制御盤の増設工事で、新しく届いたリレーを既設のソケット列に差し込もうとして手が止まる。型番はIDECのRU2S-C-D24、2c接点・DC24Vコイル。盤にもともと並んでいるのはオムロンのMY2で、仕様表を並べれば数字はほとんど同じに見える。ならば同じソケットに刺さるはずだ——と思いきや、奥までしっかり入らない。カチッという固定の手応えがなく、無理に押し込めば端子を傷める。IDECのRU2SはIDEC自身のSY・SMシリーズのソケットと対で設計されており、「型番の並びが似ているから互換だろう」という現場の勘は、リレーの世界では意外と通用しない。
IDEC(アイデック)とは——非常停止ボタンの国際規格に関わってきたメーカー
IDEC株式会社は、制御盤の操作スイッチ・表示灯・リレー・タイムリレー・安全リレーを専業とする国内メーカーだ。前身は1945年創業の「和泉商会」、1947年設立の「和泉電気株式会社」で、社名が正式に「IDEC」へ変わったのは2005年のことである。ただし「IDEC」というブランド表記自体は1982年のCI導入時点からすでに使われていたので、ブランド名の方が登記上の社名変更より23年も先行していたことになる。創業時は電気機器の小売・卸売業として始まり、開閉器(スイッチ)の生産に乗り出したのは設立2年後の1947年——電材を扱う側から作る側へ転じた出発点が、いまの主力製品群につながっている。
現在は非常停止用押ボタンスイッチの国際規格(IEC60947-5-5)の改定でプロジェクトリーダーを務めるなど、安全機器の国際標準化に主体的に関わってきた実績を持つ。2026年3月期実績で連結売上高729億円・従業員3,006名規模となり、国内外にグループ会社を展開している。
製品体系——見取り図
| カテゴリ | シリーズ | ざっくり言うと |
|---|---|---|
| 操作スイッチ | HWシリーズ(φ22) | 押しボタン・セレクタ・非常停止 |
| 表示灯 | HWシリーズ(φ22) | LEDでの動作状態表示 |
| リレー | RUシリーズ | 薄形ミニパワーリレー、信号増幅・回路切替 |
| ソケット | SYシリーズ | RUリレーのDINレール実装用 |
| 安全リレー | HR1S/HR2Sシリーズ | 非常停止・安全扉の監視 |
| タイムリレー | GT3シリーズ | オンディレイ等の時限動作 |
| 電源機器 | PS5Rシリーズ | 制御盤内へのDC24V供給 |
選び方
操作スイッチ・表示灯は「接点構成×照光×材質」
接点構成は1a(常開)・1b(常閉)・2a(常開×2)から回路の用途で選ぶ。非常停止ボタンは常閉系接点を使うのが基本だ。照光式(HW1L等)は動作状態を色で示せるため誤操作防止に効く。ベゼル材質は樹脂(ABS、標準)とアルミ合金製があり、屋外・食品工場・化学プラント向けにはIP65対応の防塵防水品を選ぶ。
リレーは「接点数×コイル電圧×ソケット」が三点セット
接点数(2c/4c)と制御回路に合わせたコイル電圧(DC24Vが盤内では主流)を決めたら、対応するSYシリーズのソケットを必ず一緒に発注する。ソケットは別売であり、ここを見落とすと現場で部品が揃わない事態になる。
安全リレーは規格の要求から逆算する
非常停止・安全扉の監視には、ISO13849カテゴリ4/PLe相当に対応するHR1S・HR2Sシリーズを使う。単体機械や比較的シンプルな安全回路ならハードウェアロジックのみの安全リレーユニットで足りるが、複数の安全機能を統合管理する必要がある設備では、プログラム可能なセーフティPLCとの使い分けが必要になる。
比較——オムロン等の類似製品との違い
φ22という取付穴サイズは、IDEC・オムロン・富士電機など複数メーカーが共通で採用する事実上の業界標準寸法だ。取り付け穴が同じでも、そのまま何でも差し替えられるわけではない。
同じことがリレーにも言える。RU2Sは2c、DC24Vという型番の体系がMY2とよく似ており、一見どのメーカーでも中身は同じに見える。だがソケットはメーカー専用設計だ。オムロン公式のFAQでも、IDEC RU2S-C-D24とオムロン相当品の相違点として、対応ソケットの寸法差が案内されている。数ミリの違いだが、固定の確実性や接点容量の定格に関わるため、リレー本体とソケットは同一メーカーで揃えるのが実務上の鉄則になる。
安全機器の分野では、IDECが非常停止ボタンの国際規格改定を主導してきた経緯があり、φ22操作スイッチと安全リレーを一貫して手がける立ち位置は、他メーカーと比べたときのIDECらしさと言える。
注意点
- リレーとソケットはブランドをまたいで混在させない(寸法差・接点容量の定格差がある)
- 非常停止ボタンは常閉(1b)系接点が基本、現物型番の末尾記号まで確認する
- 安全リレーは安全カテゴリ・PLe要求を先に確定してから機種を選ぶ
- 廃番・世代交代品(HR1S→HR2S等)は後継照合をしてから発注する
まとめ
IDECは、φ22操作スイッチと薄形リレー・安全リレーを軸に、制御盤の「入切と安全」を専業でカバーするメーカーだ。型番が似ていても、ソケットや安全規格の要求まで揃えないと現場では機能しない——ここさえ押さえれば、選定の失敗はほぼ防げる。
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