同じ発電事業者が、隣り合う二つの区画にまったく同じ架台メーカー・同じ型式のシステムを発注したことがある。パネル枚数も傾斜角も、見積書に並ぶ品番はほぼ一致していた。ところが工事が始まると、片方の区画は基礎工事だけで工期が二倍近くに延び、コストも当初の見積もりから大きく膨らんだ。架台は同じなのに、何が違ったのか。
現場監督が最初に疑ったのは施工業者の技量だった。だが理由はもっと単純なところにあった。二つの区画は、地面の中身がまるで違っていたのである。
架台が頑丈でも、地面が持ちこたえなければ
架台自体の強度計算については、太陽光パネル架台の積雪荷重・耐風圧設計で扱った通り、JIS C 8955という規格が積雪荷重・風荷重の算出方法を定めており、その基準を満たした架台は部材としては十分な強度を持つ。だが、その架台をどう地面に固定するかは、この規格が扱う範囲の外側にある問題だ。
NEDOの設計ガイドラインが集めた被災事例の中に、こんな記録がある。多雪区域に設置された地上設置架台で、積雪荷重によって前柱(杭)が倒壊した事例だ。原因として推察されているのは「単管架台の強度不足、単管杭の支持力不足」——架台の強度が足りなかったのか、それとも杭の支持力が足りなかったのか。両方あり得るという書き方そのものが、この二つが別問題であることを示している。
架台がどれだけ頑丈でも、それを受け止める杭や基礎が地盤から引き抜かれたり、沈み込んだりすれば、パネルごと傾く。基礎が完璧でも、架台の部材が細ければ折れる。強度は架台と基礎の両方が同時に成立して初めて保証されるものであって、片方だけを見て安心できる話ではない。
杭基礎・コンクリート基礎・スクリュー基礎——実は同じ棚の中にある
NEDOの設計ガイドラインは、太陽電池架台を支える基礎を「直接基礎」と「杭基礎」の二つに大別している。ここがまず、意外な出発点になる。世間で語られる「杭基礎」「コンクリート基礎」「スクリュー基礎」という三つの言葉は対等に並ぶ三択のように聞こえるが、実際にはスクリュー基礎は杭基礎という大きな分類の中の一種目にすぎない。
杭基礎から見ていく。NEDOガイドラインは杭の種類として、鋼管杭、先端に加工を施した先端加工付鋼管杭、形鋼杭、コンクリート杭、そして「小径回転圧入鋼管杭(スパイラル杭あるいはスクリュー杭など)」を並べて示している。原理はどれも共通していて、地中に打ち込んだ杭が周面摩擦力(杭の側面と土の間の摩擦)と先端支持力(杭の先端が受け止める力)によって荷重を支える。硬い層まで到達させて主に先端の抵抗力で支持させる「支持杭」と、周面摩擦だけで支持させる「摩擦杭」の区別もある。太陽電池架台の杭基礎は、一般的な建築物の杭基礎とは異なり小径で浅い位置に使われ、しかも強風時の負圧による引抜力への抵抗が重要な荷重になる、とガイドラインは注記している。杭基礎は施工が速い。基礎スラブを打って何日も養生する必要がなく、打ち込むか圧入すればその場で据わる。
続いてコンクリート基礎。直接基礎とも呼ばれ、単一柱の荷重を独立したフーチングで支える「独立基礎」、一連の柱の荷重を連続した基礎梁で支える「連続基礎(布基礎)」、上部の広い範囲の荷重を一枚のスラブで受ける「べた基礎」に分かれる。原理は杭とは正反対で、基礎自体の自重と広い接地面積によって地盤に荷重を分散させる。地盤そのものの支持力(地耐力)が低くて杭を打っても十分な摩擦力・支持力が得られない場合の選択肢になる、というのが一般的な理解であり、それは正しい。ただし、それだけでは話の半分しか見ていない。
もう一つの条件——地盤が「硬すぎる」ときもコンクリート基礎に回る
NEDOガイドラインが示す基礎選定の考え方を読むと、思っていたのと違う条件が出てくる。「地盤調査の結果から、杭の打設が可能で充分な支持力(押込み力・引抜き力・水平力)が期待できる場合には摩擦杭あるいは支持杭とすることができる」。ここまでは想定どおりだ。続きにこうある。「軟弱地盤で杭の支持力が期待できない場合や反対に地盤が固い場合、あるいは地中に転石などが多くあり、杭の打設が困難な場合には直接基礎とする」。
軟弱な地盤で杭が効かないから直接基礎、というのはわかる。だが「反対に地盤が固い場合」も直接基礎に回る、という一文がすぐ隣に並んでいる。地盤が硬ければ硬いほど基礎は安心だと考えていたなら、その理解は半分しか合っていない。杭は打ち込む、あるいはねじ込むことで初めて機能する部材であり、硬すぎる地盤や転石の多い地盤では、そもそも杭を計画通りの深さまで到達させられない。地盤の強さは、弱すぎても強すぎても、杭という工法を跳ね返す方向に働く。杭基礎が成立するのは、その中間に収まる、ある程度扱いやすい地盤に限られている。
スクリュー基礎——回転圧入という一手間の意味
スクリュー基礎は、杭の先端付近にらせん状の羽根を取り付け、これを回転させながら地中にねじ込んでいく工法だ。打ち込み杭のように上から打撃を加えるのではなく、回転させて圧入する点が、他の鋼管杭と区別される最大の違いになる。羽根が地中で支圧抵抗を生むため、鉛直方向の押込み力だけでなく、引抜き方向の抵抗力も確保しやすい。太陽光架台にとって引抜力対策が軽視できない要素であることは、先ほどのNEDOガイドラインの注記の通りだ。
スクリュー杭にも段階がある。ソーラーデポの資料によれば、一般的なスクリュー杭は地盤のN値がおおむね3以上であることが施工の目安とされ、地盤力の弱い農地などにはあまり向かない。ジオリゾームの資料は、もう一段具体的に土質ごとの向き不向きを示している。粘土地盤や関東ロームは適地とされる一方、硬い地盤は不適、柔らかい地盤には支持用の羽根を大きくした「大羽スクリュー杭」を選ぶ、という使い分けだ。同じ「スクリュー杭」という名前の下にも、羽根の大きさという形で地盤への適応幅が用意されている。
地盤調査が基礎選定の出発点である理由
ここまでの話を逆から読むと、一つのことがはっきりする。基礎の種類を先に決めてから地盤を確認するのではなく、地盤を確認した結果として基礎の種類が決まる、という順番だ。NEDOガイドラインの設計フローでも、事前調査→現地調査→地盤調査という手順を経てから、ようやく基礎の選定に進むよう位置づけられている。
地盤調査の代表格が、スウェーデン式サウンディング(SWS)試験である。JIS A 1221に規定された静的貫入試験の一種で、先端にスクリューポイントを持つロッドに荷重とおもりを加え、貫入と回転によって地盤の強さを測る。調査費用が比較的安く、深度方向に連続してデータが取れる点が長所とされる一方、礫やガラなどが混じる地盤では貫入自体が困難になるという弱点も持つ。適用範囲はおおむね深度10メートル程度だ。より深い層や地下水位まで確認したい場合には、N値を直接得られ適用範囲が60メートル程度に及ぶ標準貫入試験が使われる。
NEDOガイドラインは、直接基礎を採用する場合、SWS試験の結果に基づいた選定図を目安にするとしている。コンクリート基礎の中でも独立基礎にするかべた基礎にするかという判断すら、最終的には地盤調査の数値に紐づいている。架台のカタログを何度見比べても、この判断材料は出てこない。
地盤による向き不向きの目安
事前調査の段階で見ておくべき地形の傾向も、NEDOガイドラインは整理している。谷底平野や後背湿地、湿地、デルタ(三角州)は、地盤としての評価が不良に近い区分に入る。扇状地や自然堤防、丘陵地は良好とされる。これらは地質図や古地図、地名・植生といった事前調査の段階からある程度読み取れる情報であり、実際に杭を打ってみる前から、おおよその見当をつけることができる。
もっとも、事前の見当と実測された地耐力が食い違うことは珍しくない。だからこそ地盤調査は、「たぶん大丈夫だろう」で省略してよい工程ではなく、基礎の型式そのものを左右する調査として位置づけられている。
施工期間・コストの違い
工法によって、工期とコストの構造はかなり異なる。コンクリート基礎は、型枠を組み、コンクリートを打設し、強度が出るまで養生する時間が必要になる。基礎スラブの厚さも、アンカーボルトのかぶり厚を考慮して150mm程度以上を確保することが推奨されており、材料と手間の両方がかかる工法だ。
一方、杭基礎、なかでもスクリュー杭は圧入すればその場で据わるため工程が簡略化される。グランテックの資料は、スクリュー杭工法についてコンクリート置き基礎に比べ工程が簡略化され杭自体の材料費も安価であり、将来的に太陽光発電事業が終了した際にもコンクリート廃材の撤去・処理費用が発生しない、という点を挙げている。設置時のコストだけでなく、いずれ来る撤去のコストまで工法の違いに含まれてくるということだ。
ただし、この有利さは地盤がスクリュー杭を受け入れてくれる場合に限られる。軟弱すぎる、あるいは硬すぎる・転石が多いといった地盤条件に当たれば、工期とコストで有利なはずのスクリュー杭という選択肢は、そもそもテーブルに乗らない。
施工後も変わり続ける——凍上という条件
基礎の設計は、竣工時点の地盤だけを見て終わる話でもない。積雪寒冷地では、冬季に地盤が凍結・融解を繰り返すことで基礎が変位する「凍上」という現象があり、NEDOガイドラインは基礎底板を凍結深度より深い位置に設置することを求めている。凍結深度の目安は地域ごとに異なり、例えば北海道では50cmから120cm、長野県では標高が800mを超える地点で60cm以上とされる。この数値も、事前の地盤調査や地域の指定を確認しないまま一律の基礎で済ませてよいものではない。
冒頭の二つの区画に戻ろう。同じ架台メーカー、同じ型式を選んだのに基礎工事だけが大きく違ったのは、選定ミスでも施工業者の腕の差でもなかった。地盤調査の結果として、一方は杭基礎で済み、もう一方はコンクリート基礎を選ばざるを得なかった、というだけの話である。架台のカタログには、その土地固有の答えは載っていない。
架台の強度計算書と同じくらい、設置予定地の地盤調査結果——SWS試験や標準貫入試験のデータ——を先に手元に置いておくことが、基礎工事の工期・コストのブレを事前に把握する近道になる。
FAQ
Q. 杭基礎とスクリュー杭は別の工法ですか?
A. 別工法ではありません。NEDOの設計ガイドラインでは、スクリュー杭(スパイラル杭)は「小径回転圧入鋼管杭」として、鋼管杭・形鋼杭・コンクリート杭と並ぶ杭基礎の一種に分類されています。回転させながら圧入する施工方法である点が、打ち込みや圧入で設置する他の鋼管杭との違いです。
Q. 地盤調査は必ず必要ですか?
A. 太陽電池架台の基礎設計にあたっては、事前調査の結果を踏まえて地盤調査を実施し、設計に必要な工学的性質に関する情報を収集することが基本とされています。軽量な太陽電池架台であっても、地盤の状況によっては不同沈下が生じ、杭基礎を採用する場合には十分な支持力(圧縮力・引抜力・水平力)が必要になるためです。
Q. 「地盤が硬いから安心」ではないのですか?
A. 一概には言えません。NEDOの設計ガイドラインは、軟弱地盤で杭の支持力が期待できない場合だけでなく、反対に地盤が固い場合や地中に転石が多く杭の打設が困難な場合にも、直接基礎(コンクリート基礎)を採用するとしています。地盤の強さは、弱すぎても強すぎても杭という工法を選びにくくする方向に働きます。
Q. スクリュー杭が使える地盤の目安はありますか?
A. 業界の資料では、一般的なスクリュー杭は地盤のN値がおおむね3以上であることが施工の目安とされ、地盤力の弱い農地などにはあまり向かないとされています。柔らかい地盤には、支持用の羽根を大きくした「大羽スクリュー杭」を選ぶといった使い分けもありますが、最終的な適否はその土地で実施した地盤調査の結果に基づいて判断すべきものです。
Q. 積雪寒冷地の基礎で特に注意すべき点は何ですか?
A. 冬期に地盤が凍結する地域では、基礎の変位を防ぐため、基礎底板を「凍結深度」より深い位置に設置する必要があります。凍結深度は地域によって異なり、例えば北海道では50cmから120cm程度、長野県では標高が800mを超える地点で60cm以上が目安とされています。杭についても凍結による影響を考慮した設計が必要です。
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