電力ケーブルのドラムを検収するとき、シースに沿って流れていく印字を目で追ったことがあるだろうか。ブランド名らしき文字、記号らしき文字、数字の羅列が途切れずに続いている。600Vの一般用ケーブルと6600Vの高圧ケーブルを並べて見比べると、「CV」という見慣れた記号が出てくる位置が違うことに気づく。600Vのほうはずいぶん後ろのほうに出てくるのに、6600Vのほうはブランド名のすぐ後に出てくる。
見間違いだろうか。SFCC株式会社——昭和電線ホールディングス(現SWCC株式会社)と古河電気工業が一般電線・ケーブル事業を統合してできた会社——が公開している仕様書を確認してみると、実際にそう定められていた。
型番の骨格——「CV」はケーブル表示という長い文字列の中の一項目にすぎない
「CV」という記号自体は、架橋ポリエチレン絶縁(Cross-linked polyethylene)とビニルシース(Vinyl sheath)の頭文字を組み合わせたもので、これに定格電圧を添えて「600V CV」「6600V CV」のように呼ぶ。ここまでは業界で広く使われているJIS・JCS共通の呼び方で、SWCC・古河電工に限った独自の型番ではない。
固有の型番体系がないのなら、この2社の型番には見るべきところがないのだろうか。仕様書を読み進めると、そうとは言い切れない部分が出てくる。結論から言うと、CVケーブルの「型番」として業界でよく口にされる「600V CV」や「6600V CV」という記号は、ケーブルのシースに連続表示される複数の項目のうちの一つに過ぎない。SFCC株式会社の「600V 架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル仕様書」(仕様書番号SF-0001C)は「ケーブルの表示」として、適切なところに次の事項を連続表示すると定めている。ブランド名(SWCC・FURUKAWA)、電気用品表示(PSEマーク。電気用品の対象品に限る)、製造業者略号、製造年、JIS認証表示(JIS認証品に限る)、記号(600V CV)、導体公称断面積、鉛フリービニルの表示(LFV)。合計8項目だ。適用規格として掲げられているのはJIS C 3605「600Vポリエチレンケーブル」で、この規格が「600V CV」という記号の根拠になっている。
いわゆる型番——「600V CV」という記号——は、このうち6番目に置かれている。ブランド名、PSEマーク、製造業者略号、製造年、JIS認証表示という5つの項目が先に来て、そのあとにようやく記号が出てくる。型番を先頭近くで探そうとすると、案外見つからない。
分解——同じ会社の仕様書なのに、6600Vでは記号が2番目に繰り上がる
ところが、同じSFCC株式会社が公開している「6600V 架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブル標準仕様書」(仕様書番号SF-0005)を開くと、様子が違う。適用規格はJIS C 3606「高圧架橋ポリエチレンケーブル」に変わり、「ケーブルの表示」の項目は次の5つだけになっている。ブランド名(SWCC・FURUKAWA)、記号(6600V CV)、製造業者略号、製造年、鉛フリービニルの表示(LFV。表面印字品に限る)。
記号は2番目、ブランド名のすぐ後ろに繰り上がっている。そして600Vの仕様書にあった電気用品表示(PSEマーク)とJIS認証表示の2項目、それに導体公称断面積の単独項目が、6600Vの仕様書にはそもそも存在しない。項目数も8から5に減っている。同じ「CV」という記号を名乗り、同じSWCC・FURUKAWAというブランドの下で作られているケーブルなのに、その記号がケーブル表示のどのあたりに現れるかは、電圧クラスによって仕様書の段階で違う位置に定められている。
驚きのある発見——フジクラの600Vケーブルでは、記号はもっと前に出てくる
電圧クラスによる違いだけでも十分に意外だが、もう一段階、意外な事実がある。フジクラの産業用電線を手がける株式会社フジクラ・ダイヤケーブルが公開している「600V CE」(架橋ポリエチレン絶縁ポリエチレンシース電力ケーブル)の仕様書(仕様書番号SES-00049B)の「表示」欄を見ると、ブランド名(FUJIKURA・DIA)、品名記号(600V CE)、電気用品マーク(電気用品対象品のみ)、製造者名又はその略号、製造年、JISマーク、JIS認証に関わる表示(認証番号など)の順で並んでいる。
品名記号は2番目だ。同じ600Vクラスの電力ケーブルなのに、SWCC・FURUKAWAの仕様書では記号が6番目、フジクラ・ダイヤケーブルの仕様書では2番目に置かれている。電圧クラスをそろえてもなお、記号の位置は会社によって違う。逆に、SWCC・FURUKAWAの6600V(記号2番目)とフジクラ・ダイヤケーブルの600V(記号2番目)は、電圧クラスが違うのに記号の位置がそろうという、ねじれた一致まで起きている。
なぜそうなっているのか——推測できる部分と、仕様書が答えない部分
なぜ600Vと6600Vで並び順が違うのか。仕様書自体はその理由を説明していない。ただし、項目の中身を見比べると、手がかりになりそうな違いはある。
600Vの仕様書にだけ登場する電気用品表示(PSEマーク)は、電気用品安全法の対象品に義務付けられる表示だ。同法の対象は一般に600V以下の電線類とされており、6600Vの高圧ケーブルは対象外になる。600Vの仕様書だけに認証系の項目(PSEマーク・JIS認証表示)が並び、そのあとに記号が続くのだとすれば、「まず何の規制対象品かを示し、そのあとに具体的な品名を示す」という順序になっていると読める。6600Vではその手前の認証系の項目がそもそも存在しないので、ブランド名の直後がそのまま記号の定位置になった——という説明は、一応筋が通る。
もっとも、これはあくまで項目の中身から逆算した推測であって、仕様書のどこにも「認証系の項目を先に置く理由」は書かれていない。フジクラ・ダイヤケーブルの600V仕様書では、電気用品マークより先に品名記号が来ている。同じ600Vで同じPSE対象品のはずなのに、会社によって記号を先に出すか後に出すかが分かれている理由は、正直なところ分からない。
もう一つ、JIS認証表示の扱いにも差がある。600V CVの仕様書にはJIS認証表示という単独項目があるのに対し、6600V CVの仕様書にはそもそもこの項目がない。適用規格がJIS C 3605からJIS C 3606に変わっているので、規格ごとにJISマーク表示制度の対象・非対象が分かれている可能性はあるが、これも仕様書自体が明言しているわけではないので、確定的な理由としては書けない。製造業者略号の実際の綴りや、製造年をどう表記するか(西暦か、下2桁だけか)についても、どちらの仕様書も「製造業者略号」「製造年」という項目名を示すだけで、具体的な記法までは踏み込んでいない。
現場での実務的な注意点
まず、ケーブルのシースに印字された文字列を「型番」として一括りに読まないほうがいい。そこにはブランド名、認証情報、製造業者略号、製造年、記号、断面積、LFV表示といった複数の要素が混在している。電圧クラスや会社によって並び順も項目数も違うので、「何番目に書いてあるのが型番のはず」という決め打ちは危険だ。記号そのもの——電圧と絶縁・シース構成を表す「600V CV」「6600V CV」といった文字列——を見つけて読み取る必要がある。
次に、6600Vの高圧ケーブルにPSEマークが印字されていなくても、それは欠陥でも表示漏れでもない。仕様書上、そもそも印字義務の項目に入っていないからだ。逆に600V以下の一般用ケーブルでPSEマークが見当たらない場合は、対象品かどうかを含めて確認したほうがいい。
最後に、LFV(鉛フリービニル)の表示は、ビニルシースの製品にのみ意味を持つ表示だ。フジクラ・ダイヤケーブルの「600V CE」はポリエチレンシースの製品で、そもそもビニルを使っていないため、LFVという項目自体が仕様書に存在しない。シースの材質が違えば、表示される項目の種類自体が変わりうるということも、あわせて覚えておきたい。
なお、ドラムに貼られた紙のラベルや納品書に書かれた品番と、シースに直接印字された記号は、同じ内容を指していても書式が一致するとは限らない。発注・検収の場では納品書側の品番で照合するのが基本だが、現物のシースを確認する必要が生じたときは、ここまで見てきた表示の並びを踏まえたうえで、記号がどのあたりに出てくるかを電圧クラスとメーカーの両方から見当をつけたほうが探しやすい。
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