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施工管理法 ・ 3 / 12

フロートと工期短縮 — 余裕は誰のものか、どの作業を縮めるか

読み終えると、こうなる

遅れの連絡を受けたとき「余裕はあと何日残っていて、誰と分け合っているか」を数え、工期を縮めるよう言われたときは、どの作業を何日縮めれば安いかを表で選べるようになる

  • 結合点の最早・最遅から、作業ごとのトータルフロート・フリーフロート・干渉フロートを求め、それぞれが何を守る余裕かを言い分けられる
  • 作業の遅れが完成日に及ぼす影響を、余裕との差で数え、同じ最長経路を通る作業の遅れが余裕を分け合うことを数字で示せる
  • 工事の途中の点検結果(残りの日数)から前進計算をやり直し、完成日の延びと新しいクリティカルパスを求められる
  • 費用勾配が与えられた工期短縮で、縮める作業を1日ずつ選び、別の道が追いついた時点で共通の作業と道ごとの作業の費用を比べて、追加費用の小さい縮め方を選べる
考えてみよう

前のトピック(ネットワーク工程表の読み方)の例題に、配管の施工(B)と水圧試験(D)があった。同じ道の上にあって、どちらにも「2日の余裕」がある。

Bが2日遅れて余裕を使い切ったあと、Dも2日遅れたら、完成日は何日延びるのか。余裕は4日分あるのか、2日分しかないのか。そして発注者から「15日の工事を12日で終えてほしい」と言われたら、どの作業を何日縮めればよいのか。

このトピックを読み終えるころには、遅れの連絡を1本受けただけで完成日への影響を数え、縮める作業を表から選べるようになっている。

まず一言で

余裕(フロート)の測り方は、ここでは3つを使い分ける。トータルフロートは、完成日を動かさずに遅らせられる日数。フリーフロートは、後ろの作業の最早開始を動かさずに遅らせられる日数。干渉フロートは、トータルとフリーの差で、使うと後ろの作業の余裕を食う分だ。その作業を通る最長の経路が同じ作業どうしは、トータルフロートを分け合う。

工期を縮めるときは、完成日が実際に縮む選び方の中から、追加費用の小さいものを選ぶ。クリティカルパスが1本の間は、その上の作業を、1日縮める費用の安いものから縮める(これは手順で、全体の追加費用が最小になる保証ではない)。ただし縮めていくと、余裕のあった道が追いついて、新しいクリティカルパスになる。並んだクリティカルパスは、そのすべてを縮めないと、完成日は動かない(共通の作業を縮めれば、1回で複数の経路に効く)。

余裕の3つの測り方 — 何を守る余裕か

前のトピックの例題1と同じ網を使う(数値も同じ。空調機まわりの更新工事を単純にした架空の図で、日数は説明用の仮の値)。A(①→②)3日、B(②→③)5日、C(②→④)4日、D(③→⑤)3日、E(④→⑤)6日、F(⑤→⑥)2日、G(②→⑤)8日。

A 3日 B 5日 C 4日 D 3日 E 6日 F 2日 G 8日 1 2 3 4 5 6 0 / 0 3 / 3 8 / 10 7 / 7 13 / 13 15 / 15 数字=最早 / 最遅(日) 太線=クリティカルパス 図1 例題1の網と、結合点の最早 / 最遅(前のトピックと同じ。自作・架空)

全体の所要日数は15日、クリティカルパスは A→C→E→F だ。作業ごとの余裕は、前のトピックで「尾の最早+日数」と「頭の最遅」の差として見た。その正式な名前がトータルフロートで、兵庫県の「土木工事施工管理基準」付録1(前のトピックと同じ資料。土木工事向けの基準)は、余裕の種類としてトータル・フリー・干渉・独立の4つを挙げ、このうちトータルとフリー、それに干渉を説明している(独立はここでは扱わない。原文はアクティビティ。ここでは作業と言い換える)。

余裕守るもの求め方
トータル(TF)完成日頭の最遅 − (尾の最早+日数)
フリー(FF)後ろの作業の最早開始頭の最早 − (尾の最早+日数)
干渉(IF)完成日は守れるが、後ろの最早開始が遅れる分頭の最遅 − 頭の最早
頭・尾は、作業の矢線の到着側・出発側の結合点。干渉は、トータル−フリーに等しい(兵庫県の基準)。

3つの違いを、言葉で言い直す。トータルフロートの範囲で遅れても、完成日は守れる。しかし、その作業の終点の結合点が遅れれば、そこから出る後ろの作業は、最早では始められない。後ろの作業を最早で始めたいなら、フリーフロートの範囲に収める必要がある。干渉フロートは、その2つの差で、完成日は守れるが後ろの作業を遅らせてしまう分だ。

兵庫県の基準は、次の性質も挙げている。フリーはトータル以下。クリティカルイベント(最早と最遅が等しい結合点)を終点とする作業では、フリー=トータル。トータルが0なら、ほかのフロートも0。干渉フロートは使わずにとっておけば、後ろの他の工程でその分を使えるが、フリーフロートはその作業だけで使える、ため込みのきかないものだという。

例題1の値は、次のとおりだ。

作業トータルフリー(干渉)
B2日0日(2日)
D2日2日(0日)
G2日2日(0日)
A・C・E・F0日0日(0日)

Bのフリーが0なのは、終点③の最早(8日)が、Bの最早完了(3+5=8日)と同じだからだ。Bが1日でも遅れると、Dは8日の時点では始められない。DとGの終点⑤はクリティカルイベントなので、フリー=トータルになる。

トータルフロートが残っていても、後ろの作業に影響しないとは限らない。完成日を守る余裕(トータル)と、後ろの作業を最早で始める余裕(フリー)は、別のものだ。守るものを先に言ってから、数える。

これで、作業ごとにトータル・フリー・干渉を求め、どれが何を守る余裕かを言い分けられる。

同じ最長経路の余裕は、なぜ分け合うのか

冒頭の問いを、図で見る。ここでは「Bが2日遅れる」を、Bの所要日数が5日から7日に延びることとして数える(以降の「遅れ」も同じ)。Bが2日遅れて10日の時点で終わると、Dは10日の時点で始まり、13日の時点で終わる。13日は、Dの最遅完了だ。Dの余裕は0になった。

計画どおり(最早で進む) B B 5日 D D 3日 余裕2日 余裕2日 Bが2日遅れたとき B B 5日+遅れ2日 D D 3日 余裕0 3 8 10 11 13 15 着工からの経過日数(斜線=トータルフロート) 図2 BとDは、同じ2日を分け合う(自作・架空。例題1のB→D。横軸は着工からの経過日数)

BとDに、別々の2日があるのではない。同じ道(A→B→D→F)の上に2日があり、先に遅れたほうが使えば、後ろの作業の分が減る。理由は式で言える。前のトピックで見たとおり、結合点の最早は「始まりからそこまでの最長の道」、最遅は「全体の日数−そこから終わりまでの最長の道」だった。作業を通る最長の経路は、前の最長+作業日数+後ろの最長だから、終わりの結合点の最遅に置く日数を TT として(ここでは最早と同じ15日。契約工期に置くときは契約工期)、次の式になる(出典資料にはなく、前のトピックの式から筆者が導出)。

トータルフロート=T−(その作業を通る最長経路の日数)\text{トータルフロート} = T - \bigl(\text{その作業を通る最長経路の日数}\bigr)

BもDも、通る最長経路は A→B→D→F の13日で、15−13=2日。Gは A→G→F の13日で、これも2日だ。同じ最長経路を通る作業は、同じトータルフロートになる。これが「分け合う」の中身だ。

やってみよう①:Bが1日遅れたら

例題1で、Bが1日遅れた。(a) 全体の完成日は? (b) Dの最早開始は? (c) Dのトータルフロートは?

(a) Bの遅れ1日は、Bのトータルフロート2日以内なので、完成日は15日のまま。(b) Bの終点③が9日になり、Bのフリーは0なので、Dの最早開始は9日。1日遅れる。(c) Dの最遅完了は13日のまま、最早完了は9+3=12日。トータルは13−12=1日に減る。Bが使った1日が、Dの余裕から引かれた。

遅れの影響を追う

1つの作業が遅れたとき

その作業だけが x 日遅れ、ほかの作業は計画どおりで、その作業のトータルフロートが f 日なら、完成日の延びは max(0, x−f) 日だ(筆者の整理。その作業を通る経路は、すべて x 日長くなる。そのうち最長のものは、当初の所要日数より f 日短かったので、x が f を超えた分だけ、当初の所要日数を超える。x が f 以下なら超えない。その作業を通らない経路は変わらない)。例題1で、Gが1日遅れても A→G→F は 13+1=14日で、15日の A→C→E→F を超えないので、延びない。3日遅れれば 13+3=16日で、3−2=1日延びて16日。Cはトータル0なので、2日遅れれば2日延びて17日になる。

複数の作業が遅れたとき

経路ごとに「経路の日数+その道の上の遅れの合計」を出し、いちばん大きい値が新しい所要日数になる(筆者の整理)。

遅れ完成日理由
Bが2日15日Bの余裕2日をちょうど使う
Bが2日、Dが2日17日A→B→D→F は 13+4=17日
Bが1日、Dが1日15日同じ道で合計2日。余裕の範囲
Bが2日、Gが2日15日別の道(13+2、13+2)。分け合わない

冒頭の問いは、これで答えられる。BとDが2日ずつ遅れれば、完成日は2日延びて17日。余裕は4日分でなく、2日分だった。

点検で遅れが見つかったとき

第二次検定(令和7年度)は、工事の途中で進み具合を点検した結果から、完成日の延びを求める形だった。手順は、前進計算のやり直しだ。(1) 終わった作業を除き、点検日以降の「残りの日数」に直す。(2) 点検日を新しい出発点(起点)にして前進計算する。(3) 終わりの結合点の時刻が新しい所要日数で、当初との差が延びだ。

例題2 例題1の工事を、着工から4日の時点で点検した。Aは完了。B・C・Gは3日の時点で着手し、1日分進んでいる。残りは、Bがあと5日(計画ではあと4日)、Cがあと6日(計画ではあと3日)、Gがあと7日(計画どおり)。D・E・Fは当初の日数のままだ。

起点を4日として、③は4+5=9、④は4+6=10。⑤は、B・D経由で9+3=12、C・E経由で10+6=16、G経由で4+7=11 の最大の16。⑥は16+2=18。完成は18日で、当初より3日延びる。クリティカルパスは C→E→F のままで、Cの3日の遅れがそのまま響いた。Bの1日の遅れは、トータル2日の範囲に収まっている。

では、余裕はどう変わるか。延びた18日を基準に後退計算すると、⑤の最遅は16日で、Gのトータルは 16−(4+7)=5日。当初の2日より3日増えた。クリティカルパスが遅れたぶん、Gのように遅れた作業を通らない道の余裕は増える。いっぽう、当初の15日を守るつもりなら、⑤の最遅は13日のままで、Gは 13−(4+7)=2日、Cは 7−(4+6)=−3日になる。この−3日が、取り戻すべき日数だ。余裕は、どの完成日を基準にするかで変わる。

遅れたあとの余裕を答えるときは、基準の完成日を先に決める。延びた完成日を基準にすれば、遅れた作業を通らない作業の余裕は増える。当初の完成日を守るなら、クリティカルパス上はマイナスになる。

現場とつなぐ — 遅れの連絡を受けたら

当サイトの整理では、遅れの連絡を受けたら、次の順に確かめる。(1) その作業のトータルフロートと、同じ最長経路の上の作業がすでに使った分。(2) 完成日が動くか。(3) クリティカルパスが入れ替わっていないか。

国土交通省の「直轄土木工事における適正な工期設定指針」(令和2年3月)は、受注者の責によらない遅れの協議を円滑にするため、原則すべての工事で、工事工程のクリティカルパスを受発注者間で共有するとしている。指針の特記仕様書の記載例は、施工中にクリティカルパスに変更が生じたときも、受発注者間で共有するとしている(直轄土木工事向けの指針で、管工事の指針ではない)。余裕を数え直しておくことは、この共有の前提になる(当サイトの読み)。

これで、遅れの連絡から、完成日への影響と、新しいクリティカルパスを数えられる。

工期短縮 — どの作業を、何日縮めるか

ここでは、作業の日数を縮める場合だけを扱う。

契約工期が短いとき

前のトピックでは、終わりの結合点の最遅を最早と同じ値に置き、契約工期が違う場合は次で扱うと予告した。契約工期が計算上の所要日数より短いときは、終わりの結合点の最遅を、契約工期に置いて後退計算する。兵庫県の基準の例では、計算上43日の工事を36日で契約したとき、トータルフロートの計算にマイナスの経路が出る(−7日の経路と−4日の経路がある)。契約工期に収めるには、7日短縮せざるを得ない。

例題1で契約工期が13日なら、⑥の最遅は13日。式の TT を13日にすると、A・C・E・F のトータルは 13−15=−2日、B・D・G は 13−13=0日になる。いちばん大きいマイナス(−2日)が、全体で縮めるべき日数だ。B・D・G が0になるのは、通る最長の道が13日で、契約工期と同じだからだ。

費用勾配 — 1日縮めるのにいくらか

縮められる作業には、標準の日数と、これ以上は縮められない限界の日数があり、1日縮めるごとに費用がかかる。兵庫県の基準は、縮められる日数を表の「短縮可能日数(crash)」の列で示す。兵庫県の例では、直列に並ぶAとBがともに最大3日縮められ、1日の費用がAは6万円、Bは4万円のとき、4日縮めるならBを3日・Aを1日の18万円が最安になる。

1日縮める費用を、このトピックでは費用勾配と呼ぶ。これは教材での呼び名で、兵庫県の資料は「1日短縮に要する費用」と書く。標準から限界までは、1日縮めるごとに同じ額だけ費用が増えると仮定すれば、費用勾配=(限界の費用−標準の費用)÷(標準の日数−限界の日数)で出せる(出典資料にはなく、筆者の整理。実際の費用がそう変わるとは限らない)。

例題3 例題1の工事を、15日から縮める。各作業の限界と費用勾配は、次の仮の値とする。

作業標準→限界(日)費用勾配(万円/日)
A3→25
B5→32
C4→23
D3→23
E6→44
F2→16
G8→65

道は3本ある。A→C→E→F が15日、A→B→D→F と A→G→F は13日。縮める作業を、1日ずつ選ぶ。

日数縮める作業追加費用の累計(万円)
14日Cを1日3
13日Cをもう1日(Cは限界)6
12日Aを1日11
11日Fを1日17
10日E・B・Gを1日ずつ28

15日から13日までは、クリティカルパスが A→C→E→F の1本だけなので、その中で費用勾配が最小のCを縮める。クリティカルパスを縮めると最長の道は短くなるが、ほかの道は変わらないので、差が縮まる。2日縮めると差がなくなり、3本の道がすべて13日で並ぶ。新しいクリティカルパスの出現だ。

13日から12日へは、3本とも1日縮めないと完成日が動かない。道ごとに最安の作業を選ぶと、E(4)+B(2)+G(5)=11万円。3本に共通するAを1日縮めれば、5万円で済む。共通部分を先に縮めると、複数の経路に効く(兵庫県の基準)。12日から11日へは、Aが限界なので、やはり3本に共通するFの6万円。11日から10日へは、共通の作業が尽きたので、道ごとの縮めを足して11万円になる。この例題の網では、表の費用は、縮め方の全組合せを総当たりで調べた最小値とも一致する(プログラムで検算)。ただし、1日ずつ最安を選ぶこの手順が、どんな網でも常に最小になるとは限らない。

クリティカルパスだけを縮めればよい、とは言えない。縮めるうちに余裕のあった道が追いつき、クリティカルパスが複数になる。そうなったら、その全部を縮めない限り、完成日は動かない。
やってみよう②:いちばん安いBを縮めたら

15日の工事を縮めたい。費用勾配が最小の2万円/日はBなので、Bを2日縮めた。完成日は何日になり、追加費用はいくらか。

Bは、余裕のある道(A→B→D→F)の作業で、クリティカルパス(A→C→E→F)の上にない。完成日は15日のままで、4万円は無駄になる。クリティカルパス上で縮める作業のうち、安いものを選ぶ。

縮めるほど得とは限らない

ここでは、縮めると追加費用(直接費の増加分)が増え、工期にかかる費用(現場管理など。ここでは間接費と呼ぶ)が減る、という見方で考える。仮に間接費が1日7万円で、日数に比例して減るとして、合計を並べる。

日数追加費用(万円)追加費用+間接費(万円)
15日0105
14日3101
13日697
12日1195
11日1794
10日2898

合計が最小なのは11日だ。12日から11日へは、追加費用が6万円増えて間接費が7万円減るので得。11日から10日へは、11万円増えて7万円しか減らないので、割に合わない。追加費用の増分が3、3、5、6、11万円と、減らずに増えていくこの例では、縮めるのは、1日縮める追加費用が、減る間接費(1日7万円)より小さい間だけだ。

令和8年度の問題B No.23には、施工速度と直接費・間接費の関係を述べた記述があり、公式の正答肢は、これを適当でないものとしている。公式の正答肢が示すのは、その記述が適当でないという点までで、間接費が減ることまでは示していない。この例題では、追加費用は増え、間接費は減るとした。ただし、間接費が工期に応じて減るという点は、この例題の前提(仮定)であり、公的資料では確認できていない。

これで、費用勾配の表から、縮める作業を1日ずつ選び、追加費用を数えられる。

試験での出方とワナ

出題の型

主題と形式だけを挙げる(問題文は転載していない)。

  • 令和8年度 問題B No.2(必須):図のネットワーク工程表について、適当でない記述を選ぶ。クリティカルパス、最遅の時刻、作業を縮めた・遅らせたときの影響が聞かれた。前のトピックの計算と、このトピックの「遅れを追う」の考え方で答えが出せる
  • 令和8年度 問題B No.23(応用能力、適当でないものを二つ):クリティカルパスが通る結合点、フリーフロートの定義、短縮を検討する範囲、施工速度と費用の関係が並んだ。公式の正答肢で適当でないとされたのは、短縮を検討する範囲と、施工速度と費用の関係の2つ
  • 令和7年度 第二次検定:網の図から、クリティカルパスの経路と日数、点検結果から延びる日数、ある作業のトータルフロート、工期を縮めるときにクリティカルパス以外にも縮める必要が出る道の名称が聞かれた

設問が名称を聞いている道は、クリティカルパスではないが、縮める必要が出る道だ。ここでは、余裕が小さく、クリティカルパスを縮めると次にクリティカルになる道のことだと読む(当サイトの読み)。ただし、この名称は、今回確認した資料に定義が見つからず、公式の解答例も確認できていない。兵庫県の基準は、クリティカルパスでなくてもフロートの非常に小さいものは重点管理する必要があると書く。名称より、仕組みを説明できることを優先する。

解く手順

  1. 前進・後退計算で、結合点の最早・最遅を出す
  2. 作業ごとに、トータルとフリーを出す
  3. 遅れや短縮は、経路ごとに日数を足し直す(余裕の引き算だけで済ませない)
  4. 点検の問題は、残りの日数に直して、点検日から前進計算をやり直す。「n日遅れ」は、計画上の残り日数にnを足す読み方が自然(当サイトの読み。「あと○日必要」とあればそれに従う)
  5. 余裕を答えるときは、基準の完成日を確かめる

ひっかけの型は、本文のあとの「出題者のワナ」に4つまとめた。

冒頭の問いの答え合わせ

  • Bが2日遅れたあとDも2日遅れれば、完成日は2日延びて17日。余裕は4日分でなく、同じ道で分け合う2日分だった
  • 15日を12日に縮めるには、Cを2日(6万円)、Aを1日(5万円)で、追加費用は11万円。13日で3本の道が並んだあとは、3本に共通するAを選ぶほうが、道ごとに縮めるより安い(例題3の仮の値で)

これで、余裕を3つの測り方で数え、遅れの影響と、縮める作業を、数字で選べる。

次の問い

このトピックでは「3日遅れ」を、作業ごとの日数で数えた。では、工事全体で、予定より何%進んでいて、何%遅れているのかは、どう見ればよいのか。作業ごとの余裕とは別の見方が要る。このトピックでは扱っていない。

出題者のワナ — ここで受験者を転ばせにくる

この論点は、知っているだけでは足をすくわれる。試験でよく仕掛けられる崩し方を、先に知っておこう。

  1. 2つの作業の余裕を足して、4日遅れても大丈夫だと考える

    なぜ引っかかるそれぞれに「2日の余裕」と書いてあると、別々の2日に見える。しかし、同じ最長経路を通る作業のトータルフロートは同じ値で、その2日を分け合う

    見破り方遅れた作業を経路ごとにまとめ、経路の日数に遅れの合計を足して、全体の日数と比べる。本文の例題1では、BとDが2日ずつ遅れた経路は13+4=17日で、完成日は2日延びる

  2. トータルフロートの範囲内なら、後ろの作業に影響しないと考える

    なぜ引っかかる完成日を守る余裕(トータル)と、後ろの作業の最早開始を守る余裕(フリー)は別物。トータルの範囲内でも、フリーを超えた分は後ろの作業を遅らせる

    見破り方トータルとフリーの両方を求める。本文の例題1のBは、トータル2日・フリー0日なので、1日の遅れでも後ろのDの開始が遅れる

  3. 最初のクリティカルパス上でいちばん安い作業を縮めれば足りると考える

    なぜ引っかかる縮めるうちに、余裕のあった道が追いついてクリティカルパスが複数になる。その時点からは、1本だけ縮めても完成日は動かない

    見破り方1日縮めるごとに、全経路の日数を数え直す。クリティカルパスが複数並んだら、共通の作業を縮める費用と、道ごとに縮める費用の合計を比べる

  4. 点検後の余裕を、基準にする完成日(当初か、延びた後か)を確かめずに数える

    なぜ引っかかる遅れたあとの完成日を基準に計算し直すと、遅れた作業を通らない作業の余裕は増える。当初の完成日を守るなら、クリティカルパス上の余裕はマイナスになる

    見破り方最遅を置く前に、設問が「延びた完成日」と「当初の完成日」のどちらを基準にしているかを確かめる

参考文献・出典

理解度チェック(12問)

このトピックの内容がどれくらい身についたか、12問で確認しよう。 内訳は基本3問・応用6問・ひっかけ3問。基本が解けたら、条件を足した応用と、本番で足をすくいにくるひっかけまで踏み込む。

/ 12 問正解

覚えておきたいポイント

  1. トータルフロート=頭の最遅−(尾の最早+日数)、フリーフロート=頭の最早−(尾の最早+日数)、干渉フロート=頭の最遅−頭の最早(=トータル−フリー)。フリーはトータル以下で、クリティカルイベント(最早=最遅の結合点)で終わる作業ではフリー=トータル(兵庫県「土木工事施工管理基準」付録1)
  2. トータルフロートは一つの経路上で共有される(兵庫県)。当サイトの導出では、作業のトータルフロート=全体の所要日数−その作業を通る最長経路の日数。その作業だけが遅れ、ほかは計画どおりなら、遅れが x 日、トータルフロートが f 日のとき、完成日の延びは max(0, x−f) 日
  3. 点検で遅れが見つかったら、残りの日数で点検日から前進計算をやり直す。余裕は、どの完成日を基準にするかで変わる。遅れた完成日を基準にすると、遅れた作業を通らない作業の余裕は増える
  4. 工期短縮の手段はクリティカルパスに着目する(兵庫県)。縮めていくと、別の経路との差がなくなり、その経路もクリティカルになることがある(当サイトの整理。兵庫県は、フロートが消化するとクリティカルパスになると書く)。負の経路は共通部分を先に縮めると複数の経路に効く(兵庫県)。費用の例(兵庫県)は、直列の2作業で、1日短縮の費用が安い作業を限度まで縮める組合せが最安
  5. 契約工期が計算上の所要日数より短いときは、終わりの結合点の最遅を契約工期に置く。マイナスのトータルフロートを持つ経路が出て、いちばん大きいマイナスの大きさが、全体で縮める日数。各経路のマイナスは、その経路を縮めるべき日数(兵庫県の例は、計算43日・契約36日で、−7日の経路と−4日の経路が出る)
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