制御盤の更新現場で、外した拡張ユニットのラベルに「KV-B16XA」とある。キーエンスのKV-8000シリーズだと聞いて公式サイトの型式一覧を開くと、この型番には「生産終了」の表示が付いている。困るのはここからだ。すぐ下の行に並ぶ「KV-B16XC」も、一覧上の説明はまったく同じ「16点 ネジ端子台」。型番の末尾1文字が違うだけで、片方は生きていて、片方は死んでいる。XAとXCの間に電気的な違いがあるのか、それとも単なる型番の付け替えなのか、この一覧を見ているだけでは判断がつかない。
さらに一覧を下にたどると、今度は生産終了の表示がない現行品同士で、似た型番が3つ並んでいるのに気づく。KV-B16TC、KV-B16TCP、KV-B16TD。どれも16点・ネジ端子台の出力ユニットで、いずれも生産終了ではない。1つの点数・1つの接続方式に対して、なぜ現行品が3種類も併存しているのか。
キーエンス公式サイトの型式一覧と仕様表を突き合わせると、この型番には接続方式・点数・出力形態・世代という複数の軸が畳み込まれている。以下、一次資料に基づいて分解していく。
型番の骨格——「KV」+接続方式(B/C)+点数+機能記号+世代記号
KV-8000シリーズの入出力ユニットの形名は、「KV-」のあとに次の要素がこの順で並ぶ構造をしている。
- 接続方式:B(脱着式ネジ端子台)/C(コネクタ、MIL規格)
- 点数:8・16・32・64
- 機能記号:X(入力)/T(トランジスタ出力)/R(リレー出力)
- 出力極性(Tの場合のみ):無印がシンク、Pがソース
- 追加の素子記号:D(MOSFET・シンク・過電流保護あり)
たとえばKV-B16TCPなら、B(ネジ端子台)・16(16点)・T(トランジスタ出力)・C・P(ソース)と分解できる。KV-C64XCなら、C(コネクタ)・64(64点)・X(入力)・Cだ。公式仕様表でもKV-B16XC・KV-C32XC・KV-C64XCがまとめて「入力ユニット」の表に、KV-B16TCP・KV-C32TCP・KV-C64TCPがまとめて「出力ユニット」(トランジスタ・ソース)の表に載っている。点数と接続方式が変わっても、末尾の機能・極性の記号が同じなら、同じ性格のユニットとして表がまとまっているわけだ。
ただし、点数と接続方式の2軸は完全に独立ではない。公式の型式一覧を8点の行だけ拾うと、KV-B8RC(8点 ネジ端子台 リレー出力)とKV-B8XTD(8点/8点 ネジ端子台 MOSFET(シンク) 過電流保護あり)の2つしかなく、いずれもB(ネジ端子台)で始まっている。16点・32点・64点にはB(ネジ端子台)とC(コネクタ)の両方が存在するのに対して、8点にはC始まりの型式が一覧に見当たらない。ネジ端子台のほうが小点数側に寄っているという偏りが、型式一覧の並びからそのまま読み取れる。
驚きのある発見——末尾の「A」と「C」は、生産終了と現行を分ける記号だった
冒頭のKV-B16XAとKV-B16XCに戻ろう。型式一覧の説明文はどちらも「16点 ネジ端子台」で一字一句同じだ。違うのはKV-B16XAにだけ「生産終了」のラベルが付いている点だけである。同じ並びはリレー出力(KV-B16RAが生産終了、KV-B16RCが現行)でも、トランジスタ出力(KV-B16TAが生産終了、KV-B16TCが現行)でも繰り返されている。32点・64点のコネクタタイプでも同様で、KV-C32XA・KV-C32TA、KV-C64XA・KV-C64TAがそれぞれ生産終了、末尾をCに変えたKV-C32XC・KV-C32TC、KV-C64XC・KV-C64TCが現行品として一覧に載っている。末尾のA→Cは、外部仕様の見直しに合わせて一括して振り直された世代記号だと見てよさそうだ。
では末尾の記号はAかCの2択なのか、と思いかけたところで、一覧の中にもう一つ別の枝が見つかる。KV-C64XA・KV-C64XCに挟まれて、KV-C64XBという型式が載っている。説明文は「全端子2線式センサ対応 64点 コネクタ」。同じ64点・コネクタ・入力の位置に、AでもCでもない「B」を割り当てられた枝がかつて存在していたということだ。KV-C64XBもすでに生産終了になっている。末尾記号は単純な新旧2値ではなく、機能追加のたびに枝分かれしうる余地を持っていたことになる。
なぜこうなっているのか——KV-8000は2つの拡張バスを同時に受け入れている
末尾記号の話とは別に、型式一覧にはB/Cで始まる型式と並んで、N/NCで始まる型式群がある。KV-N16EX(拡張入力ユニット 入力16点 DC5V/24V切換 ネジ端子台)、KV-N16ET(拡張出力ユニット 出力16点 トランジスタ(シンク)出力 ネジ端子台)といった型式だ。同じ「16点・ネジ端子台・トランジスタ出力(シンク)」を指す型式が、なぜKV-B16TCとKV-N16ETという2つの系列に分かれているのだろうか。
答えはKV-8000のCPUユニット仕様表にある。一般仕様の電源電圧・使用周囲温度の欄には、それぞれ「KV-5000/3000シリーズ拡張ユニットを使用したシステム構成の場合」と「KV-8000/7000シリーズ拡張ユニットのみのシステム構成の場合」という2通りの数値が併記されている。使用周囲温度で見ると、前者は0~+50℃、後者は0~+55℃。数値そのものは小さな差だが、この併記が意味するところは大きい。KV-8000のCPUユニットは、キーエンスの旧世代シリーズであるKV-5000/3000向けに設計された拡張ユニット(N/NC系列)と、KV-8000/7000専用に新設計された拡張ユニット(B/C系列)の、どちらも受け入れられるように作られているということだ。B/CとN/NCという2系統のプレフィックスは、見た目の接続方式の違いである以前に、その部品がどの世代の拡張バス向けに設計されたものかという線引きでもあった。
ただし、旧世代のN/NC系列と新世代のB/C系列を同一システム内で混在させたとき、温度上限や消費電流の合算がどちらの基準に従うのかまでは、今回参照した仕様表からは読み取れなかった。この点は正直に、わからないとしておく。
現場での実務的な注意点
型式一覧にはさらにもう1系統、KV-RC16BR・KV-RC32BTのような「RC」で始まる型式がある。商品タイプの絞り込みでは「リモートI/Oユニット」に分類され、説明文にも「中継機能付ネジ端子台」とある。ここでの「C」は、KV-C32XCの「C」が指すコネクタ接続とはまったく別の意味で使われている。型式の中に出てくる1文字のアルファベットを、シリーズ内の別の型式で見た意味のまま当てはめると読み違える。型式を確認するときは、その型式が「入出力ユニット」「拡張ユニット」「リモートI/Oユニット」のどの商品タイプに分類されているかまで、必ず一緒に確認する必要がある。
もう一つは、コネクタタイプ(C)を選んだときの付帯品だ。キーエンス公式の仕様表には「コネクタタイプ I/O ユニット用のコネクタは付属しておりません。端子台変換ユニット XC シリーズを用意しております」という注記がある。KV-C32XCやKV-C64TCのような「C」始まりの型式を発注しても、それだけでは配線できない。相手側のケーブル・端子台に変換するXCシリーズの型式まで、別途選定して合わせて発注する必要がある。
もう一つは、生産終了品の置き換え方だ。KV-B16XAが生産終了になっている場合、点数・接続方式が同じKV-B16XCへの置き換えが基本線になる。だがKV-8000シリーズは、KV-C64XA→XCのように末尾記号がAからCへ単純に切り替わったものと、KV-C64XA→XB→XCのように機能追加の枝を経由して現行品に至ったものが混在するシリーズでもある。型番の見た目の近さだけで代替品を判断せず、公式の型式一覧・仕様表で「点数」「接続方式」「出力形態・極性」の3項目が完全に一致することを確認してから発注したい。
KV-8000シリーズの型番確認・見積りについて
電設資材専門商社・松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)では、制御盤に残ったKV-8000シリーズの拡張ユニットの型番から、現行品への置き換え、点数・接続方式・出力形態の確認までのご相談を見積フォームで受け付けている。型番の一部が判読できない場合は、現物の写真を添えてもらえると照合が早い。
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