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法令・規格安全対策現場実務

漏電火災警報器とは?消防法上の設置義務と漏電遮断器(ELB)との違いを解説

読了目安: 11分 編集: 電材サーチ編集部(編集・出典ポリシー

「漏電遮断器はもう新品に交換しましたよ」。築50年近い木造モルタル造の雑居ビルで改修工事を終えた電気工事店の担当者は、そう胸を張った。ところが数日後、消防設備の点検業者から届いた指摘書には、聞き慣れない機器の名前があった――漏電火災警報器。「うちは漏電対策、もうやったばかりなんですけど」と担当者は首をひねる。ブレーカー盤を開けて確認しても、そこにあるのは真新しい漏電遮断器だけだ。同じ「漏電」という言葉を冠していながら、片方は電気設備の世界の話で、もう片方はまるで別の役所が所管する別の制度の話だと知らなければ、この指摘は単なる二度手間にしか見えない。

この違和感の正体は、実はそれほど複雑ではない。漏電遮断器と漏電火災警報器は、検知する現象こそ同じ「漏電」でありながら、守ろうとしている対象が根本的に違う、別々の制度に属する設備なのである。

この記事でわかること

  • 漏電火災警報器とは何か、何を検知して何を守る設備なのか
  • 消防法施行令第22条に基づき、設置義務が生じる建物の条件
  • 漏電遮断器(ELB)との違い——目的・根拠法令・検知の考え方
  • なぜ改修工事で「両方必要」と言われる場面が出てくるのか
  • 変流器の設置場所と検知の原理
  • 点検の頻度と、誰が点検を行うのか

漏電火災警報器とは何か——建物の構造そのものが発火することを防ぐ設備

漏電火災警報器は、消防法に基づく消防用設備等の一つである。名前に「警報器」とあるとおり、この設備の役割はブレーカーを落として電気を止めることではなく、あくまで異常を知らせる警報を発することにある。

対象となるのは、壁や床、天井の下地に木材のような可燃性の材料を使い、その上に金属網(ラス)を通してモルタルなどを塗った構造の建築物、いわゆるラスモルタル造の建物である。こうした構造では、経年劣化や配線の絶縁不良によって発生した微弱な漏洩電流が、壁の中の金属網を伝って流れ続けることがある。人が感電するほどの電流ではなくても、金属網の接触部分には電気抵抗によるジュール熱が発生し、それが長期間にわたって蓄積されると、周囲の木材が徐々に炭化し、最終的に自然発火に至る――これが「漏電火災」と呼ばれる現象だ。漏電火災警報器は、まさにこの、壁の中を流れ続ける漏洩電流を検知するために作られている。

構成はおおむね3つの部品からなる。電路や接地線に流れる電流を監視する変流器(検出器)、その信号を受け取り漏洩電流の大きさを判定する受信機、そして基準値を超えたときに音で知らせる音響装置である。原理だけを取り出せば、電路の電流を貫通させて異常を検知するという発想は零相変流器(ZCT)に近い。ただし後述するとおり、何を「異常」とみなすかの基準は、漏電遮断器とはまったく別の考え方に立っている。

設置義務が生じる建物——構造・用途・延べ面積・契約電流容量

漏電火災警報器の設置義務は、消防法施行令第22条に定められている。義務が生じるかどうかは、次の要素の組み合わせで判定される。

まず前提となるのが建物の構造だ。「間柱もしくは下地を準不燃材料以外の材料で造った鉄網入りの壁」「根太もしくは下地を準不燃材料以外の材料で造った鉄網入りの床」「天井野縁もしくは下地を準不燃材料以外の材料で造った鉄網入りの天井」のいずれかを持つ防火対象物、つまり典型的にはラスモルタル造の建物が対象になる。鉄骨造・鉄筋コンクリート造で、こうした鉄網構造を持たない建物は、この時点で対象から外れる可能性がある。

そのうえで、建物の用途区分(消防法施行令別表第一)と延べ面積の組み合わせが問われる。

別表第一の区分(用途の例)延べ面積の要件
文化財等(面積要件なし)全てが対象
旅館・ホテル、共同住宅、公衆浴場等150㎡以上
劇場・飲食店・物品販売店舗、病院・福祉施設、工場等、地下街等300㎡以上
学校、図書館・博物館、鉄道の停車場、神社・寺院等500㎡以上
倉庫、その他の事業場(事務所等)1,000㎡以上

これに加えて、建物の契約電流容量が50アンペアを超える場合にも、区分によっては延べ面積にかかわらず設置対象に含まれるとされている。ただし、この契約電流容量の要件がどの区分にどこまで及ぶかは、参照する資料によって記載の粒度に差があり、本記事で断定的な線引きを示すことは避けたい。自分の建物が対象に該当するかどうかは、構造の確認(壁の中の下地材まで含む)も必要になる以上、最終的な判定は所轄の消防署、または消防設備士に確認することを強くおすすめする。

漏電遮断器(ELB)との根本的な違い——守っているものが違う

ここまで読んで、「それなら漏電遮断器で十分ではないか」と思った人もいるだろう。無理もない。漏電遮断器も、行きと帰りの電流の差から漏電を検知する装置であり、実際に多くの建物に設置されている。しかし漏電遮断器と漏電火災警報器は、同じ「漏電」を扱いながら、目的も、根拠となる法令も、検知の考え方もまったく別物だ。

漏電遮断器(ELCB/ELB)は、電気設備の技術基準に基づき、感電事故と電気設備自体の焼損を防ぐために設けられる保護機器である。零相変流器で電路の行きと帰りの電流差を検知し、一般に30ミリアンペア程度・0.1秒以内という高感度・高速な条件で電路そのものを遮断する。狙っているのは「人が触れた瞬間に、心室細動に至る前に電気を止めること」だ。

一方の漏電火災警報器は、消防法施行令・同施行規則に基づき、建物の構造材そのものが火元になることを防ぐために設けられる消防用設備だ。変流器には「警戒電路の定格電流以上の電流値を有するもの」を用いるという要件があり、感度の考え方は漏電遮断器のような固定の小さなしきい値ではなく、監視する電路や接地線の実情に応じて設定される。そもそも遮断機能を持たない――異常を検知しても行うのは警報だけであり、電路を切り離すのは電気設備側の仕事のままだという点が、両者の性格の違いを最もよく表している。

所管する官庁も違う。漏電遮断器は経済産業省が所管する電気設備の技術基準の系統にあり、漏電火災警報器は総務省消防庁が所管する消防法の系統にある。設置・点検に関わる資格者も、前者は電気工事士、後者は点検であれば消防設備士(乙種第7類)というように分かれている。似た名前の機器が、まったく別の役所の、別の法律のもとで動いている。冒頭の電気工事店の担当者が戸惑ったのは、この構造を知らなかったからにほかならない。

なぜ「両方必要」と言われることがあるのか

漏電遮断器を新しいものに交換したこと自体は、間違った工事ではない。電気設備の保護という観点では、むしろ望ましい更新だ。問題は、その工事が「建物の構造材を火元とする火災を防ぐ」という、まったく別の目的に対しては何も答えていない、という点にある。

漏電遮断器は電気設備の技術基準を満たすために設置され、電気工事士が電路を保護する目的で選定・施工する。漏電火災警報器は消防法施行令第22条という別の条文が要求するために設置され、建物の構造そのものを保護する目的で消防設備側が選定・点検する。法体系が違えば、免除の関係も成立しない。電気設備の技術基準を満たしていることは、消防法施行令第22条の設置義務を免除する根拠にはならないし、その逆もまた成り立たない。

実務でこの行き違いが起きやすいのは、まさに改修工事の場面だ。電気設備の更新は電気工事店が主導し、消防用設備の点検は別の消防設備業者が担当することが多い。双方の担当範囲がきれいに分かれているからこそ、「電気は新しくしたが、消防設備側の既設機器の状態は誰も確認していなかった」という抜け漏れが起きる。古い漏電火災警報器がいつの間にか撤去されていたり、動作しなくなっていたりしても、電気設備側の更新工事の範囲では気づきようがないのである。

漏電遮断器そのものの仕組みや、地絡・漏電という現象自体の詳しい解説は地絡(ちらく)・漏電とは?発生原因と違い・安全防護対策に譲る。あちらが電気設備を守るための制度だとすれば、ここで扱っているのは建物を守るための、もう一つ別の制度だ。

変流器の設置位置と原理——どこで何を見ているのか

漏電火災警報器の心臓部にあたる変流器は、消防法施行規則第24条の3により、建築物に電気を供給する屋外の電路、または構造上それが難しい場合には電路の引込口に近接した屋内の電路、あるいはB種接地線に、点検が容易な位置へ堅固に取り付けることが定められている。多くの建物ではキュービクルの近くや引込口付近といった、日常的には目に入りにくい場所に設置されている。

受信機は屋内の点検しやすい場所に置かれ、変流器からの信号を常時監視する。基準となる値を超える漏洩電流を検知すると、防災センターなど常時人がいる場所に設置された音響装置が、他の警報音や周囲の騒音と明らかに区別できる音で異常を知らせる。この一連の流れは、感知した瞬間に電路そのものを切り離す漏電遮断器の動きとは対照的だ。漏電火災警報器が鳴らすのはあくまで警報であり、そこから先、実際に電源を落とすか、原因箇所を特定して修理するかは、警報を受け取った人間の判断と行動にゆだねられている。

現場で見落とされやすい点として、変電設備の増設や改修によってB種接地線が増えた際に、変流器を貫通しない接地線が新たにできてしまうケースがある。増設した接地線が変流器の監視対象から外れてしまえば、その部分を伝う漏洩電流は検知されないまま見過ごされることになる。改修工事のたびに、変流器がどの電路・どの接地線を貫通しているかを図面と現物の両方で確認しておく必要があるのは、このためだ。

点検義務——誰が、いつ、何を確認するのか

漏電火災警報器も、消防用設備等点検報告制度(消防法第17条の3の3、消防法施行規則第31条の6)の対象に含まれる。ほかの消防用設備と同様、外観確認や簡易な操作で判別できる範囲を確認する機器点検を6か月に1回、実際に作動させて総合的な機能を確認する総合点検を1年に1回行うのが基本の周期である。点検項目には、受信機周囲の状況確認や、変流器・音響装置の動作確認などが含まれる。

点検を行うのは、消防設備士(乙種第7類)など、消防用設備等の点検資格を持つ点検業者だ。点検の結果は、防火対象物の区分に応じて所轄の消防長・消防署長へ報告する義務があり、不特定多数の人が出入りする特定防火対象物では1年に1回、それ以外の非特定防火対象物では3年に1回という周期が目安になる。

ここで注意したいのは、点検周期そのものは他の消防用設備等と共通の枠組みで運用されているという点だ。つまり漏電火災警報器だけを特別扱いして、点検自体を省略してよい理由にはならない。既存のビルで「消防設備の点検は毎年やっているはずだが、漏電火災警報器の項目まで確認された記憶がない」という場合は、点検記録を見直し、点検業者に個別の動作確認結果を確認しておくとよい。

古い建物の改修・更新を検討する際は、電気設備側の資材だけでなく、こうした消防用設備側の状態確認も含めて計画を立てることになる。設備更新に必要な電材の選定・調達についてご相談があれば、下記からお問い合わせいただきたい。

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よくある質問

自分のビルや店舗に漏電火災警報器の設置義務があるか、どう調べればよいですか?

建物の構造(下地に木材等を使い金属網を通した壁・床・天井があるか)と、用途区分・延べ面積、契約電流容量の3点から消防法施行令第22条に基づいて判定します。ただし構造の確認には壁の中を実際に確認する必要がある場合もあり、面積区分の当てはめも建物の用途によって細かく分かれるため、正確な判定は所轄消防署または消防設備士に確認することを強くおすすめします。

漏電遮断器(ELB)を新しいものに交換しました。それでも漏電火災警報器は別に必要ですか?

必要になる可能性があります。漏電遮断器は電気設備の技術基準に基づき感電・機器焼損を防ぐための保護機器で、漏電火災警報器は消防法に基づき建物の構造材を伝う漏洩電流による火災を防ぐための別の消防用設備です。根拠法令も所管官庁も異なり、片方を満たしても、もう片方の設置義務が自動的になくなるわけではありません。

漏電火災警報器の設置・点検は誰に依頼すればよいですか?

設置工事のうち電気配線に関わる部分は電気工事士が、点検は消防設備士(乙種第7類)等の資格を持つ点検業者が行います。既存の消防設備業者や、電気設備の保守を依頼している業者に、対応可否を確認するのがよいでしょう。

変流器はどこに設置されているのですか?自分で確認できますか?

変流器は建築物へ電気を供給する屋外の電路(構造上困難な場合は引込口に近接した屋内の電路)、またはB種接地線に取り付けることが消防法施行規則で定められています。多くはキュービクルや引込口付近の目立たない場所にあるため、外観だけで存在の有無を判断するのは難しく、設置状況は点検記録や設備図面で確認するのが確実です。

古い建物を改修する際、漏電火災警報器についてはどんな点に注意すればよいですか?

電気設備側の更新(漏電遮断器の交換や幹線の更新等)だけに気を取られ、消防設備側の漏電火災警報器の存在・動作状況の確認が抜け落ちるケースが実務では見られます。改修工事の設計段階で、電気設備の担当者と消防設備の点検業者の双方に、既設の漏電火災警報器の有無と状態を確認してもらうことをおすすめします。

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