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太陽光・EVケーブル屋外配線

太陽光ケーブルの紫外線劣化と耐候性グレードとは|屋外に20年さらされる直流配線の被覆設計を一次情報で整理

読了目安: 11分 編集: 電材サーチ編集部(編集・出典ポリシー

設置から6年目のメガソーラー発電所で、パネル裏を這う直流配線を点検していた技術者が手を止めた。ケーブルの被覆に、目の細かい網目状のひびが浮いている。指で軽くなぞると、表面がわずかに粉を吹いたようにざらつく感触が返ってくる。絶縁抵抗を測ってみると、新設時の記録より明らかに数値が落ちていた。

このケーブル、たしか「屋外対応」と謳われていたはずだ。それなのに、なぜたった数年でここまで傷んでいるのか。

現場に残っていた配線図と納品書を確認して、ようやく事情が見えてきた。屋根上の露出配線区間に使われていたのは、太陽光発電システム専用として設計されたPVケーブルではなく、一般的な屋外配線にも使われる汎用の耐候性ケーブルだった。「屋外で使える」ことと、「屋根の上で20年以上、直射日光を浴び続けても大丈夫」であることは、似ているようでいて、実はまったく別の要求水準の話だ。この二つを同じものとして扱ってしまう場面は、電材業界の中でも珍しくない。

なぜ太陽光ケーブルだけ「特別な耐候性」が求められるのか

太陽光発電システムの直流配線——太陽電池モジュール間、モジュールと接続箱の間、接続箱とパワーコンディショナーの間をつなぐケーブル——は、他の電気設備の配線とは根本的に違う条件を課されている。

まず、置かれる場所そのものが過酷だ。多くの区間が電線管や配線ダクトに収まらず、パネル裏面や架台に沿って剥き出しのまま這わせる「露出配線」になる。古河電工メタルケーブルは、自社の太陽光発電システム用ケーブル「PV-CQ」について、PVケーブルの配線方法は露出配線が多く、紫外線や風雨に常時さらされると説明している。屋内配線や電線管に守られたケーブルなら意識せずに済む紫外線が、太陽光ケーブルにとっては生涯にわたって付き合い続ける主要な劣化要因になる。

次に、期間の長さが桁違いだ。太陽光発電設備は20年、25年という単位で稼働し続けることが前提の設備であり、配線もその期間、点検・交換なしで機能し続けることが期待されている。ラプシス・エナジーの技術解説によれば、夏の太陽電池パネルは日中60℃を超えるような高温になるという。屋根の上という遮るものの少ない場所で、直射日光と高熱、そして夜間の冷え込みによる寒暖差を、来る日も来る日も20年以上受け続ける——これほど長期にわたって過酷な野外条件にさらされ続ける配線材は、電気設備の中でもそう多くない。

紫外線は被覆の中で何をしているのか——分子鎖切断という劣化の正体

「紫外線で劣化する」という言葉を聞いたとき、多くの人が思い浮かべるのは、表面が汚れて変色していくような緩やかな見た目の変化だろう。だが被覆材料の内部で起きていることは、もう少し即物的だ。

通信ケーブルの被覆・絶縁体に使われるポリエチレンの紫外線影響について、東京富士産業がまとめた技術資料では、紫外線対策を施していないポリエチレンは太陽光や蛍光灯の光に含まれる紫外線にさらされると劣化が著しく促進され、ひび割れ等が発生する場合があると説明されている。紫外線という高エネルギーの光が樹脂の分子構造にぶつかり続けることで、分子同士をつなぐ結合が少しずつ切れていく。この切断がある程度まで進むと、材料は柔軟性を失って硬くなり、外から力が加わったときにしなやかに変形できず、ひび割れという形で破綻する。

架橋ポリエチレンは、この「架橋」という工程で分子鎖同士を立体的に結びつけ、熱への耐性や機械的な強度を高めた材料だ。だが架橋という処理そのものは、紫外線への耐性を保証するものではない。矢崎エナジーシステムが公開している資料の一覧表を見ると、この点がはっきり表れている。一般的な600V CV・CVTケーブルの絶縁体(架橋ポリエチレン)には耐候性が「なし」と明記されている一方、同じ架橋ポリエチレンでも紫外線対策を加えた特殊グレード「耐候性架橋ポリエチレン」を採用したCV-FX・CVT-FXという別品種には、耐候性が「あり」と記載されている。同じ架橋ポリエチレンという名前の樹脂でありながら、紫外線への耐性は配合次第でまったくの別物になる——これは、太陽光ケーブルの被覆を理解するうえでの出発点になる事実だ。

「屋外用ケーブルはだいたい大丈夫」という思い込みが崩れる場所

ここで、多くの人が抱いている、ある思い込みを一度点検しておきたい。「屋外で使えると書かれているケーブルなら、太陽光の下に置きっぱなしにしても長持ちするはずだ」という前提である。

矢崎の資料が示す構成を丁寧に読むと、この前提が半分しか正しくないことが見えてくる。一般的な600V CVケーブルの構造は、絶縁体が架橋ポリエチレン(耐候性なし)、シースがビニル(耐候性あり)という組み合わせだ。つまりCVケーブルが屋外で問題なく使えているのは、紫外線を通さないビニルシースが絶縁体を覆い隠しているからにすぎない。シースという鎧一枚に守られている状態であって、その内側にある絶縁体自体は紫外線への耐性を最初から持っていない。同資料は、この点を裏付けるようにこう注記している。ポリエチレン系の絶縁体を持つケーブルは、シースにより紫外線が完全に遮断されるため通常は問題ないが、端末部において絶縁体が直接太陽光にあたる場合には、黒色テープ等による紫外線保護が別途必要になる、と。

言い換えれば、一般的なCVケーブルの耐候性とは「守られている間は平気」という条件付きの耐候性だ。シースに傷がつく、あるいは端末処理で絶縁体が露出したままになる——そうした場面では、内側の絶縁体はまったくの無防備な状態でむき出しの紫外線にさらされることになる。

太陽光ケーブルの設計は、この前提そのものを取り払うところから始まっている。露出配線が常態であり、端末のコネクタ加工部も含めてどこかしらが必ず紫外線にさらされ続けるという用途である以上、「シースさえ守れば絶縁体は無防備でよい」という考え方は成立しない。古河電工メタルケーブルのPV-CQは、絶縁体に架橋ポリエチレン、シースに架橋ポリオレフィンを採用し、経済産業省令に基づく電気設備の技術基準の解釈第46条に準拠した構造を持つが、この2層のどちらもが耐候性を意識した材料として設計されている。守る側と守られる側の両方を、最初から紫外線に耐える前提で作り込む——これが、太陽光ケーブルが一般的なCVケーブルと決定的に分かれる部分になる。

耐候性グレードはどう決まるのか——促進試験という物差し

耐候性という言葉は聞こえがいいが、それがどの程度の耐候性を指しているのかという点は見落とされがちだ。20年、25年という歳月をかけて自然劣化を観察してから製品を出荷するわけにはいかない以上、メーカーは人工的に劣化を早送りする促進試験によって耐候性グレードを裏付けている。

具体的な試験の姿は、公開されている資料からうかがえる。東京富士産業の技術資料は、JIS K 7350-4に基づくサンシャインウエザオメーター試験の条件として、ブラックパネル温度63±3℃、120分の周期のうち18分間の降雨(スプレー)を繰り返しながら、合計1,000時間にわたって紫外線を照射する方法を紹介している。試験前後で被覆材料の引張強さ・伸びがどれだけ残っているか(残率)を測定し、劣化の進み具合を数値で評価する仕組みだ。同資料が示した耐燃性ポリエチレンの実測例では、1,000時間の照射後も黒色品で引張強さの残率91%、伸びの残率96%という値が確認されている。

太陽光ケーブル自身の耐候性試験も、考え方は同じだ。古河電工メタルケーブルは、PV-CQがキセノンアークランプによる720時間の耐候性試験に合格していることを、製品の特長として明記している。あわせて使用温度範囲を-40℃から90℃と定め、150℃・168時間の加熱試験後も引張強さと伸びで70%以上の残存率を保つこと、-40℃±2℃の低温下でもひび割れが生じないことを確認済みだとしている。海を渡って北米に目を向けても、太陽光ケーブル規格UL4703は、カーボンブラックを配合した架橋ポリエチレンが25年以上にわたり直射日光にさらされても脆化しないという前提のもと720時間を超える紫外線暴露試験への合格を求め、太陽光発電システムの設計寿命を25〜30年としている。

日本国内では、太陽光発電システム用ハロゲンフリーケーブルの規格「JCS4517」(一般社団法人日本電線工業会)が、こうした耐候性を担保する枠組みとして機能している。低電圧(直流750V以下)のPV配線用ケーブルについては、この規格が定めるオゾン耐性試験・ウェザロメーター(耐候性)試験・直流抵抗試験が、UL Japanが代行する安全マーク(Sマーク)認証の追加基準として使われていることが、UL Japanの案内資料に明記されている。数百時間から千時間規模の人工的な暴露試験で、20年・25年という現実の歳月を代弁させる——地味に見えるこの物差しづくりこそが、太陽光ケーブルというカテゴリーを他のケーブルから分けている技術的な核心だ。

型式にも表れる違い——PV-CC・PV-QQ・PV-CQという区分

耐候性への配慮は、型式の呼び方にも反映されている。UL Japanが案内するSマーク認証代行サービスの資料には、直流1500V用のPV配線ケーブルとして、絶縁体・シースともに架橋ポリエチレンを使うPV-CC、両方に架橋ポリオレフィンを使うPV-QQ、絶縁体を架橋ポリエチレン・シースを架橋ポリオレフィンとするPV-CQ、絶縁体・シースともにエチレンゴムを使うPV-PPという型式が並んでいる。

同じ資料は比較対象として、一般的な600V CV(架橋ポリエチレン絶縁・ビニルシース)や600V HCV(耐熱性ビニルシース)も並べて掲載しているが、これらはPV用の型式区分には含まれていない。名前の並びだけを見るとよく似ているのに、実際に守備範囲としている用途はまったく別だ、という事実が、この一覧表からは静かに読み取れる。

施工現場でつまずく場所——挟み込みと結束の負担

耐候性グレードのケーブルを選んでも、施工の仕方によって寿命を自ら縮めてしまう場面がある。結束バンドとケーブル管理を手がけるパンドウイットの技術解説は、太陽光発電システムの現場で実際に起きた事例として、施工の途中でケーブルが架台や部材に挟み込まれ、その状態のまま劣化が進んで発熱・出火に至った例、そして小動物にケーブルをかじられたことが原因で火災が発生した例を紹介している。紫外線に強い被覆を選んでも、機械的な圧迫やかじり傷でその被覆が損なわれれば、内部の絶縁体は結局のところ無防備な状態にさらされてしまう。

結束の仕方そのものにも配慮が要る。同社は、商用規模の太陽光発電のように長期の耐用が求められる現場では、屋外耐候性能に優れた結束バンドを選ぶことで、結束バンド自体が短期間で破断してケーブルが緩んでしまう事態を防げるとしている。ケーブル本体の設計寿命を20年、25年と見積もっていても、それを束ねている結束バンドが数年で劣化・破断すれば、ケーブルは支持を失って垂れ下がり、擦れや余分な屈曲による負担を受け続けることになる。被覆材料の耐候性グレードだけを見て安心せず、固定・結束に使う部材の耐候性まで含めて設計するのが、実務では欠かせない視点になる。

劣化のサインをどう見分けるか

紫外線劣化は、ある日突然ケーブルが真っ二つに割れるという壊れ方をするわけではない。パンドウイットの解説は、紫外線を長期間浴び続けたポリエチレン系被覆について、次第に変色し、ひび割れや反りが生じ、最終的には破損に至ることも珍しくないという進み方を説明している。

現場での点検では、この進行順を逆にたどればよい。まず被覆の色味に、施工時と比べた変化がないかを見る。次に、指で軽くなぞったときに表面がざらついたり、粉を吹いたような感触がないかを確かめる。さらに、ケーブルを軽く曲げてみたときにしなやかさを失って硬く感じないか、細かいひびが網目状に浮いていないかを見る。これらのサインが一つでも出ている区間は、まだ絶縁抵抗の測定値に異常が出ていなくても、内部の分子鎖の切断が進行している途中である可能性が高い。冒頭で触れたメガソーラーの点検事例のように、被覆の変化に気づいた時点で絶縁抵抗を測定し、記録と照らし合わせておくことが、致命的な絶縁破壊に至る前の最後の防衛線になる。

まとめ——ケーブルの選定は「屋外対応」の先を見る

太陽光発電の直流配線を選ぶときに問うべきなのは、「屋外で使えるかどうか」ではない。20年、25年という歳月にわたって、遮るもののない屋根の上で直射日光と高温・寒暖差を浴び続けても、被覆の分子構造がもちこたえられるように設計されているかどうかだ。一般的なCVケーブルの多くは、絶縁体そのものではなくシースという一枚の鎧に紫外線対策を委ねている。対して太陽光ケーブルは、絶縁体・シースの両方を耐候性材料で構成し、数百時間規模の促進試験によって20年以上先の劣化までを裏付けたうえで出荷される、性格の異なる製品だ。型式の見た目が似ているからといって、この設計思想の違いを見落とすと、数年で被覆がひび割れるという冒頭の事例を繰り返すことになる。

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よくある質問

なぜ太陽光ケーブルだけ、これほど紫外線への耐性が重視されるのですか?

太陽光発電システムの直流配線は、パネル裏面や架台に沿って剥き出しのまま配線される「露出配線」が多く、紫外線・風雨に常時さらされる用途だからです(古河電工メタルケーブル公式ページより)。加えて太陽光発電設備そのものが20年以上の長期稼働を前提にしており、配線もその期間、交換なしで機能し続けることが期待されています。電線管や屋内配線に守られた一般的なケーブルとは、置かれている環境の過酷さも期間の長さも桁違いです。

太陽光ケーブルの被覆は具体的にどんな材料でできていますか?

代表的な構成として、絶縁体に架橋ポリエチレン・シースに架橋ポリオレフィンを使う型式(PV-CQ)や、絶縁体・シースともに架橋ポリエチレンを使う型式(PV-CC)などがあります(UL Japan公式資料より)。いずれも耐候性を考慮した材料で、古河電工メタルケーブルのPV-CQはキセノンアークランプによる720時間の耐候性試験に合格しています。

普通のCVケーブルやVVFケーブルを太陽光の露出配線部分に使ってはいけませんか?

推奨されません。矢崎エナジーシステムの資料によれば、一般的な600V CV・CVTケーブルの絶縁体(架橋ポリエチレン)には耐候性がなく、屋外で問題なく使えているのは紫外線を通さないビニルシースに覆われているからにすぎません。シースに傷がつく、あるいは端末部で絶縁体が露出すると、内部の絶縁体は紫外線に対してほぼ無防備になります。太陽光発電の露出配線区間には、絶縁体自体が耐候性を持つ太陽光専用ケーブルを使うのが基本です。

耐候性グレードは、具体的に何年の寿命を保証しているのですか?

メーカーや規格によって表現は異なりますが、北米の太陽光ケーブル規格UL4703は太陽光発電システムの設計寿命を25〜30年とし、カーボンブラックを配合した架橋ポリエチレンがこの期間、直射日光下で脆化しないことを前提としています。国内では日本電線工業会の規格JCS4517が、オゾン耐性試験・ウェザロメーター試験・直流抵抗試験によって耐候性を担保する枠組みになっています。いずれも数百〜千時間規模の促進試験によって将来の長期劣化を裏付けるという考え方に基づいています。

設置後、ケーブルの紫外線劣化はどんな見た目でわかりますか?

紫外線に長期間さらされた被覆は、次第に変色し、ひび割れや反りが生じ、最終的には破損に至ることがあります(パンドウイット公式コラムより)。点検では、施工時からの色味の変化、指でなぞったときの表面のざらつき、曲げたときの硬さやひびの有無を確認します。これらのサインが見られた場合は、絶縁抵抗を測定し記録と照らし合わせることをおすすめします。

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