制御盤の改修現場で、焼けたリレーを引き抜く。側面には「形MY2 DC24」。手元の在庫箱を開けると、同じ棚に入っていたのは「形MY2N DC24」。極数は同じ2、コイル電圧も同じDC24V。違って見えるのは「N」というたった一文字だけだ。同じ棚にまとめて置かれていたくらいだから、たぶん同じ部品の型番違いだろう、と思う。だが、その「たぶん」を確かめないまま差し込んでいいのか、一瞬手が止まる。
オムロンのミニパワーリレー「形MY」は、この手の型番が現場にもっとも多く転がっているシリーズだ。公式FAQ「MYシリーズの形式末尾のアルファベットが表す仕様を教えてください。」は、この型番を①から⑪までの11個の位置に分解した表を公開している。今回はこの一次資料に沿って、現場でまず出会う「極数」「表示灯の有無」「コイルサージ対策」「端子形状」「コイル電圧」の5つを軸に、MY2・MY2N・MY4・MY4Nという型番の並びを一段ずつ剥がしていく。
MYの後の数字が決めているのは「極数」——2c・3c・4cという接点の組数
「形MY」の直後に来る数字が、まず型番全体の骨格を決める。オムロン公式FAQの形式基準表では、この位置(①)は2・3・4のいずれかで、それぞれ2極・3極・4極を表す。以前は1極タイプも存在したが、すでに生産を終了しているという注記もある。
極数は単なる呼び名ではなく、接点の組数そのものに直結している。公式データシートの開閉部(接点部)の仕様欄を見ると、形MY2の接点構成は2c、形MY3は3c、形MY4は4cと明記されている。cは切替接点(コモン端子を挟んでa接点とb接点が対になった構成)のことで、2cなら2組、4cなら4組の切替接点が本体の中に収まっている。制御盤の回路図で「この信号で3つの系統を同時に切り替えたい」と要求されたときに、3極以上のMYを選ぶ理由はここにある。逆に言えば、極数さえ間違えなければ、リレー1個で処理できる回路の本数を取り違えることはない。
「N」の有無が分けるのは、動作表示灯というもう一つの部品
極数の数字が骨格を決めるのに対し、その直後に置かれるかどうかが分かれる「N」は、リレー本体に組み込まれたもう一つの部品の有無を示す。公式FAQ「MY□とMY□Nの違いを教えてください。」は、この違いを動作表示灯(コイルへの通電を示すLED)の有無だと明言している。Nが付けば表示灯あり、付かなければなしだ。
表示灯の位置まで公式FAQは指定している。オムロンのロゴが左上に来る向きで上から見たとき、表示灯は左下にある。色はコイルの種類で変わり、ACコイルは赤、DCコイルは緑に光る。冒頭で並んでいた形MY2と形MY2Nも、この一点だけが違う——DC24Vのコイルに通電したとき、片方は緑のLEDが灯り、もう片方は何も光らない。それだけの違いだ。
ここで見落とされがちなのが、表示灯の有無がソケットの互換性に影響しないという点だ。公式FAQは、DINレール取付やねじ止めで使う表面接続ソケット、はんだ付け・ラッピング・基板実装で使う裏面接続ソケットのいずれも、表示灯の有無にかかわらず共用できると案内している。冒頭のように在庫箱の中で形MY2と形MY2Nが同じ場所に並んでいたのは偶然ではなく、ソケット側から見れば区別する理由がないからだ。
なお、極数の数字と「N」の間に「Z」が挟まる型番(形MY2Z、形MY2ZN)も現場では見かける。公式データシートによれば、Zが付く形式は接点機構がツインになり、接点材質もAgのみからAuメッキ+Agへ変わる、高接触信頼性形の系統だ。「Z」は極数のすぐ後ろ、「N」より手前に置かれる——型番の中での並び順そのものが、どちらが先に決まる仕様かを表しているとも言える。
コイルサージ対策の記号——「D」「D2」「CR」という非対称な並び
型番はここで終わらない。コイルへの通電を止めた瞬間に発生する誘導性の逆起電力(コイルサージ)を吸収する素子を内蔵しているかどうかが、次の記号に現れる。公式FAQの形式基準表によれば、Dはダイオード内蔵形、CRはCR回路内蔵形を表し、Dダイオード形はDCコイル専用、CR回路形はACコイル専用と、対応するコイルの種類そのものが分かれている。
面白いのはここからだ。動作表示灯(N)とダイオード内蔵形(D)を同時に持つ型番は、単純に「N」と「D」を並べた「MY2N-D」にはならず、「MY2N-D2」という別の記号に変わる。公式FAQの注記は、D2がDCコイル・表示灯付きの組み合わせ専用だと明記しており、しかもこのD2は端子形状によっては用意されていない——プリント基板用端子タイプにも、はんだ付け端子タイプにも設定がなく、プラグイン端子タイプでしか選べない。
一方のCR回路内蔵形は、表示灯の有無にかかわらず記号が「CR」のまま変わらない。形MY2-CR(表示灯なし)も形MY2N-CR(表示灯あり)も、コイルサージ対策の表記自体は同じだ。ダイオード形だけが表示灯の有無で記号を変え、CR回路形は変えない——この非対称さは型番の規則性から素直に読み取れる事実であり、なぜダイオード側だけ記号が変わるのかという設計上の理由までは、今回参照した資料には書かれていない。
端子形状の記号——プラグイン・プリント基板用・はんだ付けの三択
型番の中ほどに、ハイフンを挟んで「02」または「F」が現れることがある。公式FAQの形式基準表では、この位置は端子の種類を表し、無表示ならプラグイン端子(ソケットに差し込む標準タイプ)、02ならプリント基板用端子、Fならはんだ付け端子(上面取付形)を意味する。
三者の使われ方は現場でもはっきり分かれる。プラグイン端子はソケット式で本体だけを抜き差しできるため、制御盤内で交換前提の配線に使われる。プリント基板用端子は機器メーカーが基板に直接実装する用途で、電設資材として発注する場面はやや少ない。はんだ付け端子(上面取付形)はソケットを介さず配線を直接固定する用途向けだ。そして、この端子形状の選択は、前段で見たコイルサージ対策の選択肢を狭める。動作表示灯付きダイオード内蔵形(D2)や高容量形(Y)はプリント基板用端子タイプに用意がなく、CR回路内蔵形や高容量形ははんだ付け端子タイプに用意がないと、公式FAQの注記にはっきり書かれている。端子形状を先に決めてから、その先に選べるコイルサージ対策の記号が絞られる、という順番で読むほうが実務には近い。
型番のうしろに置かれる「コイル電圧」——AC100/110とAC100/(110)は別物
ここまで見てきた記号がすべてハイフンで型番本体に連結されているのに対し、コイル電圧だけは型番の外側、スペースを挟んだ後ろに置かれる。「形MY2N DC24」「形MY2 AC100/110」という具合だ。この位置づけの違いは、コイル電圧が同じ本体形式のまま何通りものバリエーションを持つことの表れでもある。
この電圧表記、特にAC品の括弧の有無には見過ごせない意味がある。公式FAQ「リレーのコイル電圧の()の意味を教えてください。」によれば、括弧なしの表記は50Hzと60Hzの両方に対応し、括弧付きの表記は60Hzに限定されることを示す。具体例で見ると分かりやすい。「AC100/(110)」はAC100V 50Hz・AC100V 60Hz・AC110V 60Hzの3種類に対応する3定格品、括弧のない「AC100/110」はそこにAC110V 50Hzが加わった4種類対応の4定格品だ。どちらもAC110V 60Hzでは使える——ただし公式FAQは、動作電圧・復帰電圧・最大許容電圧の値そのものは両者で異なると注記している。単に「AC100/110っぽい表記だから同じだろう」と読み替えるのは、この一点で危うい。
同じ理屈は「AC110/120」「AC200/220」「AC220/240」にも当てはまる。型番の後ろに置かれたこの電圧表記は、単に「何ボルト用か」だけでなく、「何ヘルツまで公式に保証された品か」までを一行で示している。既設リレーの更新で現物の電圧表記を控えるときは、数字だけでなく括弧の有無まで含めて写し取る価値がある。
型番だけでは決まらないもの
ここまでの規則を積み上げれば、極数・表示灯・コイルサージ対策・端子形状・コイル電圧という5つの軸で、型番の文字列はかなりの部分まで読み解けるようになる。ただし、公式FAQの形式基準表にはまだ続きがある。テストボタンやラッチングレバーの有無(型番中のI)、高容量形を示すY、接点機構をクロスバツインに変えるCBG、熱帯地域向けの処理を施したTUなど、より専門的な用途に対応する記号がさらに並んでいる。これらは基本の5軸ほど頻出するわけではないが、型番の奥行きがそこで途切れているわけでもない。
そして、記号の意味が分かることと、その組み合わせが実在することは別の話だ。公式FAQの注記が繰り返し断っているように、一部の記号はプリント基板用端子タイプやはんだ付け端子タイプには用意されていない。型番を分解して読めるようになった先で、最後にもう一段、実在の品番一覧または見積りでの確認が必要になる場面は残る。
オムロン製MYリレーの型番確認・見積りについて
電設資材専門商社・松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)では、現物に残ったMY2・MY2N・MY4・MY4N等の型番の分解から、コイル電圧・コイルサージ対策記号・端子形状の確認、ソケットとの組み合わせ照合、後継品の照合まで対応している。型番の一部が判読できない場合は、現物の写真を添えてもらえると照合が早い。
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