を当てるのか。次のトピック「機器の据付け」で、施工の手順に沿って、この見方をもう一度使う。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. ヒューマンエラーを、近道をするなど意図的に安全を阻害する行為と説明する

    なぜ引っかかるどちらも人の行動の話で、意図の有無の区別が入れ替わりやすい

    見破り方ヒューマンエラーは「意図しない結果を生じる人間の行為」。意図的に安全を阻害する行為は不安全行動で、故意の違反は別に考える。説明に「意図的」があるかを見る

  2. 度数率と強度率を取り違える、倍率(100万・1,000)を入れ替える

    なぜ引っかかるどちらも延べ実労働時間で割る式で、頻度と重さの対応が曖昧だと混ざる

    見破り方度数率は死傷者数÷時間×100万で頻度、強度率は労働損失日数÷時間×1,000で重さ。休業が暦日なら、先に300/365を掛ける

  3. 低減措置の優先順位で、保護具やマニュアルを先に置く、保護具で上位の代わりにする

    なぜ引っかかる保護具や手順書は目に入りやすく、作業の廃止・変更のような上位の措置は見えにくい

    見破り方除去・低減、工学的、管理的、保護具の順で、保護具で上位の代替を図ってはならない。順序の入れ替えと、保護具で済ませる書き方を疑う

  4. 高さ2m以上の規定の数字(2m、85cm、35〜50cm、60cm)を取り違える

    なぜ引っかかる条文ごとに基準が違う。2mは共通でも、手すりやはしごは別の数字になる

    見破り方作業床・囲い・悪天候・照度は高さ2m以上、手すり等は85cm以上、中桟等は35〜50cm、はしごの上端の突出は60cm以上。条文と数字を対応させる

参考文献・出典

理解度チェック(11問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、11問で確認しよう。 内訳は基本3問・応用6問・ひっかけ2問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 11 問正解

覚えておきたいポイント

  1. ハインリッヒの法則は、同種の事故330件をケガなし300・軽傷29・重い傷害1と推定した経験則。比は一定とは限らず、厚生労働省は、数字より、ヒヤリハット等の情報を把握して迅速に対策することが重要とする
  2. ヒューマンエラーは意図しない結果を生じる人間の行為で、故意の違反は別に考える。不安全行動は、安全を阻害する可能性のある行動を意図的に行う行為(厚生労働省)
  3. KYT基礎4ラウンド法は、現状把握、本質追究、対策樹立、目標設定の順。危険を出して絞り、対策を出して絞る
  4. リスクアセスメントは、特定、見積り(重篤度と可能性の度合)、優先度の設定と措置の検討、実施の順。法28条の2は努力義務で建設業も対象。重篤度は最悪の状況を想定して見積もる
  5. 低減措置は、法令事項を必ず実施したうえで、設計・計画段階での除去・低減、工学的対策、管理的対策、個人用保護具の順。度数率は100万時間当たりの死傷者数、強度率は1,000時間当たりの労働損失日数
Xでシェア
打ち合わせを予約 見積依頼