夏の盛りに、工場の敷地を巡回していた保全担当者が妙なものを見た。正午を回っているのに、駐車場の外周に立つ街路灯が消えていない。灯具の故障を疑って新品に交換したが、翌日も同じ時刻に点いたままだった。壊れていたのは灯具ではない。灯具の点灯・消灯を判断していた、電柱の途中に取り付けられた小さな箱――自動点滅器――のセンサー面が、真南を向いていたことだった。
自動点滅器とタイムスイッチは、どちらも「照明をいつ点け、いつ消すか」を決めるためだけの、地味な脇役の機器である。街路灯、防犯灯、広告灯、無人の駐車場や自動販売機の照明――人が毎日スイッチを操作しに来られない場所ほど、この2つの機器に運用のすべてが委ねられている。にもかかわらず、両者は判断の材料がまったく違う。自動点滅器は「今どれだけ明るいか」しか見ておらず、タイムスイッチは「今何時か」しか見ていない。この違いを意識せずに「とりあえず点滅器を付けておけばいい」と選んでしまうと、深夜だけ消灯したい場面で一晩中点きっぱなしになったり、逆に暗くなってもまだ消灯設定のままだったりする。
自動点滅器とは何か――「明るさ」だけを見る機器
自動点滅器は、周囲の明るさに応じて自動的に照明をON/OFFする装置で、パナソニックでは「EEスイッチ」の名で製品化されている。内部にはCDS(硫化カドミウム)素子を使った検知回路があり、これが周辺の照度変化を常時監視して接点を開閉する。暗くなれば自動点灯し、明るくなれば自動消灯する――仕組みとしてはそれだけの、単純な光電式スイッチである。
この単純さには一つ見落としやすい条件がつく。周囲の照度を常に監視し続けなければならない以上、CDS回路そのものには常時電源が入っている必要がある。つまり自動点滅器は「点灯中だけ動く部品」ではなく、24時間休みなく通電され続けている部品だということだ。寿命は目安として4〜10年とされ、これを超えて使い続けると、必要なときに点灯しないという不具合が起きやすくなる。街路灯や防犯灯の点滅器が経年劣化で誤作動を起こすのは、灯具そのものより先にこの部品の寿命が来ているケースが多い。
タイムスイッチ・アストロタイマーとは何か――「時刻」だけを見る機器
タイムスイッチは、あらかじめ設定した時刻・曜日に従って接点を開閉する機器である。明るさは一切関係なく、時計の針が設定時刻を指した瞬間に切り替わる。営業時間に合わせて看板照明を点けたい、深夜0時になったら一部の照明を落としたい、といった「時刻で管理したい」用途にはこちらが向く。
このタイムスイッチをさらに発展させたのが、ソーラータイムスイッチ、通称アストロタイマーである。パナソニックのソーラータイムスイッチは、全国を12の地区に分け、各地区の1年間の日の出・日の入り時刻をあらかじめ内部のメモリに記憶している。設置場所に応じた地区番号を選ぶだけで、冬は早く暗くなり夏は遅くまで明るいという季節変化に、時刻設定を毎月手動で変えなくても自動で追従する。日出・日入りの基準時刻に対して早め・遅めに90分刻み、あるいは1〜3時間単位で補正する調整幅も用意されている。
併用してわかる、もう一段深い使い分け
自動点滅器だけでも、タイムスイッチだけでも、屋外照明の自動運転は成立する。だとすれば、現場でときどき両方が同じ回路に取り付けられているのを見かけるのは、単なる過剰装備なのだろうか。
パナソニックの公式Q&Aを見ると、そうではないことがわかる。自動点滅器とタイムスイッチを併用する回路は、「両方が入条件を満たしたときに入になる」というAND条件で動作する。つまり2つの機器は対等な選択肢ではなく、役割を分担する関係にある。自動点滅器が「暗くなったから点ける」という開始の判断を担い、タイムスイッチが「決めた時刻になったから消す」という終了の判断を担う。実務上は、タイムスイッチ側を日中ずっと「入」の状態にしておき、消灯させたい時刻だけを「切」に設定しておく使い方が一般的で、こうすることで自動点滅器が暗さを感知した時間帯から、タイムスイッチが定めた時刻までの間だけ照明が点灯する。
この組み合わせが効くのは、一晩中の点灯が絶対条件ではない照明だ。工場敷地の外周灯や、閉店後は照らす必要のない広告灯・サイン照明では、深夜のあいだだけ消灯・減灯してエネルギーを節約できる。一方で、防犯灯は話が別になる。防犯上の効果は「暗い時間帯は途切れず点灯し続けていること」が前提のため、深夜に自動消灯させる設計は基本的に採らない。防犯灯の照度クラスや設置間隔そのものの基準は、灯具側の選定の話であり、別記事「LED防犯灯・街路灯の設置基準」で扱っている。
どこでどう使われているか
| 現場 | 主に使われる機器 | ポイント |
|---|---|---|
| 街路灯・道路照明 | 自動点滅器(単体、または自治体の運用でタイムスイッチ併用) | 自治体によっては深夜減灯運用があり、その場合のみ併用 |
| 防犯灯 | 自動点滅器(単体が基本) | 深夜消灯は防犯効果を損なうため通常は行わない |
| 広告灯・サイン照明 | タイムスイッチ、または自動点滅器+タイムスイッチ | 明るさより営業時間・閉店時刻を優先 |
| 自動販売機の照明 | タイムスイッチ、または消灯タイマ付EEスイッチ | 1台で完結させたい小規模用途向け |
| 門灯・庭園灯 | 消灯タイマ付EEスイッチ | 点灯後は一定時間で自動消灯、消し忘れ防止 |
定格電流の選び方――「灯具の合計ワット数」から逆算する
自動点滅器やタイムスイッチは、それ自体が照明を光らせているわけではない。接続された灯具の電源回路を、接点でON/OFFしているだけの機器だ。したがって選定の起点は、その接点にどれだけの電流が流れるか――つまり接続する灯具の合計ワット数から逆算した電流値になる。
パナソニックのEEスイッチには3A・6A・10Aといった定格電流の異なる機種が用意されており、負荷接続灯数表で具体的な目安が示されている。たとえば定格3AのEE4553Sは、白熱灯なら300Wまで、LED電球(2.6W〜11W)なら2灯まで、パナソニック製LED照明(0.8W〜16W未満)なら4台までを接続できる。これに対して定格8AのEE4518Sは、白熱灯800W、LED電球13灯、LED照明32台までと、容量に大きな差がある。街路灯1灯だけを制御するのか、それとも複数灯をまとめて1台の自動点滅器で切り替えるのかによって、必要な定格電流はまったく変わってくる。
LED化で見落とされがちな「突入電流」という別の壁
ここで実務上つまずきやすいのが、定格電流(通常運転時に流れ続ける電流)だけを見て選定してしまうケースだ。同じ負荷接続灯数表には、突入電流という別の数値も並んでいる。EE4553Sの突入電流は50Aだが、EE4518Sは400Aとされており、同じ「3A」「8A」という定格電流の枠に収まっていても、瞬間的に流れる突入電流の大きさは機種によって大きく異なる。
突入電流は、電源投入の瞬間だけ定格電流の数倍から数十倍流れる現象で、LED照明の電源回路が内蔵するコンデンサが一気に充電されることで生じる。岩崎電気の技術解説によれば、この電流の幅が長く(数ミリ秒オーダーで)繰り返し発生するタイプは、配線用遮断器の誤動作や接点・半導体素子の故障につながることがあるとされる。白熱灯や水銀灯を前提に設計されていた古い世代の自動点滅器は、この種の突入電流を想定していない場合があり、LED灯具側だけを最新モデルに交換して、制御している自動点滅器を既設のまま流用すると、定格電流上は余裕があるように見えても、接点の消耗が想定より早まることがある。灯具をLED化する工事では、灯具本体だけでなく、それを制御している自動点滅器がLED負荷に対応した機種かどうかも合わせて確認しておきたい。
また、センサー機能やタイマー機能を内蔵した「特殊機能付き」の照明器具(人感センサー付き灯具など)を自動点滅器の負荷側に接続する場合、自動点滅器がONにした瞬間の灯具側の点灯状態は、灯具自身の仕様や内部状態によって変わることがパナソニックの技術資料でも注意喚起されている。制御機能が重複する組み合わせは、想定と違う動きをすることがあると考えておいたほうがよい。
設置場所による誤作動の原因
自動点滅器の誤作動は、多くの場合、部品の故障ではなく設置場所の問題として起きる。センサー(受光部)が拾ってはいけない光を拾ってしまうことが、原因のほとんどを占める。
- 西日・南向きの直射日光: 夕方の低い角度の日射が受光部に直接当たると、実際の周囲の明るさより明るいと誤検知し、点灯が遅れたり、逆に早朝の消灯が早まったりする。北向き、または東向きへの取り付けが基本とされる理由はここにある。
- 自分自身が制御している灯具の光: 点滅器を灯具のすぐ近くに設置すると、「暗くなって点灯する→自分の灯具の光を受光部が拾って明るいと判定する→消灯する→また暗いと判定して点灯する」という短い周期の点滅(チャタリング)を繰り返す。街路灯では、点滅器を灯具本体とは180度逆向きに取り付け、自身の光が直接受光部に回り込まない配置にするのが定石だ。
- 他の外灯・車のヘッドライトなどの外乱光: 駐車場や道路沿いでは、他の照明や通行車両のライトが一瞬だけ受光部を照らすことがある。設置高さや向きを工夫して、こうした一時的な外乱光を拾いにくい位置を選ぶ必要がある。
交換・配線時の注意点
自動点滅器を交換する際は、まず配線方式を現物で確認する。電源側とタイムスイッチ経由でつながる負荷側の配線が、ニュートラル線(白線)を電源と器具側で共通にする3線式なのか、個別に接続する4線式なのかによって結線が変わるため、既設の配線をそのまま新しい機種に流用できるとは限らない。
タイムスイッチと自動点滅器を両方使う既設回路を更新するときは、どちらが「入」の判断を担い、どちらが「切」の判断を担っているかを、交換前に必ず確認しておく。AND条件で組まれた回路は、片方だけを別方式の機種に交換すると、意図した時間帯の点灯が成立しなくなることがある。門灯や庭園灯のような小規模な用途であれば、自動点滅器とタイムスイッチを別々の機器として2台設置する代わりに、点灯後の消灯時間をあらかじめ設定できる「消灯タイマ付EEスイッチ」のような、1台で両方の機能を兼ねる機種に置き換えるという選択肢もある。設置スペースや配線の手間を減らしたい現場では、こちらのほうが合理的なことが多い。
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