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現場のやらかし防火対策分電盤配線器具

【現場のやらかし】感震ブレーカーをタップ型(コンセント型)で設置したら、分電盤の主回路には効かなかった!設置方式による『遮断できる範囲』の違い

読了目安: 11分 編集: 電材サーチ編集部(編集・出典ポリシー

本記事の事例は、安全啓発を目的として典型的な事象を再構成したものです。特定の現場・企業を指すものではありません。

「うちは感震ブレーカーを付けているから大丈夫」——この一言を、地震対策の話題で何度も聞いたことがあると思う。だが、その安心の中身を一歩掘り下げて聞いてみると、「何を」「どこまで」守れる製品を付けているのかまでは、案外答えられないことが多い。

感震ブレーカーという名前は一つでも、実際に市販されている製品は構造からして別物だ。分電盤に組み込んで建物全体を止めるものもあれば、特定のコンセントだけを止めるものもある。工事の手軽さと価格の安さから後者を選んだ場合、その製品が実際に遮断できるのは、あくまでそのコンセントにつながる回路だけになる。地震で家具が転倒し、電源コードが傷ついたのが別の部屋の暖房器具だったとしたら——その回路は、最初から守備範囲の外にある。

感震ブレーカーとは何か——「地震で自動的に電気を止める」の中身

感震ブレーカーは、地震の揺れを感知すると自動的に電気の供給を遮断し、地震後の電気火災を防ぐことを目的とした器具の総称だ。内閣府・総務省消防庁・経済産業省の連携のもとで平成27年2月にまとめられた「感震ブレーカー等の性能評価ガイドライン」によれば、東日本大震災でも津波火災を除く地震動由来の出火要因の約65%が電気関係と推定されており、大規模地震時の電気火災対策として設置が呼びかけられている器具である。

ガイドラインは、この器具全般を指すときに「感震ブレーカー等」という言葉を使う。狭い意味での「感震ブレーカー」は感震機能付きの分電盤だけを指し、コンセントタイプや簡易タイプはそこに含まれない別カテゴリーとして扱われている——この呼称の使い分け自体が、そもそも一括りにできる製品群ではないことを物語っている。

3つのタイプ、3つの「遮断できる範囲」

内閣府の資料が整理する感震ブレーカー等は、大きく3タイプに分かれる。分電盤タイプ、コンセントタイプ、簡易タイプだ。それぞれの機構と価格帯を並べてみる。

タイプ機器概要参考価格帯(内閣府資料)電気工事
分電盤タイプ(内蔵型)分電盤に内蔵されたセンサーが揺れを感知し、主幹ブレーカーを落として電気を遮断約5万円〜8万円必要
分電盤タイプ(後付型)分電盤に感震機能を外付け。漏電ブレーカー設置済みの分電盤に設置可能約2万円必要
コンセントタイプコンセントに内蔵されたセンサーが揺れを感知し、そのコンセントからの電気だけを遮断約5,000円〜2万円差込型は不要/埋込型は必要
簡易タイプばねの作動や重りの落下でブレーカーのノブを操作し、遮断を補助3,000円〜4,000円程度不要

価格の並びを見れば一目瞭然だ。工事不要で数千円から手に入る簡易タイプと、専門業者による電気工事を伴う分電盤タイプでは、桁で価格が違う。「地震対策として何か付けておこう」という動機で選ぶとき、この価格差が判断を左右するのは自然なことだ。むしろ、ここで立ち止まらずに安いほうを選んでしまうこと自体は、誰にでも起こりうる。

問題は、その先にある。ガイドラインは各タイプについて「出火予防が期待される範囲」を明確に図示している。分電盤タイプは、分電盤以降の電力供給を一括して遮断するため、予防範囲は建物内の電熱器具・電源コード・コンセント・屋内配線全般に及ぶ。一方でコンセントタイプは、そのタイプが設置された個所の電熱器具・電源コード・コンセントだけが予防範囲となり、コンセントまでの屋内配線は最初から予防の対象外だと明記されている。

つまり、分電盤タイプが「面」で建物を守るのに対し、コンセントタイプは「点」でしか守れない。同じ「感震ブレーカー」という言葉でくくられていても、この二つは守備範囲の設計思想からして違う製品だ。

タップ型を選んだ先で、何が起きるか

ここで、よくある状況を思い浮かべてみたい。設置費用を抑えたい、あるいは賃貸住宅で電気工事ができないという事情から、コンセントに差し込むだけのタップ型の感震ブレーカーを、リビングの電気ストーブが接続されたコンセントに設置したとする。地震が来れば、そのコンセントからの通電は確かに止まる。ここまでは製品の性能どおりだ。

ところが、同じ地震で寝室の家具が転倒し、電源コードが挟まって傷つき、そこにつながっていた暖房器具が発熱を始めたとしたらどうなるか。そのコンセントにタップ型の感震ブレーカーは設置されていない。リビングのコンセントは止まっていても、寝室の回路には最初から関与していないのだから、電気は流れ続ける。「感震ブレーカーを付けたのに、なぜ火が出たのか」という疑問は、ここで初めて生まれる。答えは単純で、その製品はそもそも寝室の回路を守る設計になっていなかった、というだけのことだ。

これは製品の欠陥でも施工ミスでもない。コンセントタイプは、内閣府の資料が言うとおり「特に出火の危険性の高い電熱器具が接続されているコンセントを中心に設置し、当該製品が設置されていないコンセントについては通電が継続される」という前提で設計された製品だ。設計どおりに動いた結果として、守備範囲の外で被害が起きているにすぎない。落とし穴があるとすれば、それは製品の中ではなく、選ぶ側の理解の中にある。

なぜ「一つ付ければ安心」という思い込みが生まれるのか

この誤解が起きる背景には、いくつかの要因が重なっている。

一つは、感震ブレーカーという製品名そのものが、タイプを問わず共通で使われていることだ。分電盤タイプもコンセントタイプも簡易タイプも、店頭やカタログでは同じ「感震ブレーカー」というカテゴリー名で並ぶ。価格差はあっても、名前が同じであれば「機能も似たようなものだろう」と考えるのは、決して不自然な推論ではない。

もう一つは、防災意識の高まりに押されて「とにかく何か対策をした」という達成感が先に立ちやすいことだ。感震ブレーカーを一つでも設置すれば、それだけで「地震火災対策は済んだ」という区切りがついてしまう。実際には、その一つが建物のどの範囲を守っているのかという確認が、区切りをつける前にもう一段階必要だったにもかかわらず。

内閣府のガイドラインは、この構造上のズレを見越してか、性能評価の項目に「予防範囲」という指標を明示的に設けている。感震を検知して遮断する性能そのものを示す「感震遮断」の評価とは別に、遮断が及ぶ範囲だけを切り出して星1つから星3つで評価する仕組みだ。星1つは部分的に通電を遮断する場合、星2つは全館(屋内配線を除く)を対象に通電を遮断する場合、星3つは全館(屋内配線を含む)を対象に通電を遮断する場合とされている。裏を返せば、この指標がわざわざ用意されているということは、感震遮断の性能が高くても予防範囲は狭い製品、あるいはその逆の組み合わせが実際に存在し、消費者が両方を別々に確認しなければ判断できないということでもある。

分電盤タイプにも別の落とし穴がある——「守れるが、すぐには止まらない」

分電盤タイプを選べば、それで万全というわけでもない。ガイドラインが定める分電盤タイプの標準仕様「基本型」は、揺れを感知してから一定時間後——通常は3分後——にブレーカーが落ちる設計になっている。この待機時間は、建物内にいる人が避難や電気製品の電源を切るといった安全確保の行動を取るために意図的に設けられたものだ。裏を返せば、感震から遮断までの3分間、電気は流れ続けている。

河村電器産業の技術資料でも、分電盤タイプの製品は震度5強・震度6弱から作動基準の震度を選択でき、遮断までの時間も即時・1分・3分から選べる仕様になっていると案内されている。つまり分電盤タイプであっても、待機時間の設定次第では「地震発生直後の数分間は通電が続く」という前提を理解しておく必要がある。加えて、待機時間の経過後には建物全体の通電が一斉に遮断されるため、在宅医療機器を使用している世帯では、停電に対処できるバッテリー等を別途備えておく必要があるとガイドラインは注意を促している。

範囲の広さと、遮断までの速さと、避難中の照明確保。この3つは同時に最大化できるわけではなく、タイプによって何を優先し、何を犠牲にしているかが変わる。コンセントタイプは未設置のコンセントへの通電を維持できる代わりに予防範囲が狭く、分電盤タイプは予防範囲が広い代わりに一括遮断による停電の影響も大きい。どちらが「正解」というより、住宅の使われ方に応じてどちらの弱点を許容できるかという選択の問題だ。

設置前に確認しておきたいこと

感震ブレーカーの設置を検討する、あるいは既存の設置状況を点検するときは、次の点を確認しておきたい。

  • 今ある(あるいはこれから付ける)感震ブレーカーが、分電盤タイプかコンセントタイプ・簡易タイプかを把握する——製品名だけでなく、機構としてどこの通電を止める製品なのかを取扱説明書や製品ラベルで確認する。
  • コンセントタイプ・簡易タイプを選ぶ場合は、守りたい機器のあるコンセント一つひとつに設置されているかを確認する——一つの部屋、一つの機器に設置しただけで、住宅全体が守られているわけではない。
  • 分電盤タイプを選ぶ場合は、遮断までの待機時間と、待機時間中に何をすべきかを家族で共有しておく——待機時間中は通電が続くという前提を、設置して終わりにせず日頃から意識しておく。
  • 在宅医療機器やバッテリーが必要な機器がある場合は、遮断のタイミングと範囲を踏まえた備えをしておく——分電盤タイプの一括遮断、コンセントタイプの部分遮断、いずれの場合でも停電時の対処を事前に計画しておく。
  • 既設の分電盤に後付け型を検討する場合は、漏電ブレーカーの有無と分電盤の形状を先に確認する——内閣府の資料でも、既設分電盤の形状によっては取付けが困難な場合があると注意されている。

感震ブレーカーは「付ければ安心」という単純な足し算ではなく、「どこまでの範囲を、どのくらいの時間で守れる製品か」を理解して初めて、期待どおりの効果を発揮する器具だ。設置方式ごとの守備範囲の違いは、製品を選ぶ前の一分で確認できることであり、その一分を惜しんだ結果として、守れると思っていた回路が最初から守備範囲の外にあった、という事態は避けられる。

分電盤・感震ブレーカーの選定・調達について

「賃貸物件向けにコンセントタイプの感震ブレーカーを複数戸分まとめて手配したい」「既設の住宅用分電盤に感震機能付きの後付けリレーを追加できるか確認してほしい」といったご相談を、施工店・設備管理ご担当者様からいただくことがあります。

分電盤タイプか、コンセントタイプかは、建物の使われ方や在宅医療機器の有無によって最適な組み合わせが変わってきます。当サービス「電材サーチ」では、パナソニック・河村電器産業をはじめとする各メーカーの分電盤・感震ブレーカー関連製品の仕様確認から、既設分電盤への後付け可否のご相談まで対応しております。

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