仮に、機械室の空調機を更新する工事を担当しているとする。バーチャートを見ると、どの作業の棒も工期の中に収まっている。そこへ連絡が入る。「ダクトの施工が2日遅れる」。別の日には、こんな連絡も来る。「空調機の搬入・据付が2日遅れる」。
同じ2日の遅れだ。ところが、完成日が動くときと、動かないときがある。棒グラフをいくら眺めても、答えは書いていない。
どちらの遅れが、完成日を動かすのか。それは、図を見て数えられる。このトピックを読み終えるころには、遅れの連絡を受けた瞬間に、その作業が「いちばん長い道」の上にあるか、余裕がどれだけあるかを確かめ、完成日への影響を数えられるようになっている。
まず一言で
ネットワーク工程表は、作業を矢線(→)、作業の区切りを結合点(○)で描き、「この作業が終わらないと次が始められない」という前後関係まで図にした工程表だ。始まりから終わりまで矢線をたどった道(経路)のうち、日数の合計がいちばん長いものがクリティカルパスで、その日数が全体の所要日数になる。クリティカルパス上の作業は余裕がなく、遅れがそのまま完成日の遅れになり、それ以外の作業も余裕を超えた分は完成日に響く。
工程表の種類 — バーチャートで見えるもの、見えないもの
国土交通省 中部地方整備局が公開している土木工事向けの資料(平成25年度版。現行版との異同は確認していない)は、工程管理の目的をこう書いている。実施工程表を用いて工事の進み具合を管理し、施工計画と実際の施工の差を把握して見直すことで、適正な品質と出来形を確保しつつ、工期内に完成させることだ。工程表は、予定を書いて終わる紙ではない。予定と実際の差を見つけて、手を打つための道具である。
同じ資料は、実施工程表にはバーチャート、ガントチャート、ネットワークなど各種あり、その工事に見合った方式で作るとも書いている。3つを並べてみよう。
| 工程表 | 横軸 | 向いていること |
|---|---|---|
| バーチャート | 暦日(日付) | 各作業の開始と終了、計画と実績の対比 |
| ガントチャート | 達成度(%)※ | 各作業の進み具合 |
| ネットワーク | 描き方による(下の「部品は3つ」の節を参照) | 作業の前後関係、クリティカルパス |
バーチャートの強みは、いつ何をするかが一目で分かることだ。中部地方整備局の資料は、工程表による進度管理一般について、計画と実績の対比が容易だと書く(バーチャートと名指しはしていない)。ところが同じ資料は、一つの工程の遅れが他の工種や最終工期にどう影響するかを簡単に把握することは困難だとも書く。そのうえで、個々の作業量と基準作業量との比較を適正に行い、一工種の遅れが他工種に影響しないよう対応し、関係する業務はできるだけ各工種をリンクさせた工程表で管理することが望ましい、としている(ネットワークと名指しはしていない)。
なぜ、バーチャートでは遅れの影響が見えないのか。棒が示すのは「この作業をこの時期にやる予定」という時期だけで、「この作業が終わらないと、あの作業が始められない」という待ち関係は、図のどこにも描かれていないからだ(資料の文は工程表一般についての記述で、この理由づけは当サイトの読み)。ネットワーク工程表は、そのリンクを矢線として描く。令和7年度の2級の第一次検定にも、ネットワーク工程表は作業どうしの関係を把握しやすい、という趣旨の記述が適当なものとして出ている。
これで、バーチャートとネットワーク工程表の得意・不得意を、一言で言える。バーチャートは「いつ」を見る工程表、ネットワークは「何が何を待つか」を見る工程表だ。
部品は3つ — 結合点・作業・ダミー
部品は3つだけだ。描き方の決まりは、宮城県の「工程計画管理基準(案)」と、兵庫県の「土木工事施工管理基準」付録1(ネットワーク方式)で確かめた。どちらも都道府県が土木工事向けに定めた基準で、国の統一基準や、管工事の検定の出題範囲として確認したものではない。
- 結合点(○):作業と作業の切れ目。「ここまでの作業が終わった」という時点を表す。丸の中に番号を書く
- 作業(実線の矢線):矢線1本が作業1つ。矢線の脇に作業名と日数を書く。図は左から右へ流れる
- ダミー(破線の矢線):作業ではない。日数は0で、作業の前後関係だけを表す。日数0は、兵庫県の図-1で、ダミーを通っても時刻が増えない(⑤の65が、そのまま⑥・⑦の計算に使われる)ことから読み取れる
結合点は「時点」で、時間の幅がない。矢線は「時間のかかる仕事」で、日数の幅がある。この区別が、あとの計算で効いてくる。
描き方の細部は、資料や図によって違う。兵庫県の図-1は、結合点の番号が0(⓪)から始まるが、図-11のように①から始まる図もある。宮城県の基準は、土木部が発注する土木請負工事でネットワークによる工程計画管理を行う場合のもので、矢線をできるだけ縦と水平の線で描き、斜めは極力さけるとする。標準として、図面の横軸に暦日と累加日数を表示し、矢線の水平の線の長さを日数に合わせる。本教材の図は説明用に斜めの矢線を使い、日数を矢線の脇に書く簡略な描き方だ。
番号の決まりと、その「なぜ」
宮城県の基準は、結合点の番号を次のように決めている。
- 正の整数を使う
- 矢線の尾(出発側)の番号より、頭(到着側)の番号を大きくする
- 同じ番号を2つ以上付けない
なぜ「小さい→大きい」なのか。この決まりを守ると、番号の小さい順に計算するだけで、結合点に入ってくる矢線の出発側が、いつも先に決まっている。前進計算は①から順に、後退計算は最後の番号から逆順に進めればよい。矢線をたどって元の結合点に戻る輪も、作れなくなる(この説明は当サイトのもの)。
資料によって呼び名が違う
言葉の違いで迷わないよう、確認できた呼び名を並べておく。
| この教材 | 別の呼び方 | 確認できた資料 |
|---|---|---|
| 結合点 | イベント、ノード | 宮城県・兵庫県(イベント)、福山平成大学(ノード) |
| 作業 | アクティビティ | 宮城県・兵庫県 |
| 後退計算 | 後進計算 | 兵庫県 |
| クリティカルパス | 最重点管理経路、最長経路 | 兵庫県 |
| 最早・最遅結合点時刻 | イベントの最早開始時刻・最遅完了時刻 | 兵庫県の定義、令和8年度の問題文、宮城県の凡例(「日」) |
最後の行を説明する。兵庫県の基準は、最早結合点時刻を、そのイベントを始点とする作業のどれもが最も早く開始できる時点、最遅結合点時刻を、そのイベントを終了する作業のすべてが最も遅く完了してよい時点、と定義している(原文のアクティビティを作業と言い換えて書いた)。宮城県の基準の凡例は、結合点の2つの値を、その結合点が作業の出発側にあるときは「最早開始日」「最遅開始日」、到着側にあるときは「最早完了日」「最遅完了日」と呼ぶ。令和8年度の検定の問題文は、結合点について「最早開始時刻」「最遅完了時刻」と書いていた。どれも、結合点に付く2つの時刻の呼び分けだ。この教材では「最早」「最遅」と略す。
結合点に最早・最遅を書き込む位置も、資料で違う。兵庫県と宮城県の図は、最遅を枠で囲んで最早の上に置く。この教材の図2は、上が最早、下が最遅だ。問題の図に凡例があれば、それに従う。
いちばん長い道が、完成日を決める
例題1を決める。空調機まわりの更新工事を、わざと単純にした架空の図だ。日数は説明用の仮の値で、実際の工事の標準日数ではない。
- A(①→②)墨出し・搬入経路の養生:3日
- B(②→③)冷温水配管の施工:5日
- C(②→④)空調機の搬入・据付:4日
- D(③→⑤)配管の水圧試験:3日
- E(④→⑤)空調機の電源・制御の配線:6日
- F(⑤→⑥)試運転調整:2日
- G(②→⑤)ダクトの施工:8日
始まり(①)から終わり(⑥)まで、矢線の向きにたどった道を、経路という。経路の日数は、通る矢線の日数の合計だ。
やってみよう ①:図1の経路を全部書き出して、日数を足してみよう。全体の所要日数は何日か。
やってみよう ①:答えを見る
経路は3本ある。
- A→B→D→F(①→②→③→⑤→⑥):3+5+3+2=13日
- A→C→E→F(①→②→④→⑤→⑥):3+4+6+2=15日
- A→G→F(①→②→⑤→⑥):3+8+2=13日
いちばん長いのは15日の経路だ。全体の所要日数は15日で、これより早くは終われない。ほかの道は全部それより短いので、最も長い道に合わせるしかない。いちばん長い道が、「これより早くは終われない日数」を決めている。
なぜ、最長の経路が全体の日数になるのか。結合点⑤を見よう。⑤には、B→Dの道、C→Eの道、Gの道が合流する。⑤から出るF(試運転調整)は、水圧試験・配線・ダクトが全部終わらないと始められない。待ち合わせ場所に全員がそろうまで出発できないのと同じだ。だから⑤の時刻は、いちばん遅く着く道で決まる。兵庫県の基準も、入ってくる作業の時間の最大値をとることは、時間的にいちばん長い経路を決めることだ、と書いている。
これで、図から全経路を書き出して、所要日数を求められる。ただし結合点が増えると経路は急に増える。次は、結合点ごとに時刻を決める方法だ。
前進計算と後退計算 — 結合点に時刻を付ける
前進計算 — 最早結合点時刻(行きは待ち合わせ)
最早結合点時刻とは、その結合点から出る作業を、いちばん早く始められる時刻だ。始まりを0日として、番号の小さい順に決めていく。矢線が1本だけ入る結合点は、尾の最早に作業の日数を足す。複数の矢線が入る合流点では、それぞれ「尾の最早+日数」を出して、いちばん大きいものをとる。
は、結合点 から へ向かう作業の日数だ。大きい方をとるのは、入ってくる作業が全部終わらないと、次に進めないからだ。例題1を計算する。
- ①:始まりなので 0
- ②:0+3(A)=3
- ③:3+5(B)=8
- ④:3+4(C)=7
- ⑤:入ってくる矢線は3本。8+3(D)=11、7+6(E)=13、3+8(G)=11 のうち最大の 13
- ⑥:13+2(F)=15
終わりの結合点⑥の最早が15日。経路を足して出した答えと、一致した。
後退計算 — 最遅結合点時刻(帰りは締切り)
最遅結合点時刻とは、その結合点に入る作業を、いちばん遅く終えてよい時刻だ。これより遅れると、後の作業が全部順調に進んでも、終わりの日に間に合わない。兵庫県の基準の言い方では、終了の時点に間に合う、ぎりぎりの時点である。
終わりの結合点は、最遅=最早とおく(契約工期が違うときの話は、次のトピックで扱う)。そこから番号の大きい方へ逆にたどり、出ていく各矢線について「頭の最遅-日数」を出す。出ていく矢線が複数ある分岐点では、いちばん小さいものをとる。
なぜ小さい方なのか。②から出る矢線はB、C、Gの3本あり、どれも遅れすぎると⑥の15日に間に合わなくなる。いちばん締切りの厳しい矢線に合わせないと、全体を守れないからだ。
- ⑥:最早と同じ 15
- ⑤:15-2(F)=13
- ④:13-6(E)=7
- ③:13-3(D)=10
- ②:出ていく矢線は3本。10-5(B)=5、7-4(C)=3、13-8(G)=5 のうち最小の 3
- ①:3-3(A)=0
覚え方は1つだけ。「行きは待ち合わせ(最大)、帰りは締切り(最小)」。
作業の側から見た4つの時刻もある(兵庫県の基準)。結合点 から へ向かう日数 の作業は、最早開始が尾の最早、最早完了が尾の最早+、最遅完了が頭の最遅、最遅開始が頭の最遅- だ。作業Gなら、順に3日、11日、13日、5日。令和8年度の検定の問題文にも、このうち「最早開始時刻」「最遅完了時刻」が出てくる(結合点=イベントの値として、また後続する作業の最早開始時刻という形で)。
やってみよう ②:例題1で、空調機の搬入・据付(C)が6日かかる計画に変わった。結合点④⑤⑥の最早と、全体の所要日数を求めよう。
やってみよう ②:答えを見る
④は3+6=9。⑤は、B・D経由で8+3=11、C・E経由で9+6=15、G経由で3+8=11なので、最大の15。⑥は15+2=17。全体の所要日数は17日になる。
経路で確かめると、A→C→E→Fが3+6+6+2=17日、ほかは13日のまま。Cを長くしたぶん、クリティカルパスと他の道の差が広がった。
これで、図を見て、結合点ごとの最早と最遅を計算できる。
クリティカルパス — 余裕のない道
例題1の最早と最遅を並べる。
| 結合点 | 最早 | 最遅 |
|---|---|---|
| ① | 0 | 0 |
| ② | 3 | 3 |
| ③ | 8 | 10 |
| ④ | 7 | 7 |
| ⑤ | 13 | 13 |
| ⑥ | 15 | 15 |
兵庫県の基準は、最遅と最早の差を余裕(スラック)と呼び、余裕のない結合点をクリティカルイベントと呼ぶ。クリティカルパスは、必ずクリティカルイベントを通る。例題1では①②④⑤⑥がクリティカルイベントで、③だけは2日の差がある。
なぜ、最早と最遅が等しい結合点が、いちばん長い道の上にあるといえるのか。直観、式の順に見る。
最早は、始まりからその結合点まで、遅い道に合わせて着く時刻だ。つまり、始まりからその結合点までの最長の道の長さに等しい。最遅は、全体の日数から、その結合点から終わりまでの最長の道の長さを引いた時刻だ。結合点 について、始まりから までの最長の道を 、 から終わりまでの最長の道を 、全体の日数を とすると、次の関係になる。
下の式は、「 を通る最長の道の長さが、全体の日数と等しい」と読める。つまり を通る道の中に、全体と同じ長さの道がある。例題1の③で確かめよう。 は8日(A、B)、 は5日(D、F)で、合計13日。全体の15日に2日足りない。この2日が③の余裕だ。
両端がクリティカルでも、作業はクリティカルとは限らない
作業Gは②から⑤へ向かう。②(最早3=最遅3)も⑤(最早13=最遅13)も、クリティカルイベントだ。けれども、Gの日数は8日で、②から⑤までの時間(13-3=10日)に2日足りない。この2日がGの余裕で、Gはクリティカルではない。
作業がクリティカルかどうかは、次の式で確かめる。
等しければ余裕がなく、クリティカルだ。例題1では、A(0+3=3)、C(3+4=7)、E(7+6=13)、F(13+2=15)が、それぞれ頭の最遅と等しい。B(3+5=8、頭の最遅は10)、D(8+3=11、13)、G(3+8=11、13)は等しくない。クリティカルパスは、①→②→④→⑤→⑥(A→C→E→F)の15日だ。
この余裕の正式な名前(トータルフロート)と使い方は、次のトピックで扱う。ここでは、クリティカルパス上の作業には余裕がない、と覚えておけばよい。
クリティカルパスの性質
兵庫県の基準が挙げる性質から、このトピックに関わるものを選ぶ。
- 全経路のうち、いちばん時間が長い。上にある作業に余裕はなく、工程を短くしたいときは、この経路に着目する
- 必ずしも1本ではない
- クリティカルでない作業も、余裕を使い切るとクリティカルパスになる。余裕のごく小さい作業も、クリティカルパスに準じて重点的に管理する
なぜ、クリティカルパスの遅れは全体の遅れになるのか
直観で言うと、こうだ。クリティカルパスの上では、前の作業が終わった瞬間に、次の作業が始まる。のりしろがない。クリティカルでない道は、合流点で別の道を待つ時間がある。その待ち時間が余裕で、遅れを飲み込んでくれる。
計算でも見られる。例題1で、空調機の搬入・据付(C)が2日遅れて6日になったとする。A→C→E→Fは3+6+6+2=17日。ほかの道は13日のままだ。最長の道が17日なので、全体も17日になる。2日遅れて、2日延びた。
やってみよう ③:例題1で、ダクトの施工(G)を10日に変えるとクリティカルパスはどうなるか。11日に変えたら。
やってみよう ③:答えを見る
Gが10日:A→G→Fは3+10+2=15日で、A→C→E→Fの15日と並ぶ。クリティカルパスは2本になり、全体の所要日数は15日のまま。Gは、尾の最早3+10=13=頭の最遅13となり、クリティカルになる。
Gが11日:A→G→Fは16日になり、15日の経路を抜く。クリティカルパスはA→G→Fに移り、全体は16日になる。元のクリティカルパス(A→C→E→F)のCとEには、1日の余裕が生まれる。
クリティカルパスは、日数が変わると入れ替わる。兵庫県の基準の言う、余裕を使い切るとクリティカルになる、という状態だ。
ダミー — 日数のない矢線が必要な理由
ダミーは、作業ではなく「前後関係の印」だ。例題2で、必要になる場面を見る(日数は架空)。
- A(空調機の搬入・据付、7日)とB(冷温水配管の施工、4日):どちらも最初から始められる
- C(電源・制御の配線、3日):Aが終わったら始められる
- D(配管の接続・水圧試験、6日):AとBの両方が終わってから
- E(試運転調整、4日):CとDの両方が終わってから
困るのは、CとDだ。CはAだけを待ち、DはAとBを待つ。Dを、Aの終点の結合点から出すと、Bを待たなくなる。Bの終点の結合点から出すと、Aを待たなくなる。そこで、Aの終点②から、Bの終点③へ、ダミーを引く。Dは③から出るので、Bが終わり、かつ②に着いたAの完了もダミーを通って届くのを待つ。Cは②から出るので、Bは待たない。
最早を計算しよう。③が要所だ。Bの経路では0+4=4、ダミー経由では7+0=7。大きい方をとって、③は7になる。
- ①:0
- ②:0+7(A)=7
- ③:0+4(B)=4、7+0(ダミー)=7 のうち最大の 7
- ④:7+3(C)=10、7+6(D)=13 のうち最大の 13
- ⑤:13+4(E)=17
後退計算は、⑤が17、④が13、③が13-6=7、②が、C経由の13-3=10とダミー経由の7-0=7の最小で7、①が、A経由の7-7=0とB経由の7-4=3の最小で0。図2の数字は、このとおりだ。
Bは4日目に終わるのに、Dは7日目まで始められない。ダミーが、Aの完了もDの開始条件に加えているからだ。ダミーを描き忘れて、DがBだけを待つ図にすると、全体は14日と出てしまう。正しい17日より3日短い。
クリティカルパスは、A→ダミー→D→Eで、7+0+6+4=17日。令和7年度の第二次検定は、結合点の番号をつないで経路を答える形式だった。この例なら「①→②→③→④→⑤」(②→③はダミー)となる。
やってみよう ④:図2で、作業Cを始める前に終わっていなければならない作業は何か。作業Dはどうか。
やってみよう ④:答えを見る
Cの始点②に入る矢線はAだけなので、Aだけ。Dの始点③に入る矢線は、Bと、②からのダミーなので、AとB。ダミーの先の作業は、ダミーの元の作業の完了も待つ。
やってみよう ⑤:作業Jが終わったあと、作業Kと作業Lが始まり、KとLの両方が終わってから作業Mが始まる。KとLを、どちらも結合点②から③へ描くと、何が困るか。ダミーを使って直そう。
やってみよう ⑤:答えを見る
KとLが、同じ結合点の組(②と③)になる。作業を結合点の番号の組(、)で呼ぶので、「②→③」と言っても、KかLかを区別できない(兵庫県の基準も、作業を の組で表している)。
直し方は、Jを①→②、Lを②→③、Kを②→④、ダミーを③→④、Mを④→⑤とする。Mは、Kと、Lからダミーを通って届く完了の、両方を待つ。番号の決まり(尾<頭)を守ると、ダミーは③→④の向きになる。
現場とつなぐ — 実施工程表は、着手前に作り、変わったら直す
公共建築工事標準仕様書(機械設備工事編)令和7年版(修補版)は、実施工程表について、第1編1.2.1で次のように定めている。
- 工事の着手に先立ち、関連工事等の関係者と調整したうえで実施工程表を作成し、監督職員の承諾を受ける
- 契約書に基づく条件変更等で変更が必要になったら、直ちに変更し、その部分の施工に先立って承諾を受ける
- 監督職員の指示を受けたら、補足として週間・月間・工種別の工程表を作って提出する
- 概成工期が特記されたときは、実施工程表等に、概成工期、受電日、総合試運転調整に要する工程を明記する
この仕様書は、実施工程表をバーチャートで作るかネットワークで作るかを指定していない(この版の本文に、バーチャートやネットワークの語は出てこない)。様式については、前に見た土木工事向けの中部地方整備局の資料が、その工事に見合った方式で作るとしている。建築・設備の仕様書の規定ではなく、参考として並べた。
受電日が書かれるのは、機器を動かす試運転が、電源が来てからになるからだ、と読むのが自然だ(仕様書の理由の説明ではなく、当サイトの読み)。電気側の日付が動けば、管工事のクリティカルパスが入れ替わることもある。例題1の図には受電を描いていない。受電を図に入れるなら、受電までの日数を持つ矢線として描き、受電を待つ作業(例題1ならF)の開始条件に加えることになる。
機器の納期も同じ見方ができる。たとえば、空調機の納入が「搬入・据付」の前に立つ作業として図に入っていたとする。その遅れが完成日を動かすかは、その作業の余裕と、遅れの大きさの比べ合いで決まる。クリティカルパス上の作業なら余裕がないので、遅れがそのまま響く。余裕があるなら、その範囲までは待てるが、超えた分は響く。納期を急ぐべきか、余裕の範囲で待てるかの判断材料になる(考え方の例で、特定の現場の話ではない)。
人や機械の山をならす使い方もある。中部地方整備局の資料は、機械・労務・資材の必要数を均し、過度の集中や待ち時間が出ないよう工程を調整することを挙げる。兵庫県の基準は、ネットワーク上の余裕を使って人員・機械・資材の量を平均化する方法を説明している。余裕の使い方は、次のトピックの主題だ。
試験での出方とワナ
出題の型
主題と形式だけを挙げる(問題文は転載していない)。
- 令和8年度 問題B No.2(必須):図のネットワーク工程表について、適当でない記述を選ぶ。聞かれたのは、クリティカルパスの本数と所要日数、ある結合点の最遅完了時刻、作業日数が変わったときの全体工期への影響
- 令和8年度 問題B No.23(応用能力、適当でないものを二つ):工程管理の記述として、クリティカルパスが通る結合点、フリーフロート、工期短縮の検討範囲、施工速度と費用の関係が並んだ。フロートと短縮は次のトピック
- 令和7年度 第二次検定:ネットワーク工程表から、クリティカルパスの経路を結合点の番号で、所要日数を日数で答える設問があった(ダミーは破線矢印)。ほかに、延長日数やトータルフロートなども聞かれた
解く手順
- 図を読む。作業名・日数・ダミー・結合点の番号を確かめる
- 前進計算で、最早を番号順に出す。合流点は最大。終わりの最早が、全体の所要日数
- 後退計算で、最遅を番号の逆順に出す。分岐点は最小
- 「尾の最早+日数=頭の最遅」の作業を、始まりから終わりまで結ぶ。これがクリティカルパス
- 検算する。クリティカルパス上の日数を足して、所要日数と一致するか確かめる
ひっかけの型は、本文のあとの「出題者のワナ」に4つまとめた。
冒頭の問いの答え合わせ
最初の問いに戻る。例題1で、ダクトの施工(G)が2日遅れても、空調機の搬入・据付(C)が2日遅れても、同じ2日の遅れだった。
- Cが2日遅れて6日:A→C→E→Fが17日になり、全体は17日。完成日は2日延びる
- Gが2日遅れて10日:A→G→Fが15日になるが、最長の15日に並ぶだけ。完成日は動かない。余裕の2日を使い切っただけだ
- Gが3日遅れて11日:A→G→Fが16日になる。完成日は1日延びる
遅れの連絡を受けたら、その作業の余裕を確かめる。クリティカルパスの上にあれば余裕がなく、遅れがそのまま完成日の遅れになる。上になければ、余裕の分だけ吸収される。余裕を超えた分が、完成日にはね返る。
これで、遅れの連絡を受けた瞬間に、完成日への影響を数えられる。
(例題の数値は、全経路を書き出す方法と、前進・後退計算の両方で、プログラムを使って検算している。)
最後に、次のトピックへの問いを1つ置く。例題1のBとDは、同じ道(A→B→D→F)の上にある。どちらにも2日の余裕があるといえる。では、Bが2日遅れたあとで、Dも2日遅れたら、完成日は何日延びるのか。余裕は、作業ごとに別々にあるのか。それとも、同じ道の上で分け合っているのか。次は、この余裕(フロート)と、工期を短くする方法を扱う。