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インバータの回生電力はどこへ行くのか|回生抵抗器が必要になる理由と、エレベーター・巻き取り機で容量不足が起きる仕組み

読了目安: 9分 編集: 電材サーチ編集部(編集・出典ポリシー

減速のたびに、インバータが同じところで律儀に止まる。エレベーターの改修工事が一段落し、試運転を重ねていた現場でのことだった。満載に近い荷重を乗せてかごを下ろす動作を繰り返すと、決まって数回目にアラームが出て停止する。配線をやり直したわけでもないのに、なぜ同じ箇所で同じ症状が出るのか。

原因は、絶縁でもケーブルでもなかった。インバータの直流回路の電圧が、下降のたびにじわじわ上がっていたのである。

モーターが「発電機」に変わる瞬間

インバータがモーターを回しているとき、電力は電源側からモーターへ、一方向に流れていると考えるのが自然だ。実際、加速中や一定速度で回っている間はそのとおりである。

ところが減速させる、あるいは重い荷を下げるといった場面になると、この流れが逆転する。モーターは慣性や重力によって回され続けようとする一方、インバータは出力周波数を下げて回転数を落とそうとする。この差分のエネルギーは消えてなくなるわけではなく、モーター自身が発電機として振る舞うことで、電気としてインバータ側へ押し返されてくる。これが回生電力であり、三菱電機のINVテクニカルニュースMF-I-030は、昇降装置では荷重の大きさによって、プラス側の負荷(力行)にもマイナス側の負荷(回生)にもなり得ると説明している。

押し返された電力は、インバータ内部の直流中間回路(コンデンサで平滑された直流部分)に流れ込む。行き場のないまま流れ込み続ければ、当然この部分の電圧は上がっていく。三菱電機の資料に添えられたオシログラフの実測データでは、200Vクラスの機種で停止時に約300V前後だったP-N間電圧が、回生ブレーキが動作する局面では約370V付近まで跳ね上がっている。設計上の上限を超えれば内部素子が壊れかねないため、インバータは過電圧を検出した時点で運転を止める。安全のための正しい動作ではあるのだが、止まってほしくない場面で止まる、という形で現場には現れる。

熱に変えて捨てる、というもっとも素直な解決策

この電圧上昇を防ぐには、流れ込んでくる回生電力をどこかで消費してやればよい。もっとも単純で古くからある方法が、抵抗器に電力を流し込み、熱として空気中に放出してしまうことだ。回生抵抗器、あるいはブレーキ抵抗器と呼ばれる部品がこの役目を担う。

三菱電機のFREQROL-A800シリーズは、22kW以下の機種と400Vクラスの30k〜55kクラスにブレーキトランジスタをあらかじめ内蔵しており、減速頻度が少ない設備であれば抵抗器を外付けするだけで済むよう作られている。汎用のポンプやファン、コンベアの多くは、減速して完全に止まるまでの短い時間だけ回生が起きればよいため、この程度の備えで足りることが多い。抵抗で電力を捨てるという、エネルギー効率だけを見れば褒められた方法ではないやり方が、長らく標準として選ばれてきたのには理由がある。構造が単純で、価格が安く、制御も難しくないからだ。

だが、この前提が崩れる現場がある。

同じ「減速」のはずなのに、話が変わってくる用途

エレベーター、クレーン、巻き取り機。これらに共通するのは、モーターが持ち上げたり下ろしたりしているのが、重力に逆らう荷物だという点だ。

三菱電機の資料は、この種の昇降装置を「カウンタウェイト(つり合いおもり)の有無」で二つに分けている。天井クレーンやホイストにはカウンタウェイトがなく、スタッカクレーン・立体駐車場・エレベーター・水平引込クレーンにはカウンタウェイトが設けられる場合が多いという。カウンタウェイト付きの装置がやっかいなのは、上昇動作であっても、荷重の大きさとカウンタウェイトの重さのバランス次第で、力行負荷にも回生負荷にもなり得ると資料が明記している点だ。かごが空に近ければ上昇中でも回生になり、満載に近ければ下降中でも力行になる――減速の瞬間だけでなく、運転パターンによっては昇降動作の途中でも回生が起き続けることになる。

汎用のコンベアなら、止まる直前の数秒だけ回生が起きて終わる。ところがエレベーターは1日に何百回も昇降を繰り返し、そのたびに回生が発生し得る。クレーンの巻き上げ・巻き下げも同様だ。「短時間だけ、たまに起きる現象」を前提に設計された小容量の抵抗器に、「頻繁に、しかも継続的に起きる現象」を押し付けてしまえば、抵抗器が音を上げるのは当然の帰結だといえる。

使用率(%ED)という物差しで容量を測る

では、抵抗器に「頻繁さ」への耐性がどれだけあるかは、何で測ればよいのか。三菱電機の資料はこれを使用率(%ED)という単位時間あたりの回生時間の割合で管理している。

インバータ内蔵のブレーキ抵抗器は使用率2〜3%ED程度しか想定されておらず、資料は昇降用途への適用は「まず無理」とまで言い切る。一段上の高頻度用抵抗器(FR-ABR)は7.5kW以下の昇降用途になら対応できるが、連続回生時間が5秒以上続く場合は連続許容電力の範囲内に収めるか、上位の機種を検討する必要があるとされる。さらに上のブレーキユニット(FR-BU)は5.5kW〜55kWをカバーするものの、使用率10%EDという上限は固定値であり、抵抗器の容量(W)をどれだけ大きくしても、ブレーキユニット自身が自己保護のためそこで動作を止めてしまう。数字だけを見ればわずかな違いに思えるが、この10%EDという壁の先に何があるかが、エレベーター・クレーン向けインバータ選定の分かれ目になる。

電力を捨てずに、送り返すという選択

10%EDを超える頻度で回生が起きる設備には、電力を熱にして捨てるのではなく、電源側へ送り返す方式が用意されている。富士電機のFRENIC-eRHR(電源回生コンバータ)についての解説は、従来の制動抵抗器方式は回生エネルギーを熱として消費するため無駄になり、連続的な回生制動が必要な場合は抵抗器自体が大型化するという課題を指摘したうえで、対応用途としてエレベータ・エスカレータ・天井クレーン・立体駐車場・業務用ミキサー・コンベヤを名指ししている。捨てるはずだった電力を電源側へ戻す方式に切り替えれば、抵抗器の発熱に悩まされることも、盤内のスペースを圧迫することもなくなる。三菱電機の同種の製品も、複数のインバータをPN母線で共通接続し、ある系統の回生エネルギーを別の系統の力行運転で消費させることで、電源側に戻すエネルギーそのものを減らせる構成を用意している。

安川電機は踏み込み方を変え、クレーン専用インバータCR700をラインアップしている。その特長ページによれば、始動時や停止時に荷重を保持するのに必要なトルクを確保した状態でブレーキを開閉するブレーキシーケンス機能を備え、ずり下がりを防止する。回生電力そのものの処理方式に加えて、機械ブレーキとの連携という、昇降用途に固有の課題にまで踏み込んだ専用設計だ。安川電機は別のページで、クレーンや自動倉庫の巻き下げ時に生まれる回生電力を、電源回生装置や蓄電池で次の巻き上げに再利用する考え方も紹介している。捨てていた電力を、次の仕事の元手に変えるという発想である。

見落とせない安全上の注意

抵抗器方式を選ぶ場合、もう一つ押さえておきたい点がある。三菱電機の資料は、ブレーキユニット内部のトランジスタが万一故障すると、回生運転をしていない通常時でも抵抗器へ電流が流れ続け、異常加熱の末に火災へ至る危険があると注意を促している。対策として、インバータの電源を外部から強制的に遮断する保護回路を別途設けることが求められる。抵抗で電力を捨てるという方式は、正常に働いている限り単純で扱いやすいが、部品が壊れたときの挙動まで含めて設計しておかないと、思わぬ形で牙をむく。

エレベーターやクレーン、巻き取り機のインバータを選ぶときは、汎用インバータの容量選定と同じ感覚で「モーターのkWに合わせればよい」とは済ませられない。昇降・巻き取り動作の頻度、カウンタウェイトの有無とバランス、そして回生電力を抵抗器で消費するか電源側へ戻すかという方式の選択――この3点をメーカーの選定基準に照らして詰めておくことが、試運転で同じ場所につまずかないための下準備になる。

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よくある質問

回生電力とは何ですか?なぜ発生するのですか?

モーターを減速させたり、重い荷物を下げたりするとき、モーターは電気を消費する側から発電する側へ役割が入れ替わります。このときモーター側からインバータの直流回路へ逆流してくる電力が回生電力です。三菱電機のINVテクニカルニュースMF-I-030は、昇降装置では荷重の大きさによってプラス負荷(力行)とマイナス負荷(回生)のいずれにもなり得ると説明しており、同じ装置でも運転条件次第で回生電力の出方が変わります。

回生抵抗器を付けないとどうなりますか?

回生電力の逃げ場がないまま流れ込み続けると、インバータの直流中間回路の電圧(P-N間電圧)が上昇し続けます。三菱電機の資料が示すオシログラフの実測データでは、200Vクラスで停止時に約300V前後だったP-N間電圧が、回生ブレーキが動作する場面で約370V付近まで上昇しています。この上昇が一定値を超えるとインバータは過電圧保護(トリップ)で運転を止め、内部素子を保護します。トリップが頻発すると安定した連続運転ができなくなるため、回生抵抗器や制動ユニットで電力を消費させる対策が必要になります。

汎用インバータの回生抵抗器では足りない場合があるのはなぜですか?

回生抵抗器や標準搭載のブレーキ回路は、使用率(%ED、単位時間あたり回生状態が占める割合)に上限があるためです。三菱電機の資料によれば、インバータ内蔵のブレーキ抵抗器は使用率2〜3%ED程度と小さく、昇降用途への適用はまず無理とされます。上位の高頻度用抵抗器(FR-ABR)やブレーキユニット(FR-BU)でも使用率10%EDが上限で、ブレーキユニットはこの値を超えると抵抗器保護のため動作を止める固定仕様です。エレベーターやクレーンのように昇降・巻き取り動作を高頻度に繰り返す設備では、この上限を超えやすく、抵抗器方式だけでは対応しきれないケースが出てきます。

回生コンバータとは何が違うのですか?

回生抵抗器・制動ユニットが回生電力を熱に変えて捨てる方式であるのに対し、回生コンバータ(電源回生コンバータ)は回生電力を電源側へ送り返して有効活用する方式です。富士電機のFRENIC-eRHRの解説は、抵抗器方式では回生エネルギーが熱として無駄になり、連続的な回生制動が必要な場合は抵抗器自体が大型化するという課題を挙げたうえで、対応用途としてエレベータ・エスカレータ・天井クレーン・立体駐車場などを明記しています。使用率が高く回生が頻発する用途ほど、抵抗器方式より回生コンバータ方式が有利になりやすいということです。

エレベーターやクレーン向けのインバータ選定で、汎用インバータとの違いはどこを確認すればよいですか?

最低限、①昇降・巻き取り動作の頻度(1時間あたりの運転回数)②荷重とカウンタウェイト(つり合いおもり)の有無・バランス③回生電力を熱で捨てるか電源側に戻すか、の3点をメーカーの選定基準に照らして確認する必要があります。安川電機はクレーン専用のCR700、エレベーター専用のインバータをラインアップしており、汎用インバータに後付けで対応するより、専用機種や適切な制動オプションを前提に選定した方が、トリップや抵抗器の過熱リスクを避けやすくなります。

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回生電力とは何ですか?なぜ発生するのですか?

モーターを減速させたり、重い荷物を下げたりするとき、モーターは電気を消費する側から発電する側へ役割が入れ替わります。このときモーター側からインバータの直流回路へ逆流してくる電力が回生電力です。三菱電機のINVテクニカルニュースMF-I-030は、昇降装置では荷重の大きさによってプラス負荷(力行)とマイナス負荷(回生)のいずれにもなり得ると説明しており、同じ装置でも運転条件次第で回生電力の出方が変わります。

回生抵抗器を付けないとどうなりますか?

回生電力の逃げ場がないまま流れ込み続けると、インバータの直流中間回路の電圧(P-N間電圧)が上昇し続けます。三菱電機の資料が示すオシログラフの実測データでは、200Vクラスで停止時に約300V前後だったP-N間電圧が、回生ブレーキが動作する場面で約370V付近まで上昇しています。この上昇が一定値を超えるとインバータは過電圧保護(トリップ)で運転を止め、内部素子を保護します。トリップが頻発すると安定した連続運転ができなくなるため、回生抵抗器や制動ユニットで電力を消費させる対策が必要になります。

汎用インバータの回生抵抗器では足りない場合があるのはなぜですか?

回生抵抗器や標準搭載のブレーキ回路は、使用率(%ED、単位時間あたり回生状態が占める割合)に上限があるためです。三菱電機の資料によれば、インバータ内蔵のブレーキ抵抗器は使用率2〜3%ED程度と小さく、昇降用途への適用はまず無理とされます。上位の高頻度用抵抗器(FR-ABR)やブレーキユニット(FR-BU)でも使用率10%EDが上限で、ブレーキユニットはこの値を超えると抵抗器保護のため動作を止める固定仕様です。エレベーターやクレーンのように昇降・巻き取り動作を高頻度に繰り返す設備では、この上限を超えやすく、抵抗器方式だけでは対応しきれないケースが出てきます。

回生コンバータとは何が違うのですか?

回生抵抗器・制動ユニットが回生電力を熱に変えて捨てる方式であるのに対し、回生コンバータ(電源回生コンバータ)は回生電力を電源側へ送り返して有効活用する方式です。富士電機のFRENIC-eRHRの解説は、抵抗器方式では回生エネルギーが熱として無駄になり、連続的な回生制動が必要な場合は抵抗器自体が大型化するという課題を挙げたうえで、対応用途としてエレベータ・エスカレータ・天井クレーン・立体駐車場などを明記しています。使用率が高く回生が頻発する用途ほど、抵抗器方式より回生コンバータ方式が有利になりやすいということです。

エレベーターやクレーン向けのインバータ選定で、汎用インバータとの違いはどこを確認すればよいですか?

最低限、①昇降・巻き取り動作の頻度(1時間あたりの運転回数)②荷重とカウンタウェイト(つり合いおもり)の有無・バランス③回生電力を熱で捨てるか電源側に戻すか、の3点をメーカーの選定基準に照らして確認する必要があります。安川電機はクレーン専用のCR700、エレベーター専用のインバータをラインアップしており、汎用インバータに後付けで対応するより、専用機種や適切な制動オプションを前提に選定した方が、トリップや抵抗器の過熱リスクを避けやすくなります。

参考文献・出典

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