制御盤の改修現場で、部品箱から取り出した二つのスイッチを並べる。片方には「HW1B-M110R」、もう片方には「HW1L-M110Q4G」と刻まれている。φ22の丸いボタン、輪郭もほとんど同じ。違って見えるのは、途中に挟まった「Q4」の有無と、末尾のアルファベット一文字だけだ。似ているから同じ系列の色違いだろう、と片付けたくなる。だが片方はただの押ボタンで、もう片方はLEDを内蔵した照光ボタンだ。中身がまったく違う二つの部品を、型番はどこでどう分けているのか。IDEC公式カタログ「ø22 HWシリーズ コントロールユニット」に立ち返って、この文字列を一段ずつ剥がしていく。
HW1・HW2・HW3が分けているのは「胴の形状」
IDECのHWシリーズ操作スイッチ・表示灯は、まず胴の形状で3系統に分かれる。公式カタログのセレクションガイドは、丸形の押ボタンスイッチにHW1B、角形(角胴)にHW2B、角に丸みを持たせた角丸形にHW3Bという型式を割り当てており、照光押ボタンスイッチもHW1L・HW2L・HW3Lという同じ論理で分かれている。丸形が最も種類豊富で、平形・突形・中形(ø29ボタン)・大形(ø40ボタン)・特大形(ø60ボタン)まで5段階のボタンサイズを揃えているのに対し、角形・角丸形は平形・突形・中形の範囲にとどまる。現場で最も多く出会うのはこの丸形のHW1B・HW1Lなので、以降はこの二系統を軸に型番の骨格を解いていく。
B・Lが分けているのは「光るか光らないか」
HWの後に続く数字が胴の形状を示すのに対し、続くアルファベット一文字は製品の性格を決める。カタログの品番はB(押ボタンスイッチ)、L(照光押ボタンスイッチ)、P(パイロットライト=表示灯)の3系統に分かれ、Bには照光機能がなく、Lは内部にLEDを内蔵している。冒頭のHW1B-M110RとHW1L-M110Q4Gを最初に分けているのは、まさにこの一文字だ。BかLかを見誤ると、部品としての性格そのものを取り違えることになる。
M・Aは動作方式、続く数字が「ドーム」の正体
ハイフンの直後に来るM・Aは動作方式を表す。カタログのセレクションガイドは押ボタンスイッチを「モメンタリ・オルタネイト」の2方式で分類しており、Mはモメンタリ形(指を離すと自動的に元の位置へ戻る形)、Aはオルタネイト形(押すたびに位置が切り替わり保持される形)を指す。
M・Aの直後に来る1桁の数字が、ボタンそのものの形状——つまり冒頭で気になっていた「ドームの形状」の答えだ。丸形のHW1Bで品番表を追うと、1は平形、2は突形、3はø29ボタンの中形、4はø40ボタンの大形、5はø60ボタンの特大形に対応する。照光押ボタンスイッチのHW1Lにも同じ数字(1・2・3・4)が使われ、加えて突形にフルガード(保護カバー)を付けたMF2という枝番も用意されている。数字が大きくなるほどボタンの頭が大きく張り出し、視認性・操作性が上がっていく仕組みだ。
ここで見落とされがちな事実が一つある。ボタンの頭がここまで大きくなっても、パネルに開ける取付穴そのものは変わらない。カタログの性能仕様に掲載されている取付穴加工図は、ボタン形状にかかわらずパネルカット径をø22として示している。ボタンの頭がどれだけ張り出そうと、パネル側の穴あけ加工は共通のまま——「ø22 HWシリーズ」という呼び名そのものが、この共通寸法を指している。既設パネルの穴を流用したまま、平形から特大形まで自由に選び替えられるのは、この一点のおかげだ。
角形(HW2B・HW3B)でも同じ規則が繰り返される
丸形以外にも触れておく。角形のHW2B、角丸形のHW3Bも、胴の形状を示す数字がHWの直後に来るだけで、それ以降の骨格は丸形とまったく同じだ。品番表を見ると、HW2Bの平形はHW2B-M1形、HW3Bの平形はHW3B-M1形と表記され、それぞれ1b接点のご注文形番はHW2B-M101※、HW3B-M101※となる——末尾の※に色記号が入る位置まで含め、丸形のHW1B-M101※と寸分違わない構造だ。違うのはラインナップの幅だけで、角形・角丸形は平形・突形・中形(ø29ボタン)までにとどまり、大形(ø40)・特大形(ø60)は丸形にしか用意されていない。
中ほどの2桁が「接点構成a/b」
胴の形状・機能・動作方式・ボタン形状という4層を抜けた先に、2桁の数字が続く。これが接点構成のコードで、公式カタログの「ご指定方法」には次の対応が明記されている。10は1a、01は1b、11は1a1b、20は2a、02は2b、22は2a2b、40は4a、04は4b、13は1a3b、31は3a1b、30は3a、03は3b、12は1a2b、21は2a1b——合わせて14通りの組み合わせだ。前半の桁がa接点(常開)の数、後半の桁がb接点(常閉)の数を表しており、この2桁だけで、そのボタンが単純な信号出力用なのか、常閉接点を持つ安全回路向けなのかが判別できる。冒頭のHW1B-M110Rの「10」は1a、HW1L-M110Q4Gの「10」も同じく1aだ。
照光品だけに挟まる「電圧記号」
HW1Lにはさらにもう一段、非照光品には存在しない層が挟まる。接点構成コードのすぐ後ろに来る電圧記号だ。カタログにはQ2(AC/DC6V)、Q3(AC/DC12V)、Q4(AC/DC24V)、H2(AC100/110V)、H22(AC115/120V)、M2(AC200/220V)、M42(AC230/240V)、S2(AC380V)、T2(AC400/440V)、T82(AC480V)、D2(DC110V)という11種類の記号が並び、これはLED照光部を何ボルトで光らせるかの指定になる。冒頭のHW1L-M110Q4Gの「Q4」はAC/DC24V——制御盤内部の電源として最も一般的な電圧帯だ。この電圧記号が型番の中ほどに挟まっているかどうかこそ、文字列を横から見たときに照光品と非照光品を見分ける、いちばん分かりやすい目印になる。
末尾の色記号——「B」と「W」がLでは姿を消す
型番の最後、色を指定する記号にも、照光の有無ではっきりした違いが出る。非照光の押ボタンスイッチ(HW1B)で使える色記号は、カタログの注記によればB(黒)、G(緑)、R(赤)、Y(黄)、S(青)、W(白)の6色。一方、照光押ボタンスイッチ(HW1L)の色記号は、別の注記でR(赤)、G(緑)、Y(黄)、A(アンバー)、S(青)、PW(ピュアホワイト)の6色と案内されている。並べて見ると、非照光品にあったB(黒)とW(白)が、照光品では姿を消している。LEDを光らせる部品である以上、黒く光らせることはできない——という単純な理由でBが外れ、白はそのまま「W」ではなく発光効率を考えた専用記号「PW(ピュアホワイト)」に置き換わっている。逆に照光品だけにあるのがA(アンバー、橙系)で、こちらは非照光品の色記号には存在しない。同じ「色を指定する1文字」でも、光るか光らないかで用意されている選択肢の中身がまるごと入れ替わっているというわけだ。
表示灯(HW1P)にも同じ電圧・色記号が使われる
ここまで押ボタンスイッチを中心に見てきたが、同じHWシリーズのパイロットライト(表示灯、HW1P)にも、照光押ボタンスイッチと共通の電圧記号・色記号が使われている。品番表には丸平形の表示灯としてHW1P-1Q4※(AC/DC24V)、HW1P-1H2※(AC100/110V)といった型番が並び、色記号にはR(赤)・G(緑)・Y(黄)・S(青)が使われる。表示灯には接点構成という層そのものが存在しない分、押ボタンスイッチより1段浅い型番になるが、電圧記号と色記号の意味そのものは照光押ボタンスイッチと共有されている。一度この対応関係を覚えてしまえば、押ボタンでも表示灯でも、同じ読み方を使い回せるということだ。
型番だけでは決まらないもの
ここまでの層を積み上げれば、HW1B-M110RもHW1L-M110Q4Gも、胴の形状・機能・動作方式・ボタン形状・接点構成・(照光品なら)電圧・色まで、文字列だけで再現できるようになる。ただし、この型番の並びがすべての組み合わせを保証しているわけではない。ø60の特大形(HW1B-M5形)で選べる色を品番表で確認すると、B・G・Rの3色に絞られており、平形や突形で使えるY(黄)・S(青)・W(白)はこの形状では選べない。型番の桁の意味が分かっていても、「その形状にその色が実在するか」までは、実際の品番一覧表で確認する必要がある。
もう一つ、型番の末尾にさらに付け足せる任意のオプションがある。ハイフンに続く「-MAU」で、これは接点材質を標準の銀から金接点仕様へ変更する指定だ。カタログは接点構成のすぐ後ろにこの記号を添える例を示しており、微小信号を扱う回路など、接触抵抗をより低く抑えたい用途向けの追加指定として案内されている。銘板(ボタン上に貼るラベル)やロックナットといったアクセサリー類も型番の外——別売品として扱われており、注文時には別途手配が必要になる。
IDECのHWシリーズの型番は、胴の形状→機能→動作方式→ボタン形状→接点構成→(照光品のみ)電圧→色という順に、6層から7層を積み重ねた構造をしている。ここまで分解できれば、部品箱に残った型番の切れ端一つからでも、それがどんなボタンで、どんな接点を持ち、光るのか光らないのかまで読み取れる。あとは、その形状にその色が実在するかどうかだけ、品番一覧表と照合すればいい。
IDEC製HWシリーズの型番確認・見積りについて
電設資材専門商社・松本電業株式会社(東京都台東区台東2-4-11)では、現物プレートに残ったHW1B・HW1L品番の分解から、接点構成・照光電圧・色の確認、後継品の照合まで対応している。型番の一部が判読できない場合は、現物の写真を添えてもらえると照合が早い。
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