制御盤の更新工事で、古いインバータを撤去する。銘板には「FRN0.1E2S-2J」。型式から適用モータ容量を読み取ろうとカタログの形式一覧を開くと、この型式の行に並んでいるのは0.1kWという数字だけではない。HHD仕様なら0.1kW、HND仕様なら0.2kW——同じ型式に、2つの数字が併記されている。型式を写し間違えたわけでも、印刷ミスでもない。この1台は、パラメータの設定次第で0.1kW用にも0.2kW用にもなる本体なのだ。
型式の文字列がすべてを確定させているように見えて、実は確定させていない部分がある。富士電機のFRENICシリーズは、公式カタログの「形式の見方」という図に、シリーズ名・標準適用モータ容量・適用分野・開発系列・構造・入力電源・仕向先という階層で型式を分解して示している。この図と、FRENIC-MEGA(G2)・FRENIC-Mini(C2)・FRENIC-Ace(E2)それぞれの形式一覧に基づいて、型式のどこまでが記号で決まり、どこから先が別の仕様選択に委ねられているのかを一段ずつ確認する。
型式の骨格——7つの箱に分けて読む
公式の形式説明図は、FRENIC-MEGA(G2)の型式を「FRN・0.75・G・2・S − 2・J」という並びで示している。頭のFRNはシリーズ名で、FRENICシリーズであることを表す固定文字だ。続く0.75は標準適用モータ容量(この例では0.75kW)で、ここは製品ごとに変わる数字が入る。
その次のGは適用分野を表し、高性能多機能形——つまりFRENIC-MEGAというシリーズそのものの識別記号になっている。続く2は開発系列で、現行世代が2シリーズであることを示す。ハイフンの手前にあるSは構造を表す記号で、標準形(ベーシックタイプ)を意味する。ハイフンの後ろに続く2は入力電源(3相200V系列)、最後のJは仕向先(日本)だ。
7つの箱のうち、製品によって変わるのは標準適用モータ容量・構造・入力電源の3箇所で、残りの4箇所(シリーズ名・適用分野・開発系列・仕向先)はシリーズと世代が決まった時点でほぼ固定される。型式を見て最初に確認すべきは、この固定される4箇所と、選択肢がある3箇所を切り分けることだ。
標準適用モータ容量の対応表をよく見ると、素直に1対1で対応していない箇所が一つだけある。FRENIC-MEGAの形式説明図では、容量記号「630」に対して「630kW,710kW」という2つの数値が並んでいるのだ。実際の形式一覧を確認しても、3相400V系列の最上位はFRN630G2S-4Jの630kWまでで、710kW専用の型式は別途起こされていない。同じ本体の枠の中に、630kWとして使う場合と710kWとして使う場合の両方が収まっているということになる。冒頭のHHD・HND仕様の話と根は同じで、型式の容量記号は「その本体が対応できる上限」を示しているのであって、常に一意のモータ容量を指すとは限らない。
G・C・Eが分けているのは、シリーズそのものの立ち位置
適用分野の1文字は、FRENIC-MEGA以外の2シリーズでも同じ位置に現れる。FRENIC-Mini(C2)ではCが「コンパクト形」、FRENIC-Ace(E2)ではEが「一般産業用、高性能、多機能形」と定義されている。型式の骨格自体は3シリーズとも「FRN・容量・シリーズ記号・開発系列・構造・電源電圧・仕向先」という同じ順序を保っているため、この1文字さえ押さえれば、型式のどの部分がシリーズを特定しているかで迷うことはない。
ただし、同じ骨格を共有しているからといって、3シリーズが同じ製品を容量帯だけ変えて並べているわけではない。公式の形式一覧を突き合わせると、標準適用モータ容量の上限がシリーズごとにまったく違う。FRENIC-MEGAは3相400V系列で0.4kWから630kWまで型式が存在し、大容量帯の主力という位置づけがそのまま裏付けられる。一方でFRENIC-Aceは0.1kWから22kWまで、FRENIC-Miniはさらに絞られて0.1kWから15kWまでしか型式が用意されていない。同じ「0.4」という容量記号がFRN0.4G2S-2J・FRN0.4C2S-2J・FRN0.4E2S-2Jのどれにも現れるが、これは偶然の一致であって、3シリーズが容量帯を分担し合っているわけではないということだ。
電源電圧の記号は、シリーズによって用意される数が違う
入力電源の記号も、シリーズ間で足並みが揃っていない。3相200V(記号2)と3相400V(記号4)はFRENIC-MEGA・Mini・Aceの3シリーズすべてに共通して存在する。ここまではどのシリーズでも同じ読み方でいい。
ところが単相電源になると事情が変わる。FRENIC-Mini(C2)の形式説明図には、単相100V(記号6)と単相200V(記号7)という2つの記号が追加で定義されている。FRENIC-Ace(E2)には単相200V(記号7)だけがあり、単相100Vの記号は形式説明図に現れない。FRENIC-MEGAに至っては、単相電源に対応する記号自体が存在しない。3相の大容量負荷を主戦場とするシリーズという位置づけを踏まえれば自然な違いではあるが、記号表だけを見て「MEGAにも単相200Vの型式があるはずだ」と類推すると、実在しない型式を探すことになる。
しかも単相100V対応は、記号として定義されているFRENIC-Miniの中でもさらに範囲が絞られる。形式一覧を確認すると、単相100V(FRN○C2S-6J)はベーシックタイプの0.1kW〜0.75kWの4段階にしか存在せず、EMCフィルタ内蔵タイプ(末尾がEになる型式)の単相100V版は形式一覧に載っていない。単相100Vしか確保できない現場でノイズ対策までインバータ本体に内蔵させたい場合、そのままの組み合わせでは型式が見つからないということになる。
構造記号S・E・P・Hは、容量帯によって選べる幅が変わる
構造を表す記号も、シリーズごとに用意されている選択肢の数が違う。FRENIC-Mini・FRENIC-Aceは標準形(S)とEMCフィルタ内蔵タイプ(E)の2種類しか持たない。これに対してFRENIC-MEGAは、SとEに加えて、零相リアクトル内蔵タイプ(P)と直流リアクトル内蔵タイプ(H)という2つの構造記号が追加で定義されている。
ここでも、記号表に載っていることと、その組み合わせの型式が実在することは別問題だ。FRENIC-MEGAの形式一覧を見ると、直流リアクトル内蔵タイプ(H)は3相200V・3相400Vのどちらも30kW・37kW・45kW・55kWの4段階にしか型式が存在しない。零相リアクトル内蔵タイプ(P)はもう少し広く1.5kWから75kWまで型式があるが、それでも標準形が持つ0.4kWから630kWまでの全範囲をカバーしているわけではない。「Hという構造記号があるのだから、小容量帯にも直流リアクトル内蔵版があるはずだ」という読み方は、この一覧の前では成立しない。
HHD・HND——型式が確定させないもう一つの軸
冒頭のFRN0.1E2S-2Jに戻る。この型式1つにHHD仕様0.1kW・HND仕様0.2kWという2つの容量が併記されているのは、FRENIC-Ace(E2)の形式一覧に共通する構成だ。公式の脚注によれば、HHD仕様は過負荷耐量150%1分・200%0.5秒、HND仕様は過負荷耐量120%1分という、負荷変動への耐性の違いを表す区分になっている。型式の文字列にはHHD・HNDのどちらかを示す記号が含まれておらず、この区分は本体に設定するパラメータ側で選ぶ仕組みだ。
同じ構図はFRENIC-MEGAの形式一覧にも痕跡が残っている。標準形・EMCフィルタ内蔵タイプ・直流リアクトル内蔵タイプの表には「(HHD仕様)」、零相リアクトル内蔵タイプの表には「(HND仕様)」という注記がそれぞれ付いており、構造記号によってどちらの過負荷耐量を基準にした容量表示なのかが変わっている。FRENIC-Miniの形式一覧にはこの注記自体が現れないため、HHD・HND仕様という考え方が及ぶのはFRENIC-MEGAとFRENIC-Aceの2シリーズに限られるとみてよい。
型式は、シリーズ・容量帯・構造・電源電圧という骨格を確定させる。だが、その骨格の中にもう一段、型式の文字だけでは読み切れないパラメータ側の選択が挟まっている場合がある——FRN0.1E2S-2Jという1本の型式が教えてくれるのは、そういう構造だ。
富士電機FRENICインバータの型式確認・見積りについて
電設資材専門商社・松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)では、現物の銘板に残ったFRENIC系列の型式から、シリーズ・適用モータ容量・電源電圧の読み解き、後継品との照合まで対応している。型式の判読に迷う場合は、銘板の写真を添えてもらえると照合が早い。
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