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電材基礎法令・資格

電気設備の法定点検とは|義務の根拠条文・点検頻度と、年次点検で毎年停電が要るか

・ 読了目安: 15分 ・ 編集: 電材サーチ編集部(編集・出典ポリシー)

この記事の結論

高圧で受電する需要設備は電気事業法上の自家用電気工作物にあたり、設置者には保安規程の届出(第42条)と主任技術者の選任(第43条)が義務付けられ、選任しなければ300万円以下の罰金となる。保安管理業務を外部委託する場合の点検頻度は告示第249号第4条が定め、内規により年次点検は1年に1回以上、確認項目は絶縁抵抗・接地抵抗など6項目とされる。信頼性が高く同等の点検が毎年行われている機器は、停電を伴う点検を3年に1回以上にできる。自社で主任技術者を選任する事業場の周期は保安規程による。

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保安法人から届いた年次点検の案内に「全停電 約5時間」と書いてあったとする。製造課からは「ラインは止められない」、テナントからは「なぜ毎年止めるのか」と聞かれる。施設担当者が答えるべき問いは、結局二つに絞られる。この点検は法律のどこで決まっているのか。そして、停電は本当に毎年必要なのか。

一つ目の答えは条文の表で示せる。二つ目は「毎年点検する」と「毎年停電する」が別の話だと分かると、見え方が変わる。点検が何を防いでいるかは、国の事故統計にそのまま数字で出ている。

施設担当者は、まずこの4点を確かめる

知りたいことまず用意する資料確認先・次の行動
この設備は対象か受電方式、単線結線図、設備台帳、発電設備の有無設置者・電気主任技術者・保安管理の委託先へ設備区分を確認
いつ、誰に頼むか保安規程、委託契約、前回点検報告書担当技術者へ今回の範囲と停電の要否を確認
当日までに何を準備するか停電対象、止められない設備、復電手順の責任者、連絡先技術者と施設利用者で日程・作業分担を調整
終了後に何を残すか報告書、指摘事項、改修期限、次回予定指摘ごとに対応者・期限・完了確認を記録

これは施設担当者が技術者へ確認するための整理表である。点検の実施や良否判定を代わりに行うものではない。資料が見つからない項目は「未確認」とし、設備を開けたり通電部へ近づいたりして埋めない。後で触れるとおり、点検作業中の感電は国の重大事故の記録にも載っている。

施設点検の準備・指摘管理票をダウンロード(CSV)。表計算ソフトで記入・印刷できる。法定様式や点検報告書の代わりではない。

記入のしかた

前回報告書の「要対応」を1件ずつ転記し、写真番号・対象設備・対応期限をひも付ける。「依頼済み」と「完了確認済み」は分けて残す。周期や保存期間は設備・記録の種類で異なるため、保安規程と担当技術者の案内を確認する。

「法定点検」はどの法令の、どの義務か

「法定点検」は一つの法律の名前ではなく、複数の法令が別々に課している義務の総称である。高圧受電の需要設備にかかるものを中心に、義務・根拠条文・罰則を並べると次のようになる。最後の2行は、設置者以外に課された義務である。

義務の内容根拠条文義務を負う者果たさなかった場合
保安規程を定め、使用開始前に届け出る電気事業法 第42条第1項事業用電気工作物(小規模事業用を除く)の設置者30万円以下の罰金(第120条第一号)
保安規程を変更したら遅滞なく届け出る/設置者と従業者は保安規程を守る電気事業法 第42条第2項・第4項同上変更の届出をしなければ30万円以下の罰金(第120条第一号)。保安規程の変更命令(第42条第3項)に違反した場合も30万円以下の罰金(第120条第七号)
主任技術者を選任する電気事業法 第43条第1項同上300万円以下の罰金(第118条第七号)
主任技術者の選任・解任を届け出る電気事業法 第43条第3項同上30万円以下の罰金(第120条第一号)
告示で定める頻度で点検する旨を委託契約に定める電気事業法施行規則 第53条第2項第五号保安管理業務を外部委託し、同規則第52条第2項の承認を受けようとする事業場罰則ではなく承認の要件(満たさなければ承認を受けられない)
絶縁用保護具等の定期自主検査(6月以内ごとに1回)と記録の3年保存労働安全衛生規則 第348条第1項・第351条第1項・第4項絶縁用保護具・絶縁用防具・活線作業用装置・活線作業用器具を使用させる事業者労働安全衛生法に基づく別系統の義務(罰則の適用関係はこの表の範囲外)
一般用電気工作物の調査(4年に1回以上。登録点検業務受託法人が点検業務を受託している受託電気工作物は5年に1回以上)電気事業法 第57条第1項/施行規則 第96条第2項第一号電線路維持運用者(電力会社等)。設置者の義務ではない—

境目は2つある。1つ目は、罰金が300万円になるのは「選任しなかったとき」で、選任はしたが届出を忘れたときは30万円だという点(第118条第七号と第120条第一号)。2つ目は、低圧受電の一般用電気工作物を4年に1回以上調査するのは電力会社等の電線路維持運用者で、設置者に課された点検義務ではないという点である。「4年に1回調査が来るから、自分では何もしなくてよい」とはならない。

自家用電気工作物の設置者が負う義務

対象になる設備

電気事業法は、電気事業の用に供する電気工作物と一般用電気工作物「以外」を自家用電気工作物と定めている(第38条第4項)。一般用にとどまるのは、低圧で受電し、同じ構内の発電設備が小規模発電設備の範囲に収まるものなので、電力会社から高圧(6,600V)で受電する設備は自家用にあたる。工場・大型商業施設・病院・マンションの高圧受電設備がこれに当たり、契約電力の大小は関係しない。

主任技術者を確保する道は3つある

第43条第1項は、主任技術者を「主任技術者免状の交付を受けている者のうちから」選任するよう求める。ただ、免状を持つ人を雇うことだけが道ではない。条文と省令を並べると、選択肢は3つになる。

方法根拠対象・要件
免状を持つ人を選任する電気事業法 第43条第1項第1種〜第3種電気主任技術者免状
許可を受けて、免状のない人を選任する(許可主任技術者)同 第43条第2項、内規2.(1)最大電力500kW未満の需要設備などで、第1種電気工事士や第1種電気工事士試験の合格者など。100kW未満の需要設備のみを直接統括する事業場なら第2種電気工事士なども対象(内規2.(1)②ヘ)
保安管理業務を外部委託し、承認を受けて選任しない施行規則 第52条第2項第四号電圧7,000V以下で受電する需要設備。点検頻度は告示第249号

2つ目は、電気工事士の免状を持つ人が、許可を受けて主任技術者になれる道である。ただし許可は主務大臣の判断で、内規の要件に加えて保安上支障がないと認められる場合に限られる。いわゆる保安法人・電気管理技術者への外部委託は、3つ目の承認を前提とした仕組みだ。

保安規程の作成と届出(電気事業法 第42条)

設置者は保安規程を定め、電気工作物の使用(自主検査を伴うものはその工事)の開始前に届け出る(第42条第1項)。変更したときは遅滞なく届け出る(同条第2項)。保安規程に書く事項は施行規則第50条第3項が列挙しており、「保安のための巡視、点検及び検査に関すること」と並んで「保安についての記録に関すること」が入っている。設置者と従業者は保安規程を守らなければならない(第42条第4項)ので、「保安規程どおりに点検し、記録を残しているか」が法令遵守の判断基準になる。

主務大臣は、保安を確保するため必要があると認めるときは保安規程の変更を命ずることができる(同条第3項)。この命令に違反した場合の罰則が第120条第七号(30万円以下の罰金)である。

点検の頻度はどう決まるか

先に適用範囲を確認しておく。以下の頻度は、保安管理業務を外部委託して施行規則第52条第2項の承認を受ける場合に、委託契約へ定める点検頻度である。同規則第53条第2項第五号が承認の要件として「申請事業場の電気工作物の点検を、別に告示する頻度で行うこと」を求め、その頻度を平成十五年経済産業省告示第二百四十九号第四条が定めている。

自社で電気主任技術者を選任している事業場に、この告示が直接かかるわけではない。その場合の周期は保安規程の定めによる。ただし外部委託の承認要件としてこの数字が使われるため、実務上の周期の目安はこの告示が決めている。第四条のうち、需要設備に関係するのは第六号から第十一号までだ。

需要設備の区分告示第四条の号点検の頻度
小規模高圧需要設備(設備容量が64kVA未満の需要設備。非常用予備発電装置を設置するものを除く。同告示 第三条)第六号 本文三月に一回以上
上記のうち、施行規則第96条第2項第一号ロの登録点検業務受託法人が点検業務を受託しているもの第六号 ただし書六月に一回以上
下表イ〜ニの設備条件すべてに適合する信頼性の高い需要設備で、設備容量が100kVA以下のもの、または低圧受電の需要設備第七号隔月一回以上
第七号イ〜ニに適合し、低圧電路の絶縁状態を適確に監視できる装置を有するもの、または非常時に使用する設備への電路以外の低圧電路に漏電遮断器が設置してあるもの第八号 イ隔月一回以上
第七号イ〜ニに適合し、低圧電路の絶縁状態を適確に監視できる装置を有し、かつ設置場所と異なる場所から適確に点検を実施できるよう措置(第三者認証を取得した機械器具等を使用する措置)したもの第八号 ロ毎月一回以上
第七号イ〜ニに適合し、低圧電路の絶縁状態および負荷を適確に監視できる装置を有し、主遮断装置ならびに保安上の責任分界点から主遮断装置までの間に施設する開閉器・遮断器・配線が適切に更新されているもの第八号 ハ三月に一回以上
第七号に適合する需要設備であって、受電設備がキュービクル式(屋内に設置するものに限る)で、蓄電池設備または非常用予備発電装置がないもの第九号三月に一回以上
第六号から第九号までに該当しない需要設備第十号毎月一回以上
設置、改造等の工事期間中の需要設備第十一号第六号〜第十号にかかわらず毎週一回以上

第七号・第八号・第九号がそろって参照している「イからニまで」の設備条件は次の4つである。回数を減らせるかどうかは、まずここに適合するかで決まる。

記号設備条件
イ柱上に高圧変圧器がないもの。または柱上の高圧変圧器とその支持物が落下しないよう設置され、変圧器の上面を適確に点検できるよう措置したもの
ロ高圧負荷開閉器(キュービクル内に設置するものを除く)に可燃性絶縁油を使用していないもの
ハ保安上の責任分界点またはこれに近い箇所に、地絡保護継電器付高圧交流負荷開閉器または地絡遮断器が設置されているもの
ニ責任分界点から主遮断装置の間に、電力需給用計器用変成器・地絡保護継電器用変成器・受電電圧確認用変成器・主遮断器用開閉状態表示変成器・主遮断器操作用変成器以外の変成器がないもの

読み違えやすいのは、第八号と第九号が参照している範囲の違いである。第八号は「前号のイからニまでの設備条件」だけを引くのに対し、第九号は「第七号に適合する需要設備」と本文ごと引いている。第九号を使うには、設備容量100kVA以下または低圧受電という第七号本文の条件も満たす必要がある。

本稿の頻度は、2026年10月13日に確認した告示本文による。告示全体はその後も改正されている(令和6年告示第91号・第190号、令和7年告示第43号、令和8年告示第127号)が、第四条に付された改正注記は令和4年告示第202号(施行 令和5年3月20日)までである。周期を変えるときは、その時点の告示本文にあたり、主任技術者・産業保安監督部の判断で確かめる。

外部委託には到達時間の要件もある。委託先の主たる連絡場所は「当該事業場に遅滞なく到達し得る場所」にあることが求められ(施行規則第53条第2項第六号)、内規4.(9)はこれを「2時間以内に到達すること」と解釈している。

月次点検:運転したまま何を見るか

月次点検は、設備が運転中の状態において行う点検である(内規4.(7)①ニ)。停電を伴わないため生産や営業を止めずに実施でき、異常の兆しを早い段階で拾う役割を持つ。以下も内規4.(7)が定める外部委託の契約要件で、自社選任の事業場では保安規程の定めによる。

内規4.(7)②は月次点検を、外観点検・測定・問診の3つで組み立てている。外観点検で見るのは、異音・異臭・損傷・汚損等の有無、電線とそれ以外の物との離隔距離、機械器具と配線の取付け状態と過熱の有無、接地線等の保安装置の取付け状態などで、対象は引込設備から受電設備・配電盤・発電設備・蓄電池設備・負荷設備まで及ぶ。

確認する事項行う測定
電圧値の適否および過負荷等電圧、負荷電流測定
低圧回路の絶縁状態B種接地工事の接地線に流れる漏えい電流測定

停電させずに低圧回路の絶縁状態をどう見るか。その答えが、B種接地工事の接地線に流れる漏えい電流の測定である。年次点検の絶縁抵抗測定とは、測っている量が違う。加えて、設置者や従事者への問診で日常巡視等の異常の有無を聞き取り、異常があれば点検する。

低圧電路の絶縁状況を監視できる装置を持つ需要設備では、警報動作電流の設定の上限値は50ミリアンペアとされている(内規4.(7)⑤)。その値以上の漏えい電流の警報を連続して5分以上受信したとき、または5分未満の警報を繰り返し受信したときに原因を調査し、受信の記録を3年間保存する。

告示第四条第八号ロの需要設備は、遠隔地から適確に点検できる場合、月次点検を現地か遠隔地のどちらでも行える。ただし3月に1回以上は現地で行うことと、遠隔で点検する旨を保安規程に定めることが条件である(内規4.(7)②)。

年次点検は毎年停電が必要か

年次点検は、主として停電により設備を停止状態にして行う点検である(内規4.(7)①ニ)。外部委託の場合は1年に1回以上行う(同③イ)。ここまでなら「毎年停電」と読める。

答えはイのただし書にある。信頼性が高く、かつ確認項目(イ)〜(ヘ)と同等と認められる点検が1年に1回以上行われている機器については、停電により設備を停止状態にして行う点検を3年に1回以上にできる。冒頭の「なぜ毎年止めるのか」への答えは、「点検は毎年だが、停電を伴う点検は条件しだいで3年に1回にできる」である。

ただし、これは外部委託の承認に関わる要件で、設置者が単独で運用を変えられるものではない。無停電での年次点検を検討するなら、電気主任技術者または保安法人と協議し、保安規程に反映してから実施する。自社で電気主任技術者を選任している事業場では、点検の種別・周期は保安規程による。

年次点検で確認する6項目(内規4.(7)③ロ)

内規は、次の6項目すべての確認と「その他必要に応じた測定又は試験」を求めている。これらは月次点検の要件に「加えて」行うもので、月次点検の外観点検・測定を省略できるという意味ではない。

内規の項目確認する内容判定の拠りどころ
(イ)低圧電路の絶縁抵抗が規定値以上であること。あわせて、高圧電路が大地および他の電路と絶縁されていること電気設備に関する技術基準を定める省令 第58条(使用電圧300V以下で対地電圧150V以下0.1MΩ/使用電圧300V以下のその他0.2MΩ/使用電圧300V超0.4MΩ)
(ロ)接地抵抗値が規定値以下であること電気設備の技術基準の解釈 第17条
(ハ)保護継電器の動作特性試験、および保護継電器と遮断器の連動動作試験の結果が正常であること内規 4.(7)③ロ(ハ)
(ニ)非常用予備発電装置が常用電源停電時に自動的に起動し、停電復旧後に停止すること。あわせて、発電電圧および発電電圧周波数(回転数)が正常であること内規 4.(7)③ロ(ニ)
(ホ)蓄電池設備のセルの電圧、電解液の比重、温度等が正常であること内規 4.(7)③ロ(ホ)
(ヘ)変圧器、電力用コンデンサー、計器用変成器、リアクトル、放電コイル、電圧調整器、整流器、開閉器、遮断器、中性点抵抗器、避雷器およびOFケーブルが、高濃度ポリ塩化ビフェニル含有電気工作物に該当するかどうかを確認することPCB管理標準実施要領 Ⅱ.2.(1)(内規 4.(7)③ロ(ヘ))

落としやすいのは(ハ)と(ヘ)である。(ハ)は保護継電器の動作特性試験だけでは足りず、遮断器との連動動作試験まで求めている。継電器が正しく動いても、遮断器へ指令が伝わらなければ保護は成立しないからだ。(ヘ)は「試験」ではなく「該当するかどうかの確認」で、対象機器が条文で名指しされている。

遮断器・開閉器の投入・遮断動作の確認、変圧器の絶縁油の確認、高圧ケーブルの劣化診断などは、内規が必須として列挙する項目ではなく「その他必要に応じた測定又は試験」として行われる。点検記録の上で必須項目と追加項目を分けておくと、点検範囲を巡る認識のずれが起きにくい。

絶縁抵抗の基準値(電技省令第58条)

電路の使用電圧の区分最低絶縁抵抗値
300V以下(対地電圧150V以下)0.1MΩ以上
300V以下(その他の場合)0.2MΩ以上
300V超0.4MΩ以上

区分の大枠は使用電圧で、0.1MΩと0.2MΩの切り分けだけが対地電圧である。これは法令上の最低値で、上回っていれば劣化していない、という意味ではない。たとえば新設時に10MΩあった回路が数年後に1MΩまで下がっていても、0.4MΩは上回るので判定は「良」になる。下がり方そのものが劣化の進み具合を表すので、前回・前々回の値と並べて見る。

停電して測る作業では、開路した開閉器の施錠または表示、ケーブルやコンデンサーの残留電荷の放電、高圧なら検電器具での停電確認と短絡接地が、労働安全衛生規則第339条で事業者に求められている。

一段深い理解:0.1・0.2・0.4MΩはどこから来たか

省令第58条の値は、オームの法則で整理すると覚えやすい。漏れ電流を1mAとして逆算すると、100V÷0.001A=0.1MΩ、200V÷0.001A=0.2MΩ、400V÷0.001A=0.4MΩとなり、各区分の値とそろう。停電できない電路で絶縁抵抗測定の代わりに認められている基準が「漏えい電流1mA以下」(電気設備の技術基準の解釈 第14条第1項第2号)であることとも数字が合う。

ただし省令の条文はこの導き方を示していない。根拠ではなく、覚え方の目安として扱う。

点検は何を防いでいるか:令和6年度の事故統計から

経済産業省電力安全課とNITE(製品評価技術基盤機構)がまとめた令和6年度の電気保安統計によると、自家用電気工作物を設置する者の電気事故は459件で、そのうち需要設備が244件、約53.2%を占めた。感電死傷事故は44件で、前年度の38件から増えている。

需要設備から電力会社の配電線へ停電を広げてしまう「波及事故」は、詳報の対象だけで193件あった。地絡・短絡の原因を見ると、保守不完全が56件、自然劣化が51件で、合わせて107件と半数を超える。製作不完全は14件、施工不完全は4件、作業者の過失は27件だった。

壊れた場所で最も多いのはCVTケーブルで、193件のうち94件、ほぼ半数を占める。区分開閉器以外の機器が壊れて波及した150件のうち55件は、区分開閉器そのものが設置されていなかった。告示第249号が、点検回数を減らす条件(第七号ハ)に責任分界点の地絡保護継電器付き開閉器を挙げていることと、この数字は符合する。

同じ統計の重大事故10件の中には、2024年9月に電気設備の点検作業中、作業員が給電ボックスのアクリル板を外して手を入れ、充電部に触れて感電した事例がある。点検は事故を防ぐ作業であると同時に、充電部に最も近づく作業でもある。施設担当者が「未確認」の欄を自分で開けて埋めてはいけない理由はここにある。

一段深い理解:15年たっていない高圧ケーブルが、なぜ波及事故を起こすのか

経済産業省は2025年6月27日、「更新推奨時期に満たない高圧ケーブル」の注意喚起を出した。比較的新しい高圧ケーブルが絶縁破壊して波及事故を起こす例が増え、高圧ケーブル起因の波及事故に占める製造後15年未満のものの割合が、令和元年度から5年度まで増加傾向にあるという。原因は、NITEなどの調査で「水トリー現象(外導トリー)」と確認された。

経産省は同じ文書で、高圧ケーブルの更新推奨時期を15年として管理している事業場が多いと指摘している。その15年は、日本電線工業会の2017年12月版の資料などによるものだ(注意喚起の注3)。同会の2024年8月版は、高圧CVケーブルの更新推奨時期を、水の影響がある場合は10〜20年、ない場合は20〜30年としている。

水トリーは、架橋ポリエチレンの絶縁体に水と電界が作用して細かな亀裂ができ、樹の枝のように伸びていく現象である。「15年で更新」という一律の管理では、水の多い場所のケーブルは間に合わないことがある。

同じ注意喚起は、外部半導電層を押出成形したE-Eタイプは耐水トリー性が高く、テープ巻きのE-Tタイプの約1.11倍の単価だと比較している。年次点検の必須6項目のうち(イ)は高圧電路が大地から絶縁されていることの確認で、高圧ケーブルの劣化診断までは名指ししていない。どこまで測るかは、保安規程と委託先との取り決めで決まる。経産省は、劣化の兆候があれば更新推奨時期に満たなくても速やかに更新するよう呼びかけている。

現場で間違いやすい点

  • 「点検はしている」と「証明できる」は別物: 保安規程には記録に関する事項を定める(施行規則第50条第3項第七号)。絶縁監視装置の警報受信記録は3年保存(内規4.(7)⑤)、絶縁用保護具の自主検査記録も3年保存(安衛則第351条第4項)と、記録ごとに保存の決まりがある。担当者の異動で記録が途切れないよう、保管場所と期間を保安規程の記載と照らして引き継ぐ
  • 「毎年停電」は義務ではない: ただし停電点検を3年に1回以上にできる緩和は外部委託の承認に関わる要件で、設置者だけでは決められない。委託先と協議して保安規程に反映する
  • 4年に1回の調査は低圧受電の話: 電力会社等の調査(第57条)は一般用電気工作物が対象で、高圧受電の設備には当たらない
  • 追加項目と必須項目を混ぜない: 高圧ケーブルの劣化診断などは「必要に応じた測定又は試験」で、何をするかは事前に取り決める

低圧受電設備と労働安全衛生法の点検義務

低圧で受電する一般用電気工作物は自家用電気工作物に当たらないが、労働者を使う事業場には別の義務がある。労働安全衛生規則第351条第1項は、同規則第348条第1項各号の絶縁用保護具等(絶縁用保護具・絶縁用防具・活線作業用装置・活線作業用器具)について、6月以内ごとに1回、定期に絶縁性能の自主検査を行うよう義務付けている。

6月を超えて使わないものはその期間は対象外だが、使用を再び始める際に自主検査を行う(同条第2項)。異常を認めたときは、補修その他必要な措置を講じた後でなければ使えない(同条第3項)。記録は、検査年月日・検査方法・検査箇所・検査の結果・検査を実施した者の氏名・補修等の措置の内容の6項目を残し、3年間保存する(同条第4項)。

非常用の照明装置などの建築設備は、建築基準法第12条第3項に基づく定期検査・報告の対象になる場合がある。対象と周期は政令・特定行政庁の指定や用途・規模で異なるため、所管の特定行政庁に確認する。電気設備点検と時期を合わせると、停電作業をまとめられる場合がある。

年次点検の段取り

段階やること根拠・メモ
事前停電日程の確定と、テナント・製造ライン等への通知止められない設備と復電手順の責任者を決めておく
事前委託先との作業範囲・役割分担、必須項目と追加項目の確認内規4.(7)③ロと「必要に応じた測定又は試験」
事前前回点検記録・測定値の用意絶縁抵抗は前回値との比較に使う
点検中絶縁抵抗測定、接地抵抗測定電技省令第58条、電技解釈第17条
点検中保護継電器の動作特性試験と遮断器との連動動作試験内規4.(7)③ロ(ハ)
点検中非常用予備発電装置の自動起動・停止、蓄電池のセル電圧・比重・温度同(ニ)(ホ)
点検中高濃度PCB含有電気工作物への該当有無の確認同(ヘ)
点検後測定値の記録、前回比較、不良箇所の改修計画と次回日程保安規程の記録に関する定め

設備更新を検討するタイミング

年次点検の結果は、更新か修繕かを判断する材料になる。次のような状態が重なってきたら、更新の検討を委託先と始める段階である。

  • 絶縁抵抗値が年々下がり続け、基準値に近づいている
  • 高圧ケーブルが、水の影響のある場所で10年を超えている(日本電線工業会の更新推奨時期は水の影響ありで10〜20年)
  • 保護継電器や遮断器が製造中止品になり、交換部品の手配が難しくなっている
  • 同じ箇所の不良修繕を点検のたびに繰り返している

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よくある質問

うちの建物は高圧受電です。法定点検で、具体的に何が義務になっていますか?

高圧で受電する需要設備は電気事業法上の自家用電気工作物にあたり、設置者の義務は3つある。保安規程を定めて使用開始前に届け出ること(第42条第1項)、主任技術者を選任すること(第43条第1項)、選任・解任を届け出ること(第43条第3項)である。点検の周期そのものは法律の条文ではなく、届け出た保安規程が基準になる。保安管理業務を外部委託する場合は、経済産業省の告示が定める頻度で点検することを委託契約に定めることが承認の要件になる(施行規則第53条第2項第五号)。

点検をしていなかったら、罰金はいくらになりますか?

主任技術者を選任しなかった場合は300万円以下の罰金(電気事業法第118条第七号)、保安規程や主任技術者の選任・解任の届出をしなかった、または虚偽の届出をした場合は30万円以下の罰金(第120条第一号)である。点検の未実施そのものに金額が定められているわけではなく、保安規程を守る義務(第42条第4項)に反する状態として扱われ、保安規程の変更命令(第42条第3項)につながりうる。命令に違反した場合は30万円以下の罰金(第120条第七号)になる。

年次点検のたびに全館停電するのですが、毎年止めないといけないのですか?

外部委託の場合、内規4.(7)③イは年次点検を1年に1回以上としつつ、ただし書で、信頼性が高く、確認項目と同等の点検が1年に1回以上行われている機器は、停電により設備を止めて行う点検を3年に1回以上にできるとしている。年次点検を毎年行うことと、毎年停電させることは同じではない。ただし外部委託の承認に関わる要件なので、設置者だけで運用を変えることはできない。電気主任技術者または保安法人と協議し、保安規程に反映してから実施する。

点検が毎月の建物と隔月の建物があるのはなぜですか?

外部委託の点検頻度は平成十五年経済産業省告示第二百四十九号第四条が、設備の条件ごとに決めている。責任分界点に地絡保護付きの開閉器がある、柱上に高圧変圧器がない(ある場合は落下防止と上面点検の措置がある)などの条件(第七号イ〜ニ)を満たし、設備容量100kVA以下か低圧受電なら隔月一回以上、どれにも当たらなければ毎月一回以上、64kVA未満の小規模高圧需要設備は三月に一回以上(登録点検業務受託法人が点検業務を受託していれば六月に一回以上)、工事期間中は毎週一回以上である。自社で主任技術者を選任している事業場は保安規程の周期による。

電気主任技術者の免状を持っている人がいないと、自家用電気工作物は持てませんか?

道は3つある。免状を持つ人を選任する(第43条第1項)、主務大臣の許可を受けて免状のない人を選任する(第43条第2項)、保安管理業務を外部に委託して承認を受け選任しない(施行規則第52条第2項)、である。許可の基準は内規2.(1)にあり、最大電力500kW未満の需要設備なら第1種電気工事士など、100kW未満なら第2種電気工事士なども対象になる。外部委託は電圧7,000V以下で受電する需要設備が対象である。

絶縁抵抗はいくつあれば合格ですか?

電気設備に関する技術基準を定める省令第58条は、低圧電路の絶縁抵抗を、使用電圧300V以下で対地電圧150V以下なら0.1MΩ以上、300V以下のその他は0.2MΩ以上、300V超は0.4MΩ以上と定めている。これは下回ってはいけない最低値で、劣化していないことの証明にはならない。前回・前々回の測定値と並べて、下がり方を見ることで、劣化の進み具合が分かる。

参考文献・出典

確認・変更の記録

出典照合日: (AIによる照合補助)

出典11件すべてに到達。電気事業法(令和8年8月3日施行版)・同施行規則(令和8年4月1日施行版)・電技省令・労働安全衛生規則・建築基準法はe-Gov法令APIの本文で、第38条第4項、第42条、第43条第1項〜第3項、第118条第七号、第120条、施行規則第50条第3項・第52条第2項第四号・第53条第2項第五号・第六号・第96条第2項第一号、電技省令第58条、安衛則第339条・第348条・第351条、建基法第12条第3項を確認。内規は経産省PDFの本文で2.(1)の許可基準(500kW未満・第1種電気工事士等、100kW未満は第2種電気工事士等)、4.(7)③イのただし書、⑤の50mA・3年保存、遠隔点検の3月に1回現地、4.(9)の2時間以内を確認。令和6年度電気保安統計は本文の記述(459件・需要設備244件・感電死傷44件・重大事故の概要)と、第14表をPDFの画像で目視して193件・43件/150件・保守不完全56件・自然劣化51件・CVT 94件・区分開閉器未設置55件を読み取った(表の他の列の内訳は本文に使っていない)。経産省の注意喚起(2025年6月27日)と日本電線工業会の更新推奨時期(水の影響あり10〜20年・なし20〜30年)を確認。告示第249号は2026-10-13にMETIのPDFで第三条・第四条(第六号ただし書、第七号イの柱上変圧器の措置を含む)と改正履歴(令和8年告示第127号まで)を確認。第四条の改正注記は令和4年告示第202号まで。1mAからの逆算は覚え方の目安で、省令の根拠ではない。冒頭の場面は想定例

個別設備の適合判定・技術者による承認を示すものではありません。

この内容は、第二種電気工事士ではこう問われる

竣工検査の4つ——目視点検・絶縁抵抗測定・接地抵抗測定・導通試験——は、学科試験では「どの検査で何を確かめ、どの測定器を使うか」の組合せで問われます。停電して測る組と通電して測る組、という軸で整理してあります。

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型番不明でもOK

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