ステッピングモーターとサーボモーター、位置決めの精度で本当に差がつくのはどちらだろうか。「精密な位置決めにはサーボモーター一択」というのは、モーション制御をある程度知る人ほど口にしがちな常識だ。ところが両者を同じ取付角寸法でそろえて1回転させ、止まった角度のズレを測ってみると、その差はわずか±0.02〜0.03度程度に収まる。ほとんど同じ、と言ってしまってもいい水準だ。であれば、オリエンタルモーターが両方のラインナップを大真面目に揃え続けているのはなぜなのか。答えは精度ではなく、もっと別の場所にある。
オリエンタルモーターとは——「小さく正確に動かす」を専業にしてきた会社
オリエンタルモーターは、ステッピングモーター・ACモーター・ブラシレスモーターを中心に、精密な速度・位置制御用の小型モーターを専業とするメーカーだ。サーボやインバータを主力に据える大手電機メーカーと違い、扱う出力レンジは比較的小さい。その代わり、産業用ロボットの1関節分の駆動源というよりも、コンベアの1本の軸、検査装置の1つの搬送ステージ、包装機械の1つの巻き取り軸といった、装置の中の「1カ所」を正確に動かす部分に強い。数万台単位の設備更新で同じモーターが何百台も使われているのに、現場では意外と品番の読み方まで理解されていない——そんな立ち位置の会社だ。
製品体系——見取り図
| カテゴリ | 主なシリーズ | ざっくり言うと |
|---|---|---|
| ステッピングモーター | PK・AS | パルス数どおりに角度を刻んで止まる位置決め用モーター |
| ACモーター | 5IKなどのインダクションモータ | 交流電源につなぐだけで回る汎用動力源 |
| ギヤードモーター | 5IK+ギヤヘッド | ACモーター等に減速機を組み合わせ低速・高トルク化 |
| ブラシレスモーター | BX2 | エンコーダ内蔵で速度を精密制御、長寿命・省メンテ |
| スピードコントロールモーター | US | つまみ一つで回転数を変えられる速度可変ユニット |
| リニア駆動ユニット | EAS | ステッピングモータ+ボールねじで直動を実現する電動スライダ |
選び方——トルク・速度・精度から絞り込む
いきなり型番を探しに行くと迷う。まず確認したいのは3つの軸だ。
- 必要な精度: パルス制御でよいか、外乱に対するフィードバック補正まで要るか。前者ならステッピング(PK)、後者はブラシレスや閉ループステッピング(AS)が候補になる。
- 必要な速度域: 中・低速(目安1000r/min以下)で足りるならステッピングで十分こなせる。高速までトルクを落とさず回したい、かつロングストロークというなら話は変わってくる。
- 負荷の慣性モーメント: 意外に見落とされがちだが、同サイズで比べるとステッピングモーターの方がより大きな慣性負荷を駆動できる。軽い負荷を精密に、というだけでなく、それなりに重い負荷を止めたい場合にもステッピングは選択肢に入る。
回転方向を変えたい、停止時に保持力が欲しい——という要求なら、ACモーターの中でもレバーシブルタイプや電磁ブレーキ付タイプを選ぶ必要がある。動作原理そのものは普通のインダクションモータと同じだが、機能違いで品番が枝分かれしている点は覚えておいたほうがいい。
比較・注意点——脱調の正体と、見落としがちな罠
脱調はなぜ起きるのか
ステッピングモーターは、入力されたパルス数どおりに1ステップずつ角度を刻んで回転する。ロータの外周に刻まれた小歯とステータが引き合う力で位置を決める仕組みで、フィードバックなしにこれだけ正確に止まれること自体、よく考えると不思議な話ではある。ただし万能ではない。急激な速度変化や過大な負荷がかかると、ロータ自身の慣性のせいでパルスに追いつけなくなり、同期を失う。これが「脱調」だ。正しく選定・設定されたモーターが、正常運転中に何の前触れもなく脱調することは基本的にない——とはいえ、選定の余裕が足りない現場では、起動・停止の加減速をわずかに詰め込みすぎただけで顔を出す。
この弱点を正面から潰しにきたのがASシリーズで、エンコーダのフィードバックによって脱調を検出し、その場で自動補正する。フィードバックを持たない分安価で構造も単純、というステッピングモーターの美点を保ったまま、サーボに近い信頼性を足した格好だ。
ギヤヘッドの罠——減速比を変えると回転方向まで変わることがある
ギヤードモーターの更新でうっかり見落としやすいのが、出力軸の回転方向だ。ギヤヘッドの出力軸は、減速比によってモーター軸と同じ向きに回る場合と、逆向きに回る場合がある。つまり、モーター側の結線もつなぎ方も一切変えていないのに、減速比違いのギヤヘッドへ交換しただけで、コンベアが逆に動き出す——という事態が起こり得る。既設設備の更新で品番を丸ごと同一のものに揃えられればよいが、廃番等でギヤ比を変える場合は、この回転方向の確認を発注前に済ませておきたい。
まとめ
ステッピングモーターとサーボモーターの停止精度そのものにはほとんど差がない。オリエンタルモーターの製品体系を見渡すときに効くのは、精度の優劣ではなく「どの速度域で、どれだけの慣性負荷を、どこまでの信頼性で動かすか」という軸だ。中・低速の位置決めならステッピング(PK)、脱調リスクを消したいならAS、連続運転・省メンテならブラシレス(BX2)、単純な回転や減速だけならACモーター・ギヤードモーター、直動そのものが要るならリニア駆動ユニット(EAS)——用途をこの軸に沿って並べ直すと、選定はそれほど難しくない。
どう注文するか——失敗しない発注のしかた
例: 「PK266-02B(ステッピングモーター)を1台、適合ドライバもセットで」
「5IK40GN-AW2J(ギヤードモーター、減速比◯◯)を1台」
「(既設の銘板から)このBX230C-30Sの後継・後継可否を相談したい」
- ステッピングモーターはモーター単体だけでなく適合ドライバの型番までセットで確認
- ギヤードモーターは減速比・電源電圧・回転方向の3点を発注時に明記
- 型番がわかれば型番検索から見積リストへ追加できます
- 廃番・世代交代品は後継照合からご相談ください
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