在庫確認・見積は今すぐ フォームで依頼する 写真の添付もOK / 24時間受付
規格・法令安全対策現場実務

非常放送設備の配線とは|耐熱電線の使用義務、音量調整器と3線式配線で非常時に強制的に最大音量になる仕組み

読了目安: 11分 編集: 電材サーチ編集部(編集・出典ポリシー

改修工事の打ち合わせで、天井のレイアウト変更にあわせてスピーカーを2台増やす話になった。担当者は迷わず言った。「配線は今のBGM用と同じでいいですよね、延長するだけなので」。その場にいた誰も、特に異論を挟まなかった。天井に空いている丸い穴、そこから覗く白いコーン型のスピーカー、配線を引けば音が出る——それだけの話に見えた。

指摘が入ったのは、図面を消防設備士に見せた後だった。そのスピーカーは、館内のBGMだけでなく、自動火災報知設備と連動して避難誘導のアナウンスを流す非常放送設備の一部だったのである。同じ天井、同じ形のスピーカー、しかし配線の中身も、電線の種類も、まったく別の規格に従っていた。

非常放送設備とは何か——避難誘導のための消防用設備

非常放送設備は、消防法施行令に基づく警報設備の一つで、火災発生時に建物内の人に音声で避難誘導を行うための設備だ。起動装置・スピーカー・増幅器・操作部・電源・配線で構成され、自動火災報知設備の感知器が作動すると、まず「ただいま○階の火災感知器が作動しました」という感知器発報放送が流れ、火災の発生が確認されると「火事です。火事です」という切迫感のある火災放送に切り替わる。この二段階の放送は消防庁告示で音声の構成まで細かく規定されており、現場の判断や放送設備メーカーの裁量で自由に変えられるものではない。

スピーカー自体にも規格がある。音圧の強さによってL級(92デシベル以上)・M級(87〜92デシベル未満)・S級(84〜87デシベル未満)に区分され、放送区域の面積が広いほど音圧の強いスピーカーが要求される。100平方メートルを超える区域はL級、50〜100平方メートルはL級またはM級、50平方メートル以下ではM級またはS級というように、部屋の広さと騒音環境に応じてスピーカーの性能そのものが選び分けられている。冒頭の会議室の天井に付いていたのは、この体系の中の1台だった。

なぜ耐熱電線が必要か——放送を止めないための配線

避難誘導の放送は、火が出た瞬間だけ鳴ればよいわけではない。人が安全な場所まで移動し終えるまで、放送は鳴り続けなければならない。ということは、配線自体が火にあぶられている最中も、電気的な回路として生きていなければならないということになる。

消防法施行令別表に定められた消防用設備等の配線には、耐火配線・耐熱配線という区分がある。一般的な運用では、非常電源から増幅器(アンプ)までの配線は耐火配線、増幅器からスピーカーや遠隔操作器までの配線は耐熱配線とする扱いが取られている。耐火配線は建物の主要構造部に埋設するなど、より過酷な条件下でも回路を維持する施工方法が求められる一方、耐熱配線は不燃性のダクトや耐火性能を持つパイプシャフトへの隠蔽など、耐熱電線(HP)を用いた施工でまかなわれる。耐熱電線は、建築構造部材の標準加熱曲線の2分の1に準じた温度条件(15分間で380℃に到達する加熱)に耐える性能で認証されたもので、電線総合技術センター(JECTEC)の認定品を使うことが前提になっている。

冒頭の担当者が延長しようとしていたBGM用配線は、この耐熱性能を持たない一般の電線だった。延長した区間だけが火災時に先に機能を失う——放送設備の設計上、これは避けるべき弱点そのものだった。

スピーカー回路の配線方式——音量調整器とハイインピーダンス方式

耐熱電線を使うことは、いわば「燃えても切れない」ための前提条件にすぎない。もう一段深い設計判断は、複数のスピーカーをどうつなぐかという配線方式に現れる。

非常放送設備のスピーカーは、多くの場合ハイインピーダンス方式で配線される。増幅器の定格出力時の音声信号電圧を100Vに統一し、各スピーカーには内部にトランスを内蔵させて、必要な音量に応じたW数(インピーダンス)を選ぶ方式だ。この方式の利点は、配線の延長によるロスが少なく、長距離配線でも多数のスピーカーを並列に接続できる点にある。増幅器の定格出力と、接続するスピーカー等の合成インピーダンスは、決まった算定式で整合させる(インピーダンスマッチング)必要があり、増設のたびにこの計算をやり直さないまま台数だけを増やすと、増幅器の出力容量を超えて機能が低下する恐れがある。

このハイインピーダンス方式の配線に、音量調整器(アッテネーター)を割り込ませることがある。会議室や事務室のように、業務放送やBGMとしても使うスピーカー系統では、利用者が音量を調整できたほうが使い勝手がよいからだ。ところが、ここで一つの矛盾が生まれる。音量を絞れる回路は、当然ながら音量を絞ったまま放置される可能性がある回路でもある。誰かが会議中にボリュームを最小まで下げたスピーカーの下で、火災が起きたらどうなるのか。

音量調整器を非常放送では強制的にバイパスする仕組み——3線式配線の正体

この矛盾に対する答えが、消防法施行規則第25条の2第2項第3号ニに定められた規定である。「音量調整器を設ける場合は、三線式配線とすること」。条文はそっけないが、中身は理にかなっている。

通常の2線式配線では、増幅器からの信号線1本と共通線1本でスピーカーに音を送る。ここに音量調整器を挟むと、音量を絞る・上げるという操作は、この1本の信号線に対して行われることになる。つまり、音量調整器が絞られていれば、非常放送の信号もろとも絞られてしまう。

3線式配線では、増幅器からスピーカー側の中継端子に向けて、信号線を2本引く。業界の技術ガイドラインでは、この2本にそれぞれ「通常(N)」「緊急(R)」という端子名が与えられている。通常放送・業務放送の音声は、音量調整器の回路を経由する「N」側の線を通ってスピーカーに届く。ボリュームを絞れば、音は小さくなる。ところが非常放送が起動すると、信号は音量調整器を経由しない「R」側の線を通って、スピーカーへ直接出力される。共通線「C」を介した回路のうち、音量調整器を通過するのはN側だけであり、R側は最初から音量調整器の存在しない、絞りようのない回路として配線されている。

つまりこの3本の配線は、同じスピーカーに向かって、二つの矛盾する要求を同時に満たすために引かれている。「利用者が普段は好きな音量に調整できること」と、「非常時には誰の意思にも関係なく最大音量で鳴ること」。この二つは、1本の配線の上では両立し得ない。3線式配線は、音量を絞れる経路と、絞りようのない経路を、あらかじめ物理的に分けておくことで両立させている。音量調整器のツマミがどの位置にあっても、非常放送の音圧には一切影響を与えない——これが技術基準に明記された性能要件であり、単なる設計上の工夫ではなく、満たすべき仕様そのものである。

系統区分——一つの回路の異常が、他の階を巻き込まないために

配線の役割分担は、N・R・Cの3本だけにとどまらない。増幅器からスピーカーまでの配線は、火災の際、ある報知区域(一つの警報が同時に鳴る範囲)の配線が短絡または断線しても、他の報知区域への火災の報知に支障が出ないように系統を分けて設ける、という運用基準がある。各階の配線が短絡しても機能に異常を生じないこと、そして短絡した旨を表示できることも、告示に定められた性能要件の一つだ。

これは、送り配線で数珠つなぎにされることの多い放送系統において、特に意味を持つ。もし全館のスピーカーが1本の系統でつながっていたなら、どこか1か所の配線トラブルが、建物全体の放送機能を道連れにしかねない。実際には、報知区域ごとに系統を分け、必要に応じて回路分割装置で系統をさらに細分化することで、ある階のスピーカー配線が火元の熱で短絡しても、他の階の避難誘導放送は生き続けるように設計されている。冒頭のBGM用配線を安易に延長する発想が危ういのは、耐熱性能の欠落だけでなく、この系統の独立性を崩しかねない点にもある。

増設・改修時の注意点

  • 配線方式(2線式か3線式か)を先に確認する。音量調整器を新設する場合は、既設が2線式であれば3線式への配線変更が必須になる。
  • 増幅器の定格出力と合成インピーダンスを計算し直す。スピーカーを増設するたびに、既存分と新設分を合わせた合成インピーダンスが増幅器の出力容量に収まっているかを確認する。
  • 耐熱電線・耐火電線の区分を図面どおりに保つ。増幅器〜操作部間、増幅器〜スピーカー間で配線の区分が異なるため、延長・分岐する箇所ごとに使用すべき電線の種別を確認する。
  • 報知区域・系統の独立性を崩さない。増設したスピーカーをどの系統に接続するかによって、短絡時に影響が及ぶ範囲が変わる。
  • 工事後は非常放送を模擬起動し、音量調整器がある系統でも最大音量で鳴動するかを確認する。この動作確認は、消防設備士など有資格者が行うべき領域である。

非常放送設備の増設・改修に伴う耐熱電線・スピーカー・増幅器の選定についてご相談があれば、下記からお問い合わせいただきたい。

見積もり依頼をする →

よくある質問

非常放送設備のスピーカー配線は、一般のBGM用スピーカー配線とそのまま兼用・延長してよいですか?

見た目が同じ配線に見えても、兼用・延長はできません。非常放送設備のスピーカー回路は消防法施行規則に基づく専用の配線基準(耐熱電線の使用、音量調整器を設ける場合の三線式配線など)に従う必要があり、一般のBGM用配線とは電線の種別・端子の構成が異なります。増設・改修で天井にスピーカーを追加する場合は、既設の非常放送設備の系統に、同じ基準を満たす配線で接続する必要があります。

音量調整器(アッテネーター)を後から追加した場合、配線工事はどう変わりますか?

音量調整器を設ける場合、消防法施行規則第25条の2第2項第3号ニにより配線を三線式にすることが義務付けられています。既設が2線式(アンプの出力を1本の信号線と共通線だけでスピーカーへ送る配線)であれば、音量調整器を追加するタイミングで3線式への配線のやり直しが必要になります。2線式のまま音量調整器だけを割り込ませると、非常放送時にボリュームを無視して最大音量に切り替える機能が働かない可能性があります。

スピーカーの増設で、既設の系統に割り込ませる形で新しいスピーカーをつないでもよいですか?

増幅器の出力容量(定格出力)と、既存スピーカーに新設分を加えた合成インピーダンスが整合しているかどうかを確認する必要があります。ハイインピーダンス方式のスピーカーは並列に何台も接続できる方式ですが、無制限に増設できるわけではなく、増幅器の定格出力を超えて接続すると出力不足や機能低下につながる可能性があります。増設前に、増幅器の型番・定格出力と、既設スピーカーの合計W数を照合してから発注することをおすすめします。

非常放送設備の配線点検で、特に見落とされやすい点は何ですか?

音量調整器を経由する回路が、非常放送時に実際に最大音量へ切り替わるかどうかの動作確認です。ボリュームを最小に絞った状態で非常放送を模擬起動し、その状態でもスピーカーが必要な音量で鳴動するかを確認する項目があり、結線を誤ると非常放送時にも音量が絞られたままになる可能性があります。あわせて、増設・改修工事の直後は、各階の配線区分(耐熱配線・耐火配線)が図面どおりに保たれているかも確認すべき点です。点検・確認作業は消防設備士など有資格者が行う領域です。

非常放送設備の配線に使う電線は、どこで購入できますか?

松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)の見積フォームからお見積り・ご購入いただけます。耐熱電線(HP)・耐火電線(FP-C)の品種・サイズ・心数・数量に加えて、既設設備が2線式か3線式か、増幅器の型番が分かれば、整合性を含めてご相談いただけます。

あわせて読みたい

関連する非常放送設備・配線・耐熱電線・音量調整器・3線式の品種・型番をお探しですか?
電材サーチでは、メーカー横断で目的の型番を素早く見つけ、そのまま見積もりを依頼できます。

対象の電材・品種を検索する →

参考文献・出典

QUOTATION SIGNAL

電設資材・FA部品の無料見積もり

仕入れコスト削減、廃盤代替品の選定、お急ぎの在庫確認まで。型番や数量を送っていただくだけです。 手書きメモや型番リストの写真・PDFでも依頼できます。

SPONSOR / AD

Google AdSense 広告配信エリア

(AdSense管理画面で広告ユニットを作成し、実際のslot値に差し替えるとここに本番広告が挿入されます)

AIと状況を整理してから相談する

普段お使いのChatGPT・Gemini・Perplexity等に貼り付けられる質問文をコピーできます。 自分の状況を伝えて相談すると、最後に電材サーチへの見積依頼文もまとめてもらえます。