新築住宅の電気工事が終わった。担当者は施主に急かされ、ブレーカーを入れて照明とコンセントの動作確認を先に済ませた。「ちゃんと点くし、これで完了ですよね」。そばで見ていた先輩が、その言葉に顔色を変えた。
まだ絶縁抵抗も接地抵抗も測っていなかったからだ。実際、あとから測り直してみると、対地電圧100Vの回路なのに絶縁抵抗は0.08MΩしかなかった。基準の0.1MΩに届いていない。
動作確認では何の異常もなかったのに、なぜ数値で見ると基準を割っていたのか。このトピックを読み終えるころには、4つの検査がそれぞれ何のためにあるのか、迷わず説明できるようになっている。
電気工事が完了したら、使用を開始する前に「竣工検査」を行い、施工が安全基準どおりに行われているかを確認する。竣工検査は一般的に、次の順序で進められる。
- 目視点検: 電線の種類・太さが適切か、配線方法が施設場所に適合しているか、器具の取付状態や接続部に緩み・損傷がないかなどを、実際に目で見て確認する
- 絶縁抵抗測定: 絶縁抵抗計(メガー)を使い、電路の絶縁性能が基準値を満たしているかを確認する
- 接地抵抗測定: 接地抵抗計(アーステスタ)を使い、接地(アース)が基準値どおりに取れているかを確認する
- 導通試験: 回路計(テスタ)を使い、配線の断線や誤配線(結線ミス)がないかを確認する
この順序は試験対策サイトで広く紹介されている一般的な流れであり、試験では「順番そのもの」よりも、それぞれの検査で何を確認し、どの測定器を使うのかという個別の知識が問われることが多い。
冒頭の住宅で先輩がなぜ青ざめたのか、そして絶縁抵抗測定・接地抵抗測定・導通試験がそれぞれ具体的に何を確認する検査なのかは、以降のトピックで1つずつ見ていく。
どの試験に・どの計器を・どんな状態で — 1枚にまとめる
個別のトピックで学んだ知識は、試験ではしばしば「組合せ」の形で問われる。絶縁抵抗は停電だったか通電だったか、接地抵抗で測るのはどの極だったか、導通に使うのは検電器だったか回路計だったか——1つずつは知っているのに、並べられると混線する。この表を、迷ったときに戻ってくる場所にしてほしい。
| 確認したいこと | 試験・測定 | 使う計器 | 電路の状態 | 合格の目安 |
|---|---|---|---|---|
| 絶縁性能 | 絶縁抵抗測定 | 絶縁抵抗計(メガー)=直流で測る | 停電(無充電) | 0.1/0.2/0.4MΩ以上(対地電圧の区分による) |
| 接地の良否 | 接地抵抗測定 | 接地抵抗計(アーステスタ)=交流で測る | 補助接地極2本をE→P→Cの順・約10m間隔で打つ | D種は100Ω以下(高速形漏電遮断器付きなら500Ω以下) |
| 断線・誤配線 | 導通試験 | 回路計(テスタ)の抵抗レンジ | 停電 | 設計どおりに導通・非導通が切り替わる |
| 電圧の有無 | 検電 | 検電器 | 通電(充電の有無そのものを確認) | 音と光で有無のみ。数値は出ない |
| 電圧値・極性 | 電圧測定 | 回路計(テスタ)の交流電圧レンジ | 通電 | 定格どおりの電圧・正しい極性 |
| 漏れ電流 | 漏れ電流測定 | クランプ形漏れ電流計(クランプ形電流計の漏れ電流用) | 通電(使用電圧を加えたまま) | 1mA以下 |
丸暗記に見えるが、実は軸が1本通っている。絶縁抵抗と導通は、計器が自前の電源で電気を送り込んで電路の性質を測る試験だ。相手が充電されていたら測定はでたらめになり、計器の破損や感電にもつながる。だから必ず停電。一方、検電・電圧測定・漏れ電流はいま流れている電気そのものを見る試験だから、通電が前提になる。この軸の外にいるのが接地抵抗測定で、測る相手は電路ではなく接地極と大地。だから答え方も「停電か通電か」ではなく「補助接地極を打つ」になる。学科試験でも、電路の状態・基準値と比べる接地極・導通試験に使う計器という3点をまとめて埋めさせる形式が、繰り返し登場している。
竣工検査の外にも、名前を問われる計器がある
学科試験の測定器問題には、竣工検査の4つに登場しない計器も決まった顔ぶれで出てくる。問われ方はいつも同じだ。名前と「測るもの」の組合せが並び、1つだけ入れ替えられている。
| 測定器 | 測るもの | 使う場面 |
|---|---|---|
| 検相器 | 三相回路の相順(相回転) | 三相電動機をつなぐ前に、回転方向を決める相の並びを確認する |
| 電力計 | 電力(W) | いまこの瞬間に消費している電力を測る |
| 電力量計 | 電力量(kWh) | 時間をかけて積み上がった使用量を測る。各家の引込口付近に付いているメーターがこれ |
| 周波数計 | 周波数(Hz) | 電源の周波数を確認する |
| 照度計 | 照度(lx) | 照明設備の明るさが設計どおり出ているかを確認する |
| 回転計 | 回転速度(min⁻¹) | 電動機の回転の速さを測る |
入れ替えの筆頭候補が、電力計と電力量計だ。名前は1文字違いでも、瞬間の値(W)と積算の値(kWh)はまったく別の量で、計器も別物になる。もう1つの候補が検相器と回転計。どちらも三相電動機のそばで使う計器だが、検相器が見ているのは回転の速さではなく、相の並び順のほうだ。
計器は、写真からも当てられるようにしておく
名前と「測るもの」の対応を覚えても、写真1枚を見せて用途を答えさせる形式では手が止まる。よく出る計器の外観を、言葉にしておきたい。
| 計器 | 外観の決め手 |
|---|---|
| 検相器(相回転計) | 本体から3本の色分けされたリード線(赤・白・青など)が出て、先端がワニ口クリップ。本体には回転方向を示す窓や矢印があり、正相・逆相のランプが並ぶ |
| 絶縁抵抗計(メガー) | 目盛がMΩ。測定電圧(125V/250V/500V)の切替つまみと、押している間だけ測定するボタンを持つ |
| 接地抵抗計 | 本体のほかに補助接地棒2本とリード線3本(E・P・C)が一式で付く。この付属品が最大の目印 |
| クランプメーター | 開閉する輪(クランプ部)が本体上部に付く。回路を切らずに挟むための形 |
| 回路計(テスタ) | 中央に大きなレンジ切替のロータリースイッチ。棒状のテストリードが2本 |
紛らわしいのが接地抵抗計で、こちらもリード線が3本(E・P・C)出ている。区別は補助接地棒の有無だ。地面に打ち込む金属の棒が一緒に写っていれば接地抵抗計、ワニ口クリップだけなら検相器と読む。
「点いた」で終わらせない人から、検査を任される
竣工検査は、資格を取ったあとに最初に任されやすい仕事のひとつだ。配線を引く工程は経験がものを言うが、決められた4つを決められた測定器で確認し、数字を記録して報告する作業は、手順さえ知っていれば新人でも担える。しかも記録が残る仕事なので、丁寧にやったことがそのまま評価として残る。
今日できるのは、自宅の分電盤を開けて回路を数えてみることだ。主幹の下に分岐ブレーカーが何個並び、それぞれに何と書かれているか。台所、エアコン、洋室。ラベルを写真に撮って一覧にすると、「この家を検査するなら何回路を測ることになるのか」が見えてくる。検査は測定器の使い方の前に、対象の全体像をつかむところから始まる。
見落としがちなのは、竣工検査で覚えたこの4つが、そのまま定期点検の型になっていることだ。新築のときだけの儀式ではない。太陽光、蓄電池、EV充電設備のように住宅側に増えていく設備は、いずれも設置したあと年月をかけて劣化していく。点検すべき対象は、建てた数・付けた数だけ積み上がっていく性質のものだ。この4つを体で覚えている人の仕事は、その先に続いている。
冒頭の0.08MΩという数字の意味、答え合わせは理解度チェックの最後の問題でしてみよう。