古い住宅の分電盤を更新する仕事では、外した盤の銘板に書かれた品番を、まずそのままメーカーの品番検索にかけてみるのが最初の一手になる。ある現場で見つかった品番は「EN5100」。ELB3P50A、分岐10回路、見た目にも特に変わったところのない、ごくありふれた住宅用分電盤だった。ところが河村電器産業の公式Webカタログでこの品番を検索すると、返ってくるのは「生産終了品(2024-01-26)」の表示だけだ。後継品番はどこにも書かれていない。
同じことは、もう一つの主力シリーズであるEL形の「EL5080」にも起きている。こちらも生産終了は2023年12月。同じ主幹50Aの盤なのに、なぜ回路数が違うだけで一方は消え、一方は現行品として残っているのか。答えを急ぐ前に、まずはこの品番という文字列が何を語っているのかを、河村電器産業の公式価格表に基づいて一段ずつ分解していきたい。
頭文字が分けるのは「リミッタースペースの有無」
enステーションには、住宅用分電盤の基本形としてEL・EN・ENDという3つの頭文字がある。河村電器産業のWebカタログのカテゴリページには、EL形は「Lスペース付」、EN形は「Lスペースなし」と並んで記載されている。Lスペースとはリミッタースペースの略で、電力会社が契約電流を制限するリミッター(電流制限器)を取り付けるための区画のことだ。契約形態によってこの区画が必要かどうかが変わるため、更新工事では現物の盤にリミッター用の空間があったかどうかを見て、EL形かEN形かをまず決めることになる。
3つ目のEND形は、EN形と同じくリミッタースペースなしの仕様をベースにしながら、公式価格表に「全品共通でIHクッキングヒーター用ブレーカ MCB2P2E30A(200V)を装備」という一文が添えられている。頭文字の末尾に付くDが、オール電化住宅のIHクッキングヒーター回路をあらかじめ内蔵していることを示す記号というわけだ。なおこの3形以外にも、機器スペースを備えたENF形や、EV充電に対応したEL2D-V形といった派生シリーズが公式カタログ上に存在するが、これらは本稿で扱う3形とは別の型式体系のため、ここでは名称の存在だけにとどめる。
| 頭文字 | リミッタースペース | 標準装備の特徴 |
|---|---|---|
| EL | 付 | — |
| EN | なし | — |
| END | なし | IHクッキングヒーター用ブレーカ MCB2P2E30A(200V)を標準装備 |
頭文字の直後の数字は「主幹電流」——ただし10で割った値ではない
頭文字の直後に置かれる1桁の数字は、主幹ブレーカの定格電流を表す。EN形の価格表を電流帯ごとに追うと、40A帯はEN4、50A帯はEN5、60A帯はEN6、75A帯はEN7、そして100A帯はEN1という対応になっている。40Aから75Aまでは、定格電流を10で割って一の位を切り捨てるという式で説明がつく。50÷10は5、75÷10は7.5で切り捨てて7、という具合だ。
だが100Aだけはこの式に乗らない。同じ式なら100÷10は10になるはずだが、実際の品番はEN1200のように1桁の「1」で表されている。10という2桁の数字をそのまま挟むと品番の桁数が崩れてしまうため、河村電器産業はこの帯だけ計算式を放棄し、1桁に収まる「1」という記号を割り当てたのだろう。この対応関係はEN形・EL形・END形のいずれでも共通して確認できるので、100Aの盤を見たときは「10ではなく1」という例外を、計算ではなく丸暗記として持っておく必要がある。
| 主幹電流コード | 定格電流 | 10で割った値との関係 |
|---|---|---|
| 4 | 40A | 一致 |
| 5 | 50A | 一致 |
| 6 | 60A | 一致 |
| 7 | 75A | 一の位切り捨てで一致 |
| 1 | 100A | 不一致(本来10だが1桁に圧縮) |
続く2桁は分岐回路数、そのまま
主幹電流コードの後ろに続く2桁は、分岐回路数そのものを表している。EN4060の「06」は分岐6回路、EN4102の「10」は分岐10回路、EN1400の「40」は分岐40回路——公式価格表の分岐回路数欄の数字と、品番中のこの2桁は完全に一致する。他社の分電盤の品番では回路数が別の変換式を経て表記される例もあるが、enステーションに関してはここが最も素直な部分だと言っていい。
末尾の数字が示す「予備」は、実装スペースの有無ではなく増設用の空き回路
品番の最後に置かれる1桁は0・2・4のいずれかで、公式価格表では「スペース数」という独立した欄に対応している。これは分岐回路数として実際に使う回路数とは別に、将来ブレーカーを増設するために空けておく予備の回路数を示す数字だ。EL4182という生産終了品の詳細ページを見ると、分岐回路数18・分岐スペース数2という仕様が明記されており、品番末尾の「2」がそのままスペース数2に対応していることが個別の製品ページからも裏付けられる。
ここで紛れやすいのが、同じ「スペース」という言葉を使いながら性質の異なる区画がほかに2つある点だ。ひとつは頭文字が示すリミッタースペース(EL形にだけ存在する区画)。もうひとつは、公式カタログ上でENF形という別シリーズ名が与えられている機器スペース(分電盤に将来別の機器を追加するための区画)だ。品番末尾の数字が表す予備の分岐スペースは、このどちらとも別物であり、3つの「空き」を混同すると、増設できるはずの回路数を見誤ることになる。
消えた品番——EN5100とEL5080が生産終了になった理由を型番から読む
ここまでの分解を踏まえて、冒頭のEN5100に戻る。EN5100は主幹電流コード5(50A)、分岐回路数10、スペース数0という組み合わせだった。現行のEN形価格表を主幹50A帯だけで見ると、EN5160・EN5162・EN5200……と、分岐回路数16からしか品番が並んでいない。10回路や12回路という少回路帯は、現行ラインでは主幹40A(EN4系)だけに整理されており、50A帯からは姿を消している。
EL5080(主幹50A・8回路・スペース0)についても同じ構造が見える。現行のEL形価格表で分岐回路数が最も少ないのは6回路のEL4062だが、これは主幹40A限定だ。50A帯以上でEL形を見ると、次に登場するのは12回路のEL5120からで、8回路という区分そのものが現行ラインナップから抜け落ちている。
つまりEN5100もEL5080も、特定の製品だけが狙い撃ちで廃番になったわけではない。「主幹容量の割に回路数が少なすぎる」という組み合わせの一群が、シリーズ全体の見直しの中でまとめて整理された結果、たまたまこの2つの品番がその対象に含まれていた、と読むのが正確だ。公式カタログの製品詳細ページで生産終了日を確認すると、EL4182が2023年12月21日、EL5080が同年12月28日、EN5100が2024年1月26日と、いずれも1ヶ月あまりの間に集中している。個別の型番をたまたま3つ調べただけでこれだけ日付が寄っている以上、少回路帯の整理はこの時期に一括で実施されたとみてよさそうだが、その意図までは公式資料に記載がない。
品番の構造がわかっていれば、生産終了の一報を見た瞬間に「では現行ラインで一番近い組み合わせはどれか」を、価格表の主幹電流コードと回路数の並びから自分で探し当てられる。EN5100であれば、主幹50Aを維持するならEN5160まで回路数を上げるか、10回路のままでよいなら主幹を40Aに落としたEN4102に切り替えるか、という2つの現実的な選択肢が見えてくる。
まとめ
enステーションの品番は、頭文字がリミッタースペースの有無とIH対応を、直後の1桁が主幹電流のコードを、続く2桁が分岐回路数そのものを、末尾の1桁が増設用の予備回路数を、それぞれ表している。100Aの主幹電流コードだけが「10」ではなく「1」になるという例外を除けば、他社の複雑な変換式に比べて素直な構造だと言える。ただし品番が読めることと、その組み合わせが今も現行品として供給されているかどうかは別の話だ。銘板の品番を確認したら、公式の品番検索で生産終了の有無まで併せて確認する習慣をつけておきたい。
河村電器産業enステーションの型番確認・見積りについて
電設資材専門商社・松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)では、生産終了品の品番確認から、現行ラインでの置き換え候補の絞り込み、主幹容量・分岐回路数を踏まえた発注仕様の確定まで対応している。
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