制御盤の扉に埋め込まれた表示器のラベルに、「NA5-12W101B-V1-P」とある。隣の設備には「NA5-12W101B-V1」。末尾に「-P」が付くか付かないか、それだけの違いに見える。同じ12.1インチの画面、同じ黒い枠、同じ解像度。予備品を手配する側からすれば、この一文字を無視して発注したくなる誘惑がある。
だが、オムロンの公式サイトが公開する形式/種類ページを開くと、この一文字が思ったより重い意味を持っていることがわかる。表示器の骨格を守る筐体そのものが違うのだ。以下、この公式資料に沿って一段ずつ確かめていく。
型番の骨格——画面サイズ・解像度区分・枠色・世代を並べる
NAシリーズ(-V1)の形式/種類ページが示す本体一覧表を見ると、NA5-12W101B-V1という型番は、NA5(シリーズ)+12W(画面サイズ)+101(解像度区分の数字)+B(枠色)+V1(世代)という部品に分解できる。画面サイズの記号は15W・12W・9W・7Wの4種類で、それぞれ15.4インチ・12.1インチ・9インチ・7インチのワイド画面に対応する。同ページの一覧表では、15Wと12Wには「101」、9Wと7Wには「001」という数字が続いており、これは解像度の違いと対応している。定格/性能ページによれば、15Wと12Wは1280×800ドット、9Wと7Wは800×480ドットだ。画面が大きいほど数字も切り替わる、という単純な対応関係がここにはある。
枠色の記号はSとBの2種類で、形式/種類ページの一覧表ではSがシルバー、Bが黒に対応する。ここまでは、三菱電機のGOTシリーズなどでもおなじみの、画面サイズ・解像度・色といった見た目の仕様を型番に折りたたむやり方だ。驚くのはこの先である。
「-P」が分けているのは、色でも解像度でもなく筐体そのもの
NA5-12W101B-V1とNA5-12W101B-V1-P。画面サイズも解像度も枠色も同じこの2つの型番を、形式/種類ページの一覧表はどう並べているか。表の列見出しを見ると、答えは単純だった。「金属筐体」と「樹脂筐体」という2列が並び、-Pの付かない型番が金属筐体の列に、-Pの付く型番が樹脂筐体の列に入っている。個別の商品ページでNA5-12W101B-V1の商品概要を確認しても、「枠色: 黒, 金属筐体」という記載があり、この対応は裏付けられる。
-Pという1文字は、色でも解像度でもなく、表示器の骨格そのもの——金属でできているか樹脂でできているか——を分けていたわけだ。色を変える感覚で「-Pの有無くらいは大差ないだろう」と見過ごしてしまうと、あとで痛い目を見る。
その差は、規格適合という形で表面化する。定格/性能ページの対応規格一覧には、LR・DNV・NKといった船級規格(船舶用機器の型式承認)が並んでいるが、欄外の注記には「船舶規格は形NA5-□□□□□□-V1-Pを除く」とある。樹脂筐体のモデルは、船舶への搭載を前提とした型式承認の対象から外れている。金属筐体が要求される場面——おそらく耐火性や接地・シールド性能が問われる用途——では、樹脂筐体モデルでは代替できない。
なぜ筐体材質が型番の主役になるのか
三菱電機のGOTシリーズの形名構成図では、電源タイプや通信インタフェースが独立した記号として型番の中に位置づけられていた。ところがNAシリーズの場合、少なくとも公式サイトで公開されている形式/種類ページ・定格/性能ページ・形式仕様一覧を見る限り、電源タイプや通信インタフェースを分ける記号は型番の中に存在しない。定格/性能ページの外部インタフェース欄には「Ethernetポート:2ポート」「USBホストポート:2ポート」「シリアルポート:RS-232C 1ポート」とあり、これは「全機種共通」と明記されている。画面サイズが変わっても、通信の口数や種類は変わらない。
代わりに型番の中で独立した記号として扱われているのが、枠色と筐体材質だった。なぜオムロンがこの2軸を型番に折りたたむ判断をしたのか、公式資料はそこまで踏み込んで説明していない。ただ、筐体材質が船舶用途の適合可否を左右するという事実からは、屋内の制御盤に収める通常用途と、船舶や過酷環境向けの用途とで、同じ画面サイズの製品を作り分ける必要があったのだろうと推測はできる。その推測を裏付ける記述は見つからなかったので、ここでは推測にとどめておく。
NBシリーズという、まったく違う型番の体系
ここまでNA5シリーズの型番を追ってきたが、同じオムロンのプログラマブルターミナルでも、NBシリーズの型番はまるで違う顔をしている。NBシリーズの形式/種類ページの本体一覧表を開くと、形式は画面サイズごとにNB3Q-TW01B・NB5Q-TW01B・NB7W-TW01B・NB10W-TW01Bの4種類しかない。3.5インチから10.1インチまで、画面サイズがどれだけ変わっても、末尾は判で押したように「-TW01B」で揃っている。
枠色を選ぶ余地もなければ、筐体材質を選ぶ余地もない。NA5シリーズが1つの画面サイズに対して「枠色2種類×筐体材質2種類」で4通りの型番を用意しているのに対し、NBシリーズは画面サイズが決まればもう型番も1つに決まる。NAシリーズと同じ感覚で「NBの型番のどこかに枠色や筐体材質を示す記号が隠れているはずだ」と探しても、それは見つからない。オムロンはNBシリーズについて、型番を分岐させるという設計そのものを採用しなかったということだ。
もう一つ、NBシリーズには世代差という落とし穴がある。NBシリーズ(-V1)の形式/種類ページを見ると、形NB10W-TW01B-V1の画面解像度は1024×600ドットと記載されている。ところが旧世代であるNBシリーズの定格/性能ページでは、同じ「NB10W」を冠する形NB10W-TW01Bの解像度は800×480ドットだ。画面サイズを示す型番の根幹部分(NB10W)は変わらないまま、末尾に「-V1」が付くかどうかだけで解像度という重要な仕様が入れ替わっている。ラベルの文字列を遠目に見て「NB10Wなら同じ画面だろう」と判断するのは危険だ。
現場での注意点
制御盤の保守・更新に関わる立場から見ると、NA5とNB、この2つのシリーズには型番の読み方における注意点がそれぞれ別の場所にある。NA5シリーズでは、末尾の-Pを見落とさないこと。とりわけ、15.4インチ・12.1インチの樹脂筐体モデル(-P付き)に、金属筐体モデル用の高圧防水用アタッチメントを流用しないこと。オムロンの形式/種類ページは「使用した場合、浸水が発生し、機器に重大な損害を発生させるおそれがあります」と明記しており、これは単なる互換性の問題ではなく、機器そのものを壊しかねない注意点だ。
NBシリーズでは逆に、型番の枝分かれが少ない分だけ油断が生まれる。「-V1」という3文字だけで解像度が変わるという事実は、型番の根幹部分がどれだけ長くても、末尾のわずかな違いを見落とせば別物の表示器を発注しかねないことを教えてくれる。ラベルの一部が汚れて読み取れない場合は、現物の写真を添えて照合するのが確実だ。
NA・NBシリーズの型番確認・見積りについて
電設資材専門商社・松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)では、制御盤に残ったNA・NB表示器の型番から、筐体材質(金属/樹脂)や世代(-V1の有無)を含めた仕様の照合、代替品の選定までのご相談を見積フォームで受け付けている。
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