制御盤の更新現場で、古いリレーを一つ引き抜く。ソケットに残った型番シールには「HC1-H-DC24V-F」。予備部品箱を開けると、同じ棚にあったのは「HC1E-H-DC24V-F」。接点構成は同じ1c、コイル電圧も同じDC24V。違って見えるのは「E」というたった一文字だけだ。同じ棚に並べて保管していたくらいだから、差し替えても大丈夫だろう、とは思う。だが、その「たぶん」のまま差し込んでいいのか、一瞬手が止まる。
型番をそのままパナソニックの製品サイトで調べてみると、最初に目に入るのは仕様表でも選定ガイドでもなく、「受注終了 終了時期2018年9月末 対象商品:全タイプ」という赤い注意書きだった。もう新品としては買えないリレーの型番を、今さら読み解く意味があるのか。あるとすれば、それはまさに今、既設設備の交換や後継品選定に迫られている人のためだ。パナソニックの制御盤用パワーリレー「HCリレー」は、公式カタログ(ASCTB4J 201709-Fd)が型番の構成をひとつの図に分解して公開している。今回はこの一次資料に沿って、「接点構成」「端子形状」「コイル電圧」「接点材質」という4つの軸に、密封構造を示す「E」とダイオード内蔵を示す「D」がどこに割り込むかを見ていく。
骨格は「接点構成-端子形状-コイル電圧-接点材質」の4段
公式カタログの型番体系図によれば、HCリレー標準品の型番は「HC[接点構成]-[形状表示]-[コイル定格電圧]-[接点材質]」という4つの位置で構成されている。冒頭の「HC1-H-DC24V-F」を分解すると、1(接点構成)・H(形状表示)・DC24V(コイル電圧)・F(接点材質)という4段がハイフンで繋がっていることになる。
この骨格そのものは単純だ。厄介なのは、この4段の型番に「E」や「D」が割り込んでくると、骨格の見え方が微妙に変わってしまう点にある。まずは割り込みのない基本の4段を、一つずつ剥がしていく。
極数が増えるほど、扱える電流はむしろ小さくなる
「HC」の直後に来る数字が、まず接点構成(極数)を決める。公式カタログでは1:1c、2:2c、3:3c、4:4c、4D:4極ツインの5種類が定義されている。cは切替接点(コモン端子を挟んでa接点とb接点が対になった構成)のことで、数字が大きいほど、1個のリレーで同時に切り替えられる回路の本数が増える。
ここまではオムロンのMYリレーなどとも共通する規則だ。だがHCリレーの定格表を見ると、意外な数字が並んでいる。抵抗負荷での定格制御容量は、1c=10A、2c=7A、3c=7A、4c=5A、4極ツイン=3A。極数が増えるほど、1接点あたりの容量はむしろ小さくなっているのだ。極数は「同時に切り替えられる回路の数」を表すものであって、「1回路あたりの容量」とは別の軸だと分かっていないと、「4極ツインなら大容量だろう」という早合点をしてしまいかねない。実際には逆で、4極ツインは3Aという小信号向けの容量しか持たない。
もう一つ、見落とすと事故につながる注記がある。公式カタログは「電気用品安全法において、4cタイプはAC150Vを超える電圧では使用できません」と明記している。制御電圧をAC200Vで組んだ回路に、たまたま手元にあった4cのHCリレーを流用する、という判断は、この一文の前では成立しない。
端子形状の記号は、極数とコイル電圧のあいだに座る
型番の中ほど、極数の直後・コイル電圧の手前に置かれるのが形状表示だ。公式カタログの構成表では、H:プラグイン型、HL:プラグイン型LED表示付、HP:プリント板型、HPL:プリント板型LED表示付、HTM:直付型(TM型)の5種類が並ぶ。
プラグイン型はソケットに差し込んで使う交換前提の標準タイプ、プリント板型は基板に直接実装するタイプ、直付型ははんだ付けなどでソケットを介さず固定するタイプだ。この記号の位置——極数のすぐ後ろ、コイル電圧のすぐ前——は、パナソニックの他のリレーやオムロンのMYリレーで見てきた「端子形状は型番の中ほどに来る」という並びと同じ発想だと言える。読み方の型そのものは、メーカーが違っても大きくは崩れない。
接点材質の記号「F」は、なぜ4cと4極ツインだけに現れないのか
ここからが、HCリレーの型番でいちばん引っかかる箇所だ。型番の末尾、コイル電圧のさらに後ろに置かれるのが接点材質の記号だが、公式カタログの対応表を見ると、1c・2c・3cには「F」という記号が明記されているのに対し、4c・4極ツインの欄は「無表示」——つまり、そもそも記号自体が存在しない。
これだけを見ると、4c・4極ツインの型番には材質情報が抜け落ちているように見える。ところが性能概要表まで遡ると、話は違ってくる。1c・2c・3cの接点材質は「Ag合金(カドミフリー)にAuフラッシュ」、4c・4極ツインの接点材質は「AgNi系にAuクラッド」と、はっきり書き分けられているのだ。材質情報が抜け落ちているのではなく、接点構成(極数)が決まった時点で、使われる接点材質も一つに定まってしまう。だから4c・4極ツインの型番には、わざわざ材質を書き分けるための記号がいらない——という理屈は、資料の記載から素直に導ける仮説ではある。
ただし、なぜ1c・2c・3c側だけ記号で書き分ける設計にしたのか、なぜ4c・4極ツイン側は接点材質を選べない仕様にしたのか、という設計の意図そのものまでは、今回参照した資料には書かれていない。分かるのは、型番の記号が減っている場所ほど、その仕様が一意に固定されている、という型番全体の傾向だけだ。
なお、パナソニックの発注用の品番(型番とは別に用意された「AP」で始まる注文品番)まで見ると、この非対称はさらにねじれる。標準品の注文品番体系では、接点材質の欄そのものに、4c・4極ツインのAgNi系を表す「K」がきちんと割り当てられている(たとえばHC4-HL-AC6VはAP314006K)。ところがアンバータイプの表では、接点材質の欄は4c・4極ツインとも「無表示」で、代わりに動作表示の欄に「44K:アンバータイプLED表示なし(4c、4極ツイン)」という専用のコードが用意されている。結果として、LED表示なしのアンバータイプはHC4E-H-AC6V→AP314044Kのように末尾にKが現れるが、同じ4cでもLED表示付になるとHC4E-L-AC100V→AP314446となり、Kは消える。ダイオード内蔵型に至っては接点材質欄が無表示のままで、HC4-DC6V-D→AP9240とKが出てこない。同じAgNi系の接点材質を指しているはずなのに、記号がどの欄に割り振られるかがタイプごとに違う——型番と注文品番、標準品とアンバータイプとダイオード内蔵型、という軸を掛け合わせたときに初めて見える食い違いで、これもなぜそう設計されているのかまでは分からない。
「E」は極数のすぐ後ろ、「D」はコイル電圧の後ろに割り込む
密封構造を示す「E」と、ダイオード内蔵を示す「D」は、どちらも「追加の機能を持つこと」を示す記号でありながら、型番の中の座る位置がまったく違う。
「E」は、極数を表す数字のすぐ後ろ、形状表示のさらに手前に割り込む。冒頭で見た「HC1E-H-DC24V-F」の「E」がこれにあたる。公式カタログのHCリレーシリーズ商品表によれば、アンバータイプの特長は「シール樹脂でシールした密封構造」であり、「悪環境下でも高信頼性を発揮」し「有機ガスや粉塵の多い環境でのご使用に最適」とされている。これに対して標準品の保護構造は、カタログ表紙に「ダストカバー/プラシール型」と記載されている。同じ「HC1」という骨格を持っていても、Eの有無で、密封構造か、簡易的な防塵構造かが分かれるということだ。
一方の「D」は、コイル電圧の後ろ、接点材質のさらに手前という、まったく別の位置に割り込む。ダイオード内蔵型の型番例「HC1-DC6V-D-F」を見ると、DC6V(コイル電圧)の直後にD、その後ろにF(接点材質)という順で並んでいる。公式カタログによれば、この「D」はコイルOFF時に発生するサージを吸収するダイオードを内蔵していることを示し、DC専用で、逆耐電圧1,000V・順方向電流1Aという特性を持つ。同じ「機能を追加する1文字」でありながら、Eは型番の前寄りに、Dは型番の後ろ寄りに置かれている。この位置の違いが単なる命名上の都合なのか、それとも仕様の階層構造を反映したものなのかは、今回の資料だけでは判断がつかない。
HCリレーは、もう新品としては買えない
ここまでの規則を積み上げれば、接点構成・端子形状・コイル電圧・接点材質、そして密封構造とダイオード内蔵という6つの軸で、HCリレーの型番はかなりの部分まで読み解けるようになる。だが、読み解けたからといって、その型番の新品を発注できるわけではない。
パナソニックが公開している終了品版カタログの表紙には、赤字で「受注終了 終了時期2018年9月末 対象商品:全タイプ」と明記されている。標準品・アンバータイプ・ダイオード内蔵型のいずれも例外なく、すでに受注が終了した製品だ。つまり、現場でHCリレーの型番に出会う場面のほとんどは、故障や経年劣化による交換、あるいは制御盤そのものの更新にほぼ限られる。型番を分解して仕様を特定できたとしても、その先には必ず、後継品や代替品をどう選ぶかという別の判断が待っている。
パナソニック製HCリレーの型番確認・見積りについて
電設資材専門商社・松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)では、既設の制御盤に残ったHC1・HC1E・HC1-DC6V-D等の型番の分解から、接点構成・コイル電圧・密封構造の有無の確認、受注終了に伴う後継品・代替品の照合までのご相談を見積フォームで受け付けている。型番の一部が判読できない場合は、現物の写真を添えてもらえると照合が早い。
あわせて読みたい
- オムロンのMYリレーの型番はどう読むのか|MY2・MY2N・MY4・MY4Nが並べる極数・表示灯・コイルサージ対策・電圧記号の規則
- リレー完全ガイド|仕組み・a接点b接点・ソケットの選び方を初心者向けに解説
- 着脱式リレーソケット(リレーベース)の役割と選び方|なぜリレー本体よりソケットの互換性が重要なのか
- パナソニックFP0RシリーズPLCの型番はどう読むのか
関連するパナソニック・HCリレー・型番・見方の品種・型番をお探しですか?
電材サーチでは、メーカー横断で目的の型番を素早く見つけ、そのまま見積もりを依頼できます。