古い分電盤を更新するとき、現場で外した盤の銘板と、新しく届いた見積書の品名記号が一致しないことがある。銘板には「PEN3-06JC」。見積書には「PEN3-06C」。同じサイズ、同じ回路数、同じ主幹容量なのに、型番の途中から一文字だけ消えている。別の製品に置き換えられてしまったのか、それとも単なる表記ゆれなのか——担当者はここで一瞬、判断に迷う。
答えを先に言えば、これは同一製品である。日東工業のN-TEC公式価格表には「旧品名記号」という欄があり、PEN3-06Cの旧品名記号としてPEN3-06JCがそのまま記載されている。ただし、なぜこの一文字が消えたのか、そしてなぜ消えた製品と消えていない製品が今も併存しているのかは、公式資料を読み解いてようやく見えてくる話だ。以下、日東工業の標準分電盤「アイセーバ」シリーズの品名記号を、公式価格表に基づいて一段ずつ分解していく。
頭文字が分けるのは「電灯か動力か」と「漏電を検出するか」
アイセーバの標準分電盤には、基本タイプだけでPEN・PNL・PEP・PNPという4つの頭文字がある。N-TEC公式価格表の記載を突き合わせると、この4つは2つの軸の組み合わせで整理できる。
| 頭文字 | 用途 | 主幹ブレーカ種類 |
|---|---|---|
| PEN | 電灯回路用 | 単3中性線欠相保護付漏電ブレーカ |
| PNL | 電灯回路用 | 単3中性線欠相保護付サーキットブレーカ |
| PEP | 動力回路用 | 漏電ブレーカ |
| PNP | 動力回路用 | サーキットブレーカ |
PENとPNLは、分岐ブレーカ・外形寸法・価格まで完全に同一で、主幹ブレーカが漏電を検出するかどうかだけが違う。PEPとPNPも同じ関係にある。もう一つ気づく点がある。PEN・PNLの主幹ブレーカ名には「単3中性線欠相保護付」という言葉が付くが、PEP・PNPには付かない。電灯分電盤は単相3線式で中性線を持つため欠相保護が意味を持つが、動力分電盤は三相3線式で中性線自体が存在しないため、この保護機能を名乗りようがない。頭文字の違いは回路の相構成の違いをそのまま映している。
ハイフンの前の数字は「主幹電流÷10」
頭文字の直後に置かれる数字は、主幹ブレーカの定格電流を10で割った値だ。PEN形の現行価格表を主幹電流ごとに追うと、30A帯はPEN3、50A帯はPEN5、60A帯はPEN6、75A帯はPEN7、100A帯はPEN10、150A帯はPEN15、200A帯はPEN20、250A帯はPEN25という対応になっている。75Aを7に変換する操作は、一見「30を3にする」ような単純な10進変換には見えない。だが一の位を切り捨てるという規則で見れば、30も75も100も同じ式に収まる。この規則はPNL・PEP・PNPのいずれでも共通して確認できる。動力分電盤のPEPも30A帯からPEP3、50A帯からPEP5、60A帯からPEP6、75A帯からPEP7と、まったく同じ式で読める。
この数字の後ろに実際に搭載される主幹ブレーカの型式も、価格表には併記されている。PEN7の主幹には「GE108NA 3P 75A」、PEN10には「GE108NA 3P 100A」というように、同じGE108NAという型式のフレームで定格電流だけを変えた品が使われる場面もある。つまりPENに続く数字は、主幹ブレーカという部品そのものの型式を表しているのではなく、その部品が最終的に何アンペアに設定されているかという、盤としての仕様値を表している。
ハイフンの後ろの数字は「使う回路数」であって、盤の実装能力そのものではない
続く2桁は分岐回路数だ。ここで公式価格表の「予備回路数」という列が効いてくる。PEN7の価格表を上から追うと、分岐回路数10・予備回路数6、12・4、14・2、16・0と、分岐回路数が2増えるたびに予備回路数が2減っていく。ここで適用キャビネットの型番を見ると、この4行は同じキャビネットのままだ。分岐回路数が18に上がった瞬間、適用キャビネットが一回り大きくなり、予備回路数は再び6に戻る。
つまり同じ大きさの盤の中に、あらかじめ決まった数の実装スペース(このケースでは16スペース)が用意されていて、そのうち何回路を実際のブレーカに使い、何回路を将来の増設用に空けておくかを、発注者がハイフン後ろの数字で選んでいるにすぎない。分岐回路数の数字だけを見て盤の物理的な大きさを直接判断すると、同じ寸法の盤が複数の品名記号にまたがって存在する理由を見誤る。
もう一点、電灯分電盤(PEN・PNL)は分岐回路数06から価格表が始まるのに対し、動力分電盤(PEP・PNP)は04から始まる。電灯回路より動力回路のほうが分岐ブレーカ1台あたりに要する実装スペースが大きく、同じ大きさのキャビネットに収まる回路数の下限が動力側で先に来るためと見てよさそうだが、この最小回路数の設定理由そのものは公式資料に明示されていない。
消えた「J」——低容量帯だけ先に整理された名称
冒頭の謎に戻る。PEN3・PEN5・PEN6(主幹30A・50A・60A)の現行品名記号は、PEN3-06Cのように末尾に色記号Cが付くだけの短い形をしている。ところが旧品名記号の欄には、同じ製品がPEN3-06JCと呼ばれていた記録が残っている。一方、PEN7・PEN10・PEN15・PEN20・PEN25(主幹75A以上)の現行品名記号は、今もPEN7-10JCのようにJを含んだままだ。この帯域の旧品名記号欄は空欄になっている——つまり、まだ名称が整理されていない。
低容量帯だけが先にJの取れた名称へ移行し、75A以上はまだ移行前の形を保っている。この非対称は、PEN・PNL・PEP・PNPのすべてで同じパターンとして確認できるので、特定の1品番だけのタイプミスではない。ただし、なぜ低容量帯から先に整理されたのか、公式資料はその理由を説明していない。品名記号を読むときは、Jの有無が仕様の違いを意味するわけではなく、名称整理の進み具合の違いにすぎない、と理解しておく必要がある。
なお品名記号は、盤に内蔵する協約形ブレーカそのものの型式変更までは反映しない。日東工業が2024年10月に発行した製品News(BQ-2024-04)は、主幹・分岐の協約形ブレーカをモデルチェンジすると告知しつつ、「品名記号、外形寸法、価格に変更はありません」と明記している。品名記号は盤としての仕様区分であって、内部に載っているブレーカの型式そのものまでは特定できない、という限界も併せて押さえておきたい。
色を表すCと、キャビネットのサイズ記号
品名記号の末尾に付くCは色を表す。公式価格表の色彩欄には「クリーム塗装(2.5Y9/1)/ライトベージュ塗装(5Y7/1)」の2色があり、Cが付けばクリーム塗装、付かなければライトベージュ塗装になる。価格差はない。
もう一つ、品名記号とは別に「適用キャビネット」という記号が価格表に並んでいる。B12-55、B12-58、B16-510というような記号だ。これも寸法欄と突き合わせると規則が見える。ヨコ500・タテ500・フカサ120mmの盤はB12-55、ヨコ500・タテ1,000・フカサ120mmはB12-510、ヨコ500・タテ1,000・フカサ160mmはB16-510——フカサ(奥行)を10で割った数字がBの後ろに、ヨコを100で割った数字とタテを100で割った数字がハイフンの後ろに続けて並ぶ。奥行がひとまわり深いキャビネットに切り替わると、B12がB16に変わる。品名記号とキャビネット記号は別の体系だが、どちらも寸法を10進の桁に落とし込むという発想は共通している。
まとめ
日東工業アイセーバの品名記号は、頭文字が電灯/動力と漏電/サーキットの組み合わせを、直後の数字が主幹電流を10で割った値を、ハイフン後ろの数字が固定容量の中から選んだ分岐回路数を、それぞれ表している。末尾のJの有無は仕様差ではなく名称整理の進捗差、Cの有無は色の違いにすぎない。銘板の品名記号一枚からここまで読み取れれば、更新工事で外した現物と見積書の型番が一文字違って見えても、それが別製品への差し替えなのか単なる旧称なのかを、その場で切り分けられるようになる。ただし内蔵ブレーカの型式まで含めた最終確認は品名記号だけでは完結しないため、迷う場合は現物の写真を添えて照合を依頼するのが確実だ。
日東工業アイセーバ標準分電盤の型番確認・見積りについて
電設資材専門商社・松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)では、旧品名記号を含めた現物の品名記号の読み解きから、後継品番の確認、回路数・主幹容量を踏まえた発注仕様の確定まで対応している。
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