制御盤の更新工事で、外した古いCPUユニットのラベルには「NP1PM-048RN」とある。新しく積むCPUユニットの型番は「NP1PM-048EN」。数字の部分はどちらも048で、まったく同じだ。だとすれば違いは末尾の1文字、RかEか、それだけのはずである。
富士電機のMICREX-SX SPHシリーズは、この手の「数字は同じ、末尾だけ違う」型番がCPUユニットの中に混在している。数字が同じなら性能もほぼ同じだろうと考えるのが自然な読み方だが、富士電機の公式仕様ページをそのまま突き合わせると、その読み方はここでは通用しない。以下、公式資料に基づいて型番を分解していく。
型番の骨格——頭文字が性能クラス、数字がプログラム容量、末尾がインタフェース
MICREX-SX SPHシリーズのCPUユニットは、「NP1P」に続けて1文字(M・U・A1・A1C・U1・UBMなど)、ハイフンをはさんで数字、さらに末尾に記号が続くという形をしている。富士電機のCPUモジュール概要ページに掲載された現行ラインアップを見ると、SPH2200はNP1PM-048RN・NP1PM-048EN、SPH3300はNP1PU-048EN・NP1PU-096EN・NP1PU-128EN・NP1PU-256ENという形式が並ぶ。
このうち数字の部分は、プログラム容量をそのまま表している。SPH3300・SPH2200の仕様ページを見ると、NP1PU-048ENのプログラムメモリは96Kword(48Kstep)、NP1PU-096ENは192Kword(96Kstep)、NP1PU-128ENは256Kword(128Kstep)、NP1PU-256ENは512Kword(256Kstep)と記載されている。型番中の数字と、Kstep表記の数字が、桁も含めてそのまま一致する。倍率も足し算も要らない、もっとも素直な対応関係だ。
頭文字のMとUは、プログラム容量とは別の軸を運んでいる。同じ仕様ページの「命令実行時間」の行によれば、SPH3300はLD BOOL命令が5ns〜、SPH2200は12ns〜。CPUモジュール概要ページの一覧表でも、SPH2200は12ns、SPH3300は5ns、さらに上位のSPH5000EC・SPH5000Mは4nsとされている。頭文字が違えば、数字が同じでも演算速度は別物になる。
なお「NP1」で始まる型番は、CPUユニットだけのものではない。富士電機の標準入出力モジュールの概要ページを見ると、ディジタル入力モジュールはNP1X、ディジタル出力モジュールはNP1Yという頭文字で始まり、その後ろに点数や配線方式を示す数字・記号が続く形式が並んでいる。CPUユニットの「頭文字+数字+末尾記号」という組み立て方は、SPHシリーズ全体の型番設計に共通する作法らしい。ただし入出力モジュール側の数字がどこまで点数と対応しているかは、CPUユニットの容量ほど単純な一致では読み取れず、本稿ではCPUユニットの型番に絞って確認を進める。
驚きのある発見——数字が同じでも、末尾の1文字がネットワークの有無を分ける
ここまでなら、「数字が容量、頭文字が速度クラス」という2段構えの規則で説明がつく。だが仕様ページのEthernet行を見ると、もう1段別の切れ目がある。
SPH3300・SPH2200の仕様表は、NP1PU-048EN・NP1PU-096EN・NP1PU-128EN・NP1PU-256EN・NP1PM-048ENという5つの形式をまとめて「10BASE-T、100BASE-TX」と記載する一方、最後のNP1PM-048RNだけを切り離して「なし」と記載している。つまりEthernetポートの有無を分けているのは、プログラム容量を表す数字ではなく、末尾のEN・RNという2文字だけだ。
NP1PM-048ENとNP1PM-048RNは、同じSPH2200、同じ048、同じ96Kword(48Kstep)、同じ命令実行時間12ns〜という条件をすべて共有している。プログラム容量だけを見て発注すれば、どちらも「048だから同じ」と誤認しかねない。実際に分かれているのは、Ethernetで上位のPCや監視システムと直結できるか、それとも直結できないかという、盤の通信構成そのものを左右する一点である。
数字の並びには、もう一つ見落としやすい段差がある。SPH3300の仕様表を上から下まで読むと、プログラムメモリは048・096・128・256ときれいに並んでいるのに、その下のデータメモリの行だけは449Kword・1,217Kword・1,217Kword・2,241Kwordと、096と128でまったく同じ数字が並ぶ。プログラム容量を1段上げてNP1PU-096ENからNP1PU-128ENに乗せ替えても、扱えるデータメモリの容量はそのまま据え置かれるということだ。型番の数字が上がれば付随するすべての容量も比例して上がる、という素朴な期待は、この1段だけ裏切られている。
なぜこうなっているのか——末尾の記号の意味は追えるが、Nが増えた理由までは追えない
EN・RNという記号立てそのものは、他の系列でも辻褄が合う。CPUモジュール概要ページの「その他」タブには、現行のSPH2200・SPH3300とは別に、旧世代にあたるSPH2000のCPUユニットとしてNP1PM-48R・NP1PM-48E・NP1PM-256E・NP1PM-256Hが掲載されている。桁数は2桁、末尾にNは付かない。EとRという文字の使い分けだけは現行のSPH2200と共通しており、Eがネットワーク機能付き、Rがそれを持たない型、という区分の骨格自体は世代を超えて引き継がれているように読み取れる。
ただし、なぜ現行世代になって数字が3桁のゼロ詰め表記に変わり、末尾にNの1文字が新たに加わったのか、その理由を説明する記述は、今回参照した公式ページには見当たらなかった。SPH2200・SPH3300というシリーズ名自体がSPH2000・SPH300の後継として案内されていることは概要ページから読み取れるが、型番表記の書式が変わった経緯そのものは、わからないとしておく。
現場での実務的な注意点
制御盤の更新・見積りの場面では、この型番の性質が2つの落とし穴を作る。
一つは、今見た048と096・128・256の間にある実務的な優先順位の逆転だ。プログラム容量を上げたいなら数字を、Ethernetを使いたいなら末尾を見る。この2つは独立した軸なので、「容量を上げれば通信機能もついてくる」という思い込みは成立しない。SPH2200の範囲では048という数字1種類しかなく、容量を変えたければEthernetの有無に関わらずSPH3300へ系列ごと切り替える必要がある。
もう一つは、SXバスとE-SXバスという、型番の数字にはまったく現れない上限の存在だ。富士電機のSPHシリーズ特長ページによれば、SPH3300・SPH2200が使うSXバスの直結I/O容量は512word、リフレッシュ性能は128word/msで固定されている。これに対しSPH5000M・SPH5000HはE-SXバスに切り替わり、直結I/O容量4096word、リフレッシュ性能2048word/msへと引き上げられる。つまりCPUユニットの数字をNP1PU-256ENまで上げてプログラム容量を256Kstepにしても、I/Oの入出力容量はSXバスの上限に縛られたままだ。増設I/Oの点数が多い大規模な制御盤を検討する場合、CPUユニットの型番だけを見て容量を判断するのではなく、どちらのバス方式に属する系列かを先に確認しておく必要がある。
もう一点、見積り段階で誤解しやすいのが「複数のCPUユニットを混在させられるか」という点だ。富士電機の仕様ページの「マルチCPU機能」の項には「1コンフィグレーション上に最大8台」「マルチCPU機能対応の他CPUモジュールとの混在可」と記載されている。つまり同じ制御システムの中に、演算速度の異なるNP1PUとNP1PMを一緒に組み込み、重い演算処理をNP1PUに、シーケンス制御をNP1PMに分担させるといった構成が、仕様上は認められている。老朽化した盤を段階的に更新する際、既設のCPUユニットをすべて同時に置き換えなくても、増設分だけ別系列のCPUを足す選択肢が残っているということだ。
型番の数字とアルファベットが何を確定させ、何を確定させていないか。ここを取り違えたまま見積りを進めると、後工程でユニットの選定をやり直すことになりかねない。型番の読み方に不安が残る場合や、実際の型番から在庫・見積りを確認したい場合は、遠慮なく相談してほしい。
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